面接で聞いてはいけない9つの質問例と注意すべき原則・対処法
採用選考においては、公正さの確保や基本的人権の尊重が原則であり、厚生労働省も詳細なガイドラインを示しています。面接品質の確保やコンプライアンスといった観点からこういったガイドラインの重要性は認識しているものの、「具体的に面接で聞いてはいけないことは何か」「どのようなことなら聞いてもよいのか」と悩んでいる人事・採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、厚生労働省のガイドラインも参考に、面接や選考において徹底すべき原則について整理したうえで、面接で聞いてはいけない質問を9つのテーマ別に紹介します。また後半では、面接で不適切な質問をしてしまった場合のリスクや、そういった事態を防ぐための対策についても紹介しています。
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目次
面接・選考において徹底すべき原則とNG例
厚生労働省が示すガイドラインでは、採用選考の場で採用者側が徹底すべき基本原則が明示されています。以下では、「応募者の基本的人権を尊重すること」「適性と能力にもとづいた選考」「広く門戸を開くこと」の3つのポイントについて触れ、NG例も紹介します。
応募者の基本的人権を尊重する
面接・選考において最も重要な原則の1つが、応募者の基本的人権を尊重することです。基本的人権の尊重とは日本国憲法に記されている考え方で、例えば以下のような決まりがあります。
- すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない(第14条)
- 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない(第19条)
面接・選考に当てはめると、応募者の人種や信条、家庭環境や思想・宗教などにもとづく差別的な質問や評価は避ける必要があります。選考の際に基本的人権を尊重することは、コンプライアンスのみならず、信頼される企業文化の醸成や、応募者が安心して選考に臨んでもらうためにも欠かせません。
応募者の適性・能力をもとに選考する
「求める職務を遂行できるかどうか」を基準とし、応募者の適性や能力にもとづいた採用選考を行うことも重要です。応募者の能力とは関係のない事項が採否に影響することがないよう、質問内容や評価基準を明確にし、客観的に判断する必要があります。
例えば以下のような考え方は面接・選考において不適切な可能性が高いと言えます。
- 該当職種の募集において合理性がないにもかかわらず詳細な健康状況の説明を求める
- 人脈・交友関係について踏み込んだ質問をする
- 特定の評価者の主観・好みで合否を決める
応募者に広く門戸を開く
適正な採用選考を行うには、応募者に対して平等に機会を開くことも欠かせません。募集の際は特定の人を排除するような条件を設けず、応募者にとって公正で透明性のある選考を行う必要があります。
例えば以下のようなやり方には注意が必要です。
- エントリーシートや面接で家庭状況や居住環境を問う
- 潜在的な可能性を一切考慮せず属性情報のみで不採用とする
特に「応募者の潜在的な可能性を見いだす姿勢」は厚生労働省の「公正採用選考特設サイト」でも挙げられており、面接・選考において関係者間で共有すべき事項です。
面接で聞いてはいけない9つの質問
厚生労働省のガイドラインについて紹介しましたが、これを面接の場面に当てはめると、特に以下の行為に注意する必要があります。
- 本人の責任ではない事項を聞くこと
- 本来自由であるべき事項を聞くこと
ここでは9つのテーマごとに、注意すべきポイントや聞いてはいけない質問を紹介します。なお、ここで挙げている項目は、職務遂行上の合理的な理由がある場合に問うことが許される場合もありますが、特別な事情がない限りは避ける必要があるテーマです。
本籍・出生地・門地
応募者の本籍や出生地、家族の出身などの質問は、基本的人権の尊重に触れる恐れがあり、また応募者の職務遂行能力と関係が薄いため、不適切な可能性が高いです。
NG質問例
- ご出身の地区はどこですか?
- ご家族の出身地を教えてください。
- 本籍地はどちらですか?
家族・住宅状況
家族構成や住宅状況について質問することも、職務と直接の関係がないため避けるべきです。在宅勤務が前提の募集であり、後述のように在宅勤務可能かどうか確かめたい場合でも、あくまで「自宅は職務可能な環境かどうか」という点のみにフォーカスし、家族状況によって不当な評価をすることのないようにする配慮が必要です。
NG質問例
- ご両親と一緒に住んでいますか?
- ご家族は何人ですか?
- 持ち家ですか、賃貸ですか?
生活環境・家庭環境
生活環境や家庭環境、経済状況についての質問も不適切です。応募者の生活背景や家庭事情が採用判断に影響を及ぼすことがないよう注意しましょう。
NG質問例
- 現在の生活環境は快適ですか?
- 家族との関係は良好ですか?
- 学生時代の学費はご自身で負担しましたか?
宗教・支持政党
宗教や政治信条への考え方は、個人の自由として保護されるべき項目です。これらに関する質問は、応募者の思想や価値観への不当な介入に当たる可能性があるため、避ける必要があります。
NG質問例
- 近年の宗教をめぐるニュースについてどう思いますか?
- 尊敬する政治家は誰ですか?
- 支持している政党はありますか?
人生観・生活信条
応募者の人生観や生活信条についての質問は、プライバシーの侵害となり得るため不適切です。こうした質問は職務上の適性とは無関係であり、応募者が不要なプレッシャーを感じることを避けるためにも控える必要があります。
NG質問例
- あなたの人生の目標は何ですか?
- 生活のなかで大切にしている信条はありますか?
- どのような生き方を目指していますか?
思想・尊敬する人物
思想や尊敬する人物についての質問も、応募者の個人的な価値観に踏み込むため不適切な可能性があります。特に尊敬する人物は質問者にその意図がない場合でも思想・宗教観や価値観に結びつきやすいテーマのため、避けるのが無難です。
NG質問例
- 尊敬する人物は誰ですか?
- どのような思想をお持ちですか?
- あなたが最も影響を受けた人物は誰ですか?
社会運動(労働組合・学生運動など)
応募者の社会運動への参加や、学生時代の活動についての質問も職務とは関係がなく、個人的な価値観とも近いテーマのため面接での質問には適しません。社会運動は特に思想や支持政党とも関係しやすいテーマであり、配慮が必要です。
NG質問例
- 学生時代に社会運動に参加した経験はありますか?
- 労働組合の活動には興味がありますか?
- 学生運動についてどのような考えをお持ちですか?
購読新聞・雑誌・愛読書
応募者の購読している新聞や雑誌、愛読書に関する質問は、面接においては不適切とされています。職務に関係する実用書の読書歴を聞くことは問題ないと言えますが、そもそも書籍は個人の価値観や思想・信条と関係しやすいものであり、質問者にその意図がなかったとしても「思想や価値観を把握する意図があるのではないか」という誤解を与える可能性があります。
NG質問例
- どの新聞を購読していますか?
- 愛読している雑誌はありますか?
- あなたの愛読書について教えてください。
職務に関係がない身体状況
応募者の身体状況に関する質問は、業務遂行において合理的かつ客観的に必要性が認められる場合を除き、面接で聞くべきではありません。業務に直接関係しない健康状態や体質に関する質問は、不必要なプライバシー侵害に当たる恐れがあります。例えば色覚異常のように多くの職務に影響しないものや、職場においては感染する可能性が低い感染症についての質問が該当します。
NG質問例
- 持病やアレルギーはありますか?
- 健康管理で気を付けていることはありますか?
必ずしもNGではないものの注意が必要な面接の質問例
ここまで、面接で聞いてはいけない質問について紹介してきましたが、合理的・客観的に必要性がある場合には聞いてもよい質問もあります。ここでは、必ずしもNGではないものの注意が必要な質問について紹介します。
犯罪歴に関すること
犯罪歴は法律で必ずしも聞いてはならないことになっていません。
例えばバスの運転手を採用する際、安全運転ができる資質を確認するために、交通の犯罪歴を質問するのは「合理的・客観的に必要性がある」とみなされる可能性があります。
しかし、仕事の内容とは関係のない犯罪歴を聞くことは、認められない恐れがあるので注意しましょう。例えば少年時代の非行歴を聞くことは「必要性がある」とはみなされないこともあり、損害賠償請求を受ける可能性があります。
在宅勤務の環境に関すること
家族や住宅状況について直接的な質問をすることは推奨されませんが、在宅勤務もあり得る仕事である場合、「在宅勤務が可能かどうか」に関する事項に限れば、質問することは問題ない可能性が高いでしょう。
先述の通り、面接で聞いてはならないことは、「本人の責任ではない事項」や「本来自由であるべき事項」です。自宅の間取りや部屋数、住宅の種類、近隣の施設といった在宅勤務に関連性がないと考えられる事項について質問することはNGになる可能性があります。
一方、在宅勤務に必須である「自宅で業務用スペースを確保できるか」「業務やオンライン会議などに集中できる環境があるか」「インターネット環境は用意できるか」といった質問をすることは、一定の合理性があり、問題にならないと考えられます。
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面接で聞いてはいけない質問をすることのリスク
面接で応募者に不適切な質問をした場合、そのリスクは法的処分に加えて、企業の評判やその後の採用活動にも深刻な影響を与えることがあります。ここでは、具体的なリスクについて解説します。
行政からの改善命令・罰則を受ける
不適切な質問を行うと、職業安定法にもとづき、厚生労働省から改善命令が発せられる場合があります。
不適切な質問とは、採用選考で応募者の基本的人権を損なうような内容や、業務に関連しない個人情報に関する質問です。改善命令に従わないケースでは、6ヶ月以下の懲役や30万円以下の罰金が科されることもあります。
このように、行政命令や刑事罰が科されると、後述のように信頼性やブランドの低下を招きかねません。
応募者からの訴訟を受ける
不適切な質問をすると、応募者から訴訟を受け、損害賠償を請求されるリスクもあります。
面接で先述のガイドラインに触れる事項について質問すると、プライバシーの侵害や過度なプレッシャーになり、応募者によっては不快な思いや精神的苦痛を感じることも十分に考えられるでしょう。
面接官が興味本位で必要性の薄い質問をすることは少ないとしても、パーソナリティを見極めようとするあまり、必要だと思って人格まで踏み込んだ質問をするケースは考えられますが、あくまで重要なのは「相手がどう感じるか」です。
応募者が心理的に負担を感じてしまい、それに対して誠意ある対応を行わなければ、訴訟に発展するケースもあるでしょう。
企業ブランドが毀損する
不適切な質問や選考が原因で企業の評判が大きく損なわれるリスクもあります。
例えば、応募者がSNSや就職情報サイトに面接での不適切な言動を投稿し、ネガティブな情報が広がると、企業ブランドが傷つき、自社が求める人材を確保しにくくなる恐れがあるでしょう。また、エージェントからの紹介を控えられるといった事態も想定されます。
学生プロフィールから情報を知るのは問題ない
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面接で聞いてはいけない質問をしないための対処法
面接で聞いてはいけない質問を避けるには、厚生労働省のガイドラインも参考にしながら、面接官が適切に質問できるような準備・配慮が必要です。ここでは、面接で不適切な質問を防ぐための具体的な対策を紹介します。
人事担当者が最新のNG項目・事例を整理する
まずは人事担当者自身が厚生労働省のガイドラインや関連法令を熟知したうえで、NG行為やその根拠を把握することが大切です。
現場の面接担当者は「求める人物を見極める質問」には関心があるものの、上記のようなガイドラインまで詳しく把握していないケースもあります。そこで人事担当者としては、人材の見極めという観点はもちろん、コンプライアンスの観点から的確な判断ができるように、面接フロー・マニュアルを策定するなどの対策が必要です。
面接で聞いてはいけないことや不適切な採用選考の方法については厚生労働省や労働局のホームページで詳細が公開されていますが、その他にも法務部門と連携したり過去の事例・判例を参照したりといった取り組みも有効でしょう。
社内基準を策定して周知する
人事担当者として社内基準を整理・策定して、採用選考に関わる人に周知することも必要です。
社内基準を策定する際は、面接官の熟練度や募集職種、応募者の傾向などをもとに、最適な形に落とし込む必要があります。例えば、金融関連の職種であり信用を重視する場合、応募者の過去のトラブル歴について問うことも念頭にOK例・NG例を詳しくまとめる必要があるでしょう。
社内基準を徹底するためには、「面接官マニュアル」「選考基準シート」といった書類に詳細を記載して、面接担当者や評価担当者が参照しやすい形にすることが求められます。
面接官研修・トレーニングを徹底する
面接に携わる人に向けた研修会・トレーニングを実施することも推奨されます。
会社として面接のマニュアルを整理して、聞いてはいけない質問や注意事項を周知したとしても、全ての面接官がいつでもルール通りに実行できるとは限りません。面接官も忙しいなかで面接に参加しており、「注意事項に目を通す時間が少ない」「頭ではわかっているが面接のやりとりのなかで思わず口からグレーな質問が出てしまう」ということも考えられます。
こういった事態を防ぐためには、あえて時間をとって、公正な採用選考の考え方を周知し、また模擬面接のような形で意識付けすることが効果的です。このような対策をしておけば、不適切な質問を避けられるだけでなく面接品質の向上も期待できます。
まとめ
本記事では、面接選考において基本的人権の尊重や適性・能力をもとにした評価が原則であることを紹介しました。そのうえで、面接で聞いてはいけない質問を9つのテーマ別に解説し、こうした質問をしてしまった場合のリスクや対処法にも触れました。
面接においては「応募者の適性・能力のみを判断する」という原則はありますが、応募者のパーソナリティを正確に見極めようとすると、「本人に責任がない事項」や特に「本来自由であるべき事項」にも意図せずに踏み込みそうになる場面があります。しかしこういった質問は面接において不適切であり、社内で徹底するためにはマニュアルの配布や研修会といった対策が欠かせません。
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