新卒の採用基準で重視したい6つのポイント|設定手順や注意点を解説!

新卒採用において、人事担当者の方はより良い人材を獲得するために採用基準を持って選考を行うことが多いと思います。
しかし、どのような採用基準を定めるべきか、そして作成した基準をどのように運用すべきか悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「良い人材を獲得するためにはどのような採用基準を定めるべきか」
「早期離職が多いので新卒採用の基準を見直したい」
このような疑問や要望に答えるため、今回は新卒採用における選考基準の定め方について解説します。
また、2023年3月に「2024卒の採用市場から学ぶ!Z世代×新卒採用」という資料も作成しました。採用基準の策定時、Z世代の特徴を考慮するのにご活用ください。

目次
採用基準を定める理由
採用基準は、自社が求める人材を獲得するための評価基準となるものです。なぜ新卒採用で評価基準を定めるべきなのか、その理由は大きく3つあります。
- 人事・現場・役員間で求める人材のズレをなくすため
- 公平に選考するため
- 早期離職を防ぐため
理由①「人事・現場・役員間で求める人材のズレをなくすため」

- 人事担当者が重視するポイント:
- コミュニケーションスキルや協調性など社会人に必要な能力
- 現場担当者が重視するポイント:
- 即戦力として活躍できるか、チャレンジ精神があるか
- 役員が重視するポイント:
- 志望動機や自社とのマッチ度
上記の一例のように人事や現場、役員などそれぞれ立場が違う人が面接を担当すると、求める人物像にズレが生じることがあります。
その際には「人事が考える自社に必要な人材」と「実際に現場が欲しい人材」が異なるという問題が起こりえます。
現場が必要としている人材とは異なる学生を採用すると、結果として職場に馴染めなかったり、戦力化に時間がかかったりとミスマッチの原因となります。
人事担当者は、現場が求める人物像を事前に把握しておかなければなりません。人事・現場・役員間で選考基準を設定することで、一定基準に基づいた判断ができ、現場の要求と大きくズレることなく選考を行うことができます。
理由②「公平に選考するため」
自社が求める人材を獲得するには、すべての面接官が応募者を公平かつ公正に選考する必要があります。
新卒採用では、面接を2〜3回実施するのが一般的です。面接を複数回実施する場合、1次面接は人事担当者が、2次面接は現場担当者が、そして最終面接は役員が面接を行うことが多いです。(面接が2回の場合、2次面接に役員が加わることが多い)
面接官の中には、自身の価値観や経験などフィーリングに頼った面接をする人もいるでしょう。それ自体が悪いわけではありませんが、フィーリングだけで自社が求める人材を獲得することは難しいです。
新卒者を同じ基準で評価するには、すべての面接官が共通の認識で選考できるよう採用基準を定めることが必要不可欠です。
理由③「早期離職を防ぐため」
採用基準を持たずに面接を実施する企業では、新卒者が早期離職する確率が高くなります。
新卒者の質は千差万別で、中には倍率が高い選考をトップレベルでクリアする人材もいるでしょう。
そのような人材が自身の能力を存分に発揮できる会社であれば問題はありません。ところが、会社にとってオーバースペックな人材だと自社では手持ち無沙汰になったり、仕事内容が給与に見合わないなどの理由から早期離職の原因につながることも。
新卒者を一人前に育てるには3年以上かかると言われており、独り立ちする前に離職されることは会社にとって痛手でしかありません。
採用基準は、新卒者の早期離職を予防するのに大変有効です。採用基準を定める際はまず、会社が求める人物像を明確にするところからはじまるので、過剰なスキルを持った人材はあらかじめ対象から外すことができます。
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新卒採用で重視すべき6つのポイント

採用基準を定めるにあたり、他社の事例を参考にされている人事担当者の方は多いかと思います。
ここで注意しなければいけないのが、他社の採用基準を真似したからといって自社でも成功できるとは限らないということです。
成功事例を参考にするのは悪いことではありませんが、そもそも新卒者に求める能力は企業によって異なります。また、同じ会社でも現場と役員で求める人物像は変わってきますから、採用に携わるすべての社員で意見をすり合わせ、独自の採用基準を定めるべきです。
ここからは、多くの企業が定めている採用基準の例を参考にしつつ、独自の基準を定めるために重視すべきポイントを掘り下げて考えていきましょう。
ポイント①コミュニケーション能力
経団連が毎年行っている「新卒採用に関するアンケート調査」によると、「選考時に重視する要素」の第1位に「コミュニケーション能力」がランクインしています。
引用元:日本経済団体連合会
1位は16年連続で同じであり、多くの企業が新卒者に対して高いコミュニケーション能力を求めていることがわかります。(2位以降は主体性・チャレンジ精神・協調性・誠実さと続く)
コミュニケーション能力は、社内はもちろん取引先と円滑に意思疎通をとるために欠かせないスキルです。しかし、「コミュニケーション能力」という言葉には広い意味があり、何を持ってコミュニケーション能力が高いと評価するかは人によって異なります。
採用基準を定める際は、まず人事・現場・役員で「コミュニケーション能力とは何か」を明確にすべきです。参考例として、コミュニケーション能力を構成する要素を次の3つに細分化してみました。
1.理論的な表現力
自分の意見を相手に伝える時は、内容を整理し筋道を立てて説明する必要があります。
あれもこれもと勢いで伝えようとすると、話の優先順位や結論がわかりにくいです。場合によっては、説明に不足が生じて肝心な部分が伝わらなかった、ということがあるかもしれません。
一方理論的な表現力が身についている人は、話をわかりやすくまとめる力に長けています。起承転結のある話し方で相手を上手に納得させられるので、プレゼンや営業などのシーンでは即戦力として活躍できる可能性もあるでしょう。
2.調和性
口が達者だからといって、コミュニケーション能力が高いと一概に評価することはできません。
なぜかというと、対人と円滑に意思疎通を図るには相手の意図や感情を正しくくみ取る力が必要だからです。質問に的確に答えられているか、場の雰囲気に合わない発言がないかという点はきちんとチェックしておきたいポイントです。
3.好感度
声のトーンや表情も、コミュニケーション能力を構成する要素の一つです。
人の印象は初対面のわずか15秒で決まると言われています。これは、最初に得た情報が長い間記憶として残る「初頭効果」という心理効果によるもので、営業職や接客業など人と接する職種では非常に大切な能力です。
笑顔や挨拶などに好感を持てたかという点も含め、コミュニケーション能力の高さを判断するといいでしょう。
ポイント②好奇心・探求心
社会人経験のない新卒者は、社内の各部署がどんな役割を担い、どのように関わり合うことで企業が成り立っているかという会社の仕組みがわかりません。
入社後はまず先輩や上司に指導を受けて実務経験を積み、その過程で会社の仕組みを少しずつ理解していきます。その後一人で実務をこなせるようになれば晴れて一人前となりますが、独り立ちすることが最終的なゴールではありません。
実務経験を積んでいくと、「なぜこの作業が必要なのか」「効率化を図るにはどんな手段が有効か」という気づきや工夫が出てくるでしょう。会社の利益は、そのような好奇心や探究心から生まれることが多いです。
新しいことはじめることに抵抗がなく、かつより深い知識や経験を得ようとする。新卒採用では、このような姿勢を持った人かどうかを評価基準の一つとするのが望ましいでしょう。
ポイント③主体性
多くの企業は、自ら考え自発的に行動できる人材を求めています。
社会人は自分の意思と判断によって行動します。行動には責任が伴い、仮に上手く行かなかったとしてもその責任は自分にあると考えるのが主体性です。指示がなくても行動し、自分の意思を発言できる人は主体性を持った人材であるといえます。
主体的であるかどうかは、日頃のパフォーマンスにも直結します。また、主体性のある人にはチームリーダーとしての素質も期待できるでしょう。
長い目で見た時にチームを牽引する立場になれる可能性があるので、会社としても大切に育てていくべき能力と捉えてください。
ポイント④適応力
適応力とは、自分が置かれた環境に合わせて行動や考え方を変えられる能力のことです。
新卒者はまず、職場環境に慣れることからはじまります。周囲にとけこむのが早ければその分仕事の効率アップにもつながるので、適応力は高ければ高い方がいいでしょう。
さらに、異動や転勤のある企業ではより高い適応力が求められます。配属先によって職場の雰囲気が大きく異なることも多いので、臨機応変に対応できる能力は高く評価すべきです。
ポイント⑤企業理解度
就職への意識が高い学生は、企業理解度についての質問に対して熱量を持って語ることができます。
就活生の心の中には、「本命」「第二希望」「滑り止め」などの順位があります。この順位を決めるのは、事業内容や給与、待遇などです。
つまり、事業内容を深く知っている人は企業理解度が高いと言い換えられます。自社に関する質問に熱意を持って回答できるかを判断材料の一つにしてみるのもおすすめです。
ポイント⑥経営理念やビジョンへの共感度
経営理念やビジョンへの共感はとても大切です。
仕事をしていると常に前進できるわけではありません。時には自分の業績が振るわなかったり、取引先とのトラブルが発生したりと立ち止まることもあります。
仕事が上手くいかない時、会社の理念やビジョンに共感ができていると、それが軌道修正の道しるべとなることがあります。
会社が成長していくため、理念やビジョンに共感していることは足並みを揃え前進する上で欠かせない能力です。
採用選考時、学生の志望動機を深掘りしてみて、理念やビジョンに共感度を確認してみましょう。
採用基準設定のステップ

新卒採用で重視すべきポイントがわかったら、次はいよいよ採用基準を作る段階に入ります。
ここで一度、冒頭でお伝えした採用基準を定める理由を再確認してみましょう。
- 人事・現場・役員間で求める人材のズレをなくすため
- 早期離職を防ぐため
- 公平に選考するため
採用基準を設定する順序は、上記3つの目的を達成するためには?というところから逆算して考えるのが理想です。
ステップ①社内ヒアリングから求める人物像を明確にする
人事と現場で求める人材のズレをなくすには、まず現場責任者がどのような人材を求めているかを明確にする必要があります。
「今まではコミュニケーション能力を重視していたが、今年は主体性や適応力のある人材を求めている」など、採用計画は毎年変化するものです。
求める人物像はできるだけ細かくヒアリングしてください。具体性に乏しい場合は、新卒採用で重視すべき6つのポイントを参考にリスト化したヒアリングシートをもとに聞き取りをするといいでしょう。
以下の採用基準策定のための現場ヒアリングシートもダウンロード可能ですので、ぜひご活用ください。

なお、社内ヒアリングは役員や経営陣にも行ってください。そうすることで人事・現場・役員間で認識が乖離するのを防ぐことができ、統一感のある採用基準が定められます。
ステップ②モデル社員からコンピテンシーを分析する
コンピテンシーとは、高いパフォーマンスを発揮する社員に共通して見られる行動特性のことです。表面的な成果ではなく、その成果につながる思考や行動から採用基準を導きだします。
コンピテンシーは以下6領域と20項目に分けられるので、部署や実際の仕事内容に合わせて設定するのがいいでしょう。
領域 | 項目 |
---|---|
達成・行動 | 達成志向、秩序・品質、正確性への関心、イニシアチブ、情報収集 |
援助・対人支援 | 対人理解、顧客支援志向 |
インパクト・対人影響力 | インパクト、影響力、組織感覚、関係構築 |
管理領域 | 他者育成、指導、チームワークと協力、チームリーダーシップ |
知的領域 | 分析的思考、概念的思考、技術的・専門職的・管理的専門性 |
個人の効果性 | 自己管理、自信、柔軟性、組織コミットメント |
ステップ③求める人物像を明確にする
社内ヒアリングとコンピテンシーの分析が完了したら、次は求める人物像を明確にしていきます。
現場責任者や役員が面接・合否判定する場合は、人事を含む三者で打ち合わせするのが理想です。
三者が共通の認識を持つことで採用の指針が定まり、2次面接・最終面接での合格率が極端に下がるのを防ぐことができます。
ステップ④評価項目を決める
最後は、求める人物像をもとに具体的な評価項目を決定します。
項目は数が多ければ多いほど面接官の負担が増えるので、1次面接・2次面接・最終面接でそれぞれ評価する項目を分けるのがおすすめです。ただし、自分以外が担当した面接でどのように評価されたかがわかるようにしておくといいでしょう。
評価項目が明確になると、公平かつ公正な選考が可能となります。また、早期退職につながりやすいオーバースペックな人材の見極めにも有効です。
採用基準を定める際の注意点
厚生労働省では、採用選考の基本的な考え方として以下2点を定めています。
- 応募者の基本的人権を尊重すること
- 応募者の適性・能力のみを基準として行うこと
事業主は、適性や能力以外で採否を決めることができません。内容によっては法律で禁止されている事柄もあるので、採用基準を定める際は以下の点に注意してください。
注意点①性別や障害の差別
募集・選考時のルールとして、「性別や障害による差別の禁止」があります。基本的人権の尊重という観点から、就職の機会はすべての人に均等に与えられるべきとされています。
この内容は男女雇用機会均等法と障害者雇用促進法で定められているので、性別や障害を理由に採用基準を定めることのないよう注意しましょう。
補足ですが、採用・雇用においては年齢制限も禁止されています。
注意点②配慮が必要な事項
適性・能力とは関係のない以下の事項を把握することは、厚生労働省が定める「公正な採用選考の基本」ガイドラインに抵触する恐れがあります。
本人に責任のない事項 | ・出生・家族に関すること ・住居・生活環境に関すること |
思想信条に関わる事項 | ・宗教に関すること ・支持政党に関すること ・労働組合に関すること ・社会運動に関すること |
採用選考にあたり、身元調査を実施したり必要性のない健康診断を受けさせることも不適切と捉えられることがあります。
就職差別につながりかねない質問はしないよう注意してください。
注意点③中途採用との基準の違い
新卒採用と中途採用では、見定めるべきポイントが異なるという点にも留意するべきです。
主に経験者を対象とする中途採用においては、「第二新卒採用」などのケースを除いて、即戦力人材の確保を目的とする企業がほとんどとなります。そのため、就労年数に応じた業務経験や、自社で活用できる具体的なスキルを採用基準として設定することが一般的です。
一方、新卒採用においては学生のポテンシャルや人柄が重視されます。向上心や協調性、主体性など、本人の性格や仕事に対する価値観などを面接から見極めることが大切です。
それぞれの違いを理解した上で、新卒採用に適した採用基準を設定するようにしてください。
採用基準を見直すべきケース
採用の過程や結果について以下のような問題が発生している場合、採用基準を見直すことで解決するかもしれません。
面接官によって結果にバラつきがある
選考における評価のポイントがわかりにくく不明瞭なため、面接官の主観で面接を進めている可能性があります。自社で活躍できる可能性の高い学生を採り逃さないためにも、明確に言語化された基準が必要です。
応募者や選考通過者が少ない
そもそもの応募者や選考を通過する学生が少なく、採用予定人数を確保できないという場合は、採用基準を厳しくしすぎているのかもしれません。給与や待遇等の募集要項に対して採用基準が見合っているか、項目が多くなりすぎていないか見直してみましょう。
人事と現場の求める人物像が一致していない
人事が採用した人員に対して現場から不満の声があがったり、現場の面接で不採用になったりすることが多い場合は、採用基準のすり合わせが必要です。現場の求めている人物像を明らかにし、意見交換を行なった上で条件を再考してください。
採用基準から人材を見極めるときのポイント
最後に、選考の各段階において採用基準を使いこなして人材を見極めるポイントを紹介します。
まず、書類選考においては、候補者を絞り込んで面接をよりスムーズに進めるために採用基準を活用することが重要です。履歴書やエントリーシートを面接のための補足資料と捉えている方も多いかもしれませんが、明確な基準を持って書類の内容を吟味すると、より洗練された母集団の形成につながります。
より短時間で効率的に採用基準と人材のマッチ度を見極めたい場合は、適性試験を活用するのも一手です。客観的なデータから人材を判定できるだけでなく、自社のハイパフォーマーの試験結果を基に効果的な採用基準を設定することもできます。
面接では、評価が面接官の主観にならないよう、あらかじめ採用基準に沿った質問項目を準備しておくとよいでしょう。新卒採用で重視すべき人柄やポテンシャルといった定性的な評価項目について、より公平な判定ができるようになります。
まとめ
今回は、採用基準を定める理由を整理し、重視すべき6つのポイントを具体的にお伝えしました。
新卒採用で選考基準を定めると、人事と現場の認識のズレがなくなり公平かつ公正な選考ができます。また、新卒者の早期離職を防止するのにも有効なので、自社が求める人材を長く確保するには明確な採用基準を持つべきでしょう。
具体的な基準を設定する際は、理想の人物像をクリアにすることからはじめます。重視したいポイントは部署によって変わってくるので、社内ヒアリングをもとに評価項目を決定することが大切です。
本文で取り上げたポイントを意識しながら、優秀な人材を獲得するための採用活動を成功させましょう。
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