生き残る企業の探し方―成長性・将来性は「進化」で見る!vol.4 新製品開発

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日本には、ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、さまざまな危機も乗り越えながら、自分たちの事業を進化させて、長く経営を存続させている企業がたくさんあります。
ここでは、そんな進化を続ける企業の見極め方について考えていきましょう。

一見、成熟化した市場でも、魅力的な新製品を生み出す力があれば長く成長を続けることができます。生活用品や文具など、日本には優れた新製品開発力を備えた製造業が多数存在しています。

コモディティー化を避け、進化を続ける原動力

新しい製品を生み出し続ける製品開発力は、企業の成長性を維持するための最も基本的な力です。

コモディティー(日用品)化という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ある製品が日用品のように広く普及し、技術的にも成熟して、価格以外では他社と差異化できなくなる状態を指します。企業としては収益が得にくくなる状態といえます。

冷蔵庫やエアコン、テレビやDVDプレーヤーなどのように、初めて登場したときは画期的な製品であっても、時間が経過すればやがてコモディティー化していくものです。収益性を維持するためには、新たな機能を加えるなどして付加価値を高めた新製品を投入していく必要があります。

逆に、コモディティー化した市場に付加価値の高い「新製品」を投入し続け、その価値を認められるような企業は非常に強いのです。一見、成熟化しているかに見える製品分野でも、成長を維持することができます。

独自の開発体制や企業文化で新製品を生む環境を形成

事業を多角化するのではなく、新たな製品を開発し続けることで地道な進化を果たしている企業も数多くあります。

海外では米スリーエムがその代表例です。1902 年創業の歴史ある企業であり、「ポスト・イット」や「セロハンテープ」などを開発したことでも知られています。社内の研究員に対し、「勤務時間の15%を自分の好きな研究に使ってよい」とするなど、新製品の開発を促すための環境を整えている点に特徴があります。この考え方を米グーグルが参考にしたことも有名です。

また日本国内では、生活用品大手・花王の新製品開発力の高さが知られています。
石けんやシャンプー、衣料用洗剤といったトイレタリー製品の国内トップ企業であり、飲料や化粧品も手掛けています。素材・原料から開発・一貫生産していること、独自の物流・販売網を有し、消費者のニーズをきめ細かく吸い上げるマーケティング体制を確立していることが強みです。

古くは1980 年代にコンパクト洗剤の先駆けとなった「アタック」、1990年代には手軽に掃除ができる「フローリング用クイックルワイパー」、2000年代以降は特定保健用食品「ヘルシア緑茶」など、多くのヒット商品を生み出してきました。アタックは2019年に「アタックZERO」としてリニューアルし、ワンプッシュ型の容器を取り入れるなど、今も開発が続いています。花王の年間売上高は約1兆5000 億円(2019年)に上ります。

また、同じく生活用品大手の小林製薬も、「のどぬ~るスプレー」「熱さまシート」など、独自性のある商品開発力とネーミングを武器に成長してきた企業です。

全社員が新製品のアイデアを出せる提案制度があり、独創的な製品を生むための開発体制が整っています。当期連結純利益は2019年12月期まで22期連続で過去最高を更新しています。

このほかでは、パイロットコーポレーション、ゼブラコクヨなどの文具メーカーの中にも、製品開発力を武器に創業から100年を超えた企業が数多くあります。文具市場も成熟化していますが、消せるボールペンや芯が折れないシャープペンシルなど、消費者の潜在的なニーズに応えるような品質とユニークさを備えた製品を生み出しています。

研究開発費だけでは製品開発力は見通せない

一般的に企業の新製品開発力を判断する指標としては、「研究開発費」に注目することが多いものです。日本においては、自動車、電機、製薬などの業界を中心に、大規模な予算を投じている企業は少なくありません。

しかし、研究開発によって生まれた新技術が、必ずしも魅力的な新製品を生み出すとは限らないのです。例えば、世界的な大ヒットとなった米アップルの音楽プレーヤー「iPod」は、既存の技術を寄せ集めた製品に過ぎなかったのですが、技術の組み合わせ方の斬新さが広く消費者の評価を得ました。

前述の花王や小林製薬が優れているのも、技術力の高さはもちろんですが、それを消費者目線の新製品づくりにつなげるような開発体制や企業文化を持っていることが大きいのです。

研究開発費の多さではなく、生み出した新製品がどれだけ市場で評価され、自社の売上高に貢献しているかを示す指標として「新製品売上高比率」があります。「新製品比率」と呼ぶ場合もあります。

企業によって定義は異なりますが、おおむね発売後3~5年の製品を「新製品」として、その売上高が全体の売上高に占める割合を示したものです。

例えば前述の小林製薬は、4年以内の新製品の売上高比率を公表しており、2022年の目標を20%以上(国内)としています。

また、アイリスオーヤマは、1年間で約1000の新商品を発売。新製品売上高比率は64%と驚異的な数字です(発売後3年以内の製品)。新型コロナウイルス感染防止のため全国的にマスクが不足していた2020年4月に国内産マスクの増強を発表し、6月に製造・販売するなど、その対応の速さで注目を集めたのも記憶に新しいところです。

新製品売上高比率は全ての企業が公表しているわけではありませんが、その数値が高ければ高いほど、過去に生み出した製品に依存していないこと、収益性の高い新製品を開発する能力が高いことを示しています。企業の新製品開発力を判断できる興味深いデータなので、就職活動で企業研究するときにはぜひ注目してください。

新製品売上高比率は、企業のIR情報や中期計画の目標として挙げる企業があるほか、新聞などの経営者インタビューなどで紹介される場合もあります。