【新卒採用】悪い面接官の特徴や自社から生み出さないために必ずおさえておくべき心得や事例を紹介
採用人事の仕事を行なっていく中で「どういうアクションが正しいのか?」と頭を悩ませる問題のひとつに、「面接」があります。
「応募者に悪い印象を残さない面接」をして、「自社で活躍する人材を採用したい」「採用辞退や内定辞退、自社の悪い評判を広めてほしくない」とお考えの採用担当者は多いのではないでしょうか。
- 面接官の態度・マナーの「悪さ」の具体例は?
- 面接官の質問の「悪さ」の具体例は?
- 面接内容の「悪さ」の具体例は?
- 「悪い面接」をしないための面接官教育・社内指標作りの方法は?
今回は、上記のような「悪い面接・悪い面接官」に関する見解、「悪い面接官」にならない心得を、新卒採用業務を経験されていた網野さんにお答えいただきます。

株式会社i-plug
網野 紗弓
新卒で、教育関連の企業に採用担当として勤務。その後データ分析専門企業での人事担当を経て、2020年3月株式会社i-plugに入社。
現在は、総務チームにて法務関連業務及び、全社の業務効率向上のための施策について幅広く担当。

目次
「悪い面接官」が企業にもたらす深刻な損失
面接官の対応は、単なる印象の問題に留まりません。応募者が「この会社は自分には合わない」と感じた瞬間、企業は計り知れない損失を被る可能性があります。特に、人事担当者が本来得るべき優秀な人材を失い、企業の未来に影を落とすケースも少なくありません。
優秀な人材の取りこぼしと内定辞退の増加
面接官の対応は、優秀な人材を獲得できるか否かを大きく左右します。高圧的な態度、一方的な質問、あるいは企業理解が浅い面接官は、応募者の熱意を削ぎ、企業への不信感を募らせる原因となります。結果として学生が「この面接官がいる会社には行きたくない」と判断し、内定を辞退するケースが増加します。これは、採用活動の最終局面で大きな損失を生み出し、獲得できたはずの貴重な戦力を失うことに直結します。
企業ブランド・採用ブランドの毀損
面接官は、企業の「顔」です。面接での不適切な対応は、応募者のSNS投稿や就職活動の口コミサイトを通じて瞬く間に拡散され、企業ブランドや採用ブランドを深刻に毀損するリスクを伴います。特に、現代の学生は情報収集能力が高く、ネガティブな評判は新たな応募者の減少にも繋がります。一度傷ついたブランドイメージを回復させるには多大な時間と労力が必要であり、長期的な採用活動に悪影響を及ぼす、目に見えない大きな損失と言えるでしょう。
採用コストの無駄遣いと再募集の発生
「悪い面接官」による採用活動の失敗は、直接的なコスト増加に繋がります。一人の人材を採用するまでには、求人媒体費、採用担当者の人件費、説明会費用など、多額のコストが発生しています。しかし、面接官の対応が原因で候補者が辞退すれば、それまでの採用活動に投じた時間、労力、費用がすべて無駄になってしまいます。さらに、目標人数に達しない場合は、再度求人広告を出し、選考プロセスを繰り返す必要が生じ、さらなるコストと工数がかかります。これは、企業の限られたリソースの無駄遣いであり、早急な改善が求められる深刻な損失です。
面接官の質向上で得られる具体的な採用成果
面接官の質を高めることは、単に「悪い面接」を避けるだけでなく、企業の採用活動全体に計り知れないプラスの効果をもたらします。ここでは、面接官教育や体制強化によって得られる、具体的な採用成果について解説します。
応募者満足度(CX)と内定承諾率の向上
面接官の質は、応募者が企業に抱く第一印象を大きく左右します。親身な対応、的確な質問、そして丁寧なコミュニケーションは、応募者の企業に対するエンゲージメントと満足度(CX)を格段に高めます。ポジティブな面接体験は、他社と比較検討する際にも有利に働き、「この会社で働きたい」という入社意欲を強く刺激します。結果として、内定承諾率の向上に直結し、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
入社後のミスマッチ低減と定着率の向上
質の高い面接官は、応募者のスキルや経験だけでなく、個性や価値観、潜在能力までを深く見極めることができます。これにより、入社後の業務内容や企業文化とのミスマッチを未然に防ぐことが可能です。応募者も企業への理解を深めた上で入社を決意するため、早期離職のリスクが低減し、定着率の向上に繋がります。これは、採用コストの削減だけでなく、組織の安定性と生産性向上に貢献する長期的なメリットと言えるでしょう。
採用ブランドの確立と優秀な人材の集客力アップ
面接官一人ひとりの対応が向上することは、企業の採用ブランドを確立する上で極めて重要です。面接で良い印象を受けた応募者は、SNSや口コミサイトでその経験を積極的に発信します。このようなポジティブな評判は、新たな応募者層に広がり、「あの企業の面接は素晴らしい」というブランドイメージを構築します。結果として、企業の知名度や規模に関わらず、学生からの応募を自然と引き寄せる集客力アップに繋がり、採用活動全体が好循環を生み出します。
あなたの面接官も?応募者がNGと感じる「悪い面接官」の特徴や事例


編集部
はじめに、悪い面接官って実際に顕在化しているのでしょうか?面接官の態度・マナーの「悪さ」の具体例を教えてください。

網野さん
態度で言えば、真っ先に挙げられるのが次のような点です。
- 偉そうな態度で威圧する(足を組む・ふんぞり返る)
- 別の仕事を優先していることが態度で見えてしまう
- だらしない服装

網野さん
他にも、応募者にリラックスしてもらおうという意図で、「フランクな口調で面接を行なう」面接官もいますが、こちらも上から目線が出てしまって良くないです。どこまで行っても丁寧語で話すべきですね。
「何を着るか?」という面接官の服装のドレスコードも作っておいたほうがいいと思います。
例えば、面接に出てきた人がネイルをしていたら「ネイルしていいんだ!」、ピアスをしていたら「ピアスをしていいんだ!」、髪も染髪やパーマや髭が伸びていたら、「そのような恰好をして出社をしていいのだ!」と応募者を誤解させてしまう可能性があります。
会社としてドレスコードが決まっているのであれば、例外なく会社のドレスコードに面接官を統一する必要性、清潔感や着こなしのガイドラインを作る必要性があると思います。

編集部

網野さん
- 門地・家族・人種など就職差別につながる質問
- どんな質問も否定的な反応で返す
- 質問がプライベートに踏み込みすぎている

網野さん
例えばプライベートに踏み込んだ質問であっても、年次の低い20代の社員が聞いても問題ないことでも、年配の役員が聞いたら応募者の心象を害する踏み込み方もあります。年配の役員・社員の方にはより厳しく、事前にNGワードを伝える必要があります。
ただ「個人的な質問の全てが悪」というわけではありません。内容によっては個人的な情報を聞いたほうが「人となり」が分かったり、「仕事をする上でのスタンスやポテンシャル」がわかる、採用活動上必要な質問もあります。
そのような質問は、面接ではなく選考が進んだ後に懇親会を開いて聞くのが良いと思います。当然ですがその懇親会では合否は決めてはいけません。
また、応募者の発言を聞いて、その発言を否定したくなっても、主観的・感情的に否定するのではなく、「会社の考え方とはマッチしないかも知れませんね」と会社のマッチ度合いとして伝えてあげるようにしてください。
- 定型的な質問だけを一方的に繰り返す
- いきなり自己紹介をさせる

網野さん
次に気をつけたいのは、面接が自然な流れかどうかです。

網野さん
面接が始まってすぐいきなり「自己紹介をしてください」と応募者にぶっきらぼうに言い放つのも避けた方がいいです。自己紹介をしてもらう前に、まず面接官自らが自己紹介をしたほうが良い印象をもってもらえます。

編集部

網野さん
- 会社の雰囲気が悪い
- 面接の開始時間が遅れる
- 面接が短すぎる
- グループワークの意図がわからない

網野さん
中でも特に、「面接の開始時間が遅れる」と応募者の心象が悪くなるので気を付けなければいけません。
人事以外の部署の方に面接を依頼している場合に多いのですが、面接の前の重要な商談や打ち合わせが長引いたときにどうしても面接に入るのが遅れる場合が出てきます。
こういうときに、面接官が遅れても何も言わずに平然と面接の部屋に入ることがあるのですが、やめた方がいいです。現場の社員に遅れる旨を応募者に伝えてもらった上で、面接の部屋に入ったときにも「遅れて申し訳ない」旨を面接官本人が伝えてから面接を始めてください。
また、「面接が短すぎる」ケースも心象を悪くしてしまう行動です。このようなケースは、面接官が面接開始数分間で自社に合わない人材ということが判断できてしまった場合に起こることが多いです。
合否の判断をできたからといって、そこで面接を打ち切ってしまうようなあからさまな行動は厳に避けるべきです。そのような場合でも、他の業界や会社を受けているようであれば、その面接に活きるように本人にフィードバックをしてあげるようにしてあげてください。
「グループワークの意図がわからない」ことも応募者の不満としてよく出てきます。確かに、グループワークの意図は会社それぞれであるところが多いので、何を見られているかわからず落とされると、不満につながりやすいです。
「実はこういうところやああいうところをできていると当社とマッチすると思いました」などフィードバックの場を設ける。あくまでその人が悪いのではなく、自社とマッチしないという視点で話すことが重要です。

「悪い面接官」を生まないための面接官教育・社内体制作りの秘訣


編集部

網野さん
- 面接官の上司がランダムに面接に入る
- その上司から面接や質問内容についてフィードバックを受ける
- 人事ではない現場担当者が面接官を行なった場合には応募者に面接後感想を聞き、本人にフィードバックする

網野さん
自分のちょっとした思考の癖とか口癖って、自分では気づかないんですよ。他者が入ることでそのような癖がブラッシュアップされる効果があります。
また、現場担当者が面接官になる場合は、面接の失敗のナレッジも無い場合が多く、どうしても人事が面接するよりも上から目線になってしまったり、不快なコミュニケーションをしてしまったりする可能性が高い傾向があります。
そのようなケースでは、応募者に「今日の面接官どうでした?」と連絡をして、感想をいただくようにしていました。それを「応募者からこう受け取られている」という伝え方で面接官本人にフィードバックして改善していきますね。

編集部

網野さん
- 1次、2次、3次、最終など段階が上がっていくときに、全段階の面接の応募者の通過の仕方を見る

網野さん
例えば、「この面接官が1次面接した応募者は2次で落ちずに上の面接に上がっていく」「この面接官が面接で選んだ応募者は採用に至ることが多い」などの事実を積み上げながら、「自社に適した人材の採用を成功させるうえでベンチマークになる面接官」を絞り込み、その面接官の雰囲気、応募者への接し方、質問の仕方、通過の基準の決め方などを共有して、「良い面接」の社内基準やマニュアルに落とし込んでいきます。
「悪い面接」の防止だけではない!応募者の満足感(CX)を高める工夫


編集部

網野さん
考えなければならないことはたくさんありますが、ポイントは以下になります。
- 面接事前のリマインドメールの口調やタイミング
- 受付の対応
- エントランスで待っているときの社員の様子
- 配布する書類やノベルティは綺麗に
- オフィス見学の際の社内の整理整頓

網野さん
応募者が来社する時には社内に「ウェルカムな雰囲気で気持ち良い対応をするように」事前共有をするといいと思います。
最後に:面接の印象は、人として「きちんと伝える」ことで決まる

今回は、新卒採用業務を経験されていた網野さんに、やり方を間違えると人材に悪い印象を与え、採用辞退・内定辞退を招いてしまう可能性のある、「悪い面接官・悪い面接」についてお話いただきました。
上述のように、面接での1つ1つの事例を挙げていったらキリがないこの「悪い面接官」問題。こちらの全ての事象に共通しているのは、「面接という場所、応募者に対する敬意の無さ」から発生している、ということです。
新卒採用では、社会人経験の無い応募者に対してつい「上から目線」になってしまうのも無理はありません。しかし今一度、「面接」の原点に立ち返り、応募者に敬意をもって接する心を持ちたいものです。
面接も人と人との交流のひとつです。その場で「良い」と思った応募者には「良かったこと」をきちんと伝えましょう。
その場で合否は出せずとも、「○○さんのその考え方は素敵だと思った」と面接官の主観や共感ポイントを伝えることで、その応募者がその後面接でどのような結果になったとしても、「あの面接官にはこういうところを評価してもらえた」と、今後の就職活動や人生に活かしてもらえます。
小手先の技術ではなく、真心で接するのが、「悪い面接」を回避できるたった1つの王道の秘訣といえます。
「真心」をベースに自社の「良い面接」の成功パターンを研究、「自社の面接品質基準」まで落とし込んで行動し、面接の成功をおさめましょう。
面接官として押さえておくべきポイントや、面接の事前準備についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの資料もご活用ください。

