オヤカクの意味とは?背景や企業側が実施する4つのステップと注意点
新卒採用において、親は学生本人にとって信頼できる相談相手であり、親の意見や考え方が最終的な会社選びに影響するケースもあります。また、親が会社の情報を知りたかったり、疑問・不安を感じていたりするケースも多く、企業側は学生本人だけでなく、親のフォローも検討したい状況です。
このようななか重要になるのが「オヤカク」(親確)です。オヤカクを適切に実施することで、認識のギャップや内定辞退のリスクを減らし、自社が求める人材を着実に確保することが可能です。
本記事では、オヤカクの意味や現状、背景といった基礎知識をおさらいしたうえで、オヤカクを実行するステップや注意点を詳しく解説します。
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目次
オヤカクとは?基本的な3つのポイント
オヤカクの基礎知識として、その意味、現状、背景について詳しく解説します。
オヤカクの意味
オヤカク(親確)とは、内定を出した学生の親(保護者)に対して、企業側が入社の承諾を確認する取り組みです。
学生本人・親・企業側の三者で認識の相違が生じたり、内定辞退につながったりしないように、親に対しても確認・説明を行います。具体的な方法としては、親向けの説明会や個別面談、手紙の送付など、さまざまな形が考えられます。
特に、就職活動の最終段階で唯一の入社先を決めるという重大な決断においては、親の意見・理解も重要な要素であることが多く、「オヤカク」は企業の採用活動において無視できない取り組みです。
オヤカクの現状
リクルート就職みらい研究所「保護者が知っておきたい就職活動に関するデータ」によると、「保護者との関わりでよかったこと」として、「積極的に就職に関する情報を集めたり、教えたりしてくれた」(9.7%)という声があり、保護者が積極的に就職活動に関与する動きがあるだけでなく、学生側がそのことをポジティブに捉えていることも分かります。
その他には以下の声が挙げられていました。
- 保護者、社会人としての意見をくれた:29.9%
- ESや課題等の添削等アドバイスをしてくれた:8.5%
- 面接の練習等につきあってくれた:4.1%
このような調査結果からも、保護者の存在は学生本人にとっても決して小さくないことが分かり、企業側は「オヤカク」に取り組む必要がある状況です。
出典:リクルート就職みらい研究所「保護者が知っておきたい就職活動に関するデータ」
オヤカクが行われている背景
オヤカクが必要とされる背景には、学生が就職活動において親の意見を信頼し、相談するケースが多いことが挙げられます。前掲のリクルート就職みらい研究所の資料でも示されていたように、学生が就職先を選ぶ際に親の意見が重要視されている動きは、企業にとって無視できません。
山口県立大学「学生の就職活動に関する保護者の意識について」によると、子どもが選んだ企業や職業に対して親が賛成する割合は、「自分が知っている大企業」「国家公務員」「地方公務員」で7割から8割と高い一方で、「自分の知らない中小企業」「設立間もないベンチャー企業」では、賛成率は39.1%と16.3%にとどまりました。
このことから、大企業に比べて知名度が低い中小・中堅企業やベンチャー企業では、親に対して企業の魅力や安心感を伝える取り組みが必要な可能性があります。学生だけでなく親にも情報発信することが、認識の相違の解消や内定辞退の防止につながる状況なのです。
出典:山口県立大学「学生の就職活動に関する保護者の意識について」
「オヤカク」を実行する際のステップ
オヤカクを効果的に実行するためには、計画的かつ段階的にステップを踏むことが不可欠です。ここでは、学生の価値観や志向を理解し、それをもとに親へアプローチするための具体的なステップをご紹介します。
学生の価値観や志向を理解する
まずオヤカクを進めるうえで不可欠なのは、「学生が就職に対してどのような価値観を持っているか」を理解することです。学生が重視する項目は、職種、企業規模、給与、働き方、成長機会など、多岐にわたります。採用担当者は、経験・勘だけで判断するのではなく、リサーチや学生との直接的なコミュニケーションのなかで、個々の志向を把握する必要があるでしょう。
当社i-plug「どうなる?25卒・26卒 新卒採用 市場動向調査レポート(春版)」で学生に「どのような企業に魅力を感じますか?」と質問した際の回答は以下の通りでした。
出典:株式会社i-plug【2025年卒対象】就職活動状況に関するアンケート(有効回答数:1,031件)
「人間関係」「待遇」は定番ではありますが、その他には「成長できる環境がある」「教育・研修に力を入れている」といった回答も目立ち、学生のなかには将来のキャリアパスや成長性を気にする人が多いということが分かります。
こういった学生の志向を把握したうえで採用活動に臨むと、学生に響くメッセージを届けやすくなります。また、親に対しても、大切な子どもを預かるうえで説得力・信頼感のある説明がしやすいでしょう。
親の考え方や関わり方を知る
オヤカクを進めるためには、学生だけでなく、「親がどのような意見を持ち、就職活動にどのように関わっているか」を把握することも不可欠です。
前述のデータにもあるように、親は大企業や公務員といった安定・安心のできる選択肢に賛成する傾向が強い一方で、中小企業やベンチャー企業に対しては慎重な姿勢を見せる傾向があります。まずはこういった一般的な傾向を把握することも重要でしょう。
また、親の関わり方にはさまざまなパターンがあり、それを理解することも重要です。多くの場合、親は「本人の意志や判断を尊重したい」と考えており、就職先の決断は本人に委ねる傾向があります。しかし、同時に「会社説明会や親向けのイベントには積極的に参加し、企業の情報を自ら収集しておきたい」と考える親もいます。これは、「親が本人の決断を尊重しつつも、企業の信頼性や将来性を自分自身で確認したい」という姿勢の表れです。
このように、親の会社選びに対する考えや、就職活動への関わり方をできるだけ把握することが、オヤカクにおいては欠かせません。
親の理解を得るための施策を検討する
次のステップとして、親が抱える不安や疑問を把握し、それに対して適切な施策を進めることが重要です。特に、企業の規模や安定性、将来性といった要素に対して懸念を抱く親は少なくありません。こういった不安を解消するためには、企業の実態や取り組みを分かりやすく伝える必要があります。
例えば、企業案内のパンフレットや採用サイトを充実させ、親が知りたいと感じる情報を提供する施策が有効です。具体的には、事業内容や将来の展望、福利厚生、先輩社員の声など、親が安心して子を預けられると感じられるような情報を発信することが求められます。
親に直接訴求をする
さらに、親に直接訴求する取り組みも重要です。
主な方法は、親向けの手紙の送付や会社説明会などです。手紙で内定者の採用理由や企業のビジョンを伝えると、丁寧な印象を持ってもらいやすく、親の理解・信頼を得やすくなります。また、親向けの説明会や面談会を開催するなど、率直に意見交換ができる場を設けると、より信頼感を高めやすいでしょう。
その他には学生本人がインターンシップ・社内見学会に参加した際の様子・感想を、写真・動画も交えて共有するという手もあります。こうすることで企業と学生の関係性や本人の熱意を理解してもらいやすくなる可能性があります。
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オヤカクを実施する際の注意点
オヤカクを進めるうえでは、学生本人と親の双方に配慮しながら、適切な対応を行うことが重要です。以下に、実施時の注意点を詳しく解説します。
学生本人・親の双方の意見に配慮する
会社選びは学生本人の意思が大切であることは間違いありませんが、親の意見にも配慮することが求められます。学生の希望と親の希望が必ずしも一致するとは限らず、双方にそれぞれの意見・背景があります。そのため、企業側が一方的に意見を押し付けるような態度を取らないことが重要です。
企業側がすべきなのは、学生や親が抱える不安要素を理解し、それを払拭するための説明を行うことです。また、「学生の希望と親の希望が自社でどのように実現できるのか」を丁寧に説明することで、信頼関係を築きやすくなります。学生と親の双方に寄り添い、共感するスタンスを貫くのがポイントです。
メッセージの一貫性を保つ
企業のビジョン・ミッションやカルチャーについて、学生・親の双方に一貫したメッセージを伝えることは、信頼の獲得につながります。これらの情報は、各部署や担当者間で共有し、学生・親へのメッセージにブレが生じないように徹底しましょう。
なお、採用ブランディングの観点からも、「企業としてどのような人材に来て欲しいのか」「どのような基準で人材を選んでいるのか」「どのような環境・キャリアパスを提示できるのか」を事前に整理しておくことが欠かせません。こういったポイントは、オヤカクの際だけでなく、新卒採用の企画段階で練っておくと有効でしょう。
適度な対応を意識する
オヤカクの過程では、親に納得してもらうためとはいえ、過剰な営業的アプローチを避け、適切な距離感を保つことが求められます。過度な接触は、学生本人や親にプレッシャーを与える要因になりかねないため、対応のバランスが重要です。
必要な情報を提供しつつも、最終的な判断は相手側に委ねる姿勢を企業側が示すのが理想的です。親に直接連絡する場合も、学生の意思を尊重することを前提に行います。一方で、親の不安や疑問に対しては、迅速かつ適切に対応し、信頼感を損なわないよう注意しましょう。
このように、適度な距離感を保ちながら、相手のニーズに応える対応が求められます。
まとめ
オヤカクは、学生本人・親と企業側が相互理解を深めて信頼関係を構築するための重要な施策です。オヤカクを進める際は、学生と親の価値観・志向や「親が就職活動にどのように関わっているのか」を把握したうえで、親の理解を得るための施策を丁寧に進める必要があります。企業側がオヤカクに取り組むにあたっては、メッセージの一貫性の確保や適度な距離感を保つといった姿勢が重要です。本記事の内容を参考に、ぜひ採用活動に取り入れてみてください。
人事ZINEでは、人事・採用担当者の方に向けて「【内定者フォロー編】人事なら知っておきたい採用基礎知識まとめ」をご用意しております。採用活動は内定を出せば終わりではなく、最終的に学生に入社してもらい、現場で活躍してもらう道筋をつけることも役割です。そのためには、計画的に内定者フォローを実施することが欠かせません。本資料では、内定者フォローの概要や実践的なノウハウを盛り込んでおります。内定者フォローを実施するにあたってヒントをお探しの担当者の方は、ぜひご活用ください。