【人事向け】書類選考での不採用の伝え方は?合否のポイントや注意点を解説
採用面接前にほとんどの企業が実施している書類選考。
近年は企業から求職者にオファーをかけてお互いを理解し合うカジュアル面談からスタートすることも増えてきましたが、いざ選考に進むとなると、やはり履歴書や職務経歴書、ポートフォリオなどの書類選考が行なわれるのが一般的です。
採用担当者になったばかりの方の中には、「実際のところ会ってみないと判断できないことの方が多いはずなのに、なぜどの企業も書類選考を行なうの?」と疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
- 書類選考では何をどこまでチェックすればいい?
- 書類選考での不採用理由は候補者に伝えた方がいい?
- 書類で通したのに、面接で不採用になるのを防ぐ方法はある?
- 不採用通知を出す際の適切な対応方法は?
今回は、上記のような「書類選考」に関する疑問を持つ方に向けて、書類選考の目的と不採用通知の方法について解説します。
目次
書類選考の目的は、採用に至る可能性が高い人を面接に繋げること
採用の選考過程において、本来は求職者1人1人と会って話をし、じっくりと見極められれば理想的です。
しかし、現実にはそこまでのリソースが無い企業が多いでしょう。そこで、採用に至る可能性が一定基準以上に高い人から面接をするため、ラインを引く目的で行われるのが書類選考です。
ですので、書類選考のミッションは「面接を実施する人数を絞ること」と「面接の必要性を事前に見極めること」となります。
前者は新卒や人気職種など応募数が一度に殺到しやすいケースに多く、1つの項目だけ見て合否を決める場合もあります。
一方、中途採用は随時募集していることが多く、職種や必須スキルなどで求職者が絞られることから、新卒ほど応募が集中することがなく、じっくりと求職者を見るケースが多いです。
新卒採用と中途採用で書類選考の重み付けが違うのは、応募者数の違いによる影響が大きいです。
企業にもよりますが、一般的に職務経験のない新卒の場合、仮に1人1人の書類にじっくり目を通すとしても、そもそも評価基準が少ない傾向にあります。
学生時代の経験も「バイトリーダーをしていました」「3ヶ月間海外留学をしていました」のような似通ったものがどうしても多くなりがちで、話を掘り下げていかないと素の実力や個人差が表れにくく、つまり書類に記載されている事実のみから判断できるものが少ないという特徴があります。
これに対して中途採用の場合は、履歴書のほかにも職務経歴書があります。募集職種と経験職種が同じだった場合、「仕事内容がどのくらい一致しているか」「どういう環境で力を発揮できる人なのか」など、さまざまなことを書面から判断することができます。
書類選考で不採用にする理由:合否を決める際に企業が見るべきポイントとは?
書類選考でどんなケースを不採用にするかは、企業が書類選考基準をどのように設定しているかによって異なります。
ただし一般的に、企業が求めているものと候補者がアピールしているものに共通点が多ければ多いほど、書類選考を通過させる確率は上がるでしょう。反対に、「読み手側に伝わったこと=候補者の伝えたこと」になるので、記述が多くても何が言いたいのかわからないような文章だと、書類の時点で不採用にせざるを得ません。
事実関係に矛盾があったり、誤字脱字や記載事項に不備があったりするなど書類から明らかに入社意欲が感じられないと判断できる場合も、内容以前に文章力で不採用にするケースはあります。
また、絶対に兼ね備えていて欲しいスキルがないなど「企業が求める人材」から大きくかけ離れているケースも、書類の時点で不採用にする企業が多いです。
逆に、例えばエンジニア職で使える人が少ない言語を得意としているなど希少価値の高いスキルを持っていて、さらには自社に必要なスキルである場合などは、書類に多少の誤字脱字があっても「どんな仕事ができるか面接で詳しく聞いてみよう」と判断されることもあります。
正直なところ、書類選考のみで自社が求める人材かどうか、つまり「自社に入社して活躍できるかどうか」判断するのは困難です。
必要とされる人材要素は、実際に会ってみないとわからない部分の方が多く、書類選考で判断できるのは、資格やスキル、経歴など、文字だけでわかる部分に限定されます。
したがって、「この項目がこれなら不採用」「このスキルを持っていないと不採用」というように、一律で合否の基準を決めていることが多いです。
選考書類では、求職者の年齢や学歴も知ることができます。学歴や年齢のみで合否を決めるか、それとも判断基準の1つに含めるかは企業によりますが、どの企業も学歴を見ていることは確かです。
この理由は大きく分けて2つあります。1つは単純に応募数が多い場合、志望動機や自己PR、職務経歴は個々の書類に目を通すだけでも時間がかかりますが、最終学歴だけであれば合否のラインを決めることができるからです。
もう1つは、自社の統計上、活躍している人材と学歴の相関性が高いことが、採用後の活躍や定着の結果として表れているケースです。
例えば、過去には書類選考で不採用とする基準に学歴を含めていなかったものの、”結果的”に面接を通過して採用に至った人の学歴が高い傾向にあった場合、書類選考の判断基準の1つとして学歴も含めるようにならざるを得ないでしょう。
書類選考での不採用理由を候補者にフィードバックするメリットはほぼ無し。リスクの方が大きい。
書類選考で不採用になってしまうと、候補者としては腑に落ちないこともあるものです。不採用の理由を候補者にフィードバックするべきか悩むという採用担当者の方もいるかもしれません。
しかし、面接の場合は不採用になった理由を伝えたり、評価をフィードバックしたりする企業はあるものの、書類選考の不採用理由を伝えることは、一般的にはありません。仮に書類で評価が低かったところをフィードバックしたとしても、候補者のためになるようなことが無いためです。
「弊社はこのスキルを絶対条件としているので」「文章から入社意欲が感じられなかったので」と候補者に伝えたとしても、候補者にとっては腑に落ちないことの方が多いのではないでしょうか。
候補者の今後のためになるのではなくむしろトラブルに発展するなど、不採用理由を伝えることには、高いリスクがあります。
そもそも、学歴や学部、年齢、住所(家賃補助が必要かどうか)などが決め手になったとは表立って言えないため、不採用理由は伝えられない事実も多いです。このことからも、企業が候補者に不採用理由を伝えるのは、避けた方が無難です。
ただし、企業と候補者の間に人材紹介会社・転職エージェントが入っている場合は、書類選考でも不採用理由をしっかりと伝えましょう。
人材紹介会社側に自社の採用基準がメモとして溜まっていけば、次に紹介してくれる人材が、自社が求める人材・自社に適しているであろう人材となる可能性が高まります。
企業としては、最初から合格の可能性の高い候補者が選考に来てくれた方がメリットが大きく、人材紹介会社としても、採用の決定率が上がります。
「書類選考の不採用理由を教えて欲しい」と言われたときの対処法は?
書類選考での不採用の理由は、基本的に伝えない方がよいとお伝えしました。しかし、候補者の側から、どうしても不採用理由を教えて欲しいと、強く求められる場合もあるかもしれません。そのような場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
そもそも、実際の不採用理由は、能力や年齢など、開示しにくい理由であることが普通です。また、企業側がどのような伝え方をしても、候補者側はなかなか腑に落ちないものです。
このため、具体的な不採用の理由は伝えず、「相対的な評価の結果」「方向性に相違を感じた」など、相手の気持ちに配慮した回答をするのが賢明です。
書類選考を採用計画に活かしていくには?社内の採用担当者全員との目線合わせが必要
前述のとおり、書類選考の目的の1つは「面接の必要性を事前に見極めること」です。
この精度を高めてるためには、「書類選考の担当者と現場の面接官の目線を合わせること」「判断基準をすり合わせること」が重要です。双方の目線を合わせ、判断基準を共有することで、「書類選考で通したのに面接で不合格になる」という確率を下げていくことができます。
書類選考も面接も同じ担当者が行い、その人の判断で合否を決めることができれば、書類選考を通過した人が面接で不合格になる確率を簡単に下げられるでしょう。しかし実際は、書類選考、1次面接、2次面接、最終面接で、それぞれ面接官が異なります。
このため、自社が求める人材を社内の採用担当の中でしっかりと共有しておくことが大切です。そして、それをまずは書面で判断できる項目に落とし込んでいきます。
その後は、「どんな人が採用に至って入社後に活躍しているか」「書類では通過させたものの面接で不合格になった候補者の共通点は何か」など、選考結果をふり返って書類選考の判断軸をさらにブラッシュアップしていきます。
これらのステップを繰り返していくと、書類選考の段階で「自社が求める人材」かどうかの見極めの確度も最大化できるでしょう。採用に至った人が持つ人材要素が、書面上のどの項目と深い相関性があるのか、統計的に見えてきます。
「書類選考はただの人数絞り、本当の見極めは面接から」と分離してしまわずに、非対面のゼロ次面接だと捉えて、社内の採用や選考に関わる全員で取り組みを進めていきましょう。
不採用通知に記載するべき内容
選考の結果、不採用とする候補者には、不採用通知を送る必要があります。不採用通知に記載するべき内容は次のとおりです。
- 求職者名
- 選考結果
- 書類の返却方法
- 応募してくれたことへの謝意
- 結びの挨拶
- 企業情報
不採用通知の文頭には、必ず求職者名をフルネームで記載します。名前を間違えると大変な失礼にあたるため、ミスがないように細心の注意を払いましょう。選考結果は、「不採用」と直接的な表現を用いるのは避けましょう。相手の気持ちを考え「採用を見合わせることになりました」「ご希望に添いかねる結果となりました」など、婉曲的かつわかりやすく伝わる表現を用いるのがベストです。
履歴書や職務経歴書などの選考書類の返却の有無や、返却方法も明記しておきましょう。選考書類には氏名や住所などの連絡先をはじめとした多くの個人情報が記載されているので、慎重に扱う必要があります。なお、大手転職サイトの調査では、約4割の企業が「返却している」と回答し、約3割の企業が「要望があれば返却している」と回答しました。
このほか、応募してくれたことへの謝意は必ず盛り込みましょう。結びの挨拶は、候補者の今後の活躍を祈る文言を入れます。「今後のご活躍をお祈り申し上げます」「今後のご健闘をお祈り申し上げます」などの一文が一般的です。応募してくれたことへの謝意と結びの挨拶は、どちらも気持ちを込めて書くことが大切です。
不採用通知の最後には、正式な社名や住所、電話番号、採用担当部署名と担当者名など、企業情報を入れます。
不採用通知を作成するときの注意点
不採用通知を作成する際には、宛名やメールアドレスに間違いがないか、十分に確かめましょう。たくさんの候補者に不採用通知を送る場合、思わぬミスが起こることもあります。相手の名前を間違えることはただでさえ大変な失礼ですが、不採用通知では特に、相手を軽んじているという印象を与えてしまいます。求職者の気持ちに配慮し、間違いが起こらないように注意しましょう。
また、採用通知の文章も、求職者の気持ちに配慮することが大切です。丁寧さを心がけ、企業のイメージを損なうことがないように努めましょう。
不採用通知のメールは、件名のつけ方にも注意が必要です。選考結果だとわかるような件名でない場合、他の多くのメールに埋もれてしまう可能性もあります。「選考結果のご連絡」と明記した上でさらに社名を入れるなど、はっきりした件名で送りましょう。
不採用通知を郵送する場合には、封筒に「親展」と記載します。また、返送する選考書類を忘れずに同封しましょう。
タレントプールという選択肢もある
選考の過程において、一定数の候補者を不採用にすることは避けて通れませんが、タレントプールという選択肢があることも覚えておきましょう。タレントプールとは、不採用にした人材とつながりを残しておくことを指します。
タレントプールの企業側のメリットは、採用基準に近い人材を把握しておくことで、人材募集のコストを圧縮できる可能性が生まれることです。また、求職者にとっても、キャリアプランを構想しやすくなるメリットがあります。不採用にしたものの有能だと感じた人材とは、定期的にコンタクトを取るのが賢明です。
なお、厚生労働省が定める「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」には、以下の決まりがあります。
“不採用者の個人情報など、採用活動の上で必要とされなくなった情報については、写しも含め、その時点で返却、破棄又は削除を適切かつ確実に行うことが求められる。仮に利用目的達成後も保管する状態が続く場合には、目的外利用は許されておらず、また、その後も継続して安全管理措置を講じなければならない。”
企業がタレントプールを行う場合、不採用者に個人情報利用について改めて合意を取るか、SNSなど本人がオープンにしている情報を利用するなど、慎重な運用が求められます。
最後に
今回は、採用選考の入り口となる書類選考の目的や採用計画に活かす方法を解説するとともに、不採用通知に記載すべき内容や注意点をご紹介しました。
書面だけで判断できることは限られており、人材の本質的な見極めは「会ってみないとわからない」ことが多いのは確かですが、それでも書類選考において「自社が求める人材の採用」に繋げるためにできることはあります。
書類選考のミッション「面接の必要性を事前に見極める」ためにできることは何か?その精度をどう高めていくか?書類選考の意義を改めて考えてみてはいかがでしょうか。