新卒一括採用は廃止されるのか?見直しのポイントやデメリットを解説
新卒一括採用が廃止になるという報道を受けて、自社の計画を立てるためにも、今後採用環境がどのように変化していくのか情報収集している採用担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
全国紙でも取り上げられていましたが、新卒一括採用が廃止になることは現時点では決定されていません。
では、「いったい正しい情報は何?」と思うこともあるでしょう。
本記事では経団連の発表を受けて、新卒一括採用廃止の報道から、現在何が起こっているのか、何をどのように対処していけば良いのか紹介していきます。
目次
新卒一括採用は廃止になるのか
新卒一括採用は徐々に廃止になる「可能性」もあるという状態であり、世間で騒がれているように『廃止』になることは、現状明言されていません(2019年1月現在)。
経団連によると、2022年卒の学生を対象として新卒一括採用に加えて、既卒生を対象にした通年採用を実施していくと発表しており、採用スケジュールは多様化していくことが想定されます。
また気になる新卒一括採用の広報解禁は例年通りの3月となっており、6月選考解禁、10月内定と現在のルールからの変更はされていません。
新卒一括採用の廃止が話題となった背景
そもそも、新卒一括採用の廃止が話題となった背景を確認していきましょう。
新卒一括採用とは日本独自の文化であり、企業が卒業予定の未就業者の学生に対して、限られた期間内で一括採用を行う雇用慣行です。
この雇用慣行が現在の日本情勢に適していないとささやかれるようになり、新卒一括採用への廃止が話題として上がってくるようになりました。
また新卒一括採用は終身雇用が前提とされた雇用慣行であり、終身雇用は新卒のポテンシャル採用後の「OJT(On-the-Job Training)による教育」と「年功序列」の2つの文化に支えられてきた制度になります。
ポテンシャル採用として採用された新卒社員は、長期にかけてOJTで実務を通じた教育を施されます。
その社員は定年退職するまで会社に勤めることが見込めるため、時間をかけてじっくりと教育することができました。なぜなら企業のほとんどが年功序列制度を採用しており、長期間、在籍しないと役職や給料が上昇することができないためです。
この2つの制度があるために企業は転職を防ぐことができ、新卒社員も安定した就業を見込むことができました。
しかし、終身雇用を続けてたきた日本の企業は、グローバルでの競争力の厳しさや、国内でも国境や業種を超えた企業競争の激しさが増しており、終身雇用との向き合い方を模索しています。
こういった背景から2018年10月の経団連の就活ルールの発表後、『新卒一括採用の廃止』がより顕著に話題となることが多くなったと考えられます。
新卒一括採用が廃止することでのメリットとデメリット
この章では、仮に新卒一括採用が廃止になり、通年採用のみとなった際のメリットとデメリットを求職者と企業の立場になって考えてみたいと思います
企業サイドのメリット
企業側のメリットは2点挙げられます。
- 採用活動時期を自由に選択できる
- 多様な人材と出会える可能性が高まる
では順に紹介します。
採用活動時期を自由に選択できる
企業サイドのメリット1つ目に、採用活動時期を自由に選択できることが挙げられます。
新卒一括採用のみでは、限定的な採用期間で選考活動を行う必要がありました。
しかし通年採用のみになった場合は、企業独自に定めた時期に採用活動を進めることができます。
多様な人材と出会える可能性が高まる
企業サイドのメリット2つ目に、多様な人材と出会える可能性が高まることが挙げられます。
今までは採用期間が限定的であったため、どうしても新卒一括採用期間に就職活動をしている学生としか接点を持てませんでした。
しかし、通年採用になることで、留学していた学生や既卒者など、新卒一括採用のタイミングが合わずに、今まで接触できなかった人材と出会える機会が増える可能性が高まります。
企業側のデメリット
企業側のデメリットは2点挙げられます。
- 他社の採用活動状況に左右される
- 今以上の早期化・長期化の恐れがある
他社の採用活動状況に左右される
企業サイドのデメリット1つ目に、他社の採用活動状況に左右されることが挙げられます。
通年採用では他社の採用活動時期も明確に決まっていないことから、学生が他社比較をするため、中々内定承諾を決断しにくいケース、内定承諾後に志望度の高い他社に決めるケースなど、新卒一括採用と比較すると学生の動きが読み辛くなることもあり、より他社の活動状況に左右されやすい可能性があります。
今以上の早期化・長期化の恐れがある
企業サイドのデメリット2つ目に、今以上の早期化・長期化の恐れがあることが挙げられます。
採用時期が限定的でないことから、学生へのアプローチを早める企業が出てくる可能性があります。
その結果、他社よりも早く学生との接点を持つために、更に早期から動き出す企業が現れたりと早期化に拍車がかかり、結果的に一括採用よりも長期間採用活動を行う可能性が考えられます。
学生側のメリット
学生側のメリットは大きく1点挙げられます。
- 自分のタイミングで就職活動を行うことができる
自分のタイミングで就職活動を行うことができる
学生側のメリットとして、自分のタイミングで就職活動を行うことができることが挙げられます。
経団連の就活ルールに従って新卒一括採用を実施していた企業に合わせる必要もあり、学生は就職活動のタイミングを自ら決める事は困難でした。
そのため、留学中の学生や止むを得ない事情(家庭や病気など)がある学生は、就職活動が存分にできないことがありました。
しかし、通年採用になることで自分が就職を検討するタイミングで企業にエントリーし、就職活動を始めることができます。
学生側のデメリット
学生側のデメリットは2点挙げられます。
- 自分が決めた就職活動時期にお目当ての企業が採用活動を行っていない可能性がある
- 今以上の早期化・長期化の恐れがある
自分が決めた就職活動時期にお目当ての企業が採用活動を行っていない可能性がある
学生側のデメリットとして1つ目に、通年採用では、採用時期は企業主体で決定されるので、自分が決めた就職活動時期にお目当ての企業が採用活動を行っていない可能性が挙げられます。
例を挙げると、『A社では現在は新卒採用の募集していません(3ヶ月後に開始予定)』『B社では現在、エントリー締め切りまで後1週間です。追加募集は行いません。』など各企業ごとに採用活動のタイミングが異なる結果、並行して選考を受けることが難しい可能性も出てくるでしょう。
一方で新卒一括採用では、新卒採用を行う企業が活動を開始はほどんど同時期なので、期間内における『お目当ての企業がいない、並行して選考を受けれない』事態は避けられるでしょう。
今以上の早期化・長期化の恐れがある
学生側のデメリットとして2つ目に、今以上の早期化・長期化の恐れがあることが挙げられます。
通年採用により、企業の採用活動の自由度が上がれば、学生は自ずと志望企業を同じタイミングで並行して選考していく事は難しくなります。
上述した『お目当ての企業が採用活動を行っていない場合』を考えると、エントリーしたい企業毎に採用時期にバラつきがあるならば、必然的にバラつきに、ある程度学生が合わせて就職活動を続ける選択肢が出てくるでしょう。
結果的に、今以上の早期化・長期化の恐れがあることが挙げられます。
新卒一括採用の廃止を想定した場合やるべきこと
新卒一括採用は現時点で廃止になることは決定していませんが、経団連が発表しているように、徐々に現行の採用ルールから変化していく可能性が非常に高いです。
また、一部の企業では、新卒一括採用に合った終身雇用や年功序列制度を検討し直している企業も増加してきており、企業側の動きも変化しつつあります。
現行の採用ルールが今後どのように変化するかは、まだ定かではありません。
しかし、抑えておかなえければいけないことは、新卒一括採用のルールがなくなることにより、企業側も学生側も制限が少なくなる、または無くなるということです。
つまり、採用の自由度が大きく変化することになります。
採用の自由度が上がるにつれて、今始めることは、自社の採用はどうあるべきか、慣行化した採用手法や採用フローの見直しを考え直すことではないでしょうか。
現在の就活ルールでも、自社で入社してほしい学生はどんな学生か、そのためにどのような採用手法を取り必要があるか、入社後はどう活躍してもらうかを考え、実行することができます。
自社の採用を見つめ直し、いつ変化が起きたとしても、耐えれるような準備をしておきましょう。
まとめ
新卒一括採用は今すぐに「廃止」にはなりません。2022年卒の採用でも継続して新卒一括採用を実施すると明言されています。
しかし、2022年卒の学生を対象として新卒一括採用に加えて、既卒生を対象にした通年採用を実施していくと発表しており、通年採用などをはじめ採用スケジュールは多様化していくことが想定されます。
自社の採用を見つめ直し、新卒採用のあるべき姿を決めることで、ルールに振り回されることなく、自社らしい採用活動を実践していきましょう。