【サンプルシート付】コンピテンシー評価とは?評価方法やメリット・デメリットを解説【項目例あり】

コンピテンシー評価
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「コンピテンシー評価」という評価方法を耳にしたことはあるものの、どのようなものかイマイチわからない、という人事担当者は意外と多いのではないでしょうか。

コンピテンシー評価とは、社内で優秀な成績や成果を残す社員の行動特性を評価の「ものさし」と定めて、社員の人事評価や採用活動に用いる評価方法です。

人事評価の透明性の向上や、採用活動における「求める人物像」の設定などにも役立ちます。ただし、コンピテンシー評価の設計には、デメリットの理解や継続的なアップデートが必要です。

  • コンピテンシー評価にどのようなメリットがあるか想像がつかない
  • コンピテンシー評価を人事評価や採用に取り入れてみたいけれど、設定/運用方法がわからない
  • 具体的にどのような評価項目を設ければ良いかわからない

本記事では、コンピテンシー評価のメリット・デメリット、コンピテンシー項目の設定方法について説明します。

また、そのまま使えるコンピテンシー評価基準作成のサンプルシート(Excel)をご用意しています。ダウンロードしてご活用ください。

【サンプル】コンピテンシー評価基準作成シート
【サンプル】コンピテンシー評価基準作成シート
『コンピテンシー評価基準作成シート』は、その仕事で成果を上げるために必要な能力(スキル)や性格は何であるかを現場社員へヒアリングし、採用時の求める人物像の抽出や人事評価基準の策定に活用できます。
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コンピテンシー評価の概要

コンピテンシー評価の概要

まずは、コンピテンシー評価の概要や、職能資格制度(能力評価)との違いを詳しく解説します。

コンピテンシー評価とは

コンピテンシー評価とは、企業内で高いパフォーマンスをあげる人材の「行動特性」を、評価の基準として設定する手法です。つまり、個人の能力・スキルだけではなく、「成果を出すためにどのような行動をしているか」に注目します。昨今では、人事評価だけでなく採用にも利用されている評価方法です。

評価基準となる項目は、全社的に共通の「共通項目」と、職種・職階ごとの「個別項目」の2つに分けられます。次に、各項目を数段階(3段階から5段階程度)の指標で表し、評価をするという流れです。

コンピテンシー評価は、一般事業会社だけでなく教育機関や研究機関など、幅広い分野で活用されています。

コンピテンシー評価と職能資格制度(能力評価)との違い

コンピテンシー評価と職能資格制度(能力評価)の違いは、「評価の内容」や「評価基準の具体性」です。

職能資格制度とは、社員の能力・スキル・知識などを評価するものです。一方でコンピテンシー評価は、人材の行動特性を評価する方法になります。つまり、能力そのものではなく、「それをどのように活用しているか」を見るための評価方法です。

さらにコンピテンシーの方が、評価基準の具体性が高く、評価に対して社員からの納得感を得られやすいなどの特徴があります。

企業がコンピテンシー評価を実施するメリット

企業がコンピテンシー評価を実施するメリット

ここで、コンピテンシー評価を実施する代表的なメリットを3つ紹介します。

結果・成果に対して公平に評価できる

1つ目のメリットは、結果・成果に対して公平に評価できることです。

コンピテンシー評価は、評価基準が明確になっているため、評価側が公平性のある評価をしやすくなり、社員からの納得を得やすくなります。

従来の評価制度と比べて、評価側の主観が入りにくいのもポイントです。例えば、職場での人間関係を気にして、個人的な心理が評価に影響してしまうといったケースも少なくなります。

生産性の向上を期待できる

2つ目のメリットは、生産性の向上を期待できることです。

コンピテンシー評価では、具体的な評価基準を用いるため、評価された社員にとって「自分には何ができていたのか」「どのような行動が足りていないのか」が分かりやすくなります。

その結果、業務を進めるうえで必要な行動特性を獲得できます。組織全体にその傾向が見られるようになれば、生産性向上にもつながりやすいでしょう。

評価への納得感から、社員がモチベーションを持って仕事に取り組むようになるという利点もあります。高いモチベーションは、集中力やパフォーマンスの改善につながり、その点でも生産性向上も期待できます。

マネジメントに活用しやすい

3つ目のメリットは、マネジメントに活用しやすいことです。

コンピテンシー評価のように具体性のある評価基準を用意することで、「誰に何ができるのか」「どのような行動特性が必要なのか」が明確になるため、組織のマネジメントにも大きく役立てられます。

適切な人材配置だけでなく、採用に応用することでミスマッチを防ぐ効果も期待できるでしょう。

企業がコンピテンシー評価に取り組むデメリット

企業がコンピテンシー評価に取り組むデメリット

さまざまなメリットがある一方で、コンピテンシー評価に取り組むデメリットもあります。ここでは、代表的な2つのデメリットを紹介します。

導入・運用が難しい

1つ目のデメリットは、導入・運用が難しいことです。

コンピテンシー評価の評価基準を設定するには、モデル設定や特性の抽出などを行う必要があり、一連の導入に時間・労力がかかってしまいます。テンプレートもないので、自社独自の評価基準を作成しなければまたなりません。

特に、コンピテンシー項目の設定自体の難しさが、導入時の課題として考えられます。コンピテンシー評価を完全に導入までかかる期間は、企業にもよりますが、約1年が目安のようです。

会社の変化に対応しにくい

2つ目のデメリットは、会社の変化に対応しにくいことです。

コンピテンシー評価は、評価基準を細かく具体的に設定するため、柔軟性に欠ける傾向があります。例えば短期間で事業が飛躍的に成長するなど、環境が大きく変化した場合、社員に求められる行動特性も変化します。

コンピテンシーモデルとコンピテンシー項目の設定

コンピテンシーモデルとコンピテンシー項目の設定

コンピテンシー項目は、企業が求める人材の理想像であるコンピテンシーモデルをもとに設定します。よってコンピテンシーモデルを明確化することが第一の課題です。

コンピテンシーモデルの設定方法とサンプル

コンピテンシーモデルの設定は2つの方法を用います。

1つ目は営業成績が高い社員の行動特性を抽出して、コンピテンシーモデルを作ることです。

しかし、職階によってはロールモデルとなる人物がいないことも考えられます。その場合、理想となる人物像を経営者・管理職から分析して設定することが2つ目の方法です。コンピテンシーモデルの設定は、あくまでも理想を優先させて設定することが前提条件です。

コンピテンシー項目の設定方法 コンピテンシーディクショナリーを参考に

コンピテンシー項目はロールモデルの長所となる行動様式を項目別に整理します。ただし、手元に何の判断材料もなく、理想となるモデルから項目を設定するのは非常に困難です。

そこで実務上は、行動特性を整理して項目別に分けた「コンピテンシーディクショナリー」を使います。コンピテンシーディクショナリーに出ている項目からモデルの持つ行動特性を選んで、リスト化します。

コンピテンシーディクショナリーの内容は、コンピテンシーとして定義できるものをすべて洗い出して定義しています。スペンサーの「コンピテンシー・マネジメントの展開」がもっとも古典的でよく使われています。

最近はもっと手軽にコンピテンシーディクショナリーが使えるように、人事評価ツールに設定されているものが数多く出回っています。紙やデジタルツールで作成してもどちらでも構いません。

コンピテンシー項目の設定手順

コンピテンシーディクショナリーは、次のような6領域と20項目に分けられます。

領域 項目

達成・行動

  • 達成志向
  • 秩序・品質・正確性への関心
  • イニシアチブ
  • 情報収集
  • 援助・対人支援

  • 対人理解
  • 顧客支援志向

  • インパクト・対人影響力

  • インパクト・影響力
  • 組織感覚
  • 関係構築

  • 管理領域

  • 他者育成
  • 指導
  • チームワークと協力
  • チームリーダーシップ

  • 知的領域

  • 分析的思考
  • 概念的思考
  • 技術的・専門職的・管理的専門性

  • 個人の効果性

  • 自己管理
  • 自信
  • 柔軟性
  • 組織コミットメント

  • この表にある項目をそのまま使用しても、ほとんど機能しない場合があります。そこで、評価基準として機能しているのかを実際に検証し、機能した項目を選択しているのかを判断して選び直します。さらに、各項目の定義を実際の仕事内容に合わせて修正する必要があります。

    また、全社共通・部門・職階ごとの項目を設定することも必要です。職階ごとの設定は昇進の基準に直結することに留意しましょう。

    【サンプルシートあり】評価シートの作成と運用

    【サンプルシートあり】評価シートの作成と運用

    コンピテンシー項目の設定が完了すると、評価シートで運用することがほとんどでしょう。評価ツールのようなシステムにおいても、基本的には評価シートのテンプレートがあります。

    評価シートの作成方法とツールを利用した場合のメリット

    評価シートは大項目を領域、小項目を行動特性として示し、評価の数値が記入できるように作成します。

    エクセルシートを用いて作成することもありますが、現在は「Smart HR」「カオナビ」「あしたのクラウド」「タレントパレット」クラウドベースの評価ツールも多数あります。クラウドベースのツールを利用するメリットは、集計や偏りなど全体を見ることが可能になり、エクセルシートを整理する手間が省けて、人事部門がより重要なコンピテンシーモデルの作成や、項目設定のアップデートに注力できることです。

    上記に挙げたコンピテンシー評価のデメリットを理解することで、本来のコンピテンシー評価のメリットを正しく引き出せます。

    人事ZINEでは、以下のコンピテンシー評価基準作成のサンプルシートもダウンロード可能ですので、ぜひご活用ください。

    【サンプル】コンピテンシー評価基準作成シート
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    『コンピテンシー評価基準作成シート』は、その仕事で成果を上げるために必要な能力(スキル)や性格は何であるかを現場社員へヒアリングし、採用時の求める人物像の抽出や人事評価基準の策定に活用できます。
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    採用とコンピテンシー評価

    人事評価のコンピテンシー項目は、採用の場面でも基本的にそのまま利用できます。それぞれの項目を測定するための質問を設定し、面接や筆記試験などで活用してください。

    採用活動において、コンピテンシー項目を利用する意味は、会社の理想とする人材を採用し、人材への期待と実際のギャップも小さくできることです。また項目の使いまわしにより、人事業務の効率化にも役立つなど、大きなメリットがあります。

    コンピテンシー評価を導入する際の注意点

    コンピテンシー評価を導入する際の注意点

    コンピテンシー評価を導入する際の注意点は、以下の5つです。

    • 評価制度を短期間で一新しない
    • 成果を軽視しない
    • コンピテンシー評価の理想像を押しつけない
    • 1つの手法にこだわりすぎない
    • 定期的に評価項目を更新する

    上記5つの注意点について紹介します。

    評価制度を短期間で一新しない

    1つ目は、評価制度を短期間で一新しないことです。

    コンピテンシー評価は「優れたパフォーマンスを出している人材の行動特性」をもとにした評価方法であり、導入前の評価基準とは大きくかけ離れている可能性もあります。評価制度を急に変えてしまうと、現場に混乱が生じる懸念もあるでしょう。

    まずは「特定の部門のみ」「新卒で入った社員のみ」など、1つの部門・分野に限定して、そこから組織全体に広げていくと混乱を抑えながら導入できる可能性があります。

    成果を軽視しない

    2つ目は、成果を軽視しないことです。

    コンピテンシー評価は、組織の成長・発展を促進し、高い成果をあげるのが最終的な目標になります。結果だけでなくプロセスも評価しようという前提もありますが、「プロセスさえ良好であれば問題なし」とするのでは本末転倒です。

    確かにコンピテンシー評価は、マネジメントに役立てられる側面もありますが、あくまでも副次的なメリットです。プロセスと同時に成果を見つつ、組織の目的達成に向けて効果的に運用するのが重要になります。

    コンピテンシー評価の理想像を押しつけない

    3つ目は、コンピテンシー評価の理想像を押しつけないことです。

    コンピテンシー評価では、確かに多くの評価項目を満たす方が望ましいとされています。しかし、コンピテンシー評価の目的は「コンピテンシー評価で高評価を得るための完璧な人間を作ること」ではありません。設定した理想像を押しつけてしまうと、社員のモチベーション低下にもつながります。

    コンピテンシー評価で設定したモデルは、あくまでも1つの目安に過ぎないことを理解しておきましょう。

    1つの手法にこだわりすぎない

    4つ目は、1つの手法にこだわりすぎないことです。

    コンピテンシー評価は行動特性を評価するため、そもそもの「ものさし」の作り方が難しいという弱点があります。そのデメリットを補うためには、他の指標と組み合わせるのが重要であり、実際に多くの企業で行われています。

    KPI

    KPIは「Key Performance Index」の略称で、「重要目標指標」を意味する概念です。主に年間目標の設定と、進捗管理の指標・ものさしとして使われます。

    例えば予実管理や売上予実管理を行う経理・財務・営業部門は、数字で結果を評価するため、KPIは納得性の高いものさしとして使われます。

    KPI自体は人事評価ではありませんが、こうした定量的な評価方法をコンピテンシー評価と連携すれば、より具体性・公平性の高い評価にできます。

    OKR

    OKRは「Objective and Key Result」の略称で、目標と主要な結果を組織のビジョンに合わせ、各部署・個人が設定する数値目標です。具体例としては、「2ヶ月間でリピート率を20%に向上させる」などがあります。

    OKRの特徴は、短期間で評価して目標の見直しを行う点です。コンピテンシー評価のデメリットとされている、「環境の変化への弱さ」を克服できる可能性があります。

    MBO

    MBOは「Management by Objectives」の略称で、部署・グループ・個人などで目標を設定し、その達成度に応じて評価を決めるものです。アメリカの経営学者である、ピーター・ドラッカーによって提唱されました。

    こちらもコンピテンシー評価と組み合わせれば、「行動特性」と「具体的な目標による評価」の、2つの軸で評価できるようになります。

    定期的に評価項目を更新する

    5つ目は、定期的に評価項目を更新することです。

    コンピテンシーモデルは、あくまでも「その時代」「その組織」ならではのものです。時代の流れや、市場・組織の変化によって、求められる行動特性も変わってきます。

    具体的には、企業の成長フェーズなどの「現在地」を見極め、それに合った行動特性を考えます。当然、見直しの手間は大きいですが、コンピテンシー評価の効果を最大限に高めるためには、定期的なメンテナンスを欠かさないようにしましょう。

    まとめ:コンピテンシー評価のススメ ベストプラクティスにぜひ挑戦を

    まとめ:コンピテンシー評価のススメ ベストプラクティスにぜひ挑戦を

    コンピテンシー評価は企業の理想を実現するために極めて有用な方法であり、人事評価だけでなく採用にも利用できるため、有望な人材の獲得から育成まで一貫して効果があります。

    ただし、コンピテンシー項目はアップデートが必要であり、また他の評価基準との組み合わせも必要です。しかしデメリットを理解して効果的に運用できると、採用・評価における組織改革の実行につながります。

    コンピテンシー評価を使いこなし、ベストプラクティスを目指しましょう。

    また、人事ZINEでは、コンピテンシー評価基準作成シート(記入例つき)をご用意しています。Excelにそのまま記入していただけますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

    【サンプル】コンピテンシー評価基準作成シート
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    『コンピテンシー評価基準作成シート』は、その仕事で成果を上げるために必要な能力(スキル)や性格は何であるかを現場社員へヒアリングし、採用時の求める人物像の抽出や人事評価基準の策定に活用できます。
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    人事ZINE 編集部

    人事ZINE 編集部

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