ワンデーインターンシップとは?2023年の動向や実施内容、注意点を解説

ワンデーインターンシップとは、言葉の通り「1日で完結するインターンシップ」のことです。企業側には数多くの学生と接点を持てるメリットがあり、学生側には負担が少なく業界・企業研究ができるメリットがあります。
自社に対して、学生に興味を持ってもらう効果が期待できる一方で、内容によっては満足度が落ちてしまい、その後の採用活動にマイナスの影響を及ぼしてしまう可能性もあります。この記事では、ワンデーインターンシップを取り巻く2023年の最新の動向を踏まえつつ、実例や注意点を幅広くご紹介します。
また、本記事では紹介しきれなかったインターンシップのポイントを解説した資料をご用意しました。インターンシップ終了後のフォローについても紹介しています。ダウンロードしてご活用ください。

目次
ワンデーインターンシップとは?

まずはワンデーインターンシップの概要と、昨今のワンデーインターンシップを取り巻く状況について押さえておきましょう。
ワンデーインターンシップの概要
ワンデーインターンシップとは「1日だけで完結するインターンシップ」のことです。インターンシップといえば「就業体験」ですが、ワンデーインターンシップの場合は実務に携わることはほとんどなく、体験を通して自社に興味を持ってもらうことを主な目的としています。また、近年では対面ではなくWebでの開催も増えています。
ワンデーインターンシップの目的
通常、インターンシップとは企業理解の促進と選考を目的として行われることが多いですが、ワンデーインターンシップは選考と切り分けて行われることがほとんどです。
それではどのような目的で行うのかというと、以下の2つが挙げられます。
- より多くの学生と接点を持つこと
- 体験を通して学生に興味を持ってもらうこと
多くの学生と接点を持つことで、それだけ自社に合った学生と出会う機会が広がります。また、学生にとっても選考とは違った形での企業理解につながり、入社後のミスマッチを防ぐ効果が期待できます。
ワンデーインターンシップの動向
「マイナビ 2024年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(6月)」によると、6月のインターンシップ体験の参加率は24%となっています。2年連続で増加しており、学生側のインターンシップの参加方針は「短期間のプログラムにできるだけたくさん参加したい」「2~5日未満のプログラムにできるだけたくさん参加したい」が5割を超えています。
インターンシップは学生にとって、学業との両立も考慮しなければなりません。参加しやすい短期で、まずは「社会や企業」を体験できる形が学生に支持されていることが分かります。
「ワンデーインターンシップ」の呼称をめぐる動き
ワンデーインターンシップをめぐる動向としては、2017年に経団連が1日のインターンを容認したことから、実施する企業が増えてきたという経緯があります。ただ、「1日では就業体験にならない」「インターンは学生が選考の一環と認識している」という理由で、容認から一転、2021年3月に経団連は廃止する方針で大学側と合意しました。
このような動向から、大手ナビサイトでも現在は「ワンデーインターンシップ」から「ワンデー仕事体験」などの呼称に切り替えていることは押さえておく必要があるでしょう。
ワンデーインターンシップを実施するメリット

ワンデーインターンシップは、企業側・学生側の双方にメリットがあります。それぞれのメリットを以下にご紹介します。
企業側のメリット
企業側がワンデーインターンシップを実施する主なメリットは以下2点です。
実施コストを抑えられる
中長期のインターンシップは、受け入れ側にも相応の負担があるものです。プログラムの企画や現場社員の調整、当日のアテンドなどさまざまな業務が発生します。
一方で、ワンデーインターンシップは1日で完結するため、必然的に実施コストを抑えられるのがメリットです。
多くの学生と接点が持てる
多くの学生と接点が持てることは、ワンデーインターンシップのメリットです。ワンデーインターンシップは挑戦のしやすさから、多くの学生が参加します。そのため、1回の開催で多くの学生と出会うことができ、その分、自社に合った学生と出会える可能性が広がります。
学生側のメリット
次に、学生側がワンデーインターンシップに参加するメリットも押さえておきましょう。
スケジュールを確保しやすい
学生がインターンシップに参加するには、学業との両立も必要となります。中長期のインターンシップと比較するとスケジュールを確保するハードルは低く、気軽に参加することが可能です。
多くの企業のインターンに参加できる
ワンデーインターンシップは期間が短い分、多くの企業のインターンに参加できます。複数の企業のインターンに参加することで視野を広げたり人脈を広げたりできるのは、学生にとって大きなメリットといえるでしょう。
ワンデーインターンシップを実施するデメリット・注意点

企業と学生の双方にとってメリットのあるワンデーインターンシップですが、当然ながらメリットだけではありません。ここでは、デメリットと注意点についてご紹介します。
企業側のデメリット
企業側がワンデーインターンシップを実施する主なデメリットは以下の通りです。
自社への深い理解は期待できない
時間の限られたワンデーインターンシップでは実務体験をするプログラムは実質的に難しく、自社への深い理解を促すことまでは期待できません。あくまでも接点を持つ程度にとどまり、自社の魅力を存分に知ってもらうのが難しいことは、デメリットの1つといえるでしょう。
密度の高いコミュニケーションができない
ワンデーインターンシップは手軽に多くの学生と出会えますが、その一方で、お互いを理解し合えるような密度の高いコミュニケーションはどうしても難しくなります。プログラムの内容によっては充分に学生の期待に応えられず、満足度が低くなってしまう危険性もあります。
学生側のデメリット
続いて学生側にとってのデメリットも紹介します。
実践的な体験はできない
ワンデーインターンシップでもプログラム次第では実務を体験できますが、現実的に実践的な能力を身につけることは難しいものです。また、1日という短い期間での体験となるため、実際にその業務が自分に向いているか、やりがいを感じられるかなどを判断することは難しいでしょう。
内定に結びつかない
中長期のインターンシップでは内定に結びつくケースも少なくありませんが、ワンデーインターンシップでは企業側も受け入れる学生が多く、選考とは切り分けて考えることがほとんどです。業界・企業理解をメインに考えるならよいですが「選考に有利に働くものではない」ことは、学生のとってのデメリットになる可能性があります。
ワンデーインターンシップでは何をする?実施内容の例

ワンデーインターンシップの実施内容として、代表的な形式は以下の3つです。
- セミナー
- オフィス見学
- ワークショップ
実際には、セミナーとオフィス見学をあわせて1日で行うなど、組み合わせて実施するケースも少なくありません。以下では3つの形式について詳しく紹介しましょう。
セミナー
企業側から学生に対して、会社概要や業務内容、業界について説明するセミナー形式です。会社や仕事内容について説明を行うだけでなく、質疑応答を行ったり、先輩社員との座談会を設けたりとさまざまなケースがあります。
ワンデーインターンシップは採用選考とは別物とされることがほとんどですが、実情としては採用セミナーとの区別は難しくなってきています。なお、対面だけではなく、オンライン形式でワンデーインターンシップを行うケースもあります。
オフィス見学
学生に自社を訪れてもらうオフィス見学は、「職場の雰囲気を見られる」「社員が実際に働く姿を見られる」という点で、学生にとっても貴重な機会となります。リアルな姿を知ることができるため、入社後のギャップを軽減するという意味でも効果的でしょう。
内容としては、数時間の職場見学から、1日でオフィスや工場を回るプログラムまで、企画次第でさまざまなやり方があります。セミナー形式と比較すると受け入れ側の準備は必要ですが、企業のリアルを見られることから、学生の人気が得られやすい実施方法でもあります。
ワークショップ
ワークショップ形式とは、与えられたテーマに沿ってグループごとに課題や議論に取り組むプログラムをいいます。実際の仕事内容に近いものもあれば、ゲームに近いもの、ビジネスに対する意識を学べるものなど、内容はさまざまです。
学生にとっては、実際にアウトプットを伴うため、セミナー形式より深い理解につながります。また、企業にとっては、一般消費者である学生からのアイデアがもらえるという点もメリットとして挙げられるでしょう。
ワンデーインターンシップの企業事例
ワンデーインターンシップの具体例として、以下にいくつかの企業の実例をご紹介します。
新菱冷熱工業社「XR技術を用いた現場体験」
新菱冷熱工業は空調設備の設計・施工を行っている企業。ワンデーインターンシップでは、事業内容や仕事内容が体感できるようなプログラムを複数用意しています。以下はその一例です。
- 会社説明&最新技術XRの体験
- 研究所の施設見学&先輩社員との座談会
- 建築設備業界の説明&施工管理の現場見学、体験
いずれのプログラムも、座談会やグループワークが組み合わされており、「建物に命を吹き込む」仕事内容を肌で感じられる内容が特徴です。
ボルテージ社「ゲーム設計の体験」
ボルテージは映像・音声・音楽ソフトやインターネットコンテンツなどの企画・制作・販売を行う企業です。ワンデーインターンシップでは、シナリオディレクション体験やゲーム設計体験など、実際のボルテージでの業務がコンパクトに体験できるプログラムを行っています。
業務体験だけでなく、現場社員からのフィードバックも実施しており、働き心地や社風を体験できるのも特徴といえるでしょう。
アソビュー社「業界分析と新規事業提案」
アソビューは、「遊び産業」という新しいフィールドの創造を目指す企業です。ワンデーインターンシップでは、アソビューの事業に関わる体験ができるプログラムが用意されています。
まずは観光業界や地域課題・課題解決のためのソリューション営業について学んだうえで、グループワークを実施。最後は社員に向けてプレゼンを行い、そのフィードバックまでがもらえるため、学生側にとっては社会人としての業務の流れを体験することができます。
パーク24社「オンライン開催の謎解き業界研究」
パーク24は、タイムズの駐車場やカーシェアを提供している企業です。ワンデーインターンシップは、オンライン参加できる「謎解き」を通して業界研究ができる形式で行っています。
グループワークでの謎解きを通してパーク24グループに関するオリジナルの課題に取り組むことで、学生は楽しみながら業界研究ができ、課題解決能力やコミュニケーション能力を磨くことのできるコンテンツが特徴です。
企業がワンデーインターンシップを実施する手順

ワンデーインターンシップを実施するなら、その目的に合わせて最適なコンテンツを決める必要があります。以下に、実施する際の6つのステップをご紹介します。
1.目的を決める
まずはインターンシップの目的を決めます。自社が採用を行う理由から逆算し、以下の点を明確にしましょう。
- インターンシップの役割は何か
- 何をワンデーインターンシップのゴールとするか
2.求める人物像を言語化する
次のステップでは、求める人物像を言語化します。自社に合った、自社で活躍できる人物像はどのような人かを言語化してみましょう。
言語化は、「インターンを通してどのような学生と接点を持ちたいか」というターゲットを明確にすることにつながります。また、インターンに関わる社員全員で意識合わせができるメリットもあります。
3.開催形式を検討する
ここまでの流れを踏まえて、接点を持ちたい学生に出会うにはどの開催形式が適切かを検討します。「セミナー形式が最適か」「ワークショップにするのか」「どのような形式であれば自社のインターンシップの目的が達成されるのか」を考えましょう。
4.伝えるべき自社の魅力を決める
形式が決まれば、詳細のプログラムを検討します。ワンデーインターンシップは短い期間で学生に興味を持ってもらうことが必要となるため、伝えるべき自社の魅力は何か、学生の目線で考えましょう。
- 自社の持つビジョン
- 自社の安定性や成長力
- 商品力や事業内容
- 給与や福利厚生など待遇面
- キャリア形成や成長機会の有無
- 組織の風土
- 仕事内容
上記は一例ですが、自社の魅力を整理し、何を伝えるべきか分析してみてください。
5.要素を整理する
ここまで紹介したステップに沿って、ワンデーインターンシップの全体像を決めていきます。5W1Hの考え方を用いると整理がしやすいでしょう。
- 誰に(WHO)→どのような学生に?
- 何のために(WHY)→インターンの目的は?
- いつ(WHEN)→開催時期は?
- どこで(WHERE)→開催場所は?Webなのか対面なのか
- 何を(WHAT)→伝える内容は?
- どのように(HOW)→開催形式やコンテンツ内容は?
6.フォローする
ワンデーインターンシップを開催したら、その後のフォローまで行うことが重要です。具体的には、メールでの採用サイトの案内やエントリー受付、会社・工場見学会などの案内が挙げられます。
学生は多くのインターンに参加するため、自社に興味を持ってもらうには終了後もコンタクトを取り続けることが大切です。インターンのみで終わらせず、計画的にフォローを実施しましょう。
ワンデーインターンシップを実施するポイント

最後に、ワンデーインターンシップを実施する際に気をつけておきたいポイントをご紹介します。
内容を盛り込みすぎない
よくある失敗としては、「自社の魅力を伝えたい」「学生に満足してもらいたい」と思うあまり、内容を盛り込みすぎてしまうことが挙げられます。盛りだくさんのコンテンツは一見良いことに思えますが、実際に1つひとつが希薄になってしまっては本末転倒です。
1日という限られた時間で学生とコミュニケーションを取るには、内容を絞り、負担なく伝えられる量をよく見極めて判断することが重要です。
インターンならではの内容にする
社外で行うセミナーや採用セミナーとの違いを明確にし、インターンならではの内容とすることも心がけておきたいことの1つです。「インターン」をうたっているにもかかわらず、これらのセミナーと変化のない内容の場合、学生の満足度が下がってしまう可能性があるからです。
あくまで、学生にとって実りのある「職業体験ができた」と感じられるような内容となるよう検討しましょう。
まとめ

ワンデーインターンシップは2023年現在、多くの学生の支持を集めており、今後も多くの企業が開催していくものと見られます。
ワンデーインターンシップにはメリットが数多くあります。導入するなら「どのように学生に興味を持ってもらうか」「1日で体験してもらうにはどの程度のコンテンツが適切か」など、学生目線に立って検討しましょう。
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