キャリア面談の効果を高める準備・シートの活用方法や4つの注意点

キャリア面談とは、上司・人事担当者と社員が本人のキャリア目標を共有し、現在の課題や今後の取り組みを話し合う場です。キャリア面談は、将来的なキャリアを共有することで、社員の自律性やモチベーションアップ、社員満足度向上、生産性向上などが期待できます。しかし、キャリア面談を行うにあたってはテーマ設定や準備など検討すべきポイントも多く、どのように取り組めばよいのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、「キャリア面談」の目的や得られるメリットを再確認しながら、適切な手法と面談前の準備などについて解説していきます。さらに、キャリアシートの作成方法や、面談後のフォローについても紹介します。
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キャリア面談が必要とされる背景

かつての日本企業は、終身雇用と年功序列を前提としたマネジメントを行なっていました。社員にとってのキャリアとは自社内のより上位のポストに就くことであり、自ら開発していくものではなかったのです。
しかし、1990年代半ば以降から顕著になった雇用形態の大きな変化に伴い、キャリアの意味は大きく変わっていきます。
また、多くの企業で行なわれたリストラや組織のスリム化が従来の雇用制度を変化させ、成果主義を軸とする人事制度の導入を促進しました。
そのため現在では、社員ひとりひとりに高い専門性とスキルが求められるようになり、企業のキャリア開発といえば、多様な能力や経験のある人材の育成と支援が常識になったのです。
働き方や価値観の多様化も一般的になった今、社員には自らのエンプロイアビリティ(労働市場価値を含んだ就業能力)を高めるための努力が、そして企業側には社員が能力を発揮できるシステムづくりをすることが求められるでしょう。
キャリア面談の3つの目的

ここではキャリア面談を行う3つの目的を紹介します。
目的①社員のキャリア目標の明確化
キャリア面談の第一の目的は、社員にキャリア目標を明確にしてもらうことです。
キャリアにおける目標が定まっていない場合、「目の前の仕事が将来的に何につながるのか」がイメージできず、意欲が出ないこともあり得ます。実際に会社側は「その社員の長期的な成長を視野に該当のタスクやポジションを用意している」こともありますが、それが本人のなかでキャリア目標と結びつかなければモチベーションアップにはつながりません。
一方で、キャリア面談を通して社員が自身のキャリア目標や将来的なビジョンを持てば、モチベーション向上にもつながり、自己研鑽やさらなるスキルアップを促せます。
目的②キャリア形成・成長の支援
キャリア面談のもう1つの重要な目的は、会社側が社員のキャリア目標を把握して、キャリア形成・成長を支援することです。
キャリアを形成するにあたっては、社員本人の個人的な努力だけでは限界があります。なぜなら、キャリアの形成にはさまざまな経験や周囲によるサポートが不可欠であり、また同時に会社組織で個人が決められることが限られているからです。
会社側が社員のキャリア目標を把握していれば、長期的なキャリア形成に役立つ支援も行えるでしょう。例えば、マネジメント職を目指している社員には人事評価やリーダーシップに関する研修を用意したり、該当のポジションを積極的に紹介したりといった支援が可能です。
目的③最適な人材配置・人事評価
人材配置や人事評価を最適化するという目的もあります。
キャリア面談を行い、社員のキャリア目標を会社側が把握していれば、社員の希望と会社側の異動辞令で大きなミスマッチが発生しにくくなります。もちろん、本人の希望を100%叶えるということは現実的には困難ですが、普段からキャリアについてコミュニケーションをとっていることで「相互の誤解や大きなミスマッチを防げる」のは重要なポイントです。
また、キャリア目標やそれに対する取り組みを会社側が把握することで、「成長意欲があるのか、個人的に自己研鑽をしているのか」といったポイントも確認でき、人事評価の参考にすることもできます。
キャリア面談を行うことで期待できる3つの効果

キャリア面談を行えばさまざまな効果が期待でき、特に社員の自律性やモチベーションの向上、満足度のアップ、生産性の向上といった効果が挙げられます。ここではそれらのポイントについて解説します。
社員の自律性・モチベーションの向上
キャリア面談を通じて社員自身がキャリア目標を明確化し、また上司と共有することで、成長に向けて本人が自律的に取り組むようになる効果が期待できます。会社側が一方的に社員のキャリアを決め、それに対する説明も少ないような場合には、自主性を育むことは困難ですが、社員と会社側がキャリア目標を共有していれば、その達成に向けた自発的な行動につながります。
またキャリア面談を通して現在の進捗状況や、キャリアを目指すうえでのスキルアップの取り組み方についてフィードバックすれば、社員のモチベーション向上を促せます。
社員満足度の向上・離職率改善
キャリア面談を通して「会社側が本気で社員一人ひとりのキャリア形成や成長に向けた支援をしている」ということが伝われば、社員満足度の向上にもつながります。特に現場で働いている社員は日々の業務が忙しく、「今の仕事が長期的なキャリア形成にどのように結びつくのか」が曖昧になることもありますが、定期的な面談の場で相互にコミュニケーションを取ることで、仕事に対する納得感が得られやすくなります。
また、こういったキャリア面談の場で社員のキャリア形成に対する悩みや不安をヒアリングしておくことで、その対策もしやすくなり、働きやすい環境の整備や、離職率の改善にもつながるでしょう。
生産性・業績の向上につながる
キャリア面談を通して社員のモチベーションが向上し、スキルアップにも意欲的になれば、個人のパフォーマンスが高まります。また、キャリア面談を踏まえて適材適所の人事を行えば、その社員の力をさらに引き出すことも可能です。
こういった取り組みを続ければ、会社組織として生産性の向上や業績の改善にもつながるでしょう。
キャリア面談をスムーズに行うための準備

キャリア面談を行う際は、テーマ設定やキャリア面談シートなどの準備があるとスムーズです。ここでは2つのポイントについて詳しく紹介します。
テーマ設定を行う
キャリア面談の前に、面談テーマを設定したうえで社員に伝えておくと、具体的な意見を引き出しやすくなります。例えば以下のようなテーマが考えられるでしょう。
- スキル・キャリアアップの計画
- 業務の改善案
- 希望年収や役職など将来のなりたい姿
事前に「改善案」や「スキルアップ後のイメージ」などのアンケートを用意しておけば、面談もスムーズに進みます。
また、面談の内容が他の社員に漏れないように個室などを用意することや、朝一番といった業務の忙しい時間帯を避けるなど、社員が緊張せずに本音を聞き出せるよう、場所や時間にも配慮しましょう。
ただの聞き取り調査で終わらせないために、面談者は着地点も想定しておきましょう。「年収・役職の希望」や「取得したいと思っている資格」など事前アンケートでヒアリングしたことに対し、具体的なステップアップの道筋を社員に伝えれば、面談後の気づきにもつながります。
適宜キャリア面談シートを用意する
キャリア面談を行う際は必要に応じて「キャリア面談シート」を活用するのも効果的です。キャリア面談を行っても社員側・管理者側が必要な準備をしていなければ、実のあるやりとりができない可能性があります。そこで、あらかじめ論点を整理し、話す内容をお互いが共有するための方法としてこういったシートが有効です。
- 現在の職における課題・悩み
- 短期・中期・長期のキャリア目標
- 取り組んでいる課題・スキル
- 求めているサポート内容
まず重要なポイントとして、現在の仕事で抱えている課題や悩みが挙げられます。「キャリア目標に対して阻害要因となっているものがないか」「現在の仕事内容がキャリア目標とどのように結びつくかイメージができているか」といったポイントを共有します。また、「今後のキャリア目標に向けて、どのようなスキルや経験を積もうとしており、そのために会社側に求めている支援があるのか」を引き出します。
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キャリア面談で注意したい4つのポイント

キャリア面談を実施する際はいくつか注意すべきポイントがあります。ここでは主なポイントを紹介します。
社員の希望や悩みを丁寧に聞く
キャリア面談の担当者が「社員の希望や悩みを丁寧に聞く」という姿勢を徹底しましょう。
キャリア面談は一方的な評価やフィードバックの場ではなく、「社員のキャリア目標」や「目標への取り組みや抱えている悩み」をヒアリングするという目的があります。
そのためには社員がリラックスして自分の本音を語れるように、担当者が意識する必要があります。傾聴も取り入れ、適度に相槌を打ったり質問したりして、話を引き出す姿勢が大切です。
失敗・短所でなく実績・長所に注目する
面談時に社員が達成できなかったことや失敗に焦点を当てて話を進めてしまうと、自信喪失を招き将来についての前向きな話が十分に出来ない可能性があります。
本来の面談の目的を見失わないように、面談時は本人が自覚していない実績や長所を挙げながら、現在考えていることや将来への考えを引き出すように努めましょう。
キャリア目標上の課題や取り組みを整理する
社員の向上心を高めるためには、目標達成への課題を明確にして共有したうえで、具体的なアドバイスをすることが大切です。
キャリア面談で企業側から課題やテーマを出す場合も、思いつきで課題を出すのではなく、連続性があり、課題を乗り越えることで成長を実感できるような内容にしてください。また、課題の解決に向けた取り組みも、社員に任せきりにするのではなく企業側も支援する準備があることを伝えることが大切です。
社員の目標達成に向けたアフターフォローをする
面談はあくまでも過程でありゴールまでの手段のひとつに過ぎません。「面談の内容を今後にどう活かすのか」については、長いスパンで考えることが重要です。
キャリアの形成や仕事との向き合い方を見直すことは、社員ひとりひとりにとっては大きな問題です。
そのため、一度面談をして終了ではなく、定期的に面談を実施し面談者への理解を深め、キャリアアップに関して適切なアドバイスを続けられるような関係を築くことこそ重要です。
まとめ

今回の記事では、「キャリア面談」の目的や効果について、面談時の留意点なども交えてお伝えしました。
キャリア面談を定期的に実施することで、主に以下3つの効果を期待できます。
- 社員の自律性・モチベーションの向上
- 社員満足度の向上・離職率改善
- 生産性・業績の向上につながる
キャリア面談を導入する際は、本記事で紹介したポイントに沿って準備を進め、実際に面談を進める中でプロセスやドキュメントを改善し、自社なりの効果的な面談スタイルを作り上げるのがおすすめです。
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