コンピテンシー面接の質問例。面接マニュアル活用でメリットを最大化

採用面接時に、候補者が自社で活躍できる人材かどうかを客観的に見極める方法として、「コンピテンシー面接」という方法が注目を集めています。

一般的な面接との違いには下記があげられます。

  • 候補者から信憑性の高い情報を得られる
  • 候補者の行動能力を正しく評価できる
  • 面接官の主観による評価のバラつきを防げる
  • 入社後の離職率の低減や生産性の向上につながる

これだけ多大なメリットを持つコンピテンシー面接ですが、「具体的なやり方がわからない」「難易度が高くなかなか取り組みが進まない」と導入したくてもできない企業も多いようです。

今回は、上記のお悩みを解消すべく、新卒採用アドバイザーの小野さんに「コンピテンシー面接」についてお話をお伺いしました。

株式会社i-plug
新卒採用アドバイザー 小野 悠

新卒でテレビ番組の制作会社にADとして入社。その後、株式会社リクルートキャリアで3年半、中途採用アドバイザーとして勤務。中小企業を中心に約300社の採用支援を行うが、ファーストキャリアの重要性を感じ、2018年4月にi-plugに転職。現在は新卒採用の支援を行う。趣味は深夜ラジオへのネタ投稿。

目次

コンピテンシー面接とは応募者の行動特性を見抜く面接手法

ますは「コンピテンシー」と「コンピテンシー面接」の定義について、小野さんに詳しくお聞きしました。

コンピテンシーとはどのようなものか?

人事ZINE編集部
―― まずコンピテンシー面接とはどういうものかを簡単に教えてください。

小野さん
そもそも「コンピンテンシー」とは、自社の活躍人材が持つ行動特性のことをいいます。自社の活躍人材に共通する行動特性が採用候補者にあるかどうかを見抜いていく面接手法がコンピテンシー面接ですね。

自社で高い業務遂行能力を発揮できるかどうかは、世間的にこの人が優秀かどうかや一般的な「頭の良さ」を表す指標よりも、その活躍人材に共通する「行動特性」に起因することがわかっているんです。

つまり、採用時にその候補者の「行動特性」を見抜くことができれば、将来的に自社で活躍する人材を獲得することができる。企業と候補者のミスマッチを低減して、企業が求める人材を獲得する精度向上が期待できるというわけですね。

労働力不足により「コンピテンシー面接」の必然性が高まった

――「コンピテンシー面接」という言葉を聞くようになったのはここ数年のことですが、面接手法としては比較的新しいものなんでしょうか?

小野さん
コンピテンシーという概念自体はもっと前、1990年に日本に導入されていたようです。考え方自体は存在していて、人事評価や人材育成に活用されていました。

ただ「コンピテンシー面接」という言葉はまだ新しいと思います。コンピテンシーを採用に活用すれば、離職率も減るし企業の生産性も向上するのは当然のことなのですが、以前は「採用」の重要性が今ほど高くなかったのだと思います。

今は、労働人口が減ってきているので、「大勢採用した中から活躍人材が何人生まれるか?」という考え方はできないんですよね。採用した人には全員活躍してもらわないといけない。

ですので、新しい考え方というよりは、必然的にコンピテンシーを採用面接にも導入する重要性が高まったといえます。

コンピテンシー面接と従来の面接との相違点

――今までの面接とコンピテンシー面接とはどう違うのでしょうか?

小野さん
コンピテンシー面接と今までの一般的な面接との違いは、表面的情報に惑わされずに採用候補者の本質が見抜けるかどうかです。

従来の面接は、履歴書と職務経歴書など表面的情報から応募者の能力を判断します。候補者が面接官に職務経歴をプレゼンテーションして、面接官が質問していくスタイルです。面接官は「実績」「業務の知識量」「キャリアプラン」などさまざまな方向から質問し、総合的に採否を決めます。

コンピテンシー面接は、候補者との会話を通して本質を見極めます。候補者がこれまでの職務経験のなかで「どんな立場」にいて「何」を「どのように」解決してきたかを確認します。1つの出来事を深堀して聞いていくことで、候補者の行動のきっかけや思考回路の把握が可能です。

コンピテンシー面接のメリット

人事ZINE編集部
――コンピテンシー面接のメリットを教えてください。

小野さん
「コンピテンシー面接」のメリットは候補者の誇張表現や行動力が見抜きやすくなり、企業との相性も把握しやすくなることです。学歴などの表面的情報にも惑わされません。これらのメリットを詳しく解説します。

誇張表現と矛盾点が見抜きやすくなる

従来の面接は、候補者が書いた職務経歴書や面接時のプレゼンテーションで判断するため、誇張表現に気づきにくいというデメリットがあります。

コンピテンシー面接は、候補者の経験について深堀して聞いていくため、誇張表現と矛盾点に気づきやすいです。1つの話題に対して質問を重ねることで、誇張表現をしていた候補者なら矛盾点が現れます。

企業との相性も確認できる

コンピテンシー面接は、候補者が自社の活躍人材の行動特性を持っているか確認する面接手法です。そのため、自社企業にマッチした人材かどうかのチェックにつながります。採用のミスマッチを防ぎ、離職率も低下するといわれています。

学歴・年齢・性別などに影響されにくくなる

従来の面接は職務経歴書や面接時の自己アピールに頼って判断するため、候補者の学歴や年齢、性別など表面に見えているものに惑わされやすい傾向にあります。コンピテンシー面接の場合、行動特性などを見抜くため「現場で活躍できる人材」かどうかが判断しやすいです。

行動能力を見抜ける

候補者が高い実績を持っていたとしても、それはチームに優秀な人材がいたからかもしれません。コンピテンシー面接では「そのチームではどんな役割をしていたのか」「なぜそのように行動したのか」などを詳しく聞いていきます。それによって、候補者の行動能力、行動特性、再現性が把握できます。

コンピテンシー面接のデメリット

人事ZINE編集部
――コンピテンシー面接のデメリットは何でしょうか。

小野さん
コンピテンシー面接のデメリットは自社の活躍人材の自己分析力に頼って判断基準を作ることと、手間がかかることです。詳しく解説します。

活躍人材のアウトプットの影響を受けやすい

コンピテンシー面接は、模範となる社員のアウトプットによって評価軸が変わる可能性もあります。高い業績をあげられる理由を活躍人材が自覚していないケースもあるからです。

たとえば、営業成績トップの社員の行動特性を調査したとき「訪問件数を増やした」というアウトプットが返ってきたとしても、「休日もクライアントとなるような企業を探しながら街を歩いていた」ことが売り上げにつながっていたこともあります。

クライアント探しの視点で街を歩いていたことは本人が自覚していないと情報としてあがってきません。そのため、活躍人材の行動特性は本人が無自覚のものもあることを想定して、丁寧に調査する必要があります。

職種ごとに活躍人材を探す手間がかかる

職種ごとで模範となる社員が違うので、その都度社内で適した人材を探してヒアリングする手間がかかるんですね。場合によっては、活躍人材が存在しない会社や部署もあります。

その場合、成果をあげられる社員像を一から考えて行動特性を分析しなくてはいけません。候補者をどこの部署に配属するか決まっていない場合は、手続きがより複雑になります。

コンピテンシー面接のやり方

小野さんからコンピテンシー面接のやり方について詳しくお聞きしました。

自社の活躍社員の行動を分析する

人事ZINE編集部
――コンピテンシー面接を導入すると決まった場合、企業は何から手を付ければいいでしょうか?人材判断軸とはどのように決めるのでしょう?

小野さん
まずは事業ごと職種ごとに自社の活躍人材を分析するところからですね。

その人材の業務フローを細分化して、どんな状況でどんな行動を起こしたか、その行動の動機は何か、といった業務を達成するまでのプロセスを洗い出していきます。

さらに、自社で活躍できるかどうかを決定付けるような具体的な行動にフォーカスし、その行動を徹底的に掘り下げて分析します。

  • 具体的な現場状況でどのような行動をとったか
  • 工夫を加えたところはあるか
  • どんな困難に直面してどう解決したか
  • 解決するためにどんな行動をとったか
  • その行動はどのような思考から生まれたか、
  • その行動を起こすためにまたどんな行動が必要だったのか

と、1つの行動に対してこれ以上は無理というところまで深堀りを繰り返して言語化していきます。そして、その人のどういう能力がよく働いてハイパフォーマンスにつながっているのかを整理していくわけですね。



――1つの行動だけでも整理するのが大変そうですね。これを活躍のキーポイント全てに行って、さらに職種が違えばまた活躍人材のモデルも変わるわけですよね?

小野さん
はい。営業職で活躍できているからといって、その人材が必ずしもマーケティング部門で活躍できるわけではないですよね。もちろん共通する行動背景はあるかと思いますが、全く同じではないはずです。

この時点でコンピテンシー面接を諦めてしまう企業も少なくないんですよ。採用担当者や人事部だけでコンピテンシーモデルを設計できるわけではないので。

部署の業務を包括的に理解しているマネージャーが集まって「この過程でこの能力が必要だよね」「その分野ならハイパフォーマーはこの人」という話し合いが必要ですし、その活躍人材へのインタビューもしないといけない。さらに導き出したコンピテンシーモデルが組織の経営ビジョンと乖離していないかなどのチェックも入念に行います。

コンピテンシ―を面接に活用する前に必要なこと「行動特性の言語化」と「評価項目の数値化」

人事ZINE編集部
―― 必要な行動特性を言語化したあとは、どうやって面接の質問項目に落とし込んでいくのですか?

小野さん
まず、導き出した行動能力に数値化できる指標を入れていきます。起こした行動や行動量を5段階でレベル分けしたりといったことですね。適性検査結果と照合したり、外部ツールを使っている企業もあります。

コンピテンシーレベルは5段階

コンピテンシーレベルは全部で5段階あります。1つずつみていきましょう。

参照:川上真史・斎藤亮三.コンピテンシー面接マニュアル:弘文堂

レベル1:受動行動

受動行動とは、仕事に対して受け身な姿勢のことをさします。「指示待ち」の社員です。上司から指示を受けて行動します。面倒だったり責任を負いたくなかったりなどの理由で自発的行動がみられません。

レベル2:通常行動

通常の社員の行動です。与えられた業務をこなします。「責任をもって仕事する」点においてレベル1の社員と異なります。ただ、自らアイデアを出したり改善策を見出したりすることはありません。

レベル3:能動的行動

能動的に行動できる社員のことです。仕事を任されたら、仕事を達成するために何が必要かを自分で考えて用意することができます。決められたルールのなかで自分から考えて動けるタイプです。

レベル4:課題解決行動

レベル4は創造行動ともよばれ、自分のアイデアによって問題を解決させようとする行動のことです。たとえば、業務効率化のための考えを書類にまとめて提出する、などの行動をさします。

レベル5:パラダイム転換行動

会社全体を巻き込みつつ新しいアイデアで状況を改善させていく行動です。組織のなかでリーダーシップをとる手腕が求められます。業務効率化のために、最新ツールの導入を決め、それに携わっていた人の手間を減らす、など周囲の人間にも影響を与える行動です。

質問と回答の組み合わせをマニュアル化

小野さん
ここまで到達して初めて、各項目に対してどういう質問をすればいいのかを決めていきます。見極めたい項目に対して、質問と回答の組み合わせや進め方を全てマニュアル化します。

  • A系統の答えが返ってきたらこの項目は×
  • B系統なら答えのこの部分を深堀りする
  • その答えをまた査定して、この系統の答えなら△で終了、○なら次の深堀り

みたいな感じですね。



――そこまで細かく決まっているのですね!

せっかく活躍人材の判断軸を緻密に設計したのに、肝心の面接で軸ブレを起こしてしまってはコンピテンシー面接を導入した意味がないというか、コンピテンシーを最大限活用しきれてないことになりますよね。

小野さん
評価基準の統一性、活躍人材の再現性、評価結果の信憑性を高めるためにも必要です。



―― コンピテンシー面接を導入する難易度が高いといわれる理由がよくわかりました。しかしどの企業においても覚悟を決めて取り組めば決して不可能な施策ではないですよね?

小野さん
はい。行動特性を徹底的に分析するのは確かに労力がかかり一筋縄ではいかないこともありますが、ベースは「自社の活躍人材」です。つまり会社のなかに必ず答えがあるはずなんです。 採用面接だけでなく、自社のハイパフォーマーや目指すべき人材の行動特性を探るきっかけにもなりますので、コンピテンシーの概念に則って着実に取り組みを進めて頂ければと思います。

質問例

コンピテンシー面接はGoogleが採用するときの判断基準「STAR面接」とほぼ同じです。S→T→A→Rの順番で質問を掘り下げることで候補者の本質に近づきます。

Situation(状況)「組織のなかでどのような役割だった?」

まず、組織の状況について質問します。組織体制や、与えられた役割、責任と権限の有無について確認します。

Task(課題)「組織のなかで見つけた課題は何?」

組織のなかで候補者が見つけた課題について質問します。最初に掲げた目標や、問題に気づいた理由ときっかけを尋ねます。この質問で意思決定の背景が確認可能です。「上司に言われたから行動した」のか「自分で問題に気づいたから行動した」のかがわかります。

Action(行動)「課題解決のために何をしたの?」

課題解決のためにとった行動を質問します。「なぜその行動をしなくてはいけなかったのか」という行動の目的が確認できます。問題を解決するためにとった行動の順番も聞きましょう。

Result(結果)「課題を解決して何を得た?」

課題を解決して得たものを聞きます。課題解決までにかかった時間や、当初予定していた計画に問題はなかったか、同僚の反応はどうだったかなどを確認します。候補者が得た結果を今後どのように活かすか、など将来の行動についても尋ねましょう。

コンピテンシー面接の具体例

人事ZINE編集部
――コンピテンシー面接を導入する例を教えてください。

小野さん
大まかな概要をステップごとに紹介しますね。

▼ ステップ1.活躍人材の行動特性をピックアップ
自社で活躍している人材の行動特性を抽出します。たとえば、以下のような特性があったとします。

  1. リーダーシップがある
  2. 問題解決力が高い
  3. 計画性がある

▼ ステップ2.
面接では行動特性「1.リーダーシップがある」かどうかを見極める、と決めます。

▼ ステップ3.
「1.リーダーシップがある」かどうかを見極める質問を開始します。

【質問例】

  • リーダー経験がある組織のメンバー構成を教えてください
  • 組織の目標達成のために取り組んだことは何ですか
  • なぜそれに力を入れましたか

▼ ステップ4.
返答内容が〇か△か×かによって、こちらから投げかける質問をかえ、深堀りしていきます。

▼ステップ5.スコアをつけます。

▼ステップ6.次の行動特性「2.問題解決力が高い」を見極める質問に続けます。

面接実施までの入念な準備と組織規模の取り組みが「コンピテンシー面接」導入の障壁に

人事ZINE編集部
――では実際にコンピテンシー面接を導入している企業は多いのでしょうか?

小野さん
実際うまく活用できている企業はまだ少ないですが、今徐々に増えてきてはいるところですね。少なくともコンピテンシー面接を知らないという企業はほとんど居ないと思います。

導入したくても実現できないという企業が多いです。良いとわかってはいるけど難易度が高くてうまくいかったり、中途半端に取り組んでなかなか導入計画が進まなかったり、という感じです。



―― コンピテンシー面接の難易度の高さはどういったところに見られますか?

見極めたい行動特性に対して、どういう質問をするか、どう細かく掘り下げていくか、というのが企業が求める人材によって異なるので、こうすればうまくいくという「決まった型」がないことだと思います。

成功した企業の質問事例集を活用したところでうまくはいかないんですね。仮に一定の行動特性を持つ人材を採用できたとしても、その行動特性は自社で業績をあげるために必要なものかどうかは別の話ですから。

面接官の感覚で進めてしまうと判断軸がぶれてしまうんです。面接官と候補者の間に共通の話題があると、お互いポジティブな印象を持ちやすいですよね。逆に候補者の経験談に対して面接官がネガティブなイメージを持つと、多少なりとも合否の判断材料に影響してしまうことが知られています。

誰が面接官であっても同一の結果になるように、評価基準は客観的でなければなりません。

コンピテンシー面接の成否は、実施するまでの「準備」でほぼ決まると思います。自社の人材判断軸をかなり細かく設計して、それを見極めるための質問もまた緻密な設計が必要になります。

事業部や職種によっても求められる行動特性やコンピテンシーレベルが異なりますし、採用担当者だけで取り組めるものではないんですね。そこがまたコンピテンシー面接を導入する障壁となっていると思います。

最後に

今回は、新卒採用アドバイザーの小野さんに、コンピテンシーの考え方や重要性、また採用面接への活用の仕方についてお話しいただきました。

今の時代はどこの企業も人材不足で、自社に必要な人材を獲得する精度を高めていくことが大きな課題となっていますが、コンピテンシー面接はその課題解決に最も近い施策の1つだといえます。

自社で活躍している人材の行動特性を探ったり社員の行動規範を見直したりするきっかけとして、また人材確保の最適化を図る施策として、コンピテンシー面接の導入を本格的に検討してみてはいかがでしょうか。

【サンプル】不採用・採用通知文 まとめ
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人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部