チームビルディングの6つの目的と具体的な手法・実施のポイント
組織作りにおいては、優秀な人材を集めたチームでも期待通りの結果を出せるとは限りません。一方、チームの作り方によっては個々のメンバーが相乗効果を発揮して好成績を収めることがあります。
チームとしての強さには、個々の能力だけではなく、メンバー同士の信頼関係や役割分担、共有するビジョンなど多くの要素が関係します。そこで、強いチームを作るための手法として、チームとして抱えているさまざまな課題に対してアプローチするチームビルディングが注目されています。
本記事では、チームビルディングの定義と効果、目的別の具体的な手法や取り組むうえでのポイントを詳しく解説します。
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チームビルディングとは
チームビルディングとは、各メンバーが能力を十分に発揮するための環境整備やメンバー同士の連携強化といった、チームの生産性を高める取り組み全般を指します。
チームビルディングが必要とされる背景には、競合他社との競争激化や需要の変化が速くなったことによって、成果を出すまでのスピードが以前にも増して求められている点があります。また、メンバーの多様化や、フレックス・リモートワークの普及といった働き方の複雑化も一因です。
チームビルディングは改善を望む既存のチームにも有効ですが、一度馴染んだやり方を変えるよりも始めから一貫した方針を通す方がスムーズに進みやすく、チームの立ち上げ時や新プロジェクトの始動時に行う方が効率的です。
チームビルディングの目的
チームビルディングの最終的な目的はチームの生産性を高めることですが、細分化すると必要な対策や手法が明確になります。ここでは、細分化した目的を6つ紹介します。
信頼関係の構築
1つ目の目的は信頼関係の構築です。チームビルディングを行わなくても年月の経過により自然に信頼関係が構築される場合もありますが、あえて取り組みを進めるとメンバー同士の信頼醸成につながります。
メンバーが互いに信頼し、安心して意見を出せる環境を作り出すことにより、メンバーは自由に意見を出せるようになり、コミュニケーションが活発化します。アイデア交換も進み、モチベーションの向上やイノベーションの促進にもつながるでしょう。
人材配置の最適化
2つ目は人材配置の最適化です。チーム結成時点で、メンバーのポジションの目処がついていることもあるでしょう。しかし、実際に集まったメンバーを見直した際、より最適な配置が存在する可能性があります。
各メンバーの性格や能力、経験などを相対的に把握することでメンバーの強みを活かしつつ、チーム全体の生産性が最大になる人材配置を検討できます。
また、各メンバーも自分の能力を活かせる役割につくことで、仕事に対する満足感も期待できるでしょう。
マインドセットの刷新
3つ目はマインドセットの刷新です。マインドセットとは各人が持つ思考や行動のパターンを指します。例えば、「拙速でもまずチャレンジをする姿勢を良しと捉えるかどうか」「ミスを恥じたり隠したりするかどうか」はマインドセットによって異なります。
マインドセットには、チームの目的達成にマイナスになるものもあり、これを無理のない範囲で修正できれば、チームの生産性の向上につながります。
また、メンバー全員が同じ考えを共有していれば意思疎通もスムーズになり、結束力も高まるでしょう。
モチベーションやエンゲージメントの向上
4つ目はモチベーションとエンゲージメントの向上です。モチベーションは仕事に対する意欲を指し、エンゲージメントは会社に対しての愛着や誇りといったつながりを指します。
前述の信頼関係の構築や最適な人材配置のほか、チーム成績の適切な評価や社会貢献の自覚などによって、モチベーションやエンゲージメントの向上が可能です。その結果、仕事に対する高い熱量や強い責任感が生まれ、チームの生産性の向上やイノベーションにつながる新規アイデアが期待できます。
ビジョンの共有・浸透
5つ目はビジョンの共有・浸透です。ビジョンは構想や展望を意味し、ここではチームのゴールとそこまでの道筋や方向性を指します。
短期間での達成目標だけでは、その仕事の意義が不鮮明になりがちです。一方、ビジョンが明確であれば、「今向き合っている業務が全体のなかでどの位置にあたり、それがゴールにどう結びついているのか」を自覚できます。結果として、個人としての責任感につながり、メンバー同士で共有することで連携も強化されるでしょう。
また、進むべき方向性が明確になり、意思決定もスムーズになることが期待できます。
イノベーションの促進
6つ目はイノベーションの促進です。イノベーションとは、革新や新機軸を意味し、ここでは新しい価値を生み出すアイデアや技術が生まれることを指します。イノベーションは、単に生産性が向上するだけではなく、企業が競争力を維持し、成長し続ける原動力となるため重要です。
メンバーが新しいアイデアやアプローチを発案しやすくなるように、前述の信頼関係の構築やマインドセットの刷新など環境を整えることがイノベーションの促進につながります。また、アイデアを出すための方法を習得・訓練できる機会を設けることも有効でしょう。メンバーの発案を聞くだけではなく、試行を支援するなどの受け入れ態勢も必要です。
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【目的別】チームビルディングの具体的な手法
目的別にチームビルディングの具体的な手法を解説します。
チームメンバー同士の信頼関係を深めたい場合
チームメンバー同士の信頼関係を深めたい場合は、その前提として緊張をほぐす手法であるアイスブレイクが有効です。アイスブレイクには、本題に入る前の雑談やゲームなどがあります。
ゲームのメリットは、緊張をほぐしつつ、楽しみながら進められる点です。信頼関係を深めるためには、コミュニケーション主体のゲームを選ぶとよいでしょう。また、1回限りであったり、時間制限があったりすると緊張を生みやすいため、繰り返し行えるものを選ぶのがポイントです。
チームビルディングの初期では、メンバー同士が遠慮してしまう場合があります。この場合、リーダーが主導してゲームを進めたり、1on1ミーティングで先に各メンバーとの信頼関係を構築し、次にメンバー同士を仲介するといった手法も有効です。
適切な人材配置を実現したい場合
適切な人材配置を実現したい場合は、メンバーの資料や本人との会話によって性格や能力、経験を見定めるほか、ゲーム中の言動を参考にすることも有効です。
ゲーム中のとっさの言動によって、それまで気付かなかった特性が垣間見えることがあります。各メンバーの強みや適性を見極めるには、ロールプレイングがおすすめです。ロールプレイングとは定められた役割になりきってもらうゲームです。例えば、消費者とカスタマーサポート、営業先と営業担当などの役割があります。
チーム内での適切な配置には、得意・不得意の判断だけではなく、相対的な位置づけも重要です。例えば、同じ強みを持つ2人がいる場合、どちらがより得意かを見極められるとよいでしょう。
チーム全体の結束を強めたい場合
チーム全体の結束を強めたい場合は、ワークショップがおすすめです。ワークショップとは、セミナーのように講師が一方的に話すのではなく、受講者が主体的に参加する体験型の講座を指します。
ワークショップでは、与えられた課題に対して、受講者が何かしらのアウトプットを提出します。チームメンバーと協働してアウトプットを目指すスタイルであれば、目標や課題解決のための試行錯誤を共有でき、議論を交わすきっかけになります。そのため、学びとともに結束を強められます。
ワークショップを実施する際は、メンバー全員が参加することが重要です。一度も発言しないメンバーが出ないように意見を求めるなど工夫しましょう。
組織のモチベーションを高めたい場合
組織のモチベーションを高めたい場合は、社内表彰がおすすめです。
ただし、モチベーションの向上につながる表彰をするためには、評価基準が公平になるように注意が必要です。表彰されなかったチームが納得いかない場合、かえって意欲を下げてしまう可能性があります。例えば、売上高だけが評価基準になっていて、プロセスを問わず為替レートのような外部要因によって表彰の有無に差が出れば公平とはいえません。経理部と人事部などのように単純に比較できない場合は部署ごとに表彰するといった不満の出ない評価方法を定めましょう。
評価基準を事前に明示しておくと、不満を避けられるだけでなく、チーム・組織全体のモチベーションアップにつなげやすくなります。
組織文化を改善したい場合
組織文化とは、無意識のうちに前提としている価値観であって社内で共有されているものを指します。組織文化は良いものとそうでないものがあり、例えば「残業するのは、時間管理が下手なせいだ」という組織文化のために、本来必要な残業すらも自粛してしまうのであれば生産性や進捗スピードを下げてしまいます。
組織文化を改善したい場合は、講義やワークショップがおすすめです。ただし、長い間根付いていた価値観を変えるのは容易ではないため、長期的に構えて繰り返し行う必要があります。部下は上司の発言に影響を受けやすいため、管理職から重点的に改善を進めていくのも有効です。
ビジョンの共有や浸透をさせたい場合も講義やワークショップがおすすめです。
革新的なアイデアを創出したい場合
革新的なアイデアを創出したい場合は、デザイン思考を用いたワークショップがおすすめです。
デザイン思考とは、顧客の立場から何を求めているのかを想像し、試行錯誤とブラッシュアップを図る思考法で、既存の考えや前例に捉われないアイデアが創出されやすいのが特徴です。
また、ワークショップは受講者の主体性を重視するため、革新的なアイデア創出に適しています。
「おかしなことを言って馬鹿にされないか」といった不安はアイデア創出の妨げになるため、「何を言っても否定されることはない」といった心理的安全性を高める仕組み作りも重要です。
チームビルディングの目的を達成するためのポイント
チームビルディングの目的を達成するための主なポイントを2つ紹介します。
役割を明確化する
各メンバーの役割と責任を明確にすると、他のメンバーに遠慮することなく自分の意見を言いやすくなり、割り振られた役割への責任感も強くなります。同時に、自分の裁量の範囲も明確になり、意思決定も早くなるでしょう。
役割を明確にする際、具体的過ぎる役割では該当する業務以外が自分の役割と感じにくいため、役割はある程度抽象的に割り振ることも重要です。例えば、「顧客リストの管理」と「顧客の管理」では範囲が異なります。漏れなくダブりなく割り振れるよう注意しましょう。これにより、環境が変化した際にも各自がするべきことを柔軟に判断できるチームになります。
また、役割をチーム内で共有することにより、「誰に聞けばよいのか」「誰の助けが必要か」といった疑問の答えも明確になり、連携もスムーズになります。
組織の整備をする
チームが円滑に機能するためには、組織の整備も必要です。
例えば、「業務日報の提出1つでも、退勤前に提出する」というルールでは、提出時刻や提出方法が曖昧です。「終業時刻〇分前から〇分前までに、定められた様式を使いメールで送る」などのルールを整備することで必要な業務が明確になります。
また、チーム内の連絡には緊急性や重要性の違いからさまざまな種類があります。突発的な事故・事件により業務に支障が出る場合には、「誰に何を使って連絡する」など内容によって連絡手段を分けることが重要です。これにより、緊急性のある報告が通常業務の報告に紛れてしまうことを防げます。
さらに、各メンバーが必要な情報にアクセスできるようにITツールなどを整備すると、業務の引継ぎや情報の共有が容易になるでしょう。
まとめ
チームが持っているポテンシャルを最大限に発揮するためには、チームビルディングが有効です。
チームビルディングには、信頼関係の構築やメンバーのモチベーション向上、イノベーションの促進などのさまざまな目的があります。それぞれの目的に応じてゲームやイベント、ワークショップなどを実施することで生産性の高いチームを作ることが可能です。
人事ZINEでは、チームビルディングを始める際の企画・準備や手順、オンラインで行う場合の手法などを解説した資料をご用意しました。効果的なチームビルディングを行うために、ぜひご活用ください。