【企業向け】インターンシップ開催のメリット・デメリットと実際の注意点
新卒採用の早期化が進み、夏や秋冬のインターンシップの開催を行う企業も増えてきました。
とはいえ、採用担当者の方の中でも「インターンを実施してもメリットをいまいち感じられない」と思っている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、インターンシップを開催する目的や種類、メリット・デメリットをあらためて解説していきます。
また、新卒採用における効果的なインターンシップの設計・実施にお役立ていただける資料をご用意しました。設計における考え方から、具体的な実施方法まで、情報をたっぷり詰め込んでいます。ぜひダウンロードして、自社のインターンシップ設計にご活用ください。
目次
なぜ今インターンシップが人気?企業が実施する背景と必要性
キャリタスリサーチによれば、2010年卒→2020年卒の約10年間のインターン市場推移を確認すると、学生参加率が51.6%→86.2%、企業の実施率が33.0%→74.9%となり、学生の参加率、企業の実施率共に増加傾向にあります。なぜ今インターンシップは人気なのでしょうか。
就職活動の早期化
現在インターンシップが注目される理由は、就職活動の早期化により、できるだけ早い段階で学生と接点を持ちたい企業が増加したことが挙げられます。
過去、企業優位と言われる買い手市場では、企業は新卒採用活動するにあたって、積極的に企業から学生と接触しなくとも、広報解禁日→選考解禁日と形式的なステップを踏むことにより、売り手市場の現環境よりも学生を集めることが比較的容易でした(もちろん、買い手市場でも採用難易度の高い学生や採用決定が出にくい企業もあります)。
しかし現在は就職活動の早期化や売り手市場化といった状況で、接点を持つ手段としてインターンシップが活用されています。
売り手市場の継続
売り手市場では、市場全体で見ると実質仕事が余っている状態が目立つことで学生優位とされていおり、さらに売り手市場の傾向は継続しています。知名度が高い大企業は依然として学生に人気ですが、一方で知名度が低い中小企業などは採用決定を出す以前に、企業が学生に対して採用活動していることを知ってもらうことすら難しくなってきています。そこで認知や興味関心獲得の手段としてインターンシップが活用されているのです。
認知獲得競争の激化
企業は早い段階で自社認知から候補者群を形成する狙いなどがあり、その手段としてインターンシップが注目されているということが考えられます。実際、早い段階から学生と接点を持つことにより、優秀な学生をプールしやすくなるでしょう。
インターンシップの目的については以下のページでも解説しています。
【期間別】インターンシップの種類と企業側のメリット・デメリット
インターンシップの実施期間別に『短期型』『中・長期型』の2種類に分け、それぞれ実施するメリット・デメリットを紹介します。
短期型インターンシップとは
短期型のインターンシップでは、主に1日程度のインターンシップとします。キャリタスリサーチによれば、2020年卒者の参加日数では、『半日』が24.0%、『1日』が37.7%としており、学生が参加したインターンの日数は、過半数が1日以内となっています。
短期型インターンシップのメリット
短期型インターンシップのメリットは、少ないリソースで学生の接点が持てることです。「グループワーク」「座学」などのコンテンツは1dayのインターンシップでよく取り上げられます。
短期型インターンシップのデメリット
短期型インターンシップのデメリットは、企業側が開催しやすい一方で、学生のニーズや満足度を意識しないとマイナスになってしまう場合もあります。
たとえば、インターンシップの内容を業界理解に重点を置いて、ナビサイトで広報掲載したとしましょう。
しかし、実際のインターンシップは企業認知・候補者群形成を意識するあまり、企業説明会のような自社求人の情報がメインになると、事前情報とギャップが生まれ、学生の不満につながります。
インターン集客数は上がるかも知れませんが、参加学生の体験満足度が下がった場合、結果的に採用まで結びつけることは困難になることがあります。
学生と接触することへのチャレンジは大切ですが、自社が短期インターンを開催する目的と、学生のニーズを加味しながら設計していきましょう。
中期・長期型インターンシップとは
中長期型のインターンシップは2日〜1ヶ月以上のインターンシップとします。
キャリタスリサーチによれば、2020年卒者の参加日数では、『2~4日』が24.6%、『1週間程度』が9.4%、『2週間程度』が2.6%、『3週間以上』が0.7%、『1ヶ月以上』が1.0%としています。
中期・長期型インターンシップのメリット
中期・長期型インターンシップのメリットとしては、短期よりも学生の企業理解だけでなく、企業の学生理解が深まり、相互理解が高い状態で接点を保ちながら選考に進んでもらいやすい点が挙げられます。
例えば、インターンシップを開催するにあたって書類選考などから得られた事前情報と実際の印象の照合、職場内の人との関わり方、仕事へ取り組む姿勢など、様々な観点から理解を図れます。
インターンシップで相互コミュ二ケーションを測った上で、お互いマッチング向上が見込めれば、採用決定人数の貢献が期待できるだけでなく、入社後の活躍と定着も期待できます。
結果的に、新規学生(相互理解の程度が薄い)への企業認知や候補者群形成などへ注ぐ予定であったリソースを軽減できるかも知れません(もちろん、逆にインターンシップを経てミスマッチが顕在化し、追加で候補者群を形成しなければならないケースも考えられます)。
しかし長期インターンのメリットである相互理解の程度は、短期インターンよりも大きいでしょう。
中期・長期型インターンシップのデメリット
中期・長期型インターンシップのデメリットとしては、短期インターンと比較して、かなりのリソース(特にマンパワー)が必要になることが挙げられます。
中・長期インターンシップを実施することにより、採用担当者は、現場社員や学生とのコニュニケーション機会も必然的に増えます。またインターンシッププログラムの準備、開催場所の確保、現場社員の手配など、多方面かつ長期的な動きを計画しなければなりません。
例えば、「実務」を体験するインターンシップでは、現場社員の理解が必要です。営業実務の体験であれば、インターンシップの目的を伝えた上で、お客様への同行は可能かなど、内容のすり合わせをする必要があります。
また、「プロジェクト」形式では、特定の課題に対してインターンシップに参加している学生が取り組む場合、必然的にアウトプットに対してのフィードバックが必要になります。この場合も現場社員の助力が必要になってくるでしょう。
結果として、短期インターンと比較して、かなりマンパワーが必要なことが挙げられます。
【時期別】インターンシップの種類と企業側のメリット・デメリット
インターンシップの実施時期別に『夏インターン』『秋・冬インターン』に分け、それぞれ実施するメリット・デメリットを紹介します。
夏インターンとは
夏インターンは、多くの学生が秋・冬インターンよりも志望業界への理解度が低い状態であり、企業理解に加えて業界理解のコンテンツが取りあげられる傾向があります。キャリタスリサーチによれば、2020卒者では8月実施では全体の23.8%としています。8月実施は1年間で最も開催頻度が高いです。
夏インターンのメリット
夏インターンのメリットとしては、企業が学生との早期接点を持てることが挙げられます。就職活動の早い段階で、学生に企業を知ってもらえるチャンスになります。
また、大学が夏休みということもあり、学生が通学している時期よりも比較的スケジューリングしやすいでしょう。
夏インターンのデメリット
夏インターンのデメリットとしては、インターンシップ実施後、本選考が始まるまで期間が開いてしまう場合、学生が選考に進むまでの繋ぎ止めが難しい場合があります。中小企業など採用にかけるマンパワーがそもそも少ない場合、繋ぎ止めの難易度は上がるでしょう。
夏インターン時点で学生が選考に進むモチベーションが上がったとしても、魅力づけなど維持していく工夫がなければ選考に至るのは難しいかも知れません。
秋・冬インターンとは
秋・冬時期は、学生の状態として夏時期よりもある程度業界理解は進んでおり、より具体的な企業理解・企業における職種毎の仕事内容理解にフォーカスする傾向があります。
キャリタスリサーチによれば、2020卒者では2月実施が全体の21.3%としています。2月実施は1年間で開催頻度が2番目に高いです。
秋・冬インターンのメリット
秋・冬インターンのメリットとしては、夏と比べて選考までの繋ぎ止めの難易度が下がり、比較的選考まで進んでもらいやすいことが挙げられます。秋・冬インターンシップでは(特に冬では)、学生の志望業界理解度も高い状態になりやすいのが特徴です。
インターンシップを経て相互理解が高まった上で、そのまま選考まで進んでもらえれば、採用優先度の高い候補者群形成に貢献できます(しかし、インターンシップを経験した結果、その学生が採用したい人物像と異なる場合も当然あります)。
秋・冬インターンのデメリット
秋・冬インターンのデメリットというよりも懸念点として、特に冬の時期では、企業理解や職種理解を行うことを目的と設定したならば、インターンシップをそもそも行わない方がいい場合があるかもしれません。
特に中小企業など少ないマンパワーの企業では、個別面談など1対1のコミュニケーションを用いた方が、結果的にインターンシップよりも相互理解を測った上で、選考に進む場合もあります。目的に応じて手段を変えていくことが大切です。
採用担当者が知るべきインターンシップの学生側のメリット・目的
インターンシップに参加する学生にはどのようなメリット・目的があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
業界・企業理解が進む
実際に企業の人と触れることで、雰囲気や働き方などを知ることができます。どれほど情報収集を行っても、インターンシップに参加しなければ分からない部分も多いでしょう。
自身が社会人として働く姿もイメージしやすくなりますし、業界に対するギャップやずれを回避することで、柔軟な捉え方が可能になります。
そのように「学生が業界・企業を理解できる」というメリットがインターンシップにはあります。
就活仲間・業界人との繋がりができる
同じインターンシップに参加している学生と知り合うことで情報交換できます。志望業界の情報共有だけでなく、同期入社の仲間になる可能性もあるでしょう。
また、幅広い年齢層の企業人と接することで、繋がりが期待できます。インターンシップ終了後に就活のアドバイスをもらえれば、モチベーションアップも見込めます。
インターンシップに参加することで、人事部の社員が「学生のどの部分を見ているのか」が分かることで就職活動の参考になるという利点もあるようです。
就職活動の準備ができる
グループワークやワークショップ、企業の人や人事担当者との対話機会を経験することで、実際の選考活動や面接などの予行演習になります。
企業について何も知らない状況で面接を受ける場合、どうしても緊張するものですが、事前の予行演習によってリラックスして臨める可能性があります。
インターンシップで経験した内容をエントリーシートに記載することで、面接の場で会話が広がることもあるでしょう。
経験者に聞く、インターンシップ開催の本音
インターンシップを実施する企業のメリットを期間や時期に分けて解説しましたが、ここからはインターンシップ開催経験がある採用担当者の本音を、実際の事例も交えながら紹介します。
当初のスケジュール通りに進めるのは困難
200〜300名の中小企業で、実務を体験してもらうインターンシップを開催した事例。インターン期間は長くしたかったものの、マンパワー面を考えて1日、いわゆる「1dayインターン」になったということです。時期も本当は秋から実施したかったところ、結局、1月上旬の年明けの実施になりました。
「秋インターンをやろう」と思っても、「どの社員に協力してもらおうか」「予算はどれくらいかかるか」など、考えることがたくさんあるのが現実です。開催が決定したものの、インターン情報の広報が遅れたなどの要因があり、年明けになりました。
採用担当者は年中動く「なんでも屋さん」
インターン内容は仕事の疑似体験です。営業の場合、実際に折衝する現場に同行できればよいのですが、クライアントの事情もあるため、営業の提案方法をロープレできる内容にしたという事例です。営業が提案している折衝場面を想定して楽しく行う流れをイメージしました。
実際、会社が大切にしている価値観を知ってもらうという狙いがあり、「こういう考え方を大事にしているよ」という部分を全面に出してロープレを体験できるプログラムを用意。ただし、ロープレという言葉だけに注目すると、学生によいイメージを持たれにくいかも知れません。会社としても目的がズレる可能性があるため、「企業体験」と言い換えて、伝え方を工夫しました。
採用担当者は企業体験のコンテンツの企画だけではなく、実際は実行やアフターフォローまで担う「なんでも屋さん」の立ち位置と言えるでしょう。
インターンは手間がかかります。広報解禁が3月スタートなので、3月までにじっくり準備できれば理想ですが、時期が前倒しになったことで、実際のところ採用担当者は年中にわたって活動する必要があります。「当年度の活動が落ち着いた」と思っても、次の採用年度に向けてすぐに準備を行う必要があるのです。
最も大変なのは集客
具体的な手間として、例えばインターンシップ会場や参加者を確保することが挙げられます。会場は自社開催が可能なケースもありますが、集客状況によって柔軟に変更しなくてはなりません。貸し会議室を予約しなければならないケースもあります。
前述したように、3月スタートを前倒しで開催することで集客回数や期間が増えたり、学生との連絡が前倒しになり手間が増えたりすることもあるのが現実です。
社内の協力者は営業社員やインターンコンテンツとして有力な若手社員など、内容によって変わります。インターンシップの内容と最適な人間を決め、アサインして日程を合わせ、学生を集客して会議室・備品の準備をするなかで、最も大変なのは集客です。
現場の社員に日程を開けてもらい、会場準備が完璧な状態になっても、集客した学生をインターンシップ当日まで維持することが大変といえます。集客時点でたくさんの学生が申し込んでいても、当日、半分ほどになっていたことも珍しくありません。
対策として、インターンシップ当日まで学生の気持ちを維持するために連絡が必要になることもあります。連絡手段はメール、LINEなどを試した結果LINEとなり、LINEは気軽に返信できる分、ある程度のところでやり取りを終えないと長引くことがあるため、注意が必要です。
インターンシップには、会社を知らない学生に知ってもらう機会が増える利点があります。業界を狭めていない学生に比較的早い段階でタッチできて、「この会社、意外と面白そうな仕事しているな」と学生に思ってもらえる機会も多くなります。
インターンシップに参加した学生が、その後選考に進んで内定をもらう状況になれば、開催の効果を実感できるでしょう。
選考まで進んでもらうための特典という工夫
冬のインターンシップは、業界のことを知ってもらいながら選考に進んでもらうという狙いで開催されることがあります。事前に会社を知ってインターンシップを希望した学生や業界研究を兼ねた学生など、色々な目的の学生が参加してくれる可能性があるのが魅力です。
業界を絞っている学生もいれば、たまたま日程が合った学生もいるはずですし、内容を見てから営業のインターンシップを希望した学生など、様々なケースが考えられるでしょう。
業界を絞っているなど、特定の業界に行くために参加した学生は3月ぐらいでも集客できますが、「インターンシップをやっているから来た」「営業がやってみたかった」などの学生は、3月より後半に接触するのは難しいため、早いタイミングで接触することの意義は大きいといえます。
学生に選考まで進んでもらう工夫としては、魅力的なコンテンツの用意が挙げられます。実際に来てもらってから、「思っていたのと違う」と思われないように、「思ってたより良かった」と言ってもらえるコンテンツ設計を目指すのが鍵になりそうです。例えばインターンシップ参加の特典をつけるなど、特別感を大事にして、「絶対に損をさせない」という印象を与えることがポイントでしょう。
用意すべき特典は、学生のニーズにもよりますが、例えば「インターンシップに来たからには選考を早くしたい」という学生には、特別な選考ステップを設けるのも一手でしょう。他にも特別に会社の人と会えるなど、通常接触の学生さんと違うことを盛り込んで、インターンシップに来た甲斐を持たせることが大切です。
メリットは学生との早期接点、デメリットは大変なこと
インターンシップ開催経験のメリットは、今まで会っていた学生とは違う学生に会えることでしょう。「採用活動が始まってから業界分析をしよう」「周囲の学生が本格的に動き始めたら自己分析しよう」という学生も多いものですが、その波に流されず、「インターンシップに行ってみたい」と思える純粋な学生と出会えるきっかけ、つまり早期接点を持てることはインターンシップの魅力の1つです。
一方、インターンシップのデメリットは、仕事が増えるなど手間がかかることです。従来は3月スタートだったのが、今まで採用活動していない時期に前倒しでインターンシップが流れ込みました。その結果、1年通してほっとする期間がなくなっている現場もあるようです。
「年度内の採用が終わったのに、もう次年度が始まったぞ」といった感じで、年度内の活動を振り返る暇もなく心労が重なる採用担当者も多いでしょう。
今の採用環境でインターンシップを開催するメリットは仕事量によります。インターンシップを行っても学生を選考までフォローできず、採用に繋がらなければメリットはありません。
採用担当者を含め、関わる人のリソース次第ですが、例えば今年度の採用が終わっていなければ、次年度のインターンシップを開催する場合ではないこともあります。
採用担当者が10人いて、インターンシップを開催するリソースがあれば開催すればよいですし、1人体制でもフォローできれば開催する価値はあります。フォローできなければ止めておく方が無難でしょう。
最後に
今回は、インターンのメリット・デメリットに加え、実施する目的・インターンの種類などを紹介してきました。
インターンシップを成功させるためには「フォロー」出来るかどうかが重要なポイントになります。
インターンシップをやるは良いが本来のメリットを享受できない事が無いように実施後のフォローまで設計して取り組むのが良いのではないでしょうか。ぜひ、自社のインターンシップ開催時の参考にして頂ければと思います。