長年大手ナビサイト掲載が主流だった新卒採用の手法も、近年では多様化してきています。
背景には、アベノミクス以降の売り手市場において求人広告を出して待っているだけでは人材の確保が難しくなってきたことがあります。そうした状況の中でより活用が進んできた手法の1つにスカウトメールがあります。
今回は、スカウトメールが何かというところから、効果が高いスカウトメールの特徴を例文付きでお伝えしていきます。
目次
スカウトメールとは
これまでの大手ナビサイトが、求人広告を掲載してエントリーを「待つ」手法とするなら、スカウトメールはデータベースから自社がターゲットとする学生を抽出し、その層に直接ダイレクトメッセージを送ることで応募を促していく「攻める」採用手法となります。
近年のような売り手市場の中では、待っていても十分な母集団形成ができないという課題感の中で、待っているだけではなく企業側からアプローチができる手法として注目されている手法となります。
スカウトメールの種類
スカウトメールは、大きく以下の3種類に分類されます。以下では順番に解説します。
- オープンオファー
- 条件一致オファー
- 完全一致オファー
オープンオファー
対象者の条件を絞らずに、同一内容のスカウトメールを一斉送信する方法です。学生ごとにメール文面を変更する必要がないため手間がかかりませんが、反応が得られにくいというデメリットもあります。
条件一致オファー
経験やスキル、年齢や居住区など、自社のターゲット像と条件が一致する学生をピックアップし、オファーを送る方法です。プライベートオファーともいわれます。ピックアップの手間はかかるものの、オープンオファーよりも反応は良くなります。
完全一致オファー
複数の採用条件が一致する学生に対して、面接確約など特別な条件を付けて送るオファーです。学生の持つ属性に合わせて個別メッセージを作成する手間はかかりますが、高い確率で応募や採用につなげることができます。
スカウトメールが効果的なケースとは
ピンポイントにターゲットを絞ってアプローチができるスカウトメールですが、どのような場合に活用すると効果的なのでしょうか。
なるべく早く採用を決めたい場合
ある程度条件の一致する学生にスカウトメールを送るため、書類選考の手間などを省くことが可能です。また、通常の採用活動よりも応募や採用につながりやすいことから、「●日までに○人採用したい」など、具体的なゴールが決まっているときにも活用できます。
採用基準が厳しく母集団形成が難しい場合
専門職の募集で特殊な技能が必要、高い語学力が求められるなど、採用基準が厳しいため母集団形成が難しい場合もスカウトメールが有効です。条件のマッチする人材からの応募を待つよりも、ピンポイントで企業から接触を図る方が、効率的に選考を進めることができます。
企業の知名度が低い場合
求人サイトは数多くの登録企業と横並びに比較されるため、中小企業や地方企業は埋もれてしまいがちです。スカウトメールを活用すれば、自社を知らない学生とも接触機会を持つことができます。
スカウトメールをコピぺではなく、求職者に個別化して送ることによるメリット

このデータは各年度の学生が、ナビサイトからエントリーした企業の認知時期を調査したものです。学生のエントリーの約半数は就活を始める前から知っていた企業に集まっていることがわかります。
このように、学生からのエントリーを待つだけの手法では、学生認知に課題を持つBtoB企業や認知があっても業界イメージと異なる学生を求めている企業にとっては出会うことができない層が存在しました。
そもそも企業や大学は毎年採用活動に関わるものの、学生にとっては初めて社会に触れる機会になるという人も多く、かつ短期間で内定を取らなければならないとなると、どうしても知っている企業に応募が集中しがちです。
スカウトメールは、待っているだけでは自社に気づいてくれなかった学生に自社のことを知ってもらうチャンスとなります。だからこそ学生に気づきを与える内容が大切になります。
何十という企業にエントリーをしてエントリーシートで落とされる経験をしている学生にとって、「自分を見てくれている」と感じるスカウトを受け取ると、全く知らない企業や興味を持っていなかった業界の仕事を知るきっかけになります。
新卒特化型のスカウトサービスOfferBoxによると、77%が当初の志望業界と異なる業界に就職をしていることが分かりました。
その要因も、スカウトによって学生が当初その業界に対して持っていたイメージが変わっていることの表れと言えそうです。
候補者に刺さるスカウトメールの特徴
スカウトを受け取った学生に気づきを与え、自社に振り向いてもらうにはどんなスカウトメールを送る必要があるのでしょうか。学生に伝えるべき大事なポイントは次の2つです。
自社の魅力の訴求
学生に自社を受けたいと思ってもらうために、自社で働くことに対する魅力を伝える必要があります。
短絡的に考えると「初任給の高さ」や「年間休日」「3年以内離職率」などよく聞く項目を飾ろうとしがちかと思いますが、それだけが企業の魅力というわけではもちろんありません。
組織や人事の課題解決をコンサルティングするリンクアンドモチベーション社は、企業の魅力は大きく次の6つに大別できるとしています。
- 目標の魅力:組織の目指しているものを、その目標に共感し共に目指したいと思う
- 仕事の魅力:自分が好きでやりたいと思い、やりがいを感じる仕事・活動ができる
- 風土の魅力:組織の文化や風土が自分に合っている
- 待遇の魅力:納得のいく給与や休日休暇、福利厚生などの権利を受けられる
- 上司の魅力:この人の元で働きたいと思う
- 職場の魅力:日々業務を一緒に行うメンバーに対し、共に働きたいと思う
面接や説明会などの各段階で効果的に、自社で働くことに対する魅力を伝えられるように工夫しましょう。
個人に対してスカウトをした理由
- 学生の自己肯定感が上がる
- 自分とのマッチング、入社して活躍するイメージを持ってもらえる
つい、自社のアピールポイントを伝えることに気が向きすぎておろそかにしがちなのが、特に重要なことが「なぜあなたにスカウトを送ったのか」という理由です。
このメッセージによって学生はスカウトメールを送ってくれた企業に対して、自分がそこで働いているイメージを持つことができるかが決まり、元々興味のなかった業界であっても知ってみようという態度変化を起こします。
また、長らく新卒採用の市場は、学生が大量のエントリーを送り、それに比して大量にお祈りという形で企業から断られ続けるような仕組みになっていました。その結果、何度も否定されることで自己肯定感を下げてしまう学生も多いです。
そうした中で、「他でもないあなただから」と必要とされていると感じられるという点で、学生も自信を持って素の自分で会いに行こうという前向きな気持ちになってもらうこともできます。
スカウトメールの例文
それでは上記の要素を踏まえて、スカウトメールの例文をご紹介します。
例1:営業職種のスカウト
- 〜〜をやってきたあなただから
- 自社の〜〜で望む成長ができる とか
まずは新卒の特に文系の採用で募集の多い営業職採用のスカウト事例です。
こんにちは。株式会社◎◎の人事担当◯◯です。
〜オファーした理由〜
プロフィールを拝見し、特に〜〜が素晴らしいと思いました。
技術営業職は、お客様の要望をお聞きし、技術提案・設計・現場スタッフへの指示・出荷管理まで行うため、各部署との連携やお客様のニーズを汲み取ることが必要です。
あなたの、〜〜の力で、お客さんとも社内のメンバーともうまく連携をとり信頼を築けるのではないかなと思い、オファーしました!
すこしでも興味を持って頂けると嬉しいです!
〜企業の説明〜
弊社は東日本No.1の〜〜〜を目指している、創業から〜年の会社です。
普段の生活では直接目にする機会は少ないかもしれませんが、私たちが作った製品は◎◎・◎◎などの基礎となり、社会インフラを支えています。
◎高度な技術と多種多様性な商品を当社では扱っています!
私たちは「〜〜なら(自社名)」という〜〜における代名詞的存在を目指しており、提案内容の多様なのも特徴の1つです。
この技術力や商品の多様性をお客さんにアピールし、要望を具体化するのが当社の技術営業の仕事です。
◎私たちは「東日本No.1の〜〜」という目標を掲げ、社員一丸となって取り組んでいます。
その結果、現在は独立系の〜〜会社の中で上位に位置し、目標達成まであと少し!!
〜クロージング〜
弊社の目標達成のため、そしてさらなる高みを目指す仲間に、あなたも加わって頂けると嬉しいです。
ぜひオファーを承認いただき、弊社の働き方や業務内容・やりがいなどを詳しくお伝えできればと思います。
承認後は、個別で説明会の日程を調整致します。
あなたに当社のことをしって頂く場ですので、気軽にお越し下さい。
お会いできることを楽しみにしております!
こちらの企業は、募集職種は営業ですが、日々図面設計など専門性が高い技術的な業務に携わるため、理系人材の採用をしたいと思っている企業の例です。
そのためオファーについては営業ながらも技術的な側面が必要なことや、その業務の中でどんなコミュニケーションが必要とされるか具体的に落とし込んで伝えています。
また、自社を希望してくれるように、その技術がインフラに深く関わっていて日々の生活に欠かせない点や、独立系の◎◎会社の中で上位のシェアで、東日本でNo1を目指しているなど、社会的意義や事業の安定性を訴求しています。
そして会社の雰囲気に合った方に響くように、すこし真面目そうに書いてます。
結果として、オファー変更前と比較して、オファー承認率がアップし、そこから個別面談への接触にも繋がります。
例2:業界イメージにギャップがある候補者へのスカウト
ここでは、企業課題として、企業が求めている人材と学生が抱く企業イメージにギャップがある事例を紹介します。
食品メーカーの企業でありながら、医療分野の専門性を持つ学生に送るオファーの例を紹介します。
はじめまして!◎◎株式会社の医薬部門での採用担当をしております〇〇です。
〜オファーした理由〜
今回あなたのプロフィールを拝見致しました。
〇〇の研究をされていらっしゃるんですね!
研究内容、非常に興味深く読ませて頂きました。
「◎◎(ブランド名)」ときくと食品のイメージをお持ちの方が多いですが、
実は当社では医薬品類の製造や販売も行っております。
あなたの〇〇の研究や研究に向き合う姿が当社の事業と通じるものがあり、是非当社の医薬・化成品部門の仕事を知ってほしいと思いオファーを送りました。
少しでも興味をもち、あなたの進路の選択肢の1つに入れて頂けると嬉しいです。
〜企業の説明〜
約△年前に創業した当社では、◎◎づくりから微生物研究を始め、医薬品の開発にまで発展を続けております。
◎◎の経験と技術を生かし、医薬品・医薬原料・診断薬・バイオ関連商品の製造・販売を行い、更にアメリカ、ヨーロッパ、アジアなどグローバルに展開しております。
〜クロージング〜
是非一度直接お会いしてより詳しい仕事内容をお伝えしたいので、まずはオファーの承認をお願い致します。
承認後は【このオファーをお送りした方限定で、個別での面談】を行います。
あなたと当社の相互理解の場ですので、緊張などせずにおこし頂ければと思います。
それでは、あなたにお会いできるのを楽しみにしています。
企業課題としては、企業が求めている人材と学生が抱く企業イメージにギャップがあり、この例では食品メーカーでありながら化学系の専門性を持つ学生を採用するターゲット設定をしています。
そのためのスカウト文として、まずターゲットとする学生のプロフィールのうち、何が自社の求めているポジションに合うのかを伝えています。まず、食品メーカー志望の多い農学系などだけでなく薬学や化学系の学生が活躍する場があることを提示しています。
その結果、理系のターゲット学生からのオファー承認率も高い水準に至りました。
スカウトメールを成功させるポイント
効果の高いスカウトメールを送るポイントとしては、ポジティブなワードを盛り込むことを意識するとよいでしょう。
営業職のスカウトメールであれば、「残業なし」「有休消化率高め」「幹部候補」など、IT系であれば「フレックス勤務」「リモート」「経歴ではなく成果で評価」など、職種ごとに反響を得やすいキーワードを盛り込みましょう。特に、件名や文章冒頭など目につきやすい場所にこれらのワードを記載すると、開封率も高くなります。
反対に、ネガティブな印象を与えるキーワードは避けるべきです。例えば、早く採用したいからといって「大量採用」「学歴不問・未経験歓迎」といった訴求をしてしまうと「誰でもいいのかな」という印象を与えてしまいます。スカウトメールは「あなただからスカウトを送った」という特別感が大切ですので、言葉選びには十分注意しましょう。
まとめ
スカウトメールは、これまでの待ちの手法とは真逆で、自社に合うと思える方に企業側からアプローチできる攻めの手法です。
だからこそ、テンプレートな内容ではなく、送る相手個々に寄り添った内容で、「あなただから」と伝えるのが重要となります。
つまり、企業側が自社のアピールポイントを一方的に伝えるものではなく、学生と企業のマッチングを図るためのだという考え方です。
上記の例文でも、まず冒頭で学生のどこに惹かれたのかを提示すると同時に、しっかり学生の記載しているプロフィールを読み込んで向き合っていることを伝えています。そして自社の仕事を紹介する上でも、その中のどういった分野でスカウトを送った学生が活躍できると思っているのかを明確に伝えています。
自社にマッチする学生としっかり出会っていくためにも、ぜひこうした点を念頭に置いてスカウトメールの内容を工夫してみてください。