新卒の「通年採用」とは?「一括採用」との違いやメリットを解説 | 事例あり

日本の新卒採用市場はここ100年あまり、「一括採用」「一斉入社」そして「集団での新入社員研修」がセットとなって実施されてきました。

しかし、ここ数年ほどの間に、年間を通じて新卒採用をおこなう「通年採用」が脚光を浴びるようになり、実施する企業も増えてきています。

では、どうして「通年採用」が増えてきているのでしょうか。

そこで、日本独自の採用スタイルと言われている新卒の「一括採用」と、新しく定着しつつある新卒の「通年採用」との違いについて解説します。

さらに、通年採用のメリット・デメリット、また、ウィズコロナの時代に向けた新しい採用活動について解説していきます。

どのような採用方法が自社に合っているのかを考える参考にしていただけますと幸いです。

新卒採用における「通年採用」と「一括採用」

新卒採用における「通年採用」と「一括採用」

「通年採用」について理解を深めるため、まずは「一括採用」との違いを整理しておきましょう。また、「通年採用」が注目を集める背景についても解説します。

新卒採用における「通年採用」と「一括採用」の違い

「通年採用」と「一括採用」の大きな違いは、募集期間です。

新卒の「一括採用」とは、限られた期間に多くの学生を一気に選考採用する慣行を指します。

「一括採用」の最大のメリットは、多くの学生の中から自社に合った学生を効率的に選考し、多くの新入社員を同時に受け入れられることです。また、一気に採用活動をおこなえるため、採用の手間やコストを削減できます。

一方、新卒の「通年採用」とは、1年を通して企業が採用活動をおこなう慣行を指します。

応募のタイミングが学生によって異なるため、一度に多くの学生を選考し、学生同士を比較することが難しく、個々の能力を絶対評価する必要があります。しかし、学生1人ひとりをじっくりと選考できるため、企業の求める人物像により近い人材を探すことが可能です。

なお、中途採用においては、今までも「通年採用」が実施されてきたため、新卒の「通年採用」とは区別して使われています。

「通年採用」が注目されている理由

「通年採用」が注目されている理由として、留学生や帰国子女の増加による採用時期や採用対象の多様化が挙げられます。

その流れを象徴するように、2019年4月には、経団連と大学側での協議がおこわれました。

その内容は、春季一括採用に加えて、インターンを経験した卒業生の選考、海外留学をした学生の帰国時期にとらわれない選考など、複線型の採用活動を推進していくというものです。

4年間の大学教育だけでは高い能力を持つ人材を育成するのに不十分だという見解もあります。

その結果、近年、ソニーやリクルートなどの日系大手企業が「通年採用」の慣行を取り入れるようになりました。

また、インターネット系のベンチャー企業でも、「通年採用」を実施する企業が増加しています。

「通年採用」を取り入れる企業側のメリット・デメリット

「通年採用」には、企業にとってメリットもデメリットもあります。実施の検討にあたっては、両方を把握しておくことが大切です。

「通年採用」を取り入れる企業側のメリット・デメリット

「通年採用」の企業側のメリット

「通年採用」は、「一括採用」と比較して時間的な制約が少ないことが特徴です。このため、じっくり選考をおこなえることによるさまざまなメリットがあります。

1. 企業の求める人物像に出会える可能性が増える

「通年採用」では、海外留学からの帰国学生や日本に留学している外国人学生、既卒者など、多様性のある人材の採用が容易となります。

今までは、海外留学からの帰国学生を採用するために、春季の「一括採用」とは別に「留学生枠」などを設ける必要がありました。

しかし、「通年採用」を用いる事によって、さまざまなバックグラウンドの学生を同じ評価基準で選考することが可能となります。

また、「一括採用」のように、1日に何十人も選考することや、同一期間内で競合他社の選考状況を気にして、早く選考結果を出すといった行為の必要はなくなり、じっくりと学生と向き合った選考ができます。

その結果、企業が求める人物像に出会える可能性が増えるのです。

2. ミスマッチを減らすことができる

前述のように、「通年採用」では、学生1人ひとりにゆっくり時間をかけて選考をおこなえるので、学生の能力や考え方を慎重に見極めることができます。

また、学生側も時間をかけて企業への理解を深めたり、相性を見極めたりするため、お互いにミスマッチを減らす効果も期待できるでしょう。

3. 内定辞退が起きても補填することができる

「一括採用」では、一度に多くの学生に内定を出し、内定者フォローをおこなう必要があるので、どうしても採用担当者1人あたりのフォロー人数が通年採用に比べると多くなりがちなため、内定辞退が発生しやすい傾向にあります。

また、採用数が目標に達しなかった場合、一度締めきった募集を再開するのは手間がかかり、すぐに募集を開始できたとしても学生が集まりにくくなるため、内定者の補填が難しいです。

一方、「通年採用」では、必要な人数だけその都度採用できるため、内定辞退をされてもすぐに補充対応ができます。

「通年採用」の企業側のデメリット

「通年採用」にはメリットがある一方で、従来よりも企業側の負担が増えるケースがあるというデメリットがあります。

1. 採用工数や費用増える可能性がある

「一括採用」は、開始時期が固定されているため、求人掲載、企業説明会、選考期間などの時期が決まっていました。

しかし「通年採用」では、1年中採用活動をしている状態になります。

さらに、応募者のピーク時期も読みづらいため、面接担当者のスケジュールなど、確保が必要な日程や工数を踏まえた年間計画を立てるのが非常に難しくなります。

また、1年中募集をしていると、求人掲載期間や選考期間が伸びることとなり、結果として人事的負担やコストが増える可能性があります。

2. 早期内定者への入社までのフォローが課題になる

「通年採用」により学生に早期に内定を出しても、「一括採用」の選考が後に控えている場合、自社の内定者が他社の内定を承諾し、結果として自社の内定を辞退する、などの事態が起きるケースもあります。

それを未然に防ぐためには、内定者の入社意向を高めていくような内定者フォローが必要です。内定者をつなぎとめる長期間のフォローが課題となるでしょう。

「通年採用」を取り入れる学生側のメリット・デメリット

「通年採用」による学生側のメリット・デメリットも把握しておきましょう。

「通年採用」の学生側のメリット

「通年採用」による学生側のメリットは、次の3つです。

  • ゆとりを持って就職活動に臨める
  • 応募できる企業数が増える
  • しっかり準備をしたうえで選考に参加できる

採用時期が集中する「一括採用」は、学生にとって時間的にも心理的にもハードです。一方「通年採用」は、短期で決めなければならないプレッシャーが軽減される分、ゆとりを持って就職活動ができます。

スケジュールにも余裕があるため応募できる企業も増え、一社ごとの選考に集中して参加できます。

「通年採用」の学生側のデメリット

メリットがある一方、学生にとって次の2つのデメリットもあります。

  • 能力重視で採用のハードルが高くなる
  • 能動的に情報を集める必要がある

ある程度大きな採用枠を設けたうえで潜在能力を重視して積極的に学生を採用する「一括採用」に比べて、「通年採用」では、採用枠を絞り、じっくり学生の素質や能力を見極める時間を確保しやすいという特徴があります。このため、学生は採用されるハードルが高くなりやすいのです。

また、「通年採用」の場合、企業によって採用スケジュールがまちまちになるため、積極的な情報収集が強いられます。

「通年採用」導入の流れ

通年採用を実施する際は、以下の流れで進めるとよいでしょう。

  • 要員計画にもとづいて採用計画を立てる
  • 求める人材像を設定する
  • 採用チームを編成する
  • 採用手法と選考方法を検討する
  • 新人育成の体制を検討する

始めに、要員計画を立てます。要員計画とは、事業を遂行するために必要な人数を見積もることです。次に、要員計画にもとづいて、「いつまでに、どの部署に、何人」採用する必要があるか、詳細な採用計画を立てます。

採用計画を立てると同時に、求める人材像を設定します。人材像は、明確に設定することがポイントです。自社で活躍する社員を分析したり、自社の理念や方向性に合う人物像を分析したりすることが役立ちます。

人材像が設定できたら、いよいよ採用チームの編成です。「通年採用」は、「一括採用」と比較して、タスクやスケジュール管理などの工数が多くなりがちです。また、採用に関する実務のほか、採用市場の分析や情報収集もおこなう必要があります。採用計画が滞りなく進むよう、適切な人数を確保しましょう。

採用チームの編成後、採用手法と選考方法の検討に入ります。採用の効率を第一にコスト面も考えながら、自社に合ったやり方を選びましょう。

「通年採用」に向いている採用手法は一括採用とはやや異なります。例えば合同説明会・単独説明会やナビサイトは就職活動が解禁になる春頃から夏頃に利用が集中する傾向がありますが、秋や冬には利用する学生が減っていくのが通常で、ナビサイトはクローズするケースもあるため、年間を通して採用するのは困難でしょう。一方、企業側から学生に能動的にオファーするスカウト型の採用手法は、登録している学生に年間を通じてプッシュ型のアプローチができるため、通年採用と親和性があります。

最後のステップは、新人育成の体制を検討することです。入社時期や育成スケジュールが一律の「一括採用」と異なり、「通年採用」の場合、内定者1人ひとりに対応しなければならなくなることも少なくありません。研修や教育内容にバラつきが生まれないよう、育成体制を十分整備することが必要です。研修担当だけでなく、配属部署のフォロー体制についてもしっかり構築しておきましょう。

ウィズコロナ時代での「通年採用」を始めるポイント

新型コロナウイルス感染拡大は、学生の就職活動にも大きな変化をもたらしています。通年採用を始めるにあたり、ウィズコロナ時代の採用のあり方についてもおさえておきましょう。

ウィズコロナ時代での「通年採用」を始めるポイント

学生のスケジュールの把握

「一括採用」の場合は、学生が企業の採用スケジュールに合わせなければなりませんが、「通年採用」を取り入れた場合、企業が学生のスケジュールに合わせることが可能になります。

そのため、テスト期間や夏休みなどの多くの学生が該当するスケジュールに合わせた採用活動を練っていく必要があります。

また、海外から日本の大学に留学する外国人学生は、4月だけでなく9月~10月に入学する場合もあり、その場合は卒業が3月以外の時期となることもあります。

このように、学生は多様なスケジュールで動いているので、採用したい学生のスケジュールを分析し、それぞれの状況に合わせた対応をする必要があります。

オンラインツールの活用

新型コロナウィルス感染拡大前から、インターネット上でおこなうさまざまなコミュニケーションツールが発展し、浸透していまますが、採用市場においてはあまり活用されていませんでした。

しかし、今回の新型コロナウィルス感染拡大の影響によって、多くの企業で、オンラインツールを使用した採用活動が取り入れられるようになりました。

学生に直接会えないというデメリットはありますが、一方で、オンラインツールを活用した面接や説明会なら、地方都市や海外に住んでいる学生も参加しやすい環境を整えられます。

また、オンラインツールを活用すれば、わざわざ企業まで学生に来てもらう必要がないので、学生との接触回数を増やすことができます。

学生と接触する回数が多ければ多いほど、企業に対して親しみを持つようになるので、大きなメリットと言えるでしょう。

「通年採用」で役立つツール

オンラインツールと同様に注目されているのが、AI(人工知能)などの先端技術を取り入れた、採用活動の効率化を高めるツールです。ツールを導入し、自社の採用に活用する企業が増えています。

ここでは、特に「通年採用」に役立つ3つのツールについて、特徴や機能、メリットなどを紹介します。

OfferBox

OfferBoxは、AIと適性診断を取り入れた学生検索の仕組みによって、自社に合った学生に直接オファーを送ることができる新卒採用支援サービスです。学生のオファー開封率は89%と高く、企業自らが「会いたい学生」にのみアプローチできるため、採用活動を効率化できます。

また、採用活動にかかる工数を統計データなどから予測し、採用計画表を作成する機能も備えています。学生に能動的にアプローチできる点だけでなく、煩雑化しがちな「通年採用」の業務効率を改善できる点からも、これから「通年採用」を取り入れる企業に特に役立つツールです。

dodaキャンパス

dodaキャンパスは、採用したい学生をダイレクトにスカウトできるオファー型の新卒採用サービスです。企業は「キャリアノート」を公開している学生に対してオファーを送り、自社の魅力を学生に直接伝えることができます。学生のオファー開封率は、8割にのぼります。

総登録学生数は約67万人で、登録した学生に対してオンラインキャリア講座などのイベントを実施している点が特徴です。また、低学年の学生のデータベースが充実しています。1~2年生のうちからオファーを送り、長期的な広報活動によって採用につなげたい企業に向いています。

Future Finder

Future Finderは、AIと心理統計学から自社で活躍する可能性の高い学生を分析し、スカウトメッセージを送信したり、優先的に求人広告を表示させたりできる採用サービスです。登録者数は約15万人で、幅広い属性の学生にアプローチできます。

求人広告の作成やスカウトメッセージの原稿作成、配信のほか、説明会やインターンの実施に伴うサイト更新業務まで、事務局で代行してくれます。社内の採用活動にかかる工数を極力削減し、面接や社内調整に注力したい企業に向いています。

「通年採用」を取り入れている事例

ここからは、「通年採用」を取り入れている4社の事例を紹介します。自社で「通年採用」を検討する際の参考にしてください。

リクルートの例

既卒、就業経験を問わず、30歳以下のポテンシャル採用を一本化したということが大きな特徴です。

つまり、3月(もしくは9月)に卒業を予定している学生だけに限った「新卒採用」を廃止したということになります。

ただし、入社時期を4月に限定することで、「新入社員の受け入れを一斉におこなう」メリットは残した運用となっています。

通年採用を取り入れた背景として、「まだやりたいことがあるのにもかかわらず、就活によってやりたいことを止めてしまうのは非常にもったいない」という考えのもと、社風に合致した学生を採用したいとの思いがあるようです。

ソフトバンクの例

ソフトバンクは、「通年採用」として「ユニバーサル採用」を実施しています。

既卒、就業経験を問わず、30歳以下のポテンシャル採用を一本化したということはリクルートと同じです。

ただし、入社時期は4月、7月、10月と3回実施されます。

また、自社に興味を持つ学生だけを採用していては限界があるため、「採用したいと思った学生には企業側から積極的にアプローチしていく」という姿勢を打ち出しています。

「通年採用」を取り入れた理由は、1年を通して優秀な学生と出会う可能性が高いためだとしています。

ヤフーの例

2016年から新卒一括採用を廃止し、「ポテンシャル採用」「キャリア採用」として通年採用を実施しています。

既卒、就業経験を問わず、30歳以下のポテンシャル採用を一本化したということは前述の2社と同じです。

導入の背景として、これまでの採用では、第二新卒や既卒の方に対して平等な機会を提供できないことに加え、海外留学生や博士号取得者など、就職活動の時期が多様化している状況に対応できないため、柔軟な枠組みを導入したと発表しています。

ファーストリテイリンググループ(ユニクロ)の例

ユニクロでは、新卒採用を「グローバルリーダー社員」「地域正社員」の2種類の募集形態でおこなっており、その中の「グローバルリーダー社員」の採用に「通年採用」を取り入れています。

いわゆる「一括採用」と「通年採用」の併用型で、新卒か中途かについても一切問わないポテンシャル採用です。

入社時期は3月と9月のみです。大勢の新入社員の受け入れをしなければならないため、「新入社員の受け入れは一斉におこなう」メリットの部分は残した運用となっています。

2013年新卒採用に合わせ、2011年12月より通年採用をスタートさせており、他社と比べてもかなり早くから通年採用を導入しています。

「就職活動の主役は企業ではなく個人であり、個人が自由に考え、将来の希望を選択する自由があるべき」という理念にもとづき、それぞれの学生のタイミングを重視する採用方針に切り替えられています。

「通年採用」を始めようとしている人事担当者へ

今回の記事では、採用時期や対象の多様化により注目が高まっている「通年採用」について「一括採用」との違いも交えお伝えしました。

通年採用にはメリット・デメリット両方の側面があり、どんな採用方法が自社にあっているのかを見極め、検討していく必要があります。

コロナの影響もあり採用事情も変化しているため、時代の変化にあわせた採用方法を取り入れていきましょう。

人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部