初めて新卒採用をする企業に伝えたい。目的の言語化、できていますか?

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新卒一括採用の是非、今後就活ルールはどうなるのか、どの就活イベントに出ようか、今年の就活SNSの流行りは何だろう、と新卒採用にまつわる話題は尽きません。

また、広報、選考、内定と採用活動のスケジュールがある程度決まっており、中途採用と比べて何かと制約の多い新卒採用ですが、御社は「何のために新卒採用を行うのか?」をじっくり考えたことはありますか?

概して、新卒採用の目的には下記がよく挙げられます。

  1. 戦力の安定化・人員バランスの最適化
  2. 企業文化の継承・風土づくり
  3. 将来のリーダー・経営幹部候補となる人材の確保
  4. 組織の活性化・フレッシュな社風の保持

ここまでは、新卒採用を担当されていれば、一度は目を通したことがある方も多いのではないかと思います。

しかし、ただ「なんとなくわかった。」で終わっていませんか?

上記4点は、概論的な表現にとどまっており、人事の業務を遂行する上でも目的達成となる具体的な指標が見えにくいため、「なんとなく」の理解でスルーしてしまうのも無理はないことかもしれません。

そこで今回は、新卒採用についてもう一歩踏み込んだ理解をするため、「新卒採用の目的」をテーマとして、人事ZINE編集部が新卒採用アドバイザーとして活躍している小野さんにインタビューをしてきました。

株式会社i-plug
新卒採用アドバイザー 小野 悠

株式会社リクルートキャリアで3年半、中途採用アドバイザーとして勤務。その後はファーストキャリアの重要性を感じ、2018年4月に株式会社i-plugに入社。関西圏を中心に介護やIT業界まで幅広い企業300社以上に対して、新卒採用の支援を行う。YouTubeチャンネル「新卒採用アカデミー」の立ち上げを行い、ネットを通じて採用担当者の方向けにお役立ち情報を発信中。

また、新卒採用の目的やメリットだけでなく、企業の採用活動を成功させるためにやるべき「新卒採用の目的の明確化とその方法」についてもお話をしていただきました。

この記事は、

  • 新卒採用の担当になったばかりの方
  • 今まで中途採用だけだったけど初めて新卒採用に踏み切る企業の担当者の方

に特にご参考になるかと思います。

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新卒採用による「組織の活性化」とは?|「人を育てる力」や「思考や行動の言語化する習慣」が身につく

編集部

本日は、よろしくお願いします。冒頭に挙げた新卒採用の目的ですが、読むと「なるほど」と思えるのですが、概念的・抽象的に感じてしまう部分もあります。
例えば「新卒採用によって組織が活性化されている」って具体的にどんな状態なのでしょうか?

小野さん

新入社員の周りの人間に「人を育てる力」がつくところかなと思います。これは私自身がよく感じることなんですが、何も知らない人に仕事を「ちゃんと」教えるのって結構大変で、、、ずっと同じメンバーで仕事をしていると「あうんの呼吸」で仕事が回ってしまう部分も出てくるんですよ。
コミュニケーションコストも下がりますし、仕事の効率化という点では良い面もありますが、一方で思考やアイデアもマンネリ化されて新しい価値観を見落としてしまいやすいんですね。
でも新人が入ってくると「言わずもがな」とか「わかってくれよ」というのは通用しません。
自分たちがやっている仕事や事業の戦略を、誰でもわかるようにちゃんと言語化して伝えたり教えたりしないといけない場面が必然的に増えます。
そうすると今まで無意識にやっていた職務を改めて自覚することができるし、当たり前だと思っていたことに対して「変化の必要性」に気づいたりします。これまで学生だった新卒社員特有の新しいアイデアや斬新な発想を受け入れやすくもなりますよね。
新卒採用で定期的に新人が入ってくると、単純に平均年齢が下がるからというだけでなくて、こういった「人を育てる」「思考や行動を言語化する」といったことが「フレッシュな社風を保つこと=組織の活性化」に繋がっているのかな、と思います。
こちらもピリっとしようというか、自分たちももっと成長しないと、っていう「下からの突き上げ感」もあって、「会社組織そのもの」だけじゃなくて周囲にいる「社員」にもメリットが大きいと感じています。

編集部

確かにこれは新卒採用ならではというか、中途採用では実現しにくいですね。

小野さん

中途採用でも新人は新人ですが社会人経験はありますし、部署や入社のタイミングも揃ってないですからね。
企業が「自社に合った人材」を一気に採用できるのはやはり新卒採用の良いことだと思います。

「一気に」というと人数的な意味で?

小野さん

「1つの採用基準で、まとまった人数を、一度に、かつ定期的に獲得できる」という意味でです。
中途採用は来る人材も時期もバラバラですし、ポジションによって企業が見るべきポイント(採用基準)も変わります。さらに人材不足で競争も激化しているので、中途採用で「自社に合った人材」を獲得するのは今すごく難しいんですよ。
新卒採用でも、もちろん一人ずつしっかり見て選考を進めますが、複数人あるいは大勢に対して一定の採用基準が設定されていますよね。
それに中途採用だと競合の動きも見えにくいですが、新卒採用では「よーいドン!」で競合と戦えるわけじゃないですか。各企業で新卒採用に対する課題はあるかと思いますが、中途採用と比べて課題をはっきりさせやすく、戦略も立てやすいです。
今は新卒も中途も人材確保の競争は激しいですが、それでも新卒採用市場は少なくとも数十万人の学生が一度に就職を目指すわけで、安定して人材を確保するのに適した市場だと言えます。採用計画通りの人数を確保できるかどうかは企業の採用力によりますが。
一方で、中途採用市場は景気による流動性が大きくて、人材確保のチャネルとしてはとても不安定なんです。
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「新卒採用は何のために行う?」曖昧な目的では人材供給も企業戦力も安定しません

編集部

では、できる限り人材供給は新卒採用を基準にして、どうしても確保できなかった分を中途採用で埋めるというイメージですか?

小野さん

いえ、それは違います。新卒採用と中途採用の目的はそれぞれ異なりますので、「本来は」、切り離してそれぞれ採用計画通りの人数を確保するべきです。

編集部

「本来は」というと、その計画通りにいかない状況もあるということでしょうか。

小野さん

例えば、新卒採用で計画予定の人数を確保できなかったけど、どうしても今すぐ「人数」が必要なポジションがあって、「中途を募集するしかない!」っていう状況があったとします。
でもそれって最初から「新卒である必要性がない」と思いませんか? 極端な話、本当に単純に「数」だけが必要なら、新卒でも中途でも、もしかするとアルバイトでもいいかもしれない。
なので、そういう状況が発生した時点で、まず採用計画を見直さないといけないんですよね。
新卒採用に「戦力の安定確保」「企業文化の継承」「組織の活性化」といった明確な目的があるように、中途採用にも然るべき目的があるはずなんです。
例えば、新しい分野に進出するにあたって「業界の知見を持つ経験者」が必要で、社内にそのような人材がいない場合は、当面は社外からその人材を見つけ出して自社に採用しないといけないですよね。
ベンチャー企業など事業を立ち上げてすぐの時や、事業が拡大路線上にある時は、どうしても「今すぐ活躍してくれる人材」が必要になります。

編集部

その拡大路線が落ち着いてくると、「新卒採用」で戦力を安定化させる方向に切り替える?

小野さん

そうですね。企業の戦力を安定化させるために人材供給のチャネルを「今すぐ活躍してくれる人材を獲得するための中途採用」から「将来的に活躍できる人材を育てるための新卒採用」へ切り替えようと検討するケースは多いです。
ただし、「戦力の安定化」という目的があるのであれば、できる限り一定の人数を毎年安定的に採用しないといけないですよね。
そのような状況で新卒が計画通りに採用できないと「やっぱり人数が足りないから中途採用でなんとか乗り切ろう」という発想になりがちです。それを頻繁に繰り返していると、そもそもの目的である「戦力の安定化」をいつまで経っても達成できなくなるんです。仮にその場でなんとかなったとしても根本的な課題解決にはならないですよね。
ですので、「何のために新卒採用を行うのか?」という目的をまず明確にしておくことが重要です。その目的によって新卒採用活動の方向性や注力するポイントも変わってくるはずなので。

編集部

新卒採用と中途採用で補い合おうとしている時点でまだ目的が曖昧なのではないか?と。

小野さん

はい。年々、新卒採用の人数が大きく変わる企業はまだ事業が安定していないのかな……という印象を持ってしまいます。

自社の事業戦略の実現に向けた「新卒採用の目的」の明確化【まずは自社をよく理解すること】

編集部

今まで中途採用しかやっていなくて、初めて新卒採用を実施するという企業にお伝えしたいことはありますか?

小野さん

今お話しした通り、まずは新卒採用の目的を明確にすることに尽きると思います。
さらに補足しておくと、新卒採用か中途採用かを考える前に「なぜ今自社は採用活用が必要なのか?」という「採用そのものの必要性や目的」に立ち返って考えてみてほしいです。
  • 今自社がどのような状況にあって、設定した目標を実現するには何が必要か?
  • ゴール(目標)にたどり着く、あるいはゴールに近づく手段の1つが「人材採用」であるとして、どのポジションにどんな人材がいつまでに何人必要なのか?
  • この事業が今のペースで拡大していったら、将来的にどこの人材が不足しそうか?

小野さん

といった自社の経営ビジョンや事業計画の目標から逆算して採用計画を立てていく感じです。
「今やっている採用活動は、自社の事業戦略のこの部分を実現するためにやっているんだ」という明確な目的が最初にわかっていると、さっき挙げたような「今年は中途採用で乗り切ろう」みたいなことも起こりくくなりますよね。
ただただ目の前の「今ここが足りていない!」を繰り返して、毎年中途採用頼みになってしまって「あれ?新卒採用に切り替えていくんじゃなかったっけ?」となっては本末転倒です。

編集部

まずは自社の事業戦略や方向性を把握するところから「新卒採用の目的」を明確にする。

小野さん

はい。新卒採用の人事は20,30代の若い人が担当することが多いのですが、特にその方々には「まずは自社のことをよく理解しよう!」と伝えたいです。
「自社で活躍するって具体的にどういうことなんだろう?」「自分で伸ばせる力ってなんだっけ?」と自問自答してみる。そしてここでも必ず「言語化する」というのをやってみてほしいです。
言語化することで、まず目的が明確化され、社内共有も促進される。さらに1つ1つの考えや行動の背景や動機まで言語化して整理し、チーム内で共有する習慣をつけておくと、採用計画の方向性に一貫性を保ちやすく、目的を見失いにくくなります。

編集部

ありがとうございます。今回お話を伺っていて感じたのは、あらゆる場面での「行動や思考の言語化」の大切さですね。「新卒採用の目的」を自社で設定するためにものすごく重要だなあと。

小野さん

そうなんですよね。「新卒採用の目的はこうだから!」という、既存の概念ありきでの採用活動ではなくて、まずは「なぜ新卒採用を実施するのか?」を自社の採用チームで自問自答してみる。
さきほども言いましたが「今やっている採用活動は、自社の事業戦略のこの部分を実現するためにやっている」といったことを人事は常に意識することが大事だと思います。この「採用活動の目的の明確化」を最初にしっかり行っておけば、あとは具体的な採用活動に落とし込んでいくだけなので。

編集部

その「目的の明確化」であったり、目的からブレの無い「一貫性のある採用活動」を行っていく上で、「思考の言語化」が重要になってくるというわけですね。

小野さん

はい。自分の思考を整理できますし、施策に対する1つ1つの考えやその動機も筋が通ったものになるので、自分の行動にも自信がもてるようにもなると思います。
採用担当者さんにとっても大切ですが、ビジネス全般でも大切な考え方になりますので、人事以外の部署の方も是非やってみてください!

最後に

新卒採用アドバイザーとして、今も新卒採用の課題に寄り添って採用現場をサポートし続ける小野さんのインタビュー。いかがでしたでしょうか?

「なんとなく理解しているつもりだけど…」というどことなくモヤモヤ感のあった「企業戦力の安定化」や「組織の活性化」などの抽象的な表現を、具体的な現場のイメージに落とし込めたのではないかと思います。

さらに「何のために新卒採用を行うのか?」「今自分が取り組んでいる採用活動は、事業戦略のどの部分を実現するためにやっているんだろう?」といった行動や思考の目的を深堀りすることの大切さについてもお話いただけました。

「採用活動はこうであるべき!」という既存概念を一度白紙にして、今一度「自分たちは何のために採用活動をしているのか?」の自問自答(言語化)を繰り返し、自ら「採用活動の目的」を導き出してみてはいかがでしょうか。

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人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部

人事・採用担当者の悩みに寄り添うメディア「人事ZINE」の編集部です。 人事・採用に関する役に立つ情報や手法を発信します。 就活生の3人に1人が利用する新卒採用オファー型サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供する株式会社i-plugが運営しています。