【人事必見】メンター制度とは?導入手順や企業事例、助成金も解説!

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「効果はあるの?」「導入方法は?」「他制度との違いは?」などメンター制度をどのように進めるのか悩んでいる人事担当者もいるのではないでしょうか?

今後、人材不足が深刻化するなか、新卒社員の3年以内の離職率は概ね3割程度で推移しており、企業は人材の定着が重要課題となっています。

今回は、新人の定着の取り組みとして注目されているメンター制度をわかりやすく説明するとともに、採用活動への影響や導入方法などを紹介します。

3月に「2024卒の採用市場から学ぶ!Z世代×新卒採用」という資料も作成しました。採用基準の策定時、Z世代の特徴を考慮するのにご活用ください。

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メンター制度とは

ここでは、メンター制度の内容や重視される背景、他の制度との違いなどについて説明します。

メンター制度の定義

メンター制度の定義は「メンターとメンティーが、共に成長するために、効果的なメンタリング(自由な対話)を行う仕組み」(「メンター制度」とは)とされています。

「メンター」は、新人の相談役であり人間的に信頼・尊敬でき、公私ともに安心して相談できる人、「メンティー」は、フォローを受ける新人です。

一見すると、新人をフォローするだけの制度のように思えますが、前述のとおり「メンター」と「メンティー」の相互が互いに成長する仕組みであり、新人と先輩社員双方の社員定着や人材育成の施策として機能する制度となります。

なお、日本メンター協会の定義によると、メンター制度は、新人だけのフォローに留まらず、「女性活躍に向けた女性の支援」「新たなマネージャーに対する支援」「メンタルヘルスに対する支援」など範囲は広範にわたりますが、本記事では「新人へのフォロー」を中心に説明します。

メンター制度の内容

社員定着支援の施策として、ある程度社歴を積んだ先輩社員がメンターとなり、メンティーである新人の相談役としてサポートします。

メンターとメンティーは1対1のペアを組み、基本的には所属する組織外の先輩社員がメンターとなり、精神的な面やキャリア形成に関することなど職務外のサポートが中心となります。

他の制度との違い

似たような制度で、ブラザーシスター制度やOJTがありますが、それぞれの違いを説明します。

ブラザーシスター制度との違い

ブラザーシスター制度は、新人教育にあたって、同じ職場の先輩を兄(ブラザー)・姉(シスター)と見立て、新人の職務上の悩みやアドバイスなどを行うとともに、人間関係などの相談にも対応する人材育成制度です。

メンター制度は、職場外の先輩がフォローにあたりますが、ブラザーシスター制度は、職務上のフォローも行うため、同じ職場の先輩がフォローにあたることが大きな違いです。

また、ブラザーシスター制度は、一般的にはフォロー対象を新人としていることに対し、メンター制度は新人に限らない点も相違があります

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OJTとの違い

OJTは、「On the Job Taninng」の略であり、上司や先輩社員が新たに配属された社員に対し、業務のなかで実践的に行うトレーニングです。

メンター制度は業務外のメンタル面が対象ですが、OJTは業務上の人材育成制度であるように、サポート範囲に違いがあります。

また、OJTと対比する教育制度としてOff-JTがありますが、「Off the Job Taninng」の略であり、業務外で主に集合研修などの教育が該当します。Off-JTはインプット、OJTはアウトプットであり、これらはセットで行われるトレーニングです。

メンター制度が重視される背景

メンターが重視される背景

新卒社員の3年以内の離職率は概ね3割程度で推移していますが、内閣府の調査によると、若者の初職の最も重要な離職理由は「仕事が合わなかったため」が23%と最も多く、次いで「人間関係がよくなかったため」が10%(特集 就労等に関する若者の意識|平成30年版子供・若者白書(全体版))との結果となっています。

「仕事が合わなかったため」については、企業としてはキャリア形成のために経験させるジョブローテーションであったとしても、新人に意図が伝わっていなければ離職につながる可能性があります。

また、「人間関係がよくなかったため」については、先輩社員などが自身の職務に追われ、教育やフォローをする時間がないなどで、新人が人間関係に不安を感じる可能性があります。

これらのことから、キャリア形成や人間関係に対する不安を取り除く、新人定着の取り組みとして、メンター制度が重視されています。

メンター制度のメリットや留意点

ここでは、メンター制度のメリットや留意点を説明します。

メンター制度のメリット

メンティーである新人は、メンターである先輩社員に相談や指導を受けて、悩みを解消したり成長する機会を得ることができる一方、メンターである先輩社員は、メンティーより相談を受けることで自らを省みて自己成長につなげることができます。

会社としては、新人の早期離職防止を図れるほか、メンター制度でフォローを受けた新人が先輩社員となったときに、次の新人をフォローしていくという好循環が生まれ、会社全体として社員自ら新人をフォローする組織風土が形成されるメリットがあります。

メンター制度の留意点

メンター制度は、職場外の先輩社員がメンターとなるため、制度開始時点ではメンターとメンティーの信頼関係がないことが多くあります。

そのため、信頼関係を構築していくことが肝要です。そのため、例えばメンターとメンティーがお互い対等の立場で自己紹介をしあうなど、相互理解の場を設けるなども考えられます。

また、一般的には新人と年齢が近いほうが望ましいといわれていますが、年齢にとらわれ過ぎると制度運営に支障が生じることがあります。年齢の近い先輩社員は、職務上時間が取りにくい、普段会う機会を設けにくい、なとで適切なフォローができなかったり、メンターとして役割を果たす時間がないなどで、制度運営ができないケースがあります。

このため、年齢にとらわれすぎず、フォローのしやすい方をメンターとしたほうが運営上望ましいといえます。

そのほか、メンターに過度な負担がかからないように留意してください。メンター自身が職務が多忙でフォローにあたることができず、新人が相談できずに辞めてしまうということを避けるためにも、メンター選定の際には、メンター候補者の職務状況等も加味するよう心がけてください。

採用活動への影響

採用活動への影響

採用業務に携わっている人事担当者にとってはお馴染みの内容ですが、求人票を提出するとき、または求人情報を公開する際に、原則としてメンター制度の有無を所定の様式に掲載する必要があります。次に説明しますので、参考にしてください。

求人情報におけるメンター制度の記載

近年、若年層の早期離職問題が問題視されていることなどを背景に、若者の雇用促進等を図り、その能力を有効に発揮できる環境を整備するため、「若者雇用促進法」が2015年7月に公布され、同年10月から順次施行されています。

その定めのうち、新卒入社段階での雇用のミスマッチによる早期離職を解消する目的で「求人時の職場情報の開示」が2016年の求人活動より義務化されています。

その項目として次の5項目のうち、1項目以上の情報提供が必要ですが、様式としては「制度の有無」を選択する形式となっているため、事実上、5項目すべての情報を公開することが原則となります。

〇職業能力の開発・向上に関する状況」の5項目

  1. 研修の有無及び内容(具体的な対象者や内容)
  2. 自己啓発支援の有無及び内容
  3. メンター制度の有無
  4. キャリアコンサルティング制度の有無及び内容
  5. 社内検定等の制度の有無及び内容

青少年雇用情報シートの書き方のポイント

このことから、メンター制度など新卒社員の相談体制がない会社は、求職者から選んでもらえない状況がこれから加速化していくと考えられます。

メンター制度の助成金制度

メンター制度を新たに導入すると、助成金の対象になる可能性があります。助成金を受給できる基準がありますので、助成金受給を想定している場合には、条件に合う導入手順、制度設計が必要です。次にポイントを説明しますので、参考にしてください。

助成金制度の内容

メンター制度の助成金は、最大で72万円の受給額となります。

対象の助成金制度は「人材確保等支援助成金」といい、事業主が、メンター制度などの雇用管理制度の導入等による雇用管理改善を行い、離職率の低下に取り組んだ場合に助成することを目的としています。

主な助成金の内容としては、条件を満たしたメンター制度を導入し、「離職率の低下目標」を達成すれば57万円を支給、「生産性要件」を満たした場合は15万円を加算して支給されます。

・離職率低下目標の基準

※対象事業所における雇用保険一般被保険者の人数区分
人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

・生産性要件の基準

助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、次のいずかにあたることが条件となります。

  • その3年度前(※1)に比べて6%以上伸びていること
  • その3年度前(※1)に比べて1%以上(6%未満)伸びていること(※2)

(※1) 3年度前の初日に雇用保険適用事業主であることが必要です。また、会計期間の変更などにより、会計年度が1年未満の期間がある場合は、当該期間を除いて3年度前に遡って算定を行います。

(※2) この場合、金融機関から一定の「事業性評価」を得ていること
「事業性評価」とは、都道府県労働局が、助成金を申請する事業所の承諾を得た上で、事業の見立て(市場での成長性、競争優位性、事業特性及び経営資源・強み等)を与信取引等のある金融機関に照会し、その回答を参考にして、割増支給の判断を行うものです。

助成金制度の条件

助成金に制度の条件は、定められた実施期間内に所定の制度を新たに導入・実施し、目標を達成することです。

具体的な条件は、次の7つとなります。

  • 定められた要件を満たすメンタリング制度であること
  • メンターに、メンタリング知識を習得する外部講習を受講させること
  • メンターの外部講習受講費用を全額負担すること(賃金・交通費含む)
  • 面談方式のメンタリングを実施すること
  • 対象者へメンター制度の事前説明を実施すること
  • 同制度に関する費用等の内容を労働協約、または就業規則に明示すること

詳しい条件や支給までの流れは、支給までの流れを参考にしてください。

メンター制度の導入

メンター制度を導入するには、対象者の選定や制度設計などの対応が必要となります。ここでは、メンター制度の導入フローについて説明します。

導入フロー

メンター制度を導入するには、対象者の選定や制度設計などがありますが、その前提として、制度の目的を設定することが重要です。

メンター制度を導入する目的が新人の定着であっても、自社が達成したい具体的が何かによって制度の運用も変わってきます。

ここでは、こうした制度の目的設定から制度設計、組織への周知、メンターへの教育など、メンター制度導入のステップを参考に導入フローを説明します。

制度の目的設定

自社のメンター制度導入をするに至る背景から、具体的な制度の目的を設定します。

新人の定着率向上が最終的な目的であっても、個別具体的な制度の目的はさまざまです。例えば、新人と既存社員とのコミュニケーションに問題があるのか、新人に教える組織風土がないことに問題があるのかなどによって、制度の運用が変わります。

「新人と既存社員とのコミュニケーション」の解決が目的であれば、新人から既存社員に相談しやすくするための教育などを盛り込む、「新人に教える組織風土を醸成する」ことが目的であれば、既存社員への教育指導に対する教育や先輩社員自ら新人の指導にあたる意欲を醸成する仕組みを導入するといったことが考えられます。

このように、自社がメンター制度を導入する目的を明確にする必要があります。

制度の構築

目的設定のうえで、次のような制度骨子を決定していきます。

  • メンティーおよびメンターの選定
  • 制度の期間、およびメンタリングの頻度・回数・実施時間
  • メンタリングの実施場所・金銭等の援助・実施報告・教材などの整備

メンターの設定がポイントであり、近い立場でメンタリングするという点から、基本的にはメンティーに近い年齢が望ましい面がありますが、メンターに過度な負担がかかることなどが想定されるのであれば、運営上、柔軟に対応したほうが望ましいです。

また、メンターの選定方法として、指名制や応募制などがありますが、自社の状況に合わせて検討してください。

なお、教える組織風土を醸成する目的であれば、できれば応募制を検討してください。自身が新人のときにメンタリングを受けた者は、概ね、後輩にもメンタリングをしてあげたいという意欲が醸成されることが多く、この好循環が「教える風土」を醸成していくことが期待できるからです。

メンタリングの報告なども頻度を多くしてしまうと、運営上、面倒になってしまい、形骸化することもありますので、ある程度まとめて提出する、メンタリングの都度の報告は最小限に留めるなども考えられます。

また、メンターとメンティーの信頼関係を醸成することが重要であるとお伝えしていますが、例えば、メンターとメンティーの食事会の補助をするなども有効な手段のひとつです。

【TIPS】メンタリングシートの作成について

メンタリングの面談事項をワークシートにすることによって、より効果的なメンタリングが可能になります。

例えば、事前に新人が相談したい事項などを記載しておき、面談時には、メンター・メンティーの双方の気づきや次回面談までの課題や目標を記入するなどです。できれば、制度管理者に都度提出させることが望ましいですが、メンター・メンティーに過度な負担がかかるならば、管理をメンターに任せることなども考えられます。

これによって、具体的なメンタリングが実施できますので、ぜひ参考にしてください。

また、面談中、メンターが退職のサインを感じ取った場合は、メンティーの承諾を得てメンティーの上司、または人事部門に相談するなどフローを決めておくことも有用です。

メンタリングシートの帳票イメージ例
メンタリングシートの帳票イメージ例

制度の周知

メンター制度を運用するには、各上司などの制度理解が不可欠です。とくにメンターが職場外である場合、メンターの上司としては職場外のメンティーのために部下が時間を費やすことになることから、メンタリングの制度の重要性・必要性を十分に理解してもらうことが肝要です。

このステップを踏まないと、メンター制度への協力を得ることができなくなりますので、必ず実施してください。

メンターへの教育

メンター制度を実施するにあたり、メンターへの教育は必ず実施してください。具体的には、メンター制度の必要性や内容、コーチングなどのコミュニケーション・スキルなどが教育の内容になります。

とくにメンターには、質問や傾聴によって自分で気づかせる「コーチング」と指導である「ティーチング」の違いを十分に理解してもらいメンタリングにあたるよう指導してください。

ティーチングによって単に指導されて行うときと、コーチングによってメンティーが自分の考えで行うときでは、コーチングによった場合の方がやらされ感がなく、高い意欲をもってメンティーは主体的に行動できます。

そのため、ぜひコーチングの概念を教育してください。

自社だけでコーチングスキルを教育することは難しいと思われますので、その場合は、コーチングの基本事項だけでも教育することをお勧めします。なお、前述した助成金受給をする場合は、外部講習が必須となっていることにご留意ください。

【基本的な考え方】

  • メンターはメンティーに質問や傾聴をする。相槌や共感することで、積極的な傾聴を行い、信頼関係を構築する。
  • 直接的な指導はせず、相手に気付かせるように質問を繰り返す、または違う角度で質問を行う。
  • 解決策を考えさせるにあたっても指導ではなく質問をすることで、解決策を考えさせる。(困難な場合は、適宜、ティーチングに切り替える)

また、次のようなことを心構えとしてメンターに教育し、メンタリングを実施してもらうとより効果的です。

【メンターの心構え(例)】

  • 年齢、肩書き、立場などは抜きにして、一緒に働く仲間として、新入社員との信頼関係を構築する
  • 信頼関係構築のため、新入社員からの情報を聞きだすのみではなく、まずは、メンター自身の話をすることも肝要。
  • 信頼を得るには、一方通行ではNG。

メンター制度をうまく活用して、若手社員の定着に取り組みましょう

メンター制度の重視される背景や制度内容、導入フローや助成金制度について説明しました。

企業の将来を担う若い人材を中長期的な視点で育てることは事業成長には不可欠ですが、少子高齢化が進展するなか若年層の早期離職問題が顕在化しているように、若年層の早期離職防止は企業として重要な課題です。

日本メンター協会では、ワーク体験などを交えたメンター制度の無料説明会(メンター制度説明会・メンター養成開講座)を実施していますので、参考にしてください。

本記事を参考に、自社の目的にあったメンター制度を導入し、新人の定着率向上に取り組みましょう!

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人事ZINE 編集部

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