新卒採用と中途採用の違いとは?目的・費用・手法など7つのテーマで比較
採用の現場で新卒採用と中途採用の違いはよく議論になるテーマですが、どちらも一長一短で、「どちらにどのくらいのリソースを投入するか」という選択は、企業の現状と今後の計画によって異なります。
本記事では、新卒採用と中途採用の特徴、それぞれのメリットと主な手法、さらに両者の違いを7つのテーマごとに詳細に解説します。
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目次
新卒採用の特徴・メリットと主な手法
新卒採用と中途採用の具体的な比較に入る前に、まずここでは新卒採用の特徴やメリット、主な手法を紹介します。
特徴
新卒採用とは、高校・専門学校・大学を卒業見込みの学生を対象に、卒業前の決まった時期に多くの企業が一斉に開始する採用活動です。新卒採用の特徴は、人柄や志向といったポテンシャルに重点を置いて採用基準を設定することです。
メリット
新卒採用の主なメリットは以下の通りです。
- 自社文化と合致した人材の確保・育成
- 次世代幹部候補の育成
- 長期的な人材確保
- 低い採用・人事コスト
- 組織の新陳代謝
まず、新卒者は自社の文化や方針を受け入れやすい未経験者であるため、企業文化の継承や、次世代の幹部候補の育成につながります。
また、新卒採用は依然として長期の雇用契約が前提なので、組織への愛着や帰属意識を高めることが期待でき、離職率低下や組織の安定にもつながるでしょう。
さらに、新卒者ではまだ年収が低く、多くの場合人材紹介やヘッドハンティングなどの外部サービスを必要としないため、採用・人事コストを抑制できます。新卒者は基本的に若年層であり、組織の新陳代謝と活性化を促進します。
主な手法
新卒採用で用いられる主な手法は以下の通りです。
- 就職サイト・ナビサイト
- 新卒紹介サービス
- 合同説明会
- オンライン説明会
- 各種イベント
- ダイレクトリクルーティング
- リファラル採用
- ソーシャルリクルーティング(SNS)
- 自社の採用サイト
就職サイトやナビサイトを利用すると、自社の情報を多数の新卒者に対して一斉に公開できます。新卒紹介サービスは専門のエージェントがマッチングを行い、自社の条件に合う候補者を紹介してくれます。
合同説明会・オンライン説明会や各種イベントは、多くの新卒者に対して自社の魅力をアピールする機会です。多様なバックグラウンドを持つ新卒者に出会うことができます。
ダイレクトリクルーティングは、自社の採用要件を満たす特定の候補者に直接アプローチし、個別にコミュニケーションを取る手法です。リファラル採用は社員が自社に推薦する新卒者を採用する手法で、社員が推薦することで信頼性が増します。
ソーシャルリクルーティングではSNSを利用して求職者にアピールし、自社の採用サイトでは自社の企業文化や仕事内容、求める人材像を具体的に伝えることができます。
これらの方法を組み合わせることで、より効果的・スムーズな新卒採用活動が可能となります。
中途採用の特徴・メリットと主な手法
新卒採用の基本的なポイントを紹介したところで、中途採用の特徴・メリットや手法についても触れていきます。
特徴
中途採用の特徴は、特定のポストに対して、具体的なスキルや実績を持った人材の獲得を目指すことです。中途採用では、応募者の経歴や過去の職務内容に注目し、自社の業務に即戦力となる人材を見極めます。また、中途採用は、新卒採用と違って年間を通して行えるため、組織のニーズに応じて柔軟に人員を確保できます。
メリット
中途採用には、以下のようなメリットがあります。
- 経験豊富な即戦力人材を採用できる
- 多様な人材を採用できる
- 不足人材を機動的に確保できる
中途採用では、実務経験を持つ即戦力人材を迅速に確保することで、教育期間や研修費用を抑えながら、より早く成果を得られるという利点があります。
また、異業種や異職種からの転職者を受け入れることで、多様なバックグラウンドや視点を組織に取り入れ、自社のイノベーションや競争力向上につなげることも可能です。
さらに、中途採用は新卒採用のように採用活動時期が決まっているわけではないため、自社のニーズに応じて必要な人材の確保に動くこともできます。
主な手法
中途採用には、主に以下のような手法があります。
- 転職サイト・求人検索サイト
- 人材紹介サービス・ヘッドハンティング
- ダイレクトリクルーティング
- 転職フェア
- ハローワーク
- リファラル採用
- オウンドメディアリクルーテング
転職サイトや求人検索サイトは、自社の求人情報を広く公開し、大量の候補者にリーチするのに役立ちます。人材紹介サービスやヘッドハンティングは、専門のエージェントが候補者を見つけて紹介してくれるサービスで、特に求めるスキルや経験を持つ人材を効率的に探すことができます。
ダイレクトリクルーティングは、企業自身が特定の候補者に直接アプローチする手法で、自社が求める人材にピンポイントで訴求する際に有用です。転職フェアは多数の求職者と直接対話できる場で、ハローワークは公共の職業安定所で、多種多様な求職者と接触できます。
リファラル採用は、社員が推薦する人材を採用する方法です。オウンドメディアリクルーティングでは、自社のWebサイトやSNSなどを活用して、自社の事業内容や働き方を訴求できます。
新卒採用と中途採用の違いを7つのテーマごとに比較
企業が人材を採用する際には、新卒採用と中途採用それぞれの特徴やメリット・デメリットを踏まえて、どちらを選択するかが重要なポイントとなります。ここでは、新卒採用と中途採用の違いを7つのテーマごとに見ていきます。
項目 | 新卒採用 | 中途採用 |
---|---|---|
採用目的 | 長期的な人材育成と将来的な幹部育成 | 即戦力としての採用、事業拡大や欠員補充など |
要件 | ポテンシャル重視 | 具体的なスキルと経験の要求 |
待遇 | 一律の給与 | 経験やスキルに基づく給与 |
採用期間 | 一斉かつ固定期間 | 応募者による個別の選考、固定期間ではないこと |
採用手法 | ナビサイト 説明会 大学や学校との連携 | 求人広告 人材紹介会社 求人サービス |
採用費用 | コストが割安 | 個別に行われるためコストが高くなることもある |
研修方法 | 企業研修や専門教育プログラム | 研修は最低限で、即戦力人材としての業務開始が期待される |
採用目的
新卒採用では、長期的な人材育成と将来的な企業幹部・ゼネラリスト人材を視野に入れた採用が行われることが多いです。新卒者は未経験であることがほとんどなので、自社の文化や仕事のやり方を受け入れてもらいやすい傾向があります。また、若手の時から長く働いてもらうことで、組織の安定性や継続性を高められます。
中途採用では、即戦力として活躍できる人材を求めるのが普通です。事業拡大や既存ポストの欠員などで、適した人材をすぐに確保したい場合には、中途採用が適しています。また、他社で培った経験やスキルを持った人材を採用することで、自社の業務や組織に新たな視点・考え方を取り入れられます。
採用ターゲットの要件
新卒採用では、研究職・専門職でない限り、入社時点では専門的なスキル・知識が期待されていないケースが多いです。むしろ人柄や価値観、志向が重視され、ポテンシャルが評価対象となります。選考では学歴や成績よりも、自己PRや面接での印象やコミュニケーション能力などが重要な要件です。
中途採用では、具体的なスキルや実績が必要となります。自社が募集ポストについて求めるスキル・経験要件が明確で、それに合致しているかどうかをシビアに判断することになります。選考では履歴書や職務経歴書での実績のアピールや、面接での専門知識や業務理解度などが主な選考基準です。
待遇・条件
新卒採用では、一律の給与が支払われることが多く、正社員として採用されることが一般的です。またポテンシャル重視で、入社当初から高額な給与が用意されることは多くありません。しかし、年功序列型や成果主義型などの評価制度によっては、将来的には高い給与になる可能性もあります。
中途採用では、経験やスキル、配属ポジションに応じた給与を支払うことが多いです。即戦力人材であることから、高額な給与を提示することもあります。
採用期間・プロセス
新卒採用では、一斉に選考が行われ、固定の採用期間が設定されていることが普通です。例えば、「内定まで3ヶ月以内」というように期限を決めて選考を進める場合もあります。また、「内定者フォロー」と呼ばれる内定後から入社までの間のフォローアップも重要です。
中途採用では、自社の採用ニーズや応募者に応じて個別の選考が行われ、採用期間は固定されていないことが一般的です。欠員が出た場合は機動的に人材確保に動くケースもありますし、ぜひ採用したい人材にはスピード感を重視して早期に内定を出す場合もあります。また、「オファー」と呼ばれる内定後から入社までの間の交渉も重要です。
採用手法
先述の通り、新卒採用では、ナビサイトのほか、大学や学校と連携した合同説明会やインターンシップなどが利用されることが一般的です。そのほか、近年ではダイレクトリクルーティングやリファラル採用といった手法も活用されています。
中途採用では、求人広告や人材紹介会社、転職サイト、ダイレクトリクルーティング、リクルートイベントなどが活用されることが一般的です。
採用費用
新卒採用は、一括で行われるためコスト削減効果があります。また、長期的視点から見たコストパフォーマンスや、将来的な収益貢献度も高い可能性があります。「就職白書2020」によると、2019年度の新卒採用における1人あたりの採用コストは93.6万円でした。
中途採用は同調査で103.3万円ですが、人手不足や専門人材へのニーズ、また個別の採用活動になるためさらにコストが高くなることがあります。想定年収に応じて費用は流動的に変わり、年収の2〜3割が相場とされます。
研修・教育方法
新卒採用では、企業研修やプロジェクトを含めた教育プログラムを提供することが一般的です。ITや金融業界など専門的な知識が必要な場合、企業によっては半年ほど研修期間に充てる場合もあります。
中途採用では、即戦力人材を求めるのが普通で、すぐに業務に取り組めることが期待されます。しかし、それだけではなく、企業ならではの方針や業務方法、追加的な専門知識に関するフォローアップも重要です。そこで、企業によっては、中途採用者向けの研修やメンター制度を設けている場合もあります。
新卒採用と中途採用を選ぶ時に考慮したい3つのポイント
新卒採用と中途採用の違いを紹介したところで、ここでは新卒採用と中途採用へのリソース配分を考える際に考慮したい3つのポイントを紹介します。
人材に求める要件
まず、どのような要件の人材を採用したいのかを明確にすることが重要です。
例えば、即戦力が求められる場合や特定のスキルや経験が必要な場合は、中途採用が適切でしょう。中途採用者はすでに実務経験を積んでおり、入社してすぐに業務でパフォーマンスを発揮できる可能性が高いからです。
一方で、長期的な人材育成を視野に入れており、企業文化を浸透させたい場合は新卒採用が向いています。何度か触れている通り、新卒採用者は外部企業の考え方ややり方に染まっていない分、企業文化の浸透を図りやすく、将来的にリーダーや幹部候補として期待できるからです。
採用市場動向と予算
次に、採用市場の動向と予算の関係も考慮する必要があります。
採用市場は常に変化しており、中途には良い人材がいるものの需給が逼迫しておりコストが高騰しているようなケースもあります。またそもそもそれなりの待遇を用意しても採用に至らないケースもあります。
そのような場合は、現実的な対応としてポテンシャル人材を新卒で採用して社内での育成を図るという考えもあり得るでしょう。
一方で、新卒採用も安易に行えるものではありません。新卒採用は長期的な投資であり、教育やフォローなどのコストもかかります。また、新卒者の離職率も高い傾向にあるため、リスクも考慮する必要があります。
企業の人事方針
最後に、企業の人事方針も重要な判断基準です。企業はそれぞれに独自の組織風土や価値観を持っており、それらを維持・発展させることが経営戦略としても欠かせません。そのため、採用する人材がその組織風土や価値観に合致するかどうかも見極めるのが重要です。
既存の組織風土・価値観を維持したい場合は新卒重視、即戦力が欲しい場合やあえて外部の考えも取り入れて多様性を確保したい場合は中途が適している可能性があります。
まとめ
新卒採用と中途採用は、企業の人材戦略における重要な柱であり、各々が異なる特性と役割を持っています。新卒採用は長期的な成長を見込めるポテンシャル人材を発掘し、育成することを主な目的としています。一方、中途採用は即戦力となる経験豊富な人材を獲得することに主眼を置いています。
それぞれの採用には特有の手法、コスト、教育方法、待遇や条件が存在し、これらは採用担当者が自社の状況や求める人材に応じて柔軟に活用していくのが有効です。市場動向、予算、人事方針等を考慮に入れて、最適な採用戦略を選びましょう。