内定者アルバイトの目的・メリットとは?注意点と企業事例3選を解説
昨今、内定者アルバイトを実施する企業が増えています。「企業と内定者の相互理解が深まる」といったメリットがある一方、いくつかのデメリットや注意点もあるため、採用・人事担当者は事前に知識を整理しておくのが重要です。
今回の記事では、内定者アルバイトの概要や実施状況、メリット・デメリットなど幅広く解説します。内定者アルバイトを実施している企業の事例や、雇用保険・社会保険についても紹介しますので、内定者のフォロー施策に迷っている方はぜひ参考にしてください。
また、内定者フォローに効果的な施策について解説した資料をご用意しました。ぜひ本記事とあわせてご活用ください。
目次
内定者アルバイトの概要や実施状況
内定者アルバイトは、文字通り「内定者に自社でアルバイトをしてもらうこと」です。昨今、内定者アルバイトの事例が増えており、さまざまな議論が巻き起こっています。まずは、内定者アルバイトの基礎知識について見ていきましょう。
内定者アルバイトの定義や目的とは?
内定者アルバイトの定義は、「内定者を入社前にアルバイトとして雇用すること」です。ただし内定者の自由意志を第一にすべきなので、強制的にアルバイトをさせることはできません。内定者はあくまで「学生」なので、負担をかけすぎない範囲内で働いてもらうことになります。
内定者アルバイトの制度は、内定者を単なる労働力としてではなく、即戦力として働いてもらえるように教育する側面もあります。内定者アルバイトの主な目的は、企業と内定者がミスマッチを起こしていないか確認すること、そして内定者に社会人としての意識を高めてもらうことです。
内定者アルバイトの主な内容は?
内定者アルバイトの主な内容は、企業の事業内容や部署によって大きく異なります。特定のルーティン作業をこなしてもらう場合もあれば、会社全体の業務フローを学べるような部署で働くケースも珍しくありません。
内定者アルバイトの参加者は、翌年度から働いてもらう重要な存在です。そのため通常のアルバイトとは扱いが異なり、どちらかといえば「研修」の側面が強い内容となります。内定者アルバイトを実施する場合は、なるべく学生である内定者に負担をかけない方法を採用しましょう。
内定者アルバイトを実施する割合は?
ネットエイジア株式会社による入社前後の実態調査(2022年)によれば、24.1%の学生が「内定者インターンシップもしくはアルバイトを行った」と回答しています。
なおこの数値は、2016年に比べて、6.9%上昇しています。どの業界を確認しても、内定者アルバイトを実施している割合は、上昇傾向にあります。今後も、内定者が何らかの形で業務に関わる機会は増えていくでしょう。
内定者アルバイトを実施するメリット
内定者アルバイトをするメリットは、以下の3つです。
- 企業と内定者の相互理解促進
- 社会人スキルの向上
- 内定辞退の防止
いずれも内定者アルバイトを理解するために重要な項目です。ここでは、それぞれのメリットについて解説します。
企業と内定者の相互理解促進
まず大きなメリットとしては、企業と内定者の相互理解促進があります。企業視点で見れば、内定者アルバイトを通して、内定者がどのようなパーソナリティを持っているのかが分かります。その人の人間性だけでなく、実際にどのような業務が向いているのかなど、実務的な部分の理解も深まるでしょう。
また内定者視点でも、企業について深く理解できます。内定をもらったとはいえ、「自分が働く企業はどのようなところなのか」と不安を抱えている内定者も多いでしょう。そこで内定者アルバイトを通して、前もって企業で働く体験をしておけば、入社時にもスムーズに馴染めます。
社会人スキルの向上
内定者アルバイトの実施によって、社会人としてのスキルが向上するのも大きなメリットです。入社が決まったとはいえ、内定者はまだ学生の状態であり、ビジネスマナーの基礎が必ずしも身についていません。入社前にアルバイトとして雇用すれば、前もって社会人としての意識を高めてもらえます。
内定者アルバイトの期間中は、既存社員と同じような環境で働いてもらい、業務フローを身近に感じてもらうのが重要です。もちろん、内定者の立場はまだ学生なので、プライベートを縛りすぎないように注意します。無理のない範囲で、社会人としてのスキルを磨いてもらいましょう。
内定辞退の防止
内定者アルバイトの実施によって、内定辞退の防止につながるのも大きなメリットです。内定者アルバイトを通して、内定者とのコミュニケーションを深めておけば、企業に対するエンゲージメントを高められます。そうなれば、結果として内定辞退につながりにくくなるでしょう。
ただし内定者アルバイトによって、内定者が「自分はこの企業に合っていない」と考えれば、逆に内定辞退を促進してしまう可能性もあります。また内定アルバイトが、内定者にとってストレスになってしまうことも考えられるため、なるべく慎重に実施するのが重要です。
内定者アルバイトを実施するデメリット
ここまで内定者アルバイトを実施するメリットについて解説しましたが、いくつかのデメリットもあるため注意しましょう。ここでは、代表的なデメリットとして、「企業側の負担」「内定者側の負担」の2つの視点に分けて解説します。
受入側の負担増加
まず注意しておきたいのは、受入側、つまり企業側の負担増加です。内定者アルバイトとして何人かの内定者を雇用した場合、どこかの部署が内定者たちを引き受けなければなりません。内定者アルバイトの担当になった社員は、当然自分の仕事を止めて内定者たちに教えることになるため、その部署全体の負担が増加します。
そのため、内定者アルバイトを実施する際は、なるべく繁忙期を避けるのが望ましいでしょう。また担当部署にどれくらいのコストが発生するのか、事前に確認しておくのも重要です。内定者アルバイトを実施する時点で、企業側の負担増加は避けられませんが、なるべく最小限に抑える取り組みを心がけましょう。
内定者のスケジュール圧迫
企業側の負担とは別に、内定者のスケジュールを圧迫してしまうデメリットもあります。内定者は、企業から内定をもらった後も、卒業するまでは「学生」の立場です。学生の本分は勉強であり、何よりもまず勉学を優先する必要があります。
もちろん大学の単位を取り切っており、ゼミの日だけ通学するといった人も多いでしょう。しかし単位を取り切っていない人や、自分なりに勉強をしたい人にとっては、内定者アルバイトが大きな負担になります。スケジュールを圧迫しすぎてしまうと、内定辞退につながってしまう可能性もあるため注意が必要です。
内定者アルバイトを実施している企業事例
内定者アルバイトを実施する際は、単なるルーティン作業に終わるのではなく、なるべく会社や事業について理解できる内容が望ましいでしょう。ここでは、魅力的な内定者アルバイトを実施している企業について、3つのトピックに分けて解説します。
事例①ライク株式会社
ライク株式会社は、子育て支援サービスや総合人材サービス、介護関連サービスなどの事業を展開している企業です。同社では、内定者アルバイトとして、「会社案内動画の撮影」といったユニークな試みを実施しています。
またデータ入力やファイリングなど、採用関連の業務を通して、会社に対する理解を深めてもらう内容となっています。人事以外の業務も多くこなしてもらい、入社までの間に、少しでも社風に慣れてもらうことを目的としています。
事例②株式会社エイチーム
株式会社エイチームは、インターネットやスマートデバイスを通じて、エンターテインメント事業やEC事業などを展開している企業です。同社の内定者アルバイトでは、グラフィックデザイナーとして採用された内定者に対して、ゲームの制作フローを体験してもらいます。
内定者のなかには、事業に関する理解度があまり深くない人もいるでしょう。しかしそのなかで、全体的な業務フローを体験してもらうことによって、入社前に課題を見つけてもらいやすくなります。
事例③ミクシィグループ
株式会社ミクシィは、「総合職」「デザイナー」「エンジニア」の3つの領域で、内定者アルバイトを実施しています。それぞれ内容が異なり、例えば総合職であれば、「競合調査・分析」や「企画のディレクション」などを担当します。
デザイナーやエンジニア職は、コードの修正やロジックの実装など、実際の業務に近い内容となっています。いずれも業務フローの「全体感」をとらえる内容になっており、内定者アルバイトならではの試みといえるでしょう。
内定者アルバイトを実施する注意点
内定者アルバイトの実施には、いくつかの注意点があります。特に法律が絡む場合もあるので、なるべく事前に知識を整理しておきたいところです。ここでは、内定者アルバイトを実施する際の注意点について、2つのトピックに分けて解説します。
アルバイトの強制は禁物
先ほども触れたように、内定者アルバイトの強制は禁物なので注意しましょう。これは「内定者にとってよくないから」といった抽象的な理由ではなく、内定者の法的な立場が関係しています。
内定者は、法的にいえば「始期付解約権留保付労働契約」、つまり労働契約の開始時期は決まっているもののまだ従業員ではないという状態です。内定を出しているからといって、アルバイトやインターンへの参加を強制することはできません。
強制ではないため、学生側(内定者側)が、内定者アルバイトを拒否する可能性もあります。しかし企業側は、アルバイトに参加しないからといって、内定を取り消すことはできません。
内定者アルバイトを強制するのではなく、メリットを提示しながら、なるべく多くの人に参加してもらう方向性で進めましょう。
新たにアルバイト契約を結ぶ
内定者は翌年度から働くことになっていますが、内定者アルバイトを実施する場合は、新規でアルバイト契約を結ぶようにしましょう。先ほど紹介した「始期付解約権留保付労働契約」の状態では、まだ企業と内定者との間に、労働契約が発生していません。
そのため内定者にアルバイトをしてもらう場合は、正社員としての労働契約とは別個のもの、つまり新規の労働契約を結ぶ必要があります。この時、2つの契約を結んでいることになりますが、実際に効力を発揮しているのは「アルバイト契約」だけです。
アルバイト契約を結ぶ場合は、正社員としての契約とは別に「労働日」「労働時間」「賃金」などの条件を設定し、内定者との合意を得なければなりません。あくまで、正社員とは別個の契約として扱われることを理解しておきましょう。
内定者アルバイトについてよくある質問
最後に、内定者アルバイトについてよくある質問を2つ紹介します。
賃金の支払いは必要?
結論からいえば、正社員契約とは別個にアルバイト契約を結ぶため、賃金を支払う必要があります。内定者とは、「始期付解約権留保付労働契約」を結んだ状態ですが、実際の労働契約は発効していません。
そのため、内定者アルバイトを実施する場合は、内定者と別個にアルバイト契約を結びます。もちろん、正社員としての労働契約と、同レベルの賃金に設定する必要はありません。ただし労働契約として最低限の水準は確保しなければならないため、最低賃金額以上の賃金を支払います。
最低賃金額は、都道府県や特定の産業など、さまざまな条件で設けられています。具体的な金額を知りたい場合は、厚生労働省のホームページにアクセスし、該当する最低賃金額を調べるようにしましょう。
雇用保険と社会保険への加入は?
通常の従業員と同様、週の労働時間に応じて加入が必要です。内定者アルバイトは、通常のアルバイトと同じく労働契約を結ぶため、その契約内容に応じて雇用保険・社会保険に加入します。
雇用保険は「週の所定労働時間が20時間以上」の場合に加入します。ここで「学生は雇用保険に加入しないのでは?」と考える人も多いでしょう。昼間学生は、原則として雇用保険に加入しません。ただし、「卒業見込証明書を持っており、卒業後もその企業に勤める」場合は例外となる可能性があります。ケースによって判断は分かれるため、詳しくはハローワークに問い合わせてみましょう。
また社会保険(年金・健康保険)は、所定労働時間や月額賃金といった複数の条件を満たす従業員はアルバイトでも加入義務が生じますが、学生は対象外です(休学中や夜間学生は加入対象)。
内定者フォローのコンテンツを紹介
弊社では、YouTube動画でアルバイトだけではなく、内定者フォローのコンテンツを紹介しております。ぜひ、一度ご視聴いただき、参考にしていただけたらと思います。
まとめ
内定者アルバイトは、企業と内定者がコミュニケーションを交わし、相互理解を深めるためにも重要な施策です。内定者アルバイトの制度をうまく運用すれば、エンゲージメントの向上や、内定辞退の防止にもつなげられるでしょう。
ただし内定者アルバイトには、企業側・内定者側ともに負担を強いることになるため、なるべく慎重に進める必要があります。特にアルバイトの強制は禁物です。賃金の支払いや雇用関係など、法律に絡む部分も多いので、なるべく事前に知識を整理しておきましょう。
今回の記事で紹介した事例を参考に、内定者フォロー施策を考えてみてください。
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