「苦労して採用しても内定辞退が起きてしまう」
「内定辞退を防ぐのために内定者フォローを強化したい」
「内定者の満足度が高いフォロー企画が知りたい」
昨今、売り手市場といわれてきた採用市場は、2020年に流行した新型コロナウイルスの影響で新たな動向を見せています。
しかしながら、一人の学生が複数の内定を得ることは決して珍しくありません。入社する1社として学生に選ばれるためには、内定者フォローの内容を充足させる必要性は今後も変わりありません。
本記事では、内定辞退を防ぐために有効な内定者フォローの企画例を紹介します。加えて、学生がどのような内定者フォローを求めているかも解説していますので、ぜひ自社の採用活動にお役立てください。
目次
内定者フォローが必要な理由

内定者フォローを実施する一番の目的は、内定辞退を防ぎ、すべての内定者に入社してもらうことです。
複数の内定を持つ学生は内定者フォローによって企業の雰囲気を知り、内定企業を自分なりに順位づけします。学生は社会人になることへの漠然とした不安も抱えていますから、内定者フォローでは個々の懸念事項をしっかりと解消していく必要があります。
内定者フォローは、内定者の不安を解消する絶好の機会です。内定者がどのようなフォローを望んでいるかというニーズを把握し、内定者にとって有意義な時間になるよう丁寧にサポートしていきましょう。
学生が内定者フォローを求める理由

株式会社ディスコの調査データによると、内定を得た学生の9割近くが「就職先を決めるにあたり内定先から何かしらのフォローを求めている」ことがわかっています。
内定者がフォローを求める理由としては、
- 不安を解消したい
- 会社の雰囲気を知りたい
- 同期を知りたい
- 具体的な業務内容を知りたい
- この会社で良かったかを見極めたい
などがあります。
内定者フォローを実施するにあたり、採用担当者はこれらのニーズを考慮した上で入社までサポートしていかなければなりません。
ここからは、学生が内定者フォローを求める5つの理由について詳しく解説していきます。
理由①不安を解消したい
長く学生生活を送ってきた内定者にとって、幅広い世代の人が集う「会社」はまるで未知の世界です。
誰も知らない環境で、どんな人と、どのように関わり合っていくのかという不安を抱くのはごく普通のことです。内定者の中には、「社会人としてやっていけるのか?」という漠然とした不安を持つ人もいるでしょう。
内定者フォローでは、内定者の潜在的な不安を引き出し一つずつ解消していくことが求められます。
理由②会社の雰囲気を知りたい
長年勤めている社員が思う自社の雰囲気と、学生の目に映る内定先の雰囲気は決してイコールではありません。
自社の魅力をアピールすることは大切ですが、内定者の中には「自分の目で確かめたい」という気持ちを持つ人もいます。内定者の感じた雰囲気と採用担当者の説明にミスマッチが生じると、内定者は「本当にこの会社でいいのか」という疑問を抱くことになるでしょう。
内定者フォローを企画する際は、内定者が会社の雰囲気を肌で感じる機会を用意すべきです。
理由③同期を知りたい
社会という未知の世界へ飛び込む学生にとって、会社というのはいってみれば完全にアウェイな環境です。
誰も知らない場所に同じ境遇の人がいれば、内定者同士で仲間意識が芽生えます。早い段階で前向きな気持ちを共有できれば、内定辞退を防ぐのに有利に働くこともあるでしょう。
同期と関わることで不安を解消できる学生もいますので、内定者たちがコミュニケーションを持てる機会は積極的に準備したいところです。
理由④具体的な業務内容を知りたい
内定者は、就職先でどのような仕事を任されるのか具体的な業務内容を知りたいと考えています。
単純に興味があるというのもありますが、大半は自分にこなせる内容かどうかを確認しておきたいというのが本心です。向上心の高い学生なら、自分に足りないものを入社までに補いたいと考える人もいるでしょう。
会社としては、即戦力として活躍してもらえるのは大いに歓迎です。目指すべきところを明確に提示し、そこにたどり着くまでに必要な要素をわかりやすく説明してあげてください。
理由⑤この会社で良かったかを見極めたい
複数の内定を持つ学生は、当然ながら自分にとってもっともメリットの大きい会社を選びます。
給与や業務内容はもちろんのこと、この業界に向いているのか、はたまた自分が成長できる会社かどうかを見極めたいと考えます。企業が学生を選考するのと同じで、内定者にも企業の正体を把握する権利があるのです。
複数ある企業の中から自社を選んでもらうには、自社の魅力を最大限にアピールするのが一番です。社内イベントに参加してもらうなどして、募集要項や面接からは見えてこない会社の一面をオープンにするといいでしょう。
内定辞退を防ぐために意識すべき2つのポイント

内定者フォローを実施するそもそもの目的は、内定辞退を防ぐことです。
内定者が求めるフォローを実現すれば内定辞退の確率はぐっと下がります。とはいえ、内定者フォローを企画する段階で具体的にどのような施策を取るべきか悩まれる方もいるかと思います。
ここからは、内定辞退を防ぐために採用担当者に意識してほしい2つのポイントをご紹介します。
ポイント①社員とコミュニケーションが取れる環境を整える
内定者がフォローを求める理由の中に、
- 会社の雰囲気を知りたい
- 具体的な業務内容を知りたい
というものがありました。
これらの希望を叶えるもっとも効果的な方法は、先輩社員とコミュニケーションを取ることです。先輩社員の生の声は、内定者が漠然と抱く企業イメージを明瞭なものにします。
会社の内側が見えることで内定者の不安も解消でき、内定辞退を防ぐのに一定の効果をもたらします。内定者フォローを企画する際は、先輩社員と直接話ができる環境を積極的に用意してください。
ポイント②定期的に連絡を取り合う
採用担当者は今後のスケジュールなどを都度連絡されていることと思いますが、内定者からすると次に連絡をもらえるまでは不安な毎日が続くものです。とくに、前回の連絡から時間があくとその分不安は大きくなっていきます。
複数の内定を得ている学生の場合、こまめに連絡をくれる会社に気持ちが傾くのは当然のことです。「自分をフォローしてくれる会社」という印象を持ってもらえれば、内定辞退を防ぐという目標達成につながります。
定期的な連絡が難しい場合は、「次回は◯月◯日頃に連絡します」とあらかじめ予告しておくと内定者も安心できるでしょう。
内定者フォローの企画例と効果
内定者のニーズに応えつつ、内定予防にもつながる企画例には次のものが挙げられます。
企画例 | 効果 | 配慮すべき点 |
---|---|---|
内定者懇談会 |
・同期を知ることで安心感が得られる
|
すべての内定者が仲間を求めているわけではない |
座談会 |
・社員の生の声を聞ける
|
学生とうまく交流できる社員を選ぶ必要がある |
面談 |
・消極的な内定者ともコミュニケーションが取れる
|
学業の妨げとなるスケジュールを組まない |
内定者研修 |
・実務で役立つ研修を受けることによって内定者が自信を持てる
|
楽しく取り組めるカリキュラムにする |
社内イベント |
・会社の雰囲気や社員の素の一面を知ることができる
|
自由参加であることを伝え、不参加者には別のフォローをいれる |
ここからは、それぞれの事例と採用担当者が配慮すべき点について詳しく紹介していきます。
①内定者懇談会|内定者同士の仲間意識が高まる
内定者同士コミュニケーションが取れる内定者懇談会は、同期を知りたいという内定者のニーズに応えるもっとも効果的なイベントです。
長く就職活動を続けてきた学生にとって、同じ会社から内定を得た同期は特別な存在です。同じ時期に就職活動をし、同じ企業から内定を得たという部分では内定者同士で多くの共通点が見られます。
さらに、共有できるものが多ければ、初対面であっても仲間意識は芽生えやすいです。「一緒に頑張っていこう」という気持ちが内定辞退につながるので、内定者たちが交流できるイベントは積極的に実施していきたいところです。
ただし、内定者同士の密なコミュニケーションを望まない学生もいることは留意しなければいけません。最初からリーダーシップを発揮する学生もいれば、人見知りで関係を構築するまでに時間がかかる学生もいます。
それぞれの個性を尊重し、内定者間の温度差が大きくなりすぎないように配慮しましょう。
②座談会|先輩や上司との距離を縮められる
先輩社員と交流できる座談会は、内定者が会社の雰囲気や実際の業務内容を知ることができる絶好のイベントです。
入社間もない新人社員は、先輩社員のサポートを受けながら日々の業務を遂行します。内定者の気持ちとしては、自分の教育係となる先輩がどのような人柄か、困った時に頼れる人かを見極めたいという思いがあるはずです。
会社で活躍する先輩たちの姿を見ることで、「自分もこうなりたい」という社会人としての理想像が確立します。また、より多くの社員と交流することで会社に親しみを感じるようになる学生もいます。
先輩社員が「あなたの入社を心待ちにしている」と伝えることで、内定者の漠然とした不安を大きく解消できるでしょう。
配慮すべき点としては、学生と抵抗なく話ができる社員の人選です。年齢や個性などを考慮し、良き盛り上げ役となってくれる社員を選びたいところです。
③面談|消極的な内定者とも深いコミュニケーションが取れる
面談は、一人ひとりの内定者とじっくり話をするのに活用したい企画の一つです。
内定者の中には、人見知りで人と打ち解けるのに時間がかかる人もいます。懇親会で同期と親睦を深めることは大きなメリットですが、その一方で周囲になじめないことを不安に感じる内定者がいるのも事実です。
内定者の本音を聞き出すには、同期が全員揃っている場よりも個別面談の方が有利です。また、住まいが遠方の内定者は自宅で面談ができれば移動の負担を軽減できます。
zoomなどを活用したオンライン面談はコロナ対策としても有効なので、内定者一人につき1回は面談の機会をもうけるといいでしょう。日程を決める際は、いくつか候補日を出して内定者が自由に選択できるよう配慮することも大切です。
④内定者研修|実務に活かせるスキルを習得できる
内定者の中には、入社前から実務に活かせるスキルを身に付けたいと思う学生がいます。
向上心の高い内定者は入社後すぐに即戦力となれる可能性があるので、現場で役立つ知識やスキルを手ほどきましょう。
具体的な研修の例としては、
- 社会人としての心得
- ビジネスマナー
- OA研修
- チームワーク
などがおすすめです。
内定者研修を実施する際は、内定者が知識やスキルがないことを不安に感じないよう配慮が必要です。研修で厳しい評価づけをすると、自分に自信がなくなったりモチベーションが低下する内定者が出てくるでしょう。
内定者研修は、あくまで内定者をフォローするための施策です。研修が内定者の不安を助長することのないよう注意しましょう。
⑤社内イベント|社内の雰囲気を体感できる
内定者を社内イベントに招待すると、内定者は会社の雰囲気や社員の素の一面を知ることができます。
社会人になることへ漠然とした不安を感じている内定者は、先輩に対して怖い・厳しいといった先入観を抱きやすいです。実務で厳しい指導が必要な場面もあるかと思いますが、それはずっと先のことです。
まずは、会社全体がリラックスした状態を見てもらい、内定者が肩肘張らず楽な気持ちで参加できる場を用意しましょう。
社内イベントの具体例としては、
- 新年会・忘年会
- 花見
- バーベキュー
- スポーツイベント(草野球・フットサル・マラソンなど)
- 記念イベント(誕生日・周年など)
- 展示会
- ビアガーデン
などがあります。
社内イベントは、新たに企画するというよりも毎年実施しているものに内定者を招待するというスタンスが望ましいです。
1点気をつけたいのは、イベントの内容を問わず参加することに抵抗を感じる学生がいるという点です。社内イベントはあくまで社内イベントであり、内定者に強制すべきではありません。
社員と交流が持てるというメリットを提示した上で、基本的には自由参加であることを伝えてください。また、不参加だった内定者が不公平と感じないよう別のフォローも求められます。
内定者フォローを企画・実施する際の注意点

内定者フォローを企画・実施する際は、以下3つの点を意識してください。
- 参加する社員の人選
- 個人(少人数)のイベントも実施する
- 内定者の都合に配慮する
ここからは、それぞれの注意点を詳しく説明していきます。
注意点①参加する社員の人選
内定者と社員が関わりを持つ企画を検討されている場合、参加する社員の人選は慎重に行うべきです。
内定者にとって、内定先の社員は会社のイメージそのものです。快活に楽しく仕事をしている先輩社員を見れば、「自分もこんな風に活躍したい」と前向きな気持ちになれます。
一方、先輩風を吹かせたり高圧的な態度を取る社員は、内定者に「この人の下では働きたくない」と思わせてしまう可能性があります。
とくに気をつけたいのが、食事をしながらの交流会です。お酒の席で気持ちが大きくなりやすい社員は、内定者フォローの参加候補者からは外しておくのが賢明です。
参加を依頼する社員にも、暴言や連絡先交換を強要することのないよう念を押して注意しましょう。
注意点③個人(少人数)のイベントも実施する
内定者フォローを企画する際、個人もしくは少人数のイベントも検討してください。
内定者の中には、人前でうまく発言できない学生もいます。大勢の前で質問することに抵抗を感じ、不安を解消できずモヤモヤした気持ちを募らせる学生もいるでしょう。
少人数のイベントなら、人見知りな学生の不安を解消することができます。うまくフォローできれば入社意欲を高めることもできるので、一人ひとりの内定者と向き合う機会は積極的に実施していきましょう。
注意点④内定者の都合に配慮する
卒業を控えている学生は、卒業論文や卒業研究などで多忙な毎日を送っています。
内定者フォローを実施するのはとても大切なことですが、フォローのためのイベントが学生の負担となるのは好ましいことではありません。
学業の妨げとならないよう、ハードな研修や長時間に及ぶイベントは避けるのがベストです。また、内定者フォローの日程が決定したらできるだけ早く連絡をしてあげてください。
最後に
この記事では、内定者フォローが必要な理由や学生が求めるもの、内定者フォローの企画例を紹介しました。
コロナ禍で変動する採用市場では、『安心して入社できる』と思ってもらえる内定者フォローを実施しなければなりません。そのためには、内定者が内定者フォローに何を求めているかというニーズを正確に把握する必要があります。
今回紹介した企画例は、内定者のニーズを取り入れつつ特別コストをかけることなく実施できるものばかりです。社風に合わせて工夫し、内定辞退を防ぐためにご活用ください。
