ChatGPTは採用に活用できる?メリット・注意点や活用方法を解説
ChatGPTは、米OpenAI社によって開発・提供されているサービスで、2022年にプロトタイプとして公開されて以降大きな注目を集めています。「GPT-3.5」までは精度などの問題が指摘されることもありましたが、大幅に改善された「GPT-4.0」が登場し、業務に取り入れられる例も出てきています。
今回は、ChatGPTを採用に活用する際の基礎知識や、実際の使い方について詳しく解説します。ChatGPTが効果を発揮する採用手法や注意点についても触れていますので、ChatGPTを採用活動により活用したいと考えている採用担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
また、人事ZINEではChatGPT×新卒採用に関する資料をご用意しています。自社の独自調査を踏まえ、学生・企業が就職・採用活動におけるChatGPTの活用についてどのように捉えているかを分析します。また、自社の採用活動でそのまま使える便利なプロンプト例も解説していますので、ぜひご活用ください。
目次
ChatGPTを採用に活用する際の基礎知識

ChatGPTは、自然言語処理の最先端技術が搭載されたツールの1つであり、さまざまな業界で採用活動に使われるようになっています。ここでは、ChatGPTの概要と、採用に活用する動向について簡単に解説します。
ChatGPTの概要
ChatGPTは、米OpenAI社によって開発された大規模言語モデル「GPT-3.5」や「GPT-4.0」を用いた会話型生成AIで、個人・教育・ビジネスなど幅広い分野で利用されています。書籍やWebサイトなど膨大なデータを使って学習しており、多様なトピックや用途に対応可能です。
ChatGPTの基本的な機能は、与えられたテキストを理解し、それに基づいて適切な応答を生成するというものです。例えば「ChatGPTとはどのようなツールですか?」と質問すると、「ChatGPTとは~」と数段落での返答があるなど、チャットツールで会話しているような使用感となっています。
ChatGPTを採用プロセスの一部として使用することも可能で、実際に取り入れている企業もあります。NRI「インサイトシグナル調査」によれば、情報通信業のChatGPT利用率が32.8%、製造業の利用率が19.2%とのことでした。
さまざまな業務を効率化・自動化できるため、担当者の負担軽減や業務効率化に役立てられるでしょう。
ChatGPTを採用に活用する動向
ChatGPTをどのように採用活動に取り入れているかについては、企業によってさまざまです。後の項目でも解説するように、スクリーニングや求人原稿の作成など、ChatGPTの採用での活用事例はいくつかあります。
ChatGPTを活用した採用サービスもいくつかリリースされています。
例えばグラム株式会社は、ChatGPTとRPO(採用代行)を組み合わせた採用支援サービス「採用GPT」の提供を開始しました。採用要件やスカウト文の生成や、パーソナライズされた面接質問生成など、さまざまな機能が搭載されています。
株式会社ゼロワンは、採用代行サービス「採用ジドウカ」をリリースしました。カスタマイズされたスカウトメッセージや、応募者とのやり取りの自動化など、採用プロセスを効率化するための機能が備わっています。
ChatGPTを採用に活用するメリット

ChatGPTを採用に活用する主なメリットは、以下の4つです。
- 採用プロセスの効率化
- 公平性の向上
- 応募者体験の改善
- 多言語への対応
上記4つのメリットについて解説します。
採用プロセスの効率化
ChatGPTを採用に活用する大きなメリットとして挙げられるのは、採用プロセスの効率化です。ChatGPTは人事部門のスタッフが手動で行っていた一部のタスク(初期スクリーニングや応募者からの質問への回答など)を自動化できるため、その分の時間を節約できます。
人材採用には、求人広告の掲載料や採用エージェントの手数料など、さまざまなコストがかかります。採用プロセスの効率化を通じて、コストを削減できるのも重要なポイントです。
公平性の向上
公平性の向上も、ChatGPTの大きなメリットです。ChatGPTは人間とは異なり、感情を持たず、決められたアルゴリズムのなかで評価・出力を行います。人間のように気分・体調によるブレもなく、担当者間の認識ずれが発生しにくいため、採用プロセスにおける公平性の向上が期待できるでしょう。
ただし当然ながら、ChatGPTが公平性を完全に保証するわけではありません。偏りのある内容や差別的な内容を生成する可能性もゼロではないため、ChatGPTの生成結果を用いる際は注意が必要です。
精度の問題でも同じことがいえますが、しばらくは全てを任せるのではなく、人間との協業の形が続くでしょう。
応募者体験の改善
応募者体験の改善ができるといったメリットも見逃せません。ChatGPTは24時間稼働できるため、大量の応募者に即時に対応できます。テキストベースの対話を通じて情報を提供するため、応募者にとっても分かりやすく利便性も大きいでしょう。
さらにChatGPTは、応募者の質問に対して個別に応答するため、パーソナライズされた体験も提供できます。結果として、ユーザビリティ向上による企業イメージの向上や機会損失の低下、さらには応募の促進による母集団確保といった企業側の成果にもつながりやすくなるでしょう。
多言語への対応
多言語に対応できるのも、ChatGPTを活用するメリットです。ChatGPTは、多くの異なる言語のテキストデータを学習しています。さまざまな言語や方言、文化的背景や、その言語ならではの微妙なニュアンスも理解しています。
ChatGPTを活用すれば、異なる言語を話す応募者とのコミュニケーションができ、より広範な人材を採用できる可能性があるのです。
昨今ではリモートワークも浸透しつつあり、海外に在住している人にもアプローチするケースも見られるようになっています。多言語対応により、異なる言語と文化背景を持つ人材を引き寄せるなど、グローバルな採用戦略を実行するのにも役立つでしょう。
ChatGPTを採用に活用する方法

ChatGPTを採用に活用する方法として、以下のような例が挙げられます。
- 求人票やスカウトメールの作成
- FAQの自動応答
- 応募者のスクリーニング
- 日程調整
- 面接用の質問案の作成
上記の活用方法について詳しく解説します。
求人票やスカウトメールの作成
ChatGPTは高度な自然言語生成能力を活用して、求人票やスカウトメールを作成できます。必要なスキル・経験や求める人物像など、企業側が要件を入力すれば、それに合った求人票を自動生成してくれるため、従来のように人間が一から作成する必要はありません。
スカウトメールに関してはそれなりの学習データが必要になるものの、過去の文面を参照しつつ、原稿案作成やブラッシュアップをしてくれます。ChatGPTの言語モデルはファインチューニング(追加学習)が容易で、よくある文面や要件などを学習させれば、より業務効率を高められるでしょう。
FAQの自動応答
ChatGPTはチャットボットとしても活用でき、応募者からのよくある質問に自動的に回答できます。純粋なシナリオ型のチャットボットとは異なり、ChatGPTに使用されている言語モデルは複雑なステップなくファインチューニングが可能です。
自社への応募者からのよくある質問とその回答例をモデルに学習させることで、自社ケースに特化した返事を返せるようになることが期待できます。
従来は採用スタッフが対応するしかなかったような、やや複雑な質問にも的確に回答できる可能性があります。24時間稼働でき、たとえ難しい質問についても、担当者がいない間でも自動でやりとりをしてくれるでしょう。採用担当者の作業負荷を軽減するだけでなく、応募者体験の改善・向上も実現します。
応募者のスクリーニング
ChatGPTによって、応募者のスクリーニングも可能です。スクリーニングとは、大量の応募者から要件を満たす人物を選び出すプロセスで、採用プロセスの初期段階で行われます。担当者が評価にかける時間を大幅に削減できるため、ChatGPTに限らず、ツールを使った自動化が行われやすい分野です。
ChatGPTの言語モデルに、候補者のプロフィール情報や人材要件、過去の選考通過者の情報などをもとに選考パターンを追加学習(ファインチューニング)させて、スクリーニングに応用することも可能です。
もちろん過去の候補者データが残っていない場合や、個人情報保護の観点などから、実際の候補者情報を使うことができないケースもあります。しかし個人情報をマスキングしたり、あるいはサンプルデータを生成したりすれば、問題なく学習可能です。
日程調整
面談や書類提出といった日程調整にChatGPTが使われるケースもあります。ChatGPT自体は、日程調整のような特定のタスクを自動化する機能を持っていません。しかし他のソフトウェアやツールと組み合わせて使用することで、日程調整の自動化のサポートが可能です。
例えば、ChatGPTは応募者からの日程に関する質問に回答したり、利用可能な日程のオプションを提示したりできます。実際の日程調整は、カレンダーソフトウェアやスケジューリングツールなどと連携させることで実現します。
面接用の質問案の作成
ChatGPTに、特定のスキルセットや経験レベルに基づいて質問を生成させるなど、面接用の質問案の作成も可能です。例えば、「リーダーシップ能力を評価するための質問」や「プロジェクト管理の経験に関する質問」などを作成できます。
こちらも、ChatGPTの言語モデルのファインチューニングを活かしやすい領域です。過去に用いた質問文や、その質問に対する望ましい回答例をChatGPTの言語モデルに学習させることで、質問案のブレインストーミングの質を高められます。
生成された質問をそのまま使い続けるのではなく、人事担当者などのレビューを通じて調整するのも重要になるでしょう。
ChatGPTの活用が効果を発揮する採用手法

ChatGPTの活用で特に効果を発揮する採用手法は、以下の4つです。
- ダイレクトリクルーティング
- 就職サイト・転職サイト
- 採用ホームページ
- ソーシャルリクルーティング
以下では順番に解説します。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、企業が求職者に直接アプローチする採用手法であり、特定のスキルや経験を持つ個人を絞り込んだうえでオファーを行います。母集団のマッチングの質を高め、求める人材を獲得するために効果的ですが、その分、フローが確立されていなければ手間と時間がかかるのが難点です。
ChatGPTを活用すれば、ダイレクトリクルーティングにおける、候補者の絞り込みや応募者とのコミュニケーションを自動化してくれます。例えばスカウトメッセージであれば、パーソナライズされた文面案を自動生成できるため、原稿作成の効率化や返信率アップといった効果が期待できるでしょう。
就職サイト・転職サイト
就職サイトや転職サイトは、求職者と企業をつなげる主要なプラットフォームです。大量応募・大量採用のシチュエーションに適した採用手法となっています。
ChatGPTが応募者との対話を自動化し、スクリーニングを行ってくれるため、業務効率の改善や担当者の負担軽減につながります。さらに、応募者からの質問に即座に回答することで、応募者体験の向上も可能です。
採用ホームページ
企業の採用ホームページは、求職者に対して企業文化やビジョン、採用情報などを伝える重要なツールです。ChatGPTのような先進的なAI技術を組み込むことで、よりパーソナライズされた応募者体験を提供できます。
例えばChatGPTを使って、上記の活用事例で紹介したような、Webサイト上でのFAQの自動応答や採用情報の提供ができます。就職サイトと同様、スクリーニングなど採用プロセスの初期段階で有用です。
ソーシャルリクルーティング
ソーシャルリクルーティングは、SNSなどのプラットフォームを活用して、求職者と企業をつなげる採用手法です。SNSの投稿を通して自社の魅力や価値観などを発信し、求職者からの応募を待ったり、時には企業側からSNS上でアプローチしたりします。
ソーシャルリクルーティングでは、ChatGPTを使って、SNSに投稿するコンテンツ(主に文章)の生成ができます。プロンプト(ChatGPTへの指示文)を工夫すれば、採用ニーズに合ったコンテンツを作成可能です。
ChatGPTを採用に活用する際の注意点

ChatGPTを採用に活用する際は、「ChatGPTの判断が正しいとは限らない」「個人情報の取り扱いに注意する」の2つに注意しましょう。それぞれについて詳しく解説します。
ChatGPTの判断が正しいとは限らない
まず注意しておきたいのは、ChatGPTの判断が正しいとは限らないという点です。原稿執筆時点(2023年8月)において、GPT-4.0は2021年9月までのデータで学習しているため最新情報を反映していないこともあり、専門的すぎる内容には答えられないこともあります。
さらにChatGPTが提供する情報は、訓練データに基づいて生成されるため、個人的な意見や感情を含むことはありません。個人的な判断や価値観に基づく質問には適切に応じられない場合があります。
ChatGPTに限らずAIのツール全体にいえることではありますが、現段階では、100%の精度を保証しているわけではありません。業務に実装するのであれば、人間によるファクトチェック・コンプライアンスチェックは必須と考えましょう。ChatGPTに全てを任せるのではなく、人間と協働する形で業務に取り入れるのが重要です。
個人情報の取り扱いに注意する
ChatGPTを採用に活用する際は、個人情報の取り扱いにも注意しましょう。日本ディープラーニング協会(JDLA)は、2023年5月1日に「生成AIの利用ガイドライン」を発表しています。この資料は、ChatGPTをはじめとした生成AIに関するガイドラインです。
「生成AIの利用ガイドライン」では、データ入力に際して注意すべき事項として、「個人情報」が挙げられています。ChatGPTに入力されたデータは、モデルの学習に使用される可能性があるため、情報を入力する際は注意が必要です。
ChatGPTを採用業務に実装する場合、求職者に対しては、「どのようにデータが使用されるのか」「どのように保護されるのか」を明確に示すことが重要です。また、データの取り扱いに関する問い合わせに対して、迅速かつ適切に対応する体制を整える必要があります。
まとめ
ChatGPT(もしくはAI)の採用における活用は、現代の人材獲得のプロセスに革新をもたらしています。高度な言語能力を持ち、ダイレクトリクルーティングからソーシャルリクルーティング、採用ホームページの最適化に至るまで、汎用的に活用できるのがChatGPTの強みです。
ChatGPTは、採用プロセスを効率的かつ効果的にし、企業が求める人材を迅速に採用するのに役立ちます。しかしChatGPTを活用する際は、個人情報の取り扱いや法令遵守、セキュリティ対策などさまざまな配慮が求められます。
ChatGPTを業務に取り入れる場合は、従業員がコンプライアンスに配慮できるよう、必ずガイドラインを設定しましょう。

