【オファー型の採用手法と理系学生の相性を考察】母数の少ない理系学生に企業はどうアプローチするべきか?
どこの企業も人材不足で採用に苦戦する現在の新卒採用事情。特に元々の人数が少なく、新卒採用市場で見つけづらい理系学生は見つけ出すのにも一苦労。
1999年度をピークに理系学生の減少傾向が続く一方で、理系人材のニーズは今なお拡大しており、理系学生の獲得競争は年々激化しています。
「自社のニッチな事業に合う機械系学生が見つからない。」
「自社から近い地方の大学に自社の事業に合う専攻が無い。」
「中途でも獲得が難しいITエンジニアを新卒から育てたいけど大手に取られてしまう。」
こんな風に頭を抱えている企業さんも多いのではないでしょうか。
今回は、新卒採用市場で母数が少なく、自社が求める人材の採用が極めて困難な理系学生の採用手法の考え方についてお話します。
また人事ZINEでは、理系学生の採用を成功させる上で重要なポイントをまとめた資料をご用意しました。現状分析を踏まえ、採用フェーズ別に解説しています。ダウンロードしてご活用ください。
目次
理系学生の採用は何故難しい?【母数が少ない上に探し出しにくい】
企業にとって理系学生の採用が困難である要因としては、下記の3つが挙げられます。
- 理系学生はもともと母数が少ない
- 理系学生は新卒採用市場に現れにくい
- 自社が求める理系学生を探し出すのは難しい
①理系学生はもともと母数が少ない
理系学生は文系学生に比べて圧倒的に母数が少なく、需要に対しても人材が不足しています。(一般に理系:文系=3:7とされています)
また一口に理系学生と言っても、様々な分野や専攻に分かれているため、自社の事業に必要な理系学生となると、その母数はさらに少なくなります。
例えば、下記のような理系学生層は特に人口が少なく、採用に苦戦しやすいのではないでしょうか?
- 機電系(機械工学・電子工学)
- 建築・土木系
- ITエンジニア・データサイエンティストなどの特別な職種に適性のある学生
(1) 機電系
「機電系が採れない!」と頭を抱える企業は多いと思いますが、「機械系」「電子系」と言っても実際にはもっと細分化されており、同じ研究グループでも1人1人が異なった研究テーマに取り組んでいることも珍しくありません。
機電系の学生は研究主体の学生生活であるだけに「ニッチな研究テーマだけど活かせる企業はあるかな?」「できれば研究活動を活かせる環境で仕事がしたい!」と、就職先でも専攻分野や研究内容を活かしたいと考えつつも、その研究の忙しさから「就活に費やせる時間があまりない」「企業研究がじっくりできない」という悩みを持っているようです。
(2) 建築・土木系
理系学生の中でも機電系よりもさらに母数が少ないカテゴリーとなるのが建築・土木系の学生です。
大学によっては工学部の中に建築・土木学科を開講していないところがあり、特に地方では人材の確保に苦戦している企業が多いです。
また、大学では施工管理や測量といった現場で即戦力となりそうな実務実習よりも、材料学や構造力学、水理学、計画学など建築・土木工学の学術的な基礎から重点的に学ぶため、学生自身が専攻分野を活かせる仕事や企業を把握しきれていないという課題もあります。
(3) ITエンジニア・データサイエンティストなど特別な職種に適した学生
ITの技術発展やサービスの普及、拡大により、銀行やメーカーなどIT企業でなくてもあらゆる業界でIT人材が求められるようになり、拡大し続けるIT市場に対して、ITエンジニアは圧倒的に不足しています。
また近年比較的新しい職種であるデータサイエンティストは、専攻科目としてデータサイエンスを直接学べる大学が少なく(※)、企業が大学名や学科名から学生を検索しにくい職種です。
※2020年現在、国公立大学では滋賀大学、広島大学、横浜市立大学、九州大学の4校のみ。
ITエンジニアやデータサイエンティストに必要なスキルであるプログラミング・情報処理・数理統計学などは、情報系学科やデータサイエンス専門学校でなくても、自主的に学んでいる学生も増えてきているため、新卒採用においては、単純に学部や専攻のみで絞らずに、必要なスキルを持つ学生、もしくは育成次第で将来的に活躍を見込める基礎知識を持った学生を全国から探し出してこなくてはなりません。
その場合「ITエンジニアやデータサイエンティストの卵となる学生はどこに存在しているのか」「どのようにアプローチをかければいいのか」が次の大きな課題となります。
②理系学生は新卒採用市場に現れにくい
学部3年次の後半以降、研究活動のコアタイムに追われる理系学生は、長期的に就職活動に割く時間を確保しづらいです。
また、修士・博士課程への進学、学科推薦の利用、研究員として大学に残る、共同研究企業への就職といった選択肢もあるため、新卒採用市場に現れる理系学生はさらに少なくなります。
③自社が求める理系学生をピンポイントで探し出すのは難しい
もともと母数が少ない上に、新卒採用市場に顔を出さないまま進学や就職先が決まってしまう人もいる理系学生。そこからさらに自社が求める人材を探し出すのは決して簡単ではありません。
理系学生の母集団形成の手法には「理系特化型の就活サイトの利用や就活イベントへの出展」「大学とのパイプライン作り」「地方での説明会」などがよく挙げられますが、その中に自社が求める人材が存在しているのかどうかは目星をつけることが難しく、むやみに採用活動をしても空回りに終わってしまう可能性もあります。
理系学生の獲得に悩む企業の採用手法の考え方【母数が少ないからこそ事前に絞る】
母数が少ない学生層に対する採用手法には、「ターゲットの幅を広げてアプローチする」という方法と「ターゲットをさらに絞って少ない候補者にアプローチする」という方法があります。
理系学生の採用手法を考える場合、まず「本当に理系学生が必要なのか?」というところに立ち返ってターゲットを見直すところから始めてみましょう。
理系学生じゃなくても活躍できる可能性は十分にある【なぜ自社は理系学生が欲しいのか?】
まず「自社が必要としている理系学生はどのような人材か?」を考える前に、「なぜ自社は理系学生を必要としているのか?」「本当に理系学生でなければならないのか?」を整理してみましょう。
例えば、現状、自社が情報工学系の理系学生を必要としている場合、下記のような疑問を繰返して最低限必要な採用基準を導き出してみましょう。
- なぜ今、情報工学系の理系学生が必要なのか?
- 情報工学系のどの部分(知見・スキル・経験)が必要なのか?
- それは情報工学系の学科を卒業していないと実現できないことなのか?
- 職務の遂行に情報技術者資格(FEやAP)は絶対に入社前から必要なのか?
- 入社後の育成によって将来(3~5年後)の活躍が見込めないか?
前述したように、近年は情報工学系を専攻していなくても、それこそ文系でもプログラミングを自主学習する学生が増えてきています。これは外国語学部を専攻していなくても自己啓発として語学学習をする学生がいるのと同様のことです。
情報処理学やプログラミングに関する興味・自己啓発、また論理的思考ができればよいのであれば、情報工学系の理系学生だけに絞らず、採用基準の幅を広げることもできます。
逆にその分野の知見がある理系学生を採用したとしても、その人のスキルや人格が自社の実現したいことに繋がらなければ、将来的にあまり活躍できない可能性も考えられるわけです。
まずは、「将来的に(3~5年後に)どういう人材になってどのように活躍することを期待するか?」という目標設定を行い、現在自社の同じポジションで活躍している入社3~5年目の社員がどういう人材であるか(その人の能力や性格、成果を生み出している要素)を分析して、採用基準を見直してみましょう。
このように、入社後の育成も含めて最終的にその目標が達成されるのであれば、無理に理系学生を採用する必要がないという選択肢があることも理解しておきましょう。
自社が必要とする理系学生を獲得するには?【企業から学生を探し出して候補者を少数に絞る採用手法】
上記の検討の結果、「やはり自社は理系学生を優先的に採用していかなければならない」という結論に至った場合には、その次のステップとして自社が求める理系学生を獲得するための採用手法を考えていきましょう。
母数が少なく、新卒採用市場に埋もれがちな理系学生を採用するには、企業側が主体的に動いて学生を探し出すことから始めなくてはなりません。
また探し出した理系学生が自社が求める人材であるかどうかを見極めるには、個々の学生とじっくりコミュニケーションを取り、学生のことをよく理解することが重要です。
いくら理系学生が希少な人材であるからとは言え、手あたり次第に「理系」というだけで人数だけを集めても採用に繋がるとは限らず、またその大勢の候補者と個別に密なコミュニケーションをとることは、採用活動に費やせるリソースから考えても現実的ではありません。
自社が求める理系学生を採用するには、企業からターゲットとなる学生に積極的にアプローチして、事前に候補者を少数に絞り込めるような採用手法を選ぶのが理想的です。
母数の少ない理系学生にも効果的にアプローチできるオファー型の採用手法「ダイレクトリクルーティング」
企業が理系学生に最初の接触をはかる手法としては、「大学内の就活イベント(学部別や理系限定も有り)」「研究室訪問」「OB派遣」などが挙げられ、狭いターゲット(ニッチな研究内容や地元の大学)が具体的に決まっているのであれば、これらは企業が学生にアプローチする手法として非常に有効です。
さらに近年では「ダイレクトリクルーティング」という採用手法も、理系学生に対して効率的かつ効果的にアプローチできる採用手法として注目を集めています。
これらの理系学生に対する採用手法に共通しているのは、企業から学生に接触する「オファー型」の採用手法であるということです。以下詳しく説明します。
理系学生に対する従来のアプローチ:オファー型に近い採用手法
理系学生に対して従来から実施されている「研究室訪問による学科推薦」や「OBのリクルーター派遣」も、実はオファー型に近いアプローチと考えることができます。
「自社の事業と相性が良さそうな学部」や「自社に必要となる人材がいるであろう研究室」に目星をつけて訪問し、学科推薦という形で大学にオファーをかけて面接を受けてもらうのです。
企業と学生の間に、大学の就職課や教授の推薦状などを挟んでいるので直接的なオファーとは言えませんが、前もって企業から学生にアプローチするという意味ではオファー型に近い採用手法であると言えます。
企業と大学、もしくは研究室や教授との間で既に友好なパイプラインができている場合は、研究内容と自社の事業との関係性も把握しやすく、また学生からしても大学や研究室、先輩を通じてオファーを受けることで、就職先として安心感を持ってその企業と接することができるでしょう。
逆に、企業がこれまで関係を持っていなかった大学に新規で参入することは難しく、関係性を築くにしても時間を要します。
また、目星をつけた先に欲しい人材が存在しているとは限らず、候補から外した大学に本当に求めていた人材がいる可能性もあることを留意しておきましょう。
新しいオファー型採用手法「ダイレクトリクルーティング」は理系学生との相性が良い
一方で、新しいオファー型の採用手法である「ダイレクトリクルーティング」は、企業が主体となって学生を探し出し、欲しい人材に直接オファーをかける「攻めの採用手法」です。
企業は学生の人材データベースを見て、直接学生にコンタクトを取ることができるため、従来の研究室訪問やリクルーター派遣に比べて効率的で、網羅的に各大学へ足を運ぶ必要がありません。
大学や教授を通して学生を採用することに比べると採用コストは高くなりますが、事前に候補者を絞り込むことができるため、個々の学生と濃密なコミュニケーションを取りやすくなり、企業と学生の相互理解を深めることにより一層尽力できるでしょう。
また、ダイレクトリクルーティングサービスに登録している理系学生は、ダイレクトリクルーティングのコンセプトを理解しており、「自らをアピールして企業に見つけ出してほしい」「今の研究活動を活かせる企業があれば話を聞きたい」という意識を持っている可能性が高いです。
「企業研究の時間が十分に取れない」「ニッチな研究内容でも可能なら活かしたい」と考えている理系学生にとって、「企業からオファーが届く」「研究活動を企業に深く知ってもらえる」ダイレクトリクルーティングは、母数の少ない理系学生にこそ相性の良い採用手法と言っても過言ではないかもしれません。
理系学生のニーズをとらえて企業と理系学生の双方が納得できる採用活動を目指しましょう
母数が少なく新卒採用市場にも現れにくい希少な理系学生を採用するには、企業自らが学生を探し出してオファーをかけて濃いコミュニケーションを重ね、深く理解し合うことが重要です。
ただ、企業が理系学生の採用に苦戦していると同時に、理系学生にも「研究活動が忙しくて企業研究に時間を割けない」「これまで注力してきた研究を評価して欲しい」という悩みやニーズがあることを忘れてはいけません。
企業は「自社に本当に必要な理系学生はどういう人材であるのか?」を明確にして最適な採用手法を選択するとともに、「その自社が必要とする理系学生は就職先の企業に何を求めているのか?」を深く追究し、企業と理系学生の双方が納得した上で入社してもらえるような採用活動を目指しましょう。
こちらの記事では、弊社が運営する新卒ダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox(オファーボックス)」を活用して理系学生の採用に成功した事例を紹介しています。ぜひご覧ください。
専門性のある理系学生を採用したい企業様には、こちらの資料がおすすめです。採用フェーズ別にポイントを詳しく解説していますので、自社の理系採用にぜひお役立てください。