【辞令の無料テンプレート】辞令書の書き方と交付の方法を解説
辞令とは、企業の人事に関する命令を通知する書類です。入社・採用、異動・転勤、昇格・昇進などのタイミングで出すことが必要となり、人事担当者は辞令の意味や基本的な書き方、辞令を出す際の流れなどについて理解しておく必要があります。
また、人事異動をめぐってトラブルに発展しやすいため、辞令の出し方には注意が必要です。
今回は辞令の交付方法や各種辞令のテンプレート、辞令交付によるトラブル回避のための注意点などについて解説します。
以下に、辞令のテンプレート集(Word)をご用意しております。異動や退職など場面別の例文を参考にしていただけます。ぜひダウンロードのうえご活用ください。
辞令とは
辞令は、通常、任命や人事異動を含む社内公式の通知です。任命や昇進、異動などの人事決定が正式に記録された書面で、関係者に交付される場合は「辞令書」とも呼ばれます。ここでは、内示・発令・任命との違いや、辞令の種類を解説します。
内示・発令・任命との違い
辞令と混同しやすいワードとして、「内示」「発令」「任命」があります。それぞれの定義、辞令との違いは以下の通りです。
単語 | 定義 | 辞令との違い |
---|---|---|
内示 | 公式な発令や任命が行われる前に、関係者に対してその情報を伝えること。あるポジションへの昇進や異動について、関係者が事前に準備や調整を行えるようにするために実施される。 | 公式に伝えられるかどうか(「内示」は非公式での発表) |
発令 | 人事異動や職務に関する公式な決定を正式に発表すること。組織内での正式な通知であり、関係者に対する正式な指示を意味する。 | 「発令」は通知をする行為を、「辞令」は通知そのものを指す傾向が強い |
任命 | 個人を特定の役職や職務に正式に割り当てること。新しいポジションへの昇進や新たな責任の割り当てなど。 | 「任命」は、幹部ポスト・特別ポストなど特定の役職に就く際に使われることが多い |
辞令の種類
辞令の種類は、以下の表の通りです。
辞令の種類 | 特徴 |
---|---|
採用辞令 | 新しい従業員が組織に採用されたことを公式に通知する辞令。採用の日付や基本給、試用期間などを書面で交付する。 |
配属決定辞令 | 従業員が特定の部署やプロジェクトに配属されることを正式に通知する辞令。従業員の新しい役割や職務、配属先の部署やプロジェクトに関する詳細情報を記載する。 |
異動・転勤辞令 | 従業員の役職の変更や部署異動、地理的な転勤を公式に記録する辞令。役職や転勤先の場所や、異動先の部署、転勤の効力発生日などの情報を記載する。 |
昇格・降格辞令 | 従業員の役職が変更されることを公式に通知するための辞令。それぞれ新しい役職、職務の内容、効力発生日などの情報を記載する。なお「異動」は役職の変更も含むことから、この辞令も「異動辞令」と括られることがある。 |
退職辞令 | 従業員が組織を退職することを正式に通知する辞令。退職証明書などの書面を発行するため、退職辞令を省略する会社もある。 |
辞令の効力
辞令には、法的な効力はありませんが、契約上の効力はあります。正規雇用の場合、長期的に従業員を雇用することを前提として、一般的には勤務地や職種を限定していません。会社には配置転換や人事異動の命令権があり、「もし従業員がこれを拒否する場合は、懲戒解雇としても問題はない」との過去の判例があります。
そのため、従業員が辞令を拒否するのは、基本的に不可です。ただし人権侵害など法令違反となる内容の辞令や、雇用契約の内容とずれがある場合など、特定のケースでは拒否できる可能性もあります。
人権侵害など法令違反となる内容の辞令としては、例えば「合理的な理由なく従業員を海外転勤にする」「特定の性別の従業員のみを降格にする」「特定の人種に属する従業員を意図的に不利な位置に異動する」などです。
雇用契約の内容とずれがある辞令の具体例としては、「技術者として雇用された従業員に対し専門外の管理職務を強制する」など、雇用契約で定められた職務内容や責任範囲と明らかに異なる職務を強いるような場合が挙げられます。
辞令の交付方法・手順
辞令の主な交付方法・手順は、以下の3ステップです。
- 手順1.内示を伝える
- 手順2.発令する
- 手順3.辞令書の交付
それぞれの手順を詳しく解説します。
手順1.内示を伝える
まず、人事異動や職務の変更が予定されている従業員を特定し、変更される職務や異動先の部署など内示に含める情報を整理します。内示は、個別の面談を通じて行われるのが一般的で、従業員からの質問や懸念に応じて必要な情報を提供します。
先述の通り、内示は組織における人事異動や職務の変更に関する情報を、正式な辞令が交付される前に、関係する従業員やその上司に伝える手続きです。特に引っ越しなどの準備が必要な場合に重要で、一般的に辞令交付の1〜3ヶ月前に行われます。
手順2.発令する
特定の従業員に内示を済ませたら、人事異動や職務の変更を正式に発表する「発令」を行います。大規模な異動や重要な職務変更の場合、社内報や掲示板、会社のイントラネットなどを通じて組織全体に公表するケースも珍しくありません。
一方、個別のケースや個人的な情報が関わる場合は、直接本人にのみ通知される場合もあります。発令時は、辞令の内容を正式な文書として作成します。該当する従業員の名前や新しい役職・部署、発令日などの情報を記載します。
手順3.辞令書の交付
発令後は、辞令書の交付をします。辞令書は、直接的な面談や公式の式典、あるいは書面の手渡しといった方法で交付されるのが一般的です。辞令書の交付後は、従業員からの質問に対応し、新しい役職・職務に対するサポートをします。
交付する時期については、発令日の前や当日など会社によってさまざまです。新規雇い入れの際は、入社式と同時に交付するケースも多くあります。
辞令書に記載が必要な項目
辞令に決まった書式はありませんが、基本的に「いつ、誰に対して、誰から、どのような辞令を発令するのか」について、漏れなく記載する必要があります。
項目1.発令日
発令日とは、辞令が効力を発する日のことです。辞令には発令日を必ず記載します。
項目2.受令者
受令者とは、辞令を伝える対象となる人のことです。氏名だけでなく現在の役職名を併せて記載します。
項目3.発令者
発令者とは、辞令を発令する会社の責任者のことで、通常は代表取締役や社長を発令者として辞令を作成します。
辞令は、社内文書なので、一般的には社長印などの押印は省略されますが、正式に発行していることを示すために押印する企業もあります。
項目4.辞令内容
辞令の内容は、伝達する内容を簡潔に記載します。
昇格や転勤の辞令などでは、従業員のモチベーションを高める意味で、「貴殿の活躍を希望します」や「社業の隆盛に貢献されることを期待します」など、励ましの言葉などを添えることもあります。
辞令書の例文とテンプレート
辞令は記載すべき項目が決まっているため、作成にあたってはテンプレートを利用するのが効率的です。
それぞれのケースの例文を紹介しますので、自社の内容にあわせてご確認ください。
以下の編集可能な辞令テンプレート集もダウンロード可能ですので、ぜひご活用ください。
異動辞令・転勤辞令の場合
○○年○○月○○日付をもって、現職の任を解き、○○○○への異動を命ずる。
(新任地での活躍を期待します。)
昇格辞令の場合
○○年○○月○○日をもって○○部○○課課長の任を解き、同日付けをもって○○部部長に任命する。
(よりいっそう職務に励み社業の隆盛に貢献されることを期待します。)
降格辞令の場合
○○年○○月○○日をもって○○部○○課課長の任を解き、同日付けをもって○○部○○課勤務を命じます。
採用辞令の場合
○○年○○日付けをもって正社員に採用し、○○部○○課勤務を命じます。
(今後の活躍と、社業の隆盛に貢献されることを期待します。)
退職辞令の場合
○○年○○日付けをもって、(社内規定により定年となるため)退職となることを通知します。
辞令交付によるトラブルを避けるための注意点
辞令を交付する際には、不要なトラブルを避けるためにも、次のような点に注意することが必要です。
内示の際に十分な説明を行う
辞令は会社からの業務命令であるため、発令されたら原則として、従業員は拒否することができません。
そのため従業員が辞令の内容に対して不服に思う場合には、離職してしまう可能性があります。
特に、異動や転勤、降格などに関わる辞令の際には、内示を行い、本人に対して辞令の必要性や内容について、十分に説明を行う必要があります。
従業員の事情に配慮する
原則、従業員は会社の命令には従わなければなりません。
しかし、配置転換や転勤などの場合では、介護が必要な家族がいたり、本人が定期的に通院が必要だったりと、応じるのが難しい事情があるケースも考えられます。
従業員の離職を防ぐためにも、そのような事情に配慮して、内示の際に本人とよく話し合うことが大切です。
情報漏洩を防ぐルールを設定する
辞令交付において情報漏洩を防ぐためのルール設定は、トラブルを避けるうえで重要です。情報が漏れると、不公平感や組織への不信感、人間関係の悪化などさまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。人事関連の業務に従事する従業員には、辞令に関する情報の秘密を厳守するよう義務付けましょう。
情報漏洩を防ぐルールの設定としては、情報公開範囲の設定があります。具体的には、辞令に関する情報をどの従業員グループや部署に公開するかを明確に決定します。例えば特定の部署やチーム内のみ、または全従業員への公開などです。情報公開範囲とともに、口外禁止期間(いつまで内示情報を隠しておくべきか)を明確化しておくのもよいでしょう。
ピンポイント採用で辞令トラブルを防ぐ
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辞令についてよくある疑問
辞令についてよくある疑問は、以下の3つです。
- 辞令を出す時期・タイミングは?
- 辞令は出さなくてもよい?
- 辞令書に押印は必須?
それぞれの疑問に対する答えを詳しく紹介します。
辞令を出す時期・タイミングは?
辞令を出す時期・タイミングについての決まりは特にありませんが、決算月の後が一般的です。例えば3月決算なら4月、9月決算なら10月を着任日とする辞令が多いとされています。
内示は、転勤などの詳細や、当人の状況にあわせてタイミングを考える必要があります。遅くとも着任日の2週間前、引っ越しが伴うなら1ヶ月前、家族のいる人なら3ヶ月前には示しましょう。
辞令は出さなくてもよい?
法律上、辞令書の書面での提供は必須ではありませんが、実務上は辞令書を用いることに多くのメリットがあります。まず書面化された辞令は、人事決定の明確な証拠として機能します。何かトラブルが発生した場合に、事実関係を明確にするのに役立つでしょう。
書面による辞令は、社内での人事決定の透明性を高める点でも重要です。大規模な組織では、口頭で1つずつ伝える必要がないため、効率的な伝達手段としても機能します。
辞令書に押印は必須?
辞令書は法律で規定された文書ではなく、あくまで会社が作成する「社内文書」なので、基本的に角印・代表印などの押印は不要です。ただし会社が正式に発行したことを示すために、あえて押印する場合もあります。
押印する場合も形式は自由で、実際に紙に押印する形でも、PDFの画像として印を残す形でも問題ありません。発行する辞令が多い場合は、印刷もしくは押印を省略するなど、状況に合わせて柔軟にやり方を変えるとよいでしょう。
まとめ
辞令は、企業の人事に関する命令を通知する書類です。
辞令に書く内容はある程度決まっているので、テンプレートを活用すればスムーズに作成できるでしょう。
辞令の通知に際して従業員が辞令の内容に不服を感じている場合、離職などのトラブルにつながる可能性があります。
辞令交付の際には、受令者に十分な説明をし、受令者の事情にも配慮したうえで辞令交付を行いましょう。
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