採用ファネルとは?フェーズごとの施策例と活用のポイントを解説
採用活動は企業側が広報、会社説明会、面接、内定というようにフェーズを分けて課題を把握することが一般的ですが、求職者側の活動によってフェーズを分ける「採用ファネル」という考え方があることをご存じでしょうか。
採用ファネルとは求職者の活動を「認知」「興味・関心」「応募・選考」「内定・入社」の4つのフェーズに分類したモデルです。これらのフェーズごとに、次のフェーズに行くことを妨げている課題を見つけ、それを解決することで採用活動の効率を改善することが期待できます。
本記事では、採用ファネルの定義、フェーズごとの施策例と活用のポイントを解説しています。
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採用ファネルとは

採用ファネルとは、求職者が自社を認知してから入社するまでの求職活動を段階的に表したモデルです。

求職者の活動を上記のように図式化し、採用活動におけるフェーズごとの進捗状況や課題などを可視化・分析すると、採用活動を最適化するのに役立ちます。
英語のファネルは「漏斗形、じょうご」という意味で、逆三角形の図を用いることから名前が付けられています。もともとはマーケティング用語であり、上記の逆三角形は顧客が商品購入を検討していく段階で徐々に少なくなっていく様子をモデル化したものでパーチェス(購買行動)ファネルと呼ばれています。採用ファネルはこの購買活動を求職活動に置き換えたモデルです。
採用ファネルの種類

ここでは、採用ファネルとして利用されている3つのファネルを紹介します。
パーチェスファネル
パーチェスファネルはマーケティングにおいて、顧客の認知から購買の意思決定までを「認知」「興味・感心」「比較・検討」「購入」の4つのフェーズに分けて把握し、そのフェーズごとに課題を洗い出し、効果的な施策を立案するためのモデルです。購買の流れを可視化するので、顧客がどこで離脱したかが分かりやすいことが特徴です。
この購買活動を求職活動に置き換え、4つのフェーズを「認知」「興味・関心」「応募・選考」「内定・入社」とする採用ファネルとして活用されています。マーケティングでの使われ方と同様に求職者がどのフェーズで離脱したのかが分かりやすく、それを課題として捉えることで採用活動に活かせます。
インフルエンスファネル

インフルエンスファネルはマーケティングにおいて、顧客が商品を購入した後の活動を「購入継続」「紹介」「情報拡散」の3つのフェーズに分けて把握し、次の購入に与える影響をモデル化したものです。このモデルはSNSや口コミによる「紹介」や「情報拡散」の与える影響力を考慮した比較的新しいモデルです。
採用活動においては、3つのフェーズを「入社」「紹介」「情報拡散」として置き換え採用ファネルとして活用されています。
ダブルファネル

ダブルファネルはパーチェスファネルとインフルエンスファネルを一体化したものです。パーチェスファネルのフェーズにより認知から購入につなげ、インフルエンスファネルのフェーズで購入を継続してもらい、さらに顧客の紹介や情報を拡散してもらうためのモデルです。特徴として、初めから情報拡散につなげることを目的としてフェーズごとの課題の解決を図るため、施策が上手く機能すれば広告効果が大きい点があげられます。
採用活動においても同様にパーチェスファネルとインフルエンスファネルを一体化して「認知」から「情報拡散」までの一連の流れをモデル化した概念です。「入社」と「情報拡散」を目的としてフェーズごとの課題の発見と解決のための施策を行います。
採用ファネルのフェーズごとの施策例

ここからは、自社の認知から内定・入社までをモデル化したパーチェスファネルを採用ファネルとして利用する際のフェーズごとの施作例を解説します。

認知
認知のフェーズでの採用活動の目的は、十分な数の求職者に自社を認知してもらい、求める人材による母集団の形成につなげることです。この数が不足すれば、次のフェーズ以降はさらに人数の減少が予想されるため、希望する採用人数の確保が困難になります。
自社を認知してもらうための施策として、採用情報の発信の強化や採用手法の変更などが考えられます。また、自社の求める人材でなければ認知されても採用に結びつかないため、採用ペルソナを意識した施策であることが重要です。
具体的な施策としては、合同説明会への参加やナビサイトなどの媒体の変更があげられます。また、知名度が低いことが原因で母集団形成が困難な場合には、認知されることを待つのではなく、ダイレクトリクルーティングのように企業側から直接アプローチする採用手法も改善策になります。
興味・関心
興味・関心のフェーズでは、自社の魅力を伝え、その興味・関心を高めることで次のフェーズである応募につなげやすくすることが目的です。
認知されていても、興味・関心をもたれない場合の施策として、認知と同様に魅力的な情報発信の強化に加えて、採用ペルソナの設定や見直しによる採用活動の最適化、採用ブランディングの強化などが考えられます。
具体的な施策としては、各種イベントなど自社の魅力を伝える機会の増設や採用ペルソナに響くメッセージの作成などがあります。また、オウンドメディアやSNS経由で自社が求める採用ペルソナを意識したコンテンツの発信は認知とともに採用ブランディングの強化につながり興味・関心を高める効果を期待できます。
応募・選考
応募・選考のフェーズでは、応募を集めることと、選考時の辞退を減らすことで内定数の確保につなげることが目的です。
自社に興味・関心をもってもらえたのに応募に結びつかない場合の施策としてはさらに興味・関心を高めるものや、応募への敷居を低くすることなどがあります。
具体的な施策としては、求人情報と応募までのプロセスを分かりやすくすることや掲載メッセージ、採用条件の見直しによる魅力の強化などです。
また、選考過程での辞退者が多い場合の施策としては、「選考期間が長すぎないか」「選考時に不快感を与えていないか」などの検討と改善が考えられます。
この応募・選考フェーズにおいて求職者は競合他社との比較検討をしていることが多く、自社に魅力を感じてもらうためには、相対的に他社より魅力的であることが必要です。
内定・入社
内定・入社のフェーズでは、内定の通知後入社までの間に内定辞退を防ぐことが目的です。
内定の通知後・受諾後に辞退がある場合の施策としては、コミュニケーション不足の解消や、自社の魅力をさらに伝えることなどが考えられます。このフェーズでも他社との比較検討は続いている可能性はあるため、自社への入社意欲を高める必要があります。
具体的な施策としては、不安やストレスを取り除くためのフォローとして面談や懇親会、入社後に活躍しているイメージが湧くような説明会や見学会の実施などがあります。連絡が滞ると他社に興味が移ってしまう可能性があるため、これらの実施により連絡をとり続けることが重要です。
採用ファネルを用いて分析・施策を計画するメリット

採用ファネルを用いて分析し、改善策などを計画することで得られるメリットを解説します。
フェーズごとの役割を意識した施策設計ができる
採用活動は複合的であり、さらに長期にわたることが多く、1つひとつの施策の目的が曖昧になる可能性があります。そこで、採用ファネルを利用することで、それぞれの採用活動がどのフェーズのためにあるのかが可視化され明確になります。
例えば、「計画しようとしている施策は認知度を高めるためなのか、あるいは興味・関心度を高めるためなのか」という具合にどのフェーズに位置するかが明確になり、その目的に沿った施策を設計しやすくなります。
また、次に解説するKPIと合わせて用いることで、「どのくらい」という数値化された目標も具体化できるため、さらに実用性の高い施策を設計することが可能です。
KPIに沿った施策運用がしやすくなる
採用活動は複数のフェーズが一連のフローになっているため、他のフェーズが上手くいってもボトルネックが1つでもあれば希望通りの成果を出せません。そこで、各フェーズの達成度の把握が重要です。
そのために有効なのがKPI(重要業績評価指標)の設定です。KPIとは最終目標を達成するために必要となる、フェーズごとの数値目標であり、実績を評価し管理するための指標です。採用活動においては、採用人数を最終目標とし、そこから逆算して必要な内定者数、応募者数などをKPIとして設定します。
採用ファネルを用いている場合、フェーズごとにKPIに対する達成度合を分析しながら施策を運用することが容易になります。
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離脱率が高いフェーズを把握しやすくなる
採用ファネルを用いて分析することで、離脱率の高いフェーズを課題として把握できます。
例えば、どこかに課題があることは分かっても、フェーズごとの管理ができていなければ、原因となるフェーズが判然としない場合もあり、調整するための施策が間に合わない恐れがあります。
一方、採用ファネルを用いて適時分析していれば、離脱率の高いフェーズを早期に発見し、施策の調整や新たな施策の実施を行うことが可能です。さらに、前述のKPIを設定したうえで、達成度合を分析すれば離脱率だけでなく、フェーズごとの目標値からの乖離も把握でき、採用フローの改善につなげられます。
採用ファネルを意識して採用の効果を高めるポイント

採用ファネルを用いるだけでも採用活動の効率化を図れますが、採用ファネルと合わせることでさらに効果を高めるポイントを紹介します。
採用管理システムで全体を把握する
採用管理システムは「Applicant」(応募者)、「Tracking」(追跡)、「System」(システム)の頭文字からATSと呼ばれています。募集、受付、達成度の管理といった採用業務の効率化や分析のためのシステムです。採用活動に関連する情報は求人情報や応募者の個人情報、選考による評価など多岐にわたるため管理が大変ですが、ATSはこれらを一元管理できるため、注目を集めています。
また、ATSは異なる採用媒体であっても、フェーズごとの進捗管理ができるため、採用ファネルによって離脱率などの分析を行う際にも便利です。採用活動の負担が大きい場合には導入を検討する価値があります。
カスタマージャーニーマップを作成する
カスタマージャーニーマップもファネルと同様に、もともとはマーケティング用語で商品を認知し、購入の意思決定をするまでの顧客が体験する一連の流れを旅(ジャーニー)に例え、それを可視化した図表などにしたものです。
採用活動におけるカスタマージャーニーマップでは、企業を認知し、入社するまでの求職者の体験を図表などにして活用します。
マップ作成の出発点は具体的な採用ペルソナの設定です。そして、その採用ペルソナであれば「このような時」「どのような気持ちになるか」という詳細な設定を考え、それを採用ファネルと合わせて用いることで、ファネルごとに求職者にとってどのような課題があるかを想定し、その解決方法を考案をします。これにより、実際の求職者が自社を認知してから入社までの流れをスムーズにすることが期待できます。
採用チャネルの拡大を検討する
採用ファネルを最大限に活かすためには採用チャネルにおいて幅広い選択肢が必要です。
採用チャネルとは利用する媒体やサービスなどの採用手法のことで、求人サイトしか使わないといった具合に限定してしまうと、ファネルごとの課題に対応するのに限界が生じてしまいます。
例えば、認知を集めるフェーズにおいて、求人サイトだけを採用チャネルとした場合、そもそも求人サイトを見ないという求職者の認知を集めることは不可能です。
自社が求める採用ペルソナを意識し「このフェーズにおいてはどのような採用チャネルが有効か」を考え、それに合った採用チャネルを利用することで採用ファネルを最大限に活かすことができます。
まとめ

本記事では、採用活動のフェーズごとの管理・分析に役立つ採用ファネルの考え方について解説してきました。
採用ファネルは単体でもフェーズごとの可視化や離脱率の把握という点で有効ですが、KPIの設定・計測を行うことでファネル分析を具体化・効率化でき、またカスタマージャーニーマップといったフレームワークと組み合わせたり、ATSのようなツールを活用したりすることでより高精度な分析が可能になります。ぜひ、採用ファネルを有効活用してください。
また、採用ファネルやカスタマージャーニーマップを活用する際に重要となるのが、求める人材の具体的な人物像である採用ペルソナです。採用ペルソナが明確であるほど、採用活動がスムーズになります。
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