リスキリングとは?リカレントとの違いや企業事例、ポイント5つを紹介

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昨今、DX時代に適応する人材を育てるための手法として、リスキリングが注目されています。「リスキリングのメリットって何?」「どのように実施すればよいの?」といった疑問を抱えている人事・管理担当の方も多いのではないでしょうか。

リスキリングについての知識が整理できれば、自社の課題に合った適切な実施が可能になるでしょう。そこで今回の記事では、リスキリングの意味やメリット、導入する手順、効果的に実施するためのポイントなどを幅広く解説します。

また、デジタル人材を育てるためには、リスキリングのような教育も重要ですが、採用手法を工夫する必要性もあります。ダイレクトリクルーティングは求める学生に自らアプローチできるため、DX人材の確保にもおすすめです。

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目次

リスキリングとは?

リスキリングは、職場における能力の再開発を指す単語です。DX時代の到来が叫ばれている昨今、リスキリングは企業にとって欠かせないものとなっています。ここでは、リスキリングの定義や背景、国内外での取り組み状況などを解説します。

経済産業省によるリスキリングの定義

経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」で用いられた資料(リクルートワークス研究所 石原直子氏)によれば、リスキリングの定義は以下の通りです。

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること

海外では既に浸透しつつある概念ではありますが、近年では日本国内でも注目されるようになり、政府も推進を呼びかけています。

リスキリングが必要とされる背景

リスキリングが必要とされる大きな背景は、DX時代の到来です。DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略であり、デジタル技術を駆使した企業活動を指します。ただしこれは一般的な解釈であり、必ずしも明確な定義が定まっているわけではありません。

DXが企業に浸透する、つまりデジタル技術が広く導入されることによって、業務の効率化・生産性の向上が期待できます。また既存の技術では創り出せなかった、新しい価値・新しいサービスの創出につながり、イノベーションのきっかけにもなるでしょう。

DX時代で優位に立つためには、企業に属する従業員全員が、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)などの技術に精通しているのが理想です。企業全体でDX時代に立ち向かっていくために、今回の記事で紹介するリスキリングが必要になります。

「リスキリングは大企業限定なのか?」と考える人もいるかもしれませんが、中小企業にもリスキリングは必要です。特に中小企業は、「意思決定のスピード」「コンパクト性」など大企業にはない強みがあるため、リスキリングで得たスキル・知識と組み合わせた戦略を構築できます。

リスキリングをめぐる動向

リスキリングをめぐる動向は、国内と海外で異なるため注意が必要です。ここでは国内事情と海外事情の2つに分け、それぞれの特徴を解説しながら両者を比較します。

国内の取り組み状況

日本国内におけるリスキリングの浸透状況は、海外の先進諸国に比べて遅れている状況です。しかしながら企業での取り組みも少しずつ見えてきている段階であり、これからどうなっていくのかが注目されています。

取り組み事例に関しては後に詳しく紹介しますが、富士通は「ITカンパニーからDXカンパニーへ」というメッセージを提唱し、リスキリングを最重要課題に挙げています。企業だけでなく政府もリスキリングを推進しており、少しずつ取り組みが進んでいる状況です。

海外の取り組み状況

海外の取り組み状況は、日本国内よりも進んでいます。こちらも後の項目で取り扱いますが、リスキリングの先駆者といわれているのが、アメリカの多国籍コングロマリットの持株会社であるAT&Tです。

AT&Tは、2020年までに10万人のリスキリングを実行するプロジェクトを、2013年に実施しました。日本国内でリスキリングというワードが知られる前から、海外ではDX時代に対応するための計画が多数打ち出されています。

リスキリングと類似用語との違い

リスキリングの類似用語としてよく知られているのが、「リカレント教育」と「アンラーニング」そして「生涯学習」です。ここではそれぞれの特徴を整理し、リスキリングとの違いを解説します。

リスキリングとリカレント教育との違い

リスキリングとリカレント教育との違いは、「仕事と並行しながら実施するかどうか」です。リカレント教育は、一旦仕事から離れて、大学や専門学校などの教育機関で学ぶことを指します。またリカレント教育は、多くの場合、「従業員が自主的に別のスキルを学ぶ」といった性質を持ちます。

リスキリングの場合は、仕事から一旦離れるのではなく、業務と並行しながら必要なスキルを身につけていきます。従業員の自主性よりも、「企業側の取り組みによって学んでもらう」といった性格が強い手法です。

リスキリングとアンラーニングとの違い

リスキリングとアンラーニングとの違いは、「知識やスキルを取捨選択することが主軸になっているかどうか」です。アンラーニングは学習棄却と呼ばれる手法であり、新しいスタイルを取り入れる傍ら、「不要になったスキル・知識を捨てる」といった意味合いが強くなっています。

一方でリスキリングは、学習棄却のように「捨てる」のが主軸になっているのではなく、新しい環境に適応するための知識やスキルを「獲得する」のが主な目的です。

リスキリングと生涯学習との違い

リスキリングと生涯学習との違いは、「学びの範囲」です。生涯学習は、生涯にわたって培われる学びであり、仕事に直接必要なものからそうでないものまで多種多様なのが大きな特徴となっています。

文部科学省の文部科学白書(令和2年度)の第3章「生涯学習社会の実現」には、生涯学習の概要が記載されています。生涯学習は、単なる職場での学習にとどまらず、ボランティア活動やスポーツ活動なども内容に含む概念です。

企業が社員のリスキリングを実施するメリット

企業が社員のリスキリングを実施するメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。ここではそのメリットを、3つのトピックに分けて解説します。

業務効率化・生産性向上が期待できる

リスキリングを実施するメリットとしては、業務効率化や生産性の向上が挙げられます。リスキリングは、特定の従業員に再教育を施すのではなく、企業全体で実施するものです。

リスキリングで学習した内容を、それぞれの従業員が日々の業務に生かせば、効率的に活動を進められるでしょう。そして、業務効率化・生産性向上によって、企業と従業員双方の満足度が高まります。

自社のリソースで対応できる部分が増える

自社のリソースで対応できる部分が増えるのも、リスキリングの代表的なメリットです。例えばデジタル技術を駆使する業務をするために、外部のリソースを活用するケースがあります。

しかし外部の人材は、自社の既存事業に精通しているわけではないため、馴染むのに時間がかかります。そこで、リスキリングを実施した自社の人材を割り当てれば、新しい知識・スキルを遺憾なく発揮してもらえるでしょう。

組織としての強度が上がる

組織としての強度が上がるのも、リスキリングのメリットです。例えばリスキリングを継続的に実施していれば、社内に「主体的に新しい知識を獲得していこう」といった風潮が自然に定着していきます。

主体性を持って業務に取り組んでくれる従業員が増えるため、「今までになかったアイデア」が生まれやすくなる環境になり、イノベーションの創出につながる可能性があります。

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企業がリスキリングを導入する手順

企業がリスキリングを導入する手順は、4つのステップに分かれているため、おおまかな流れを整理しておきましょう。ここでは、各工程の概要や注意点を解説します。

ステップ1.事業内容や事業戦略に応じて何を学ぶかを決める

まずは、事業内容や事業戦略に応じて、何を学ぶかを決定しましょう。リスキリングの学習内容は多様であり、企業によって習得すべきスキルや知識が異なります。適切なリスキリングを実施するためにも、自社の分析は必須です。

例えば小売業でリスキリングをする場合、単にデジタル情報技術に関する知識をつけるだけではなく、具体的なツールに使い慣れる必要があります。eコマースに対応している端末の使い方など、その企業ならではの学習内容を考えましょう。

リスキリングで重要なのは、ただ学ぶだけではなく、それを実際の業務で活用できるようになることです。何を学ぶかを決定できれば、ひとまずこのステップは終了し、次にプログラムと教材を考えます。

ステップ2.研修プログラムと教材を決める

学習内容を決定したら、それを身につけるための研修プログラムと教材を決めましょう。研修プログラムは、より効率的にリスキリングを実施するためのものです。これも学習内容と同じく、企業によって大きく異なります。

研修プログラムを決めたうえで、その教材(コンテンツ)を選びます。例えば紙媒体のものから、Web上で使えるものなど、その種類はさまざまです。社内で開発する方法もありますが、外部リソースを活用するケースも珍しくありません。

ここで気をつけたいのは、あくまで自社の方向性に合った教材を選ぶことです。例えばクオリティの高い外部コンテンツは魅力的ですが、自社の課題とマッチしない可能性もあります。ここでも自社の分析が重要になるでしょう。

ステップ3.プログラムを実施する

学習内容を決定し、研修プログラムと教材が用意できたら、実際にプログラムを実施しましょう。何度か触れているように、リスキリングは一部の社員に対して実施するものではなく、企業全体で取り組むものです。そのため、全社員を対象にプログラムを実施します。

プログラムを行う際に意識したいのは、その実施時間です。例えば就業時間中にあらかじめ時間を決めておいて、一体となってリスキリングに取り組む方法があります。しかし全員が同じ時間にプログラムを実施すると、「まだあの仕事が終わっていないのに」といった不満を抱える人も出てくるでしょう。

そのため一斉にプログラムを行うのではなく、好きな時間に個別で実施してもらう方法もあります。「リスキリングは従業員の貴重な時間を割いてもらって学習してもらうもの」という視点を忘れないようにし、時間を決める際は、従業員の意見も参考にするようにしましょう。

ステップ4.リスキリングで学んだ内容を実践する

プログラムが実施できたら、リスキリングで学んだ内容を実践し、日常の業務に活用します。どれだけ質の高いプログラムを受けたとしても、それが普段の業務に生かされないのであれば、単なる「勉強会」で終わってしまいます。社内で試せる機会があれば、積極的に実践してもらうようにしましょう。

リスキリングで学んだ内容を実践したら、それがどのように業務に活用できたのか、振り返りの時間を作ってみるのも重要です。「どのように生かせたのか」「どのような課題があるのか」を明確化することで、さらに新しい学びの機会を得やすくなります。もちろん従業員の自主性も重要ですが、モチベーションの維持や学びやすい環境の確保など、企業側でできる努力もなるべくしていきましょう。

企業がリスキリングを効果的に実施するためのポイント

企業がリスキリングを効果的に実施するためのポイント

企業がリスキリングを効果的に実践するためには、いくつかのポイントに気をつける必要があります。ここまでの話をまとめる形で、リスキリングを実際する際のポイントを、5つのトピックに分けて解説します。

リスキリングで期待できる効果を整理しておく

まずはリスキリングで期待できる効果を整理しておきましょう。なぜかというと、どのような効果があるかを理解しておくことで、リスキリングの目的が明確になるからです。目的の明確化は、より効果的なプログラムの実施に役立ちます。

例えば「何となくこれからはDXの時代が来るから、リスキリングをしておこう」と軽い気持ちで始めてしまうと、プログラムの策定などはもちろん、従業員のモチベーションの維持も難しくなるでしょう。

リスキリングで期待できる効果は、先ほどのメリットの項目でおおまかにまとめています。リスキリングによって得られるものが整理できていれば、「業務効率化・生産性向上を目的にリスキリングを実施しよう」というように、明確な目標を設定したうえでプログラムを進めていくことが可能です。

モチベーションを維持するための仕組みを整える

従業員のモチベーションを維持するための仕組みを整えるのも忘れないようにしましょう。リスキリングは就業時間なかに行うケースが多いため、続けているうちに、「リスキリングではなく自分の仕事を進めたい」と考える人もいます。

そうなればリスキリングに対するモチベーションは下がる一方です。インセンティブを用意したり、リスキリングの成果を目に見えるように工夫したりすることで、モチベーションが維持できるようになるでしょう。

企業の一部ではなく全員が実施することを心がける

この記事では何度か触れていることですが、企業の一部ではなく全員が実施することを心がけましょう。例えば従業員のなかには「自分はIT分野の人間じゃないから、研修プログラムを実施しても意味がない」と考えている人もいるかもしれません。

しかしリスキリングは、新しい時代に適応するために、企業全体で取り組まなければならないものです。質の高いプログラムを作るのも重要ですが、従業員のモチベーション管理、特にリスキリングに対する偏見を払拭するための取り組みも必要になるでしょう。

従業員の声を聞きながら継続的に実施する

従業員の声を聞きながら継続的に実施するのも重要です。リスキリングは一度やって終わりにするのではなく、継続的に行うことで効果を発揮します。スキルや知識を定着させるために、粘り強く実施しましょう。

継続的に実施するためには、従業員の声を取り入れるのも重要です。例えば「プログラムの内容を修正した方がよいのではないか」「プログラム実施の時間を変更した方がよいのではないか」など、従業員のフィードバックを参考にすると、より効果的にリスキリングを実施できます。

社外のリソースも選択肢に入れる

教材の話でも少し触れましたが、全て社内のリソースだけで解決しようとするのではなく、社外リソースも選択肢に入れるようにしましょう。例えばデジタル技術に関する基礎知識を学ぶために、教材をゼロから開発するとなると、高いコストがかかります。

全て自社で開発するのではなく、部分的に外部リソースを使うことで、効率的なプログラムの整備が可能です。もちろん外部のサービスを利用する場合は、自社の企業活動にマッチしたものかどうかをしっかりと見極めましょう。

リスキリングに取り組んでいる企業事例

ここでは、リスキリングの先駆者といわれるAT&TやAmazon、そして日本国内で積極的に取り組みを進めている富士通や日立製作所の事例を紹介します。

AT&T

AT&Tは、アメリカの多国籍コングロマリットで、通信業界の大手です。記事の序盤でも少し触れたように、リスキリングの取り組みをいち早く始めた企業として知られています。

1990年代から2000年代にかけてインターネットが台頭し、当時の通信業界は大きな変革期を迎えていました。そこで「新しい時代に適応できる人材を増やそう」と、早期にリスキリングを始めたのがAT&Tです。

AT&Tは、2008年の時点で「未来の事業に必要なスキルを持った人は半分しかいない」と危機感を強めており、2013年には「ワークフォース2020」を実施しました。10億ドルをかけて10万人のリスキリングを行う大きなプロジェクトとなっています。

Amazon

Amazonは、いわずと知れた巨大IT企業群であるGAFAの1つで、アメリカの多国籍テクノロジー企業です。Amazonもリスキリングの先進企業として知られており、積極的な取り組みを行なっています。

例えば2019年には、「2025年までに従業員10万人をリスキリングする」といった計画を発表しており、7億ドルが投じられる見込みです。10万人に対して7億米ドルなので、単純計算で1人あたり7,000米ドルが投資されることになります。

Amazonのプログラムの特徴は、技術職ではない従業員に技術職を担当してもらうなど、従業員の異動を通じてDX時代に対応しようという姿勢です。昨今のAmazonはAI事業にも力を入れているため、機械学習スキルを身につけるためのプログラムも充実しています。

富士通

富士通は、国内総合エレクトロニクスメーカーであり、通信システムや情報処理システムなどの分野に強みを有している企業です。DX企業への変革に力を入れており、「リスキリング」を重要課題と宣言しています。

富士通は企業のDX化、さらにそれを通じて顧客にさらなる価値を提供するために、「5年間で5,000〜6,000億円の資金を投じる」と発表しています。リスキリングは、そのプロジェクトにおける「内部強化」の項目の1つとして数えられています。

富士通の従業員数はグループ全体で約13万人となっていますが、その全ての人に「デザイン思考」「アジャイル」「データサイエンス」の講座を提供しています。今後、日本のリスキリングの取り組みを牽引する存在になるでしょう。

日立製作所

日立製作所は、日本国内の電機メーカーで、世界でも有数の企業として知られています。国内のリスキリングを話題にする際は、日立製作所も外せません。2019年には、グループの研究機関を統合し、「日立アカデミー」を設立しています。

同社はデジタル人材を育成するための会社であり、さまざまなプログラムを用意しています。日立製作所は、日立アカデミーを通じて、「グループ企業の全従業員約16万人を対象に、DX基礎教育の実施」という方針を発表しました。

日立アカデミーはIT人材育成や研修、人材育成のコンサルティングなどを行っており、外部にも教育を提供しているのが特徴です。昨今では、日立製作所やマイクロソフトのように、外部にリスキリングを提供する例も増えています。

まとめ:DX・専門人材の確保にはリスキリングと採用手法の工夫が効果的

今回の記事ではリスキリングについて解説しました。

DX時代に向けて、デジタル人材を育成するためのリスキリングは、もはや欠かせないものになっています。日本国内でも実施する企業が増えており、これからますます注目されるようになるでしょう。

デジタル人材を育てるためには、リスキリングのような教育も重要ですが、採用手法を工夫する必要性もあります。

ダイレクトリクルーティングは求める学生に自らアプローチできるため、DX人材の確保にもおすすめです。まだ、利用したことのない採用担当者の方のために、「はじめてのダイレクトリクルーティング〜新卒採用〜」の資料をご用意しました。

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人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部

人事・採用担当者の悩みに寄り添うメディア「人事ZINE」の編集部です。 新卒採用オファー型サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供する株式会社i-plugが運営しています。