新卒採用アンケート結果から見る採用課題と市場変化|学生の声も紹介
新型コロナウイルス感染症の拡大は採用市場に影響を及ぼし、新卒採用の見通しを立てにくいと感じる新卒採用担当者も少なくありません。
今後の採用計画を練るためにも、他社の新卒採用に関する動向についても知っておく必要があります。
今回は、新卒採用のアンケート結果から見る課題と変化についてご紹介します。アンケート結果を参考に、自社の新卒採用の計画を点検しましょう。
また、24卒・25卒採用の動向がわかる最新資料「どうなる?24卒・25卒 新卒採用 市場動向調査レポート(春夏版)」をご用意しました。独自調査の分析を踏まえ、これからの採用で取り入れるべき考え方や手法を解説しています。学生のニーズや他社の採用状況が気になる人事・採用担当者の方は、ダウンロードしてご活用ください。
目次
2021年最新の新卒採用に関するアンケート結果
コロナ禍などの影響を受け、経済不安等により採用活動をストップした企業も目立つ2021年。企業の新卒採用はどのような動きを見せたのでしょうか。
2021年最新の新卒採用に関するアンケート結果をご紹介します。
新卒採用の見通し・実施状況
OfferBoxを提供する当社i-plugの「どうなる? 2023年卒新卒採用市場動向・変化予測」のアンケート結果によると、企業が23年卒採用に向け変更しているのが「インターンシップの内容」(28.8%)、「スケジュール」(26.7%)、「母集団形成の手法」(23.6%)でした。
インターンシップのオンライン化、応募の訴求を目的にインターンシップの内容を刷新している企業が増加しています。インターンシップに限らず、採用活動全体のオンライン化が加速していく可能性が見受けられ、コロナ収束後もオンライン対応を続けると回答した企業が全体の44.5%に上りました。
採用活動開始時期については、会社規模によって違いが見受けられます。従業員数5,000人以上の大手企業のうち「2021年4〜6月」の早期開始を予定してる企業が64.7%で、それ以外の企業は開始時期にばらつきがありました。ただし、学生への接触開始時期を早めると回答した企業が21.8%で、例年に比べやや早まることが予想されます。
その他、詳しい動向については以下をご参照ください。
どうなる? 2023年卒新卒採用市場動向・変化予測 ~春版~
企業側が選考で重視する資質・能力
経団連「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」によると、選考で企業側が重視している項目は、以下の通りでした。
- コミュニケーション能力(82.4%)
- 主体性(64.3%)
- チャレンジ精神(48.9%)
- 協調性(47.0%)
- 誠実性(43.4%)
コミュニケーション能力は10年以上連続1位という記録です。さまざまなステークホルダーと関わるうえで「相手を正しく理解する力」「自分の考えを相手に伝える力」を重要視する企業が多いということを表しています。
もう1点注目したいのが、主体性を重要視する企業が増えてきているということです。企業の経営スピードが加速するなかで、自ら考え行動できる人材は早期に活躍できる人材とされ、評価される傾向にあります。
参考:https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/110.pdf
初任給の方針
経団連「2020年3月卒『新規学卒者決定初任給調査結果』の概要」によると、「前年の初任給から引き上げた」と回答した企業は42.6%に上り、2014年以降40%以上の企業が引き上げている結果となりました。
初任給決定にあたり考慮した判断要因は「世間相場」(27.8%)、次いで「在籍者とのバランスや新卒者の職務価値」(25.1%)という結果です。多くの企業が他の企業や在籍者の水準を意識して初任給を決定していることが分かりました。
その他の判断要因として、「人材を確保する観点」(16.7%)、「賃金交渉の結果による配分」(11.7%)、「労組との初任給交渉」(7.5%)、「企業業績を勘案」(6.8%)が挙げられています。
参考:https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/121.pdf
新卒採用の課題に関するアンケート結果
2021年の新卒採用活動において企業はどのような課題を抱えているのでしょうか。
多くの企業が抱えている課題に関して順番にみていきましょう。
母集団形成
ネオキャリア「2019年新卒採用に関するアンケート調査結果レポート」によると、新卒採用の課題についてトップは「母集団形成の実施」(24.9%)でした。
例年、母集団形成に関しては多くの企業の課題とするところ。まして、2020年はコロナ禍の影響を受け、セミナーや合同企業説明会が次々と開催見送りとなり、学生との接点が限定的になってしまったことで悩みを抱える企業をさらに増加させている状況です。
学情「採用担当者アンケート」によると、2022年卒の採用活動に関する課題として「母集団の質の向上」が49.3%、「特定ターゲットの母集団形成」は41.9%、「幅広い母集団形成」が34.6%となっており、母集団形成に関しては、昨年よりさらにシビアになってくることが伺えます。
参考:https://www.neo-career.co.jp/humanresource/knowhow/b-contents-saiyo-newgrad-1912kadaireport-200127/
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000755.000013485.html
採用方法・採用戦略
ネオキャリアの同調査によると、企業が抱える課題で2番目に多いのが「採用方法・採用戦力の決定」(23.3%)です。コロナ禍によってオンライン対応など、従来の採用方法を変える必要が出てきたことで、採用戦略や採用方法で悩みを抱える企業が増加傾向にあります。
さらに、オンライン化により身振り、手振り、表情、相槌などの非言語コミュニケーションが減少することで、学生の人となりを判断しにくくなっている点が課題です。
学情の同調査によると、2022年卒の採用活動に関する課題として、「学生を見極める選考方法」(19.6%)が挙げられており、多くの企業で学生の見極めができる施策が急務となっていることが分かりました。
応募者への動機付け
ネオキャリアの同調査によると、企業が抱える課題で3番目に多いのが「応募者への動機付け」(19.0%)です。学生の内定承諾まで取り付けたものの、コロナ禍で人事担当者や内定者同士の交流が制限されるなか、入社意思の維持、囲い込みを課題とする企業が多く見られました。
実際に、学情の同調査によると、「内定辞退の防止」は42.5%、「入社意欲の向上」は39.6%と多くの企業が関心を持っていることが明らかです。有効求人倍率が低下傾向にあるため、学生も転職活動へ慎重な姿勢で望んできています。
応募者への動機づけが今後も重要になってくるのではないでしょうか。
採用基準・選考方法
ネオキャリアの同調査によると、企業が抱える課題で4番目に多いのが「選考基準・選考方法の決定」(11.1%)です。コロナ禍でオンラインでの選考方法が必要となり、対応に追われた企業がほとんどではないでしょうか。
実際に「就職白書」によると「Web化への対応課題」として「ノウハウ」(63.3%)、「社内の環境・設備」(61.0%)などの課題を挙げる企業が多いことが証明されています。オンラインだと「印象に残りにくい」「会社の魅力が伝えにくい」などの問題が浮き彫りとなり、それを解消するため技術的なノウハウや環境整備が必要だと考えている企業も少なくないのです。このように採用方法を模索している企業も多いことが示唆されています。
参考:https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/hakusyo2021_01-48_up.pdf
コミュニケーション
企業が抱える課題として全体的に多く感じられるのが「学生のコミュニケーション」です。
「就職白書2021」では、採用選考過程においてオンライン対応が増えたことで「言語化や丁寧な対話の必要性」が挙げられており、「社員の人柄や魅力」や「職場の雰囲気や組織風土」をどのように伝えるか、学生の「人柄や魅力」「志望度」をどのように把握するかが今後の課題と指摘されています。精度の高いマッチングを図るためにも、学生とのコミュニケーションの重要性はオンライン化しても変わりません。
また近年、学生側にも「成長・貢献を重視する仕事観の変化」が広がっており、就職先の決め手とされています。そのため、企業側が「どのようなキャリアパスやスキルアップを望めるか」を学生にしっかりイメージさせることが重要となってくるでしょう。
参考:https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/hakusyo2021_01-48_up.pdf
学生の属性別に見た新卒採用のアンケート結果
デジタル化やグローバル競争の加速を背景に、新卒であっても専門・高スキル人材の確保が企業にとって重要課題となっている昨今。さらに、SDGsを背景に多様な人材が活躍できる環境作りも企業の責務であり、そうすることで業績につながるという風潮もあります。
このような要因から、理系人材の確保に注力したり、女性を積極的に採用する姿勢をアピールしたりする企業も増えてきています。ここでは、理系、女性をターゲットとする新卒採用の参考となる、学生側のアンケート結果を紹介します。
理系
TDK「コロナ禍でのオンラインの就職活動に関する調査」(2022年に卒業予定の理系学生を対象)によると、「就職活動を行ううえで、オンライン(Web)とオフライン(リアルの対面)のどちらが望ましいか」という質問に対する回答は、選考フェーズによって異なることが明らかとなりました。
選考前半は「オンラインが良い」という回答が過半数を超える結果です。
- 就職セミナー(77.9%)
- 企業説明会(76.2%)
- 選考面接(1次などの初期段階)(64.2%)
選考後半においては、逆にオフラインを希望する意見が多数派でした。
- 選考面接(2次から最終面接の手前まで)(50.3%)
- 最終面接(66.3%)
オンラインを希望する理由には、交通費の節約などの金銭的な要因もあるようですが、最終フェーズになると学生も慎重になることが伺えます。
また、企業に対しても「採用選考日程を、感染状況や社会状況に応じて柔軟に変更してほしい」(47.4%)、「選考プロセスは、できるだけオンラインで完結してほしい」(41.6%)、「会社の雰囲気や働く人達について知るために、動画を活用してほしい」(33.4%)と配慮を期待している声も見られました。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000051614.html
女性
ディスコ「女子学生の就職活動に関するアンケート調査」の「企業研究の際に意識したり、調べたりしたこと」を通じ、安定を求め、ライフプランを意識していることが明らかとなりました。具体的に企業研究において調べた項目は、以下の通りです。
- 多様な働き方の制度(在宅勤務、フレックスなど)(62.6%)
- 残業や休日出勤の実態(61.1%)
- 育児休業の取得率(57.9%)
- 女性社員の人数(男女比率)(53.7%)
実際に、「入社後のキャリアプラン」について「定年まで(なるべく長く)」勤務したいという回答が、52.8%に上っています。コロナ禍で経済の先行きが不透明ななか、安定を求める声が高まっていることが分かりました。ライフプランに合わせた働き方でキャリアを積みたいという意見も多く、「意図的に女性管理職を増やすことへの賛否」についての回答は82.2%と、大半が賛成しています。
参照:https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2021/03/joshi202103.pdf
採用手法の変化をめぐる動向
コロナ禍で採用手法も大きく変化を余儀なくされ、今後はアフターコロナを見据えた対応も必要となってくるでしょう。
これからの採用を考えるヒントを得るためにも採用手法の変化をめぐる動向について解説していきます。
説明会・選考のオンライン化
経団連「2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果」によると、オンライン面接について、9割超の企業が実施しているという結果でした。説明会、選考のオンライン化については、スピード重視の採用活動に有効であることが調査により明らかとなりました。具体的に、以下が評価されている点です。
- スケジュールの調整がしやすい(74.0%)
- 遠方でハンディのある学生に対して有効である(96.4%)
- 交通費の支給などコストが減少する(81.4%)
また、課題として6割超が「対面の面接より学生の評価が難しい」と難点を挙げており、「細やかな表情等が把握しにくい」(83.7%)、「通信環境を担保する必要がある」(75.8%)という回答となりました。オンライン化も定着していくことが予想されてるため、説明会・選考を含めオンライン化が今後も必要となってくるでしょう。
参考:http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/080.pdf
通年採用
経団連「2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果」によると、通年採用を「実施している」「実施予定」「検討している」企業は6割弱という結果が出ており、ビズリーチが発表している「新卒通年採用に関するアンケート調査」(2020年10月)でも、「導入している、または導入を検討している」と回答した企業は65%となっています。
実際に、20年卒以降から「通年採用」を導入している企業は36%であるものの、「導入時期が未定」と回答した企業は45%でした。このように、通年採用に前向きな企業は増加傾向です。通年採用を導入する理由は以下の通りでした。
- 必要な人材を最適な時期に採用できる(68%)
- 早期に就職活動を始めた学生に出会える(35%)
- じっくりと候補者を見極められる(31%)
参考:http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/080.pdf
参考:https://www.bizreach.co.jp/pressroom/pressrelease/2020/1012.html
ジョブ型採用
経団連「2021年度入社対象 新卒採用活動に関するアンケート結果」によると、ジョブ型採用を「実施している」「実施予定」「検討している」企業は約4割、「実施していない」企業は59.8%と半数以上を占めました。
「ジョブ型採用」は「一部職務に限定して適用」という方針が多く、ジョブ型採用に積極的な企業の60%余りです。主に「システム・デジタル・IT」、「研究・開発」、「営業」、「経理・財務」、「法務・知財」などの職務で実施されています。
参考:http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/080.pdf
ダイレクトソーシング
ダイレクトソーシングとは、企業の人事担当者が直接、求職者へアプローチを行う採用手法を指します。ダイレクトソーシングは、ピンポイントでアプローチができ、特に知名度の劣る中小企業、スタートアップ企業にとっては優秀な人材と接点を作れるチャンスが生まれるため、近年注目を集めています。
「就職白書2021」でも「情報提供やコミュニケーションとして、実施予定のもの」として「スカウト・逆求人型サービス」が挙げられており、企業の16.1%が新しい取り組みとして計画しています。
また、新卒採用で苦戦する企業にとって、ダイレクトソーシングはそれを打開する手法としても用いられる傾向にあるようです。年々シビアとなってくる新卒採用において、今後も継続的にダイレクトソーシングは注目を集めるでしょう。
参考:https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/hakusyo2021_01-48_up.pdf
まとめ
コロナ禍の影響を受け、新卒採用も様代わりをした2021年。
アンケート結果からは、説明会・選考のオンライン化や通年採用、ジョブ型採用、ダイレクトソーシングなど、さまざまな新しい動きが見られました。一方、企業側がコミュニケーション能力を重視する方針や、母集団形成を課題と捉える採用担当者が多いことなど、従来と同じ傾向があったのも事実です。
今後は、先行きが見えないなかでアフターコロナを見据えた計画が必要となります。企業に求められることは、採用手法のオンライン化と最適化でしょう。
オンライン化の定着が見込まれる今後も、オンライン化を前提に計画を進めることで、他社に遅れをとらない採用活動が実現できます。
採用市場の変化を見据えつつ、スケジュール・採用手法の最適化を図り、有効な戦略を立てるようにしてください。
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