生き残る企業の探し方―成長性・将来性は「進化」で見る! vol.1 多角化

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日本には、ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、さまざまな危機も乗り越えながら、自分たちの事業を進化させて、長く経営を存続させている企業がたくさんあります。
ここでは、そんな進化を続ける企業の見極め方について考えていきましょう。

 

vol.1のキーワードは「多角化」です。

自社の事業領域を広げていく「多角化」によって進化を目指す企業は数多くあります。既存の技術や顧客層、ブランド力を活用しながら、どれだけ相乗効果を得られるかが成功の鍵となります。

 

 

多角化は最も代表的な企業進化の手段

多角化とは、自社が手掛ける事業領域を広げることで、規模の拡大や収益力の強化、既存事業との相乗効果を得ることを指します。一般に、創業の段階から複数の事業を手掛ける企業は少ないので、多角化によって事業拡大を図ることは、企業進化のための代表的な手段といえます。

多角化は主に4 つのタイプに分けることができます。

 

①総合型(水平型)

自社が持つ技術やノウハウを活用して、既存の顧客に対し新たな製品・サービスを提供していくタイプの多角化です。スーパーがコンビニ事業やドラッグストア事業に参入したり、スポーツシューズのメーカーが、ウエアなど他のスポーツ用品に参入したりする例がこれに当たります。

総合型(水平型)の多角化を行った代表的な企業として、味の素があります。

同社は1908 年、アミノ酸の一種であるグルタミン酸を原料としたうま味調味料の製造方法を開発。翌年に「味の素」として発売しました。調味料メーカーとしてスタートした同社はその後、インスタント向けのコーヒーやスープ、マヨネーズ、さらに飼料や医薬品などの事業に次々と参入。アミノ酸技術を核に、食と健康に関わるさまざまな事業を手掛ける総合食品メーカーへと進化していきました。
食品メーカーは専業メーカーが多く、そのなかで多角化によって大きな進化を遂げた数少ない企業といえます。

 

②バリューチェーン型(垂直型)

 

企業がもともと持っている原材料の仕入れルートや顧客への販売ルートの中で、顧客や製品分野は変えずに、川上(原材料に近い)・川下(顧客に近い)といった流れのポジションを変えて事業を展開するタイプの多角化です。
食品メーカーが飲食店を手掛けたり、小売業者が製品の開発製造までを展開したりするケースがこれに当たります。川上・川下の事業を自社で手掛けることで、調達先や販売網を自社で確保することができます。

カゴメ伊藤園といった食品・飲料メーカーが、農業に参入する例などが多く見られます。
またカジュアル衣料店「ユニクロ」「GU」などを展開するファーストリテイリングは、もともとは衣料品の小売業者でしたが、自社で製品開発を手掛けるようになり、いわゆる製造小売業(SPA)へと進化して劇的な成長を遂げました。

品目ごとのきめ細かい売れ行きデータなどを自社で分析し、それによって生産量を調整したり、次の商品企画に生かしたりすることができ、収益性の向上を図れるのが特徴です。

 

③新市場開拓型(集中型)

 

既存の技術やノウハウを活用して生み出した製品・サービスで、新たな顧客を獲得するタイプの多角化です。二輪車メーカーがロボット事業に参入する例などがこれに当たります。

近年、新市場開拓型(集中型)の多角化によって大きな進化を遂げているのが東レ帝人などの繊維メーカーです。
これまで繊維メーカーの顧客といえばアパレル業界が中心でしたが、「炭素繊維」を開発したことで大きく飛躍しました。炭素繊維は炭素を含んだ繊維を高温で加熱することでつくられる先端素材。航空機メーカーや自動車メーカーを顧客に、高機能工業材料として供給されるようになりました。

またコンビニ業界も、このタイプの進化を遂げた例です。
当初、食品や日用品を早朝・深夜でも購入できる小型の小売店として登場しました。
しかしその後、銀行ATMを設置したり、宅配便受け付けや公共料金支払いの窓口機能を備えたり、医薬品やいれ立てコーヒーを提供するなど、全く新しいサービスを取り入れ、単なる小売業から生活インフラを提供するサービス業へと進化していきました。その結果、新しい顧客層と市場を開拓することに成功しています。

 

④異業種参入型(集成型)

 

従来の事業分野と全く違った分野で、全く新しい顧客層を対象とするような多角化に挑む企業もあります。

パソコンメーカーとして創業した米アップルが、2001年に携帯型デジタル音楽プレーヤー「iPod」を発売、さらに音楽管理ソフト「iTunes」と配信サービス「iTunes Store」も開始し、新しい音楽市場を開拓したのは代表的な例です。現在はストリーミング型の「Apple Music 」を展開しています。

異業種参入型(集成型)はリスクが大きいのですが、こうした意欲的な多角化事例は日本にも見られます。

その1 つが富士フイルムHD の多角化です。
社名の通り、写真フィルムの国産化を目指して1934 年に創業。写真フィルムでは米コダック社と世界シェアを二分するほどの有力企業でしたが、デジタルカメラの普及に伴って写真フィルム需要が急速に縮小していくのに対応するため、2000 年代前半から「脱・フィルム」を目指して大規模な事業の多角化に取り組みました。
フィルム技術で培った技術を土台にしつつ、デジタルカメラや医薬品、化粧品、液晶パネル向けの素材技術などの開発に着手。着実に成果を上げています。

 

就活で見極めたい、企業の進化

多角化は企業進化の重要な手段ですが、万能ではありません。
多角化によって広げた事業の収益が期待したほど伸びなかったり、本業との相乗効果が薄かったりした場合、むしろ成長の足かせになります。近年は多角化によって進化を遂げた企業が、その抜本的な見直しによってさらなる進化を模索している例が出ています。

就活では、企業サイトなどに掲載されている次の2つに注目することをお勧めします。

1つ目は企業の「事業ポートフォリオ」と「売上構成」についてです。各事業が売上高全体のどのくらいを占めているか、構成比を知ることができます。
また、思いもしない事業を手掛けていたり、それが伸びていたりなど新たな発見をすることもあります。

2つ目は企業の「沿革・歴史」についてのページです。その企業がいつどのような事業を始めて、どのように事業を発展させてきたのか、その進化の過程をつかむことができるでしょう。

 

このように、興味のない業界・企業であっても、調べてみると大きな発見があるかもしれません。
就活の視野を広げるためにも、しっかりと業界・企業研究に取り組みましょう。