新卒採用基準の決め方|ビックワードになってない?見直しのポイント
採用活動をすすめる上で、採用基準や求める人材像を決める企業も多いかと思います。ただ実際は、採用基準を決めてもそういう人材をどうやって確保するかまで落とし込めていなかったり、役員陣の感覚と差があっていいと思った学生が最終面接を通らないなど、採用活動に活かせられていないという方も多いのではないでしょうか。
また、買い手市場の頃にはナビサイトで広く募集をかけていれば人材確保もしやすかったのですが、学生の人口が減り、売り手市場が続く中では戦略的に自社に合った人材にアプローチしていくことも求められるようになってきました。
そこで今回は、新卒採用の基準を決めていく時に気をつけたいことなどをお伝えし、実際の採用活動に活かせる基準の設定の仕方を紹介していきます。
目次
採用基準なのに汎用的な言葉になってませんか?
新卒の採用担当の方とお話させていただく中で求める人材像をお伺いすることもあるのですが、多く聞くのが「コミュニケーション力」「主体性」といったものです。これが悪いわけではないのですが、このままでは採用基準としてはうまく活用できないことが多いです。
これらの表現はビックワードと呼ばれ、人それぞれの解釈によって指している内容が異なったり複数の要素が絡み合ったもののため、採用基準を設定するメリットが発揮されないのです。
例えば
- なぜ自社にこういった能力が必要なのか
- 自社で求められる「コミュニケーション力」とは何なのか?(傾聴できる。自分の主張ができるなど、コミュニケーション力にもその要素は多岐に渡ります。)
こういった内容が説明できない方も多くいらっしゃいます。
これだと結局は、面接官の感と経験による判断が大きくなってしまい、結果として最終面接で役員の基準と合わずに不採用となるような状況を引き起こしてしまうのです。
採用基準を明確にするメリット
本当に自社に必要な方に集中して採用活動を進めるためには、採用基準を明確にする必要がありますが、それに加えて採用基準が明確であることにはいくつかのメリットがあります。
採用に関わる全員が共通した判断軸を持てる
採用基準がない、または不明確な状態だと、第一面接の面接官から最終の役員面接までにそれぞれの主観による判断になりがちなことは先に述た通りです。
明確かつ自社に即した求める人材像があると、そうした立場や役割を超えた採用に関わる人達が共通の判断軸を持って採用に臨むことができます。
また、人事担当者と面接官、受け入れる先のマネージャーなどと会話をするときに同じ視点で話ができるので、やりとりがスムーズになるという効果もあります。
会社と学生とのミスマッチが防止できる
入社から3年以内の離職率が3割という数字は、長らく大きな変化・改善が見られません。入社後にどんなケアをするかというよりは、そもそも入った会社と自分の求めているものが異なっていたというミスマッチが大きな要因と考えられます。
ミスマッチが起こる大きな要因は、学生自身の就職活動の短さとそれによる検討不足が上げられます。
実際に、学生は就職活動時期の短い期間に自分のやりたいことや適職を考え、多数の会社にエントリーし、その中で採用された企業に就職します。そうした短期間でエントリーするとなると元々知っている企業に偏りがちです。
ただ、企業の多くはBtoB企業を中心に、一般的な認知度はなくても特色を持っていたりニッチな分野でのリーディングカンパニーであったりと素晴らしい企業はたくさんあります。
例えば私自身もそうでした。「安定」と思って大企業に入社しましたが、そこで得られる経験が「自分に力をつけたい」という想いに合わず、最終的に「どこでも通用する力をつけていくこと」が自分にとっての「安定」だと思うようになり、転職した経験があります。
だからこそ、採用基準があった方が、自社の求める要件が明確になり、その分学生の特性や想いに対して自社に合ったものだと明確に伝えることができるようになります。それによって入社時には学生自身が入社する企業と合っている部分を自覚して入社できますので、入社後のミスマッチ防止にも繋がるのです。
新卒の採用基準を決めていく手順
TMPという考え方
採用基準の決め方も含めて、採用プロセスを考えるときに「TMP」という考え方があります。
元リクルート、現HARES代表の西村創一郎さんの解説を基にすると
- T:Targeting :適切なターゲットの設定
- M:Messaging:ターゲットに刺さるメッセージ・ストーリーの作成
- P:Processing:最適な採用プロセスの設計
これらをきちんと押さえていけば、採用成功の道筋が具体化される非常に有用なフレームワークです。
この最初にくるプロセスが「ターゲティング」であり、採用基準と言い換えられるものです。採用市場は約40万人ほどいると言われていますので、自社のターゲットとなる学生は必ずいると考えていいでしょう。
弊社が運営するYouTubeチャンネルにおいても、求める人物像の定め方を紹介しております。お時間のあるときにご視聴いただき、今後の採用活動に役立てていただけますと幸いです。
T(ターゲット)を決めていく上で大事にすべきこと
まずターゲットを決めていく上で明確にすべきことがあります。
- 採用のポジションと、その業務の詳細
- そこで活躍している人の共通点(要素)
- 会社として求める人材像
- 必要知識(もしあれば)
これらのことをまず具体的に言語化しましょう。その際に気をつけるべきことは、できるだけ細かく設定することです。例えば、
「コミュニケーション能力が高い人!」
→高級品を扱う職種なので、富裕層や目上の人とのコミュニケーションがそつなくできる方。例えばホテルや高級飲食店でなどバイトをしていた方であれば望ましい。
など、なぜその能力が必要なのか、その場面で求められる「コミュニケーション能力」とはどういうことなのかがわかるようにしていきます。
それがもし難しい場合には、できるだけ具体的に細分化してみましょう。
こちらは、コミュニケーション力を細分化した一例です。
一概にコミュニケーションと言っても、発揮される能力をより細かく分解することができますし、どういったコミュニケーションのスキルを持っているのかも人によって異なります。
調べてみるとこうした分解は色んな切り口でされていますが、今回この形に細分化した理由も含めて以下に詳しく書いていきます。
コミュニケーションをまず大きく3つに分類
コミュニケーション能力について、まずわかりやすく「受信系」と「発信系」に分けました。コミュニケーションは相互にやりとりが発生するものなので、この2つはわかりやすいかと思います。
その他に、コミュニケーションの大きな目的として「関係構築系」の力も必要です。
受信系
受信系の能力は、他者の発信を受け取り理解する力です。これを細分化するに当たり、「何を受け取るか」でまた2つに分けました。スキルに特化した分け方だと、例えば「傾聴力」や「読解力」といった解釈も可能だと思いますし、傾聴力をさらに分解することも必要かもしれません。
しかし今回は、採用基準として自社を受けに来た方がどういう能力を持っているといいか判断するための指標なので、より現場の中で何を受け取り理解する必要があるかという視点で細分化しました。
それが
- 気持ちや状況を理解する力
- 意図・背景を理解する力
この2つです。
気持ちや状況の理解は、対人コミュニケーションなどやその場での状況理解など、直接的なやりとりにおける理解力。意図・背景の理解は、会社の方針やお客様の企業全体の課題など、物事の意図や背景を読み取る力と言えます。
発信系
これは細分化せず噛み砕いて、自分の意図を的確に伝える力としています。特に仕事や役割を発揮する上で必要な能力です。例えば、営業現場で取引先との商談でのやり取りというよりは、プレゼンの場で発揮されたり、商談の中でも特にBtoB商材のようなイメージしづらい商品の特性を伝える場合などに発揮されます。あるいは理系の採用の中でも、施工管理食で職人さん達に的確な指示をするときにも求められる能力かと思います。
「場を盛り上げる」なども発信による部分も大きいかと思いますが、この区分の中では「関係構築系」の力としてご紹介します。
関係構築系
コミュニケーション能力における『関係構築系』能力は、次の2つに細分化して考えます。
- 関わりを広げる力
- 深い関係を築く力
よく交友関係を語る上でも、「広く浅い交友関係が多い。」などで言われることが多いかと思いますが、「たくさんの人と広く関係を築く力」と「少数であっても深い関係を築く力」は発揮される能力が変わってきます。
例えば、学生の自己PRの中でも「場を盛り上げて前向きな雰囲気を作る」は関わりを広げていく力と言えるでしょうし、「相手の懐に入り込んですぐ仲良くなれる」のは深い関係を築く力と言えるでしょう。
こうして細かくしてみると、学生のエントリーシートや自己PRが何をアピールしているのか。それが自社の求める能力なのかが判断しやすくなります。
もし今設定している採用したい人材像が、「コミュニケーション力」のようなビックワードである場合は、まずその発揮されるスキルにまで細分化してみることをおすすめします。
採用基準を明確にして、採用成功のスタートを切る
採用成功のために、まずなぜ自社で求める人物像を明確にする必要があるのかについてお伝えし、その明確にしていくための考え方として、TMPというフレームワークやターゲットを明確にしていくための具体化や細分化の事例を「コミュニケーション力」を例にとってご紹介しました。
会社と学生の最適なマッチングを実現し、内定辞退や入社後の早期退職などのミスマッチを予防できる考え方だと思いますので、ぜひ使ってみてください。