地方の新卒採用でよくある課題とおすすめの手法・成功のポイント
都市部にはない課題を抱える地方での新卒採用。大手企業や都市部の企業など認知度の高い企業に学生が流れてしまい、思ったように学生を採用できないと悩んでいる地方企業・中小企業の担当者も多いのではないでしょうか。
特に、従来型の採用手法であるナビサイトを使っている場合は、大手企業と横並びに比較されてしまい、学生の興味関心を獲得するのに苦労することも少なくありません。
そのような時は、「ダイレクトリクルーティング」「逆求人」といったスカウト型の採用手法をおすすめします。
なぜなら、スカウト型の採用手法は、自社が求める条件を満たす学生を絞り込み、企業側から直接声をかけることができ、認知度の課題を克服しつつマッチングの精度を高めることが可能だからです。
この記事では、地方企業・中小企業の採用担当者の方に向けて地方における新卒採用の状況や課題、自社が求める学生を採用するためのポイントをご紹介します。
また、人事ZINEでは、採用に成功した地方企業の事例を紹介した資料をご用意しました。地方採用ならではの課題に対するおすすめの対応手法も解説していますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
目次
地方採用が難しい3つの理由
地方企業に在籍する採用担当者のなかには、「さまざまな採用施策を打ち出しているものの、なかなか人材が集まらない」と感じている方も多いことでしょう。地方の採用市場には、労働力人口の減少に伴う有効求人倍率の上昇といった、地方ならではの状況があります。
地方の労働力人口の減少
少子高齢化の進むなか、もともと全国的に労働力人口は減少傾向にあり、特に地方ではその傾向が顕著です。
総務省が2023年に行なった「労働力調査」から、都道府県ごとの労働力人口の推移を見ることができます。その結果を見ると、労働力人口が前年を上回っていたのは47都道府県のうち20都府県で、1万人以上増加しているのは東京都や大阪府などの都市部をはじめとした9都道府県のみでした。
この結果から、特に地方の労働力人口が減少している状況が伺えます。
三大都市圏への労働力人口集中
労働力人口が都市部へ集中していることも、地方での採用難に拍車をかけています。「労働力調査」のデータから、労働力人口が1万人以上増加した9都道府県の内訳を確認してみましょう。
- 北海道:2万7,000人
- 宮城県:1万4,000人
- 千葉県:3万人
- 東京都:3万5,000人
- 神奈川県:5万4,000人
- 愛知県:3万2,000人
- 滋賀県:1万6,000人
- 大阪府:2万1,000人
- 沖縄県:1万3,000人
三大都市圏での増加人数が計17万2,000人であるのに対し、それ以外では計7万人と、かなり差があります。
有効求人倍率の上昇で依然「売り手市場」
労働力不足に伴い、有効求人倍率が上昇傾向にあることも地方企業・中小企業が採用に苦戦する一因です。
リクルートワークス研究所が公表した「第40回ワークス大卒求人倍率調査」(2024年卒)によると、2024年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象にした大卒求人倍率は1.71倍でした。2023年3月の1.58倍から0.13ポイント増加し、依然として「売り手市場」が続いていることが分かります。
学生に豊富な選択肢がある以上、企業が自社の求める人材を獲得することは困難だといわざるを得ません。新卒採用を成功させるには、有効な施策を講じる必要があります。
地方企業が新卒採用で抱える課題
難しい状況の続く地方の採用市場で新卒採用を成功させるには、次のような課題を乗り越える必要があります。
学生との接触機会の確保
学生との接触機会を確保することは地方企業の重要な課題です。一般的に、「1人の学生に6回以上接触すると、企業に対する好感度が上がる」といわれています。回数だけが大事というわけではありませんが、接触頻度が多く交流時間が長い方が、理解が深まることは間違いありません。
地方特有の悩みとして、地方に在籍している企業は学生と接点を持つ機会を創出しにくいという点が挙げられます。1回の面接で学生を見極めることが困難なのと同様に、接触機会が少ない学生に自社のことを十分に理解してもらうのも難しいはずです。
かといって、学生に遠方まで出向いてもらう必要がある地方企業や、特に人手の足りない中小企業は個人対面で話す時間を確保することが困難です。「必要性は分かるが、学生へのフォローに十分な時間をかけられていない」という声は多く聞こえてきます。
自社の認知・興味の獲得
自社を学生に認知してもらい、興味を獲得することも課題です。
地方企業・中小企業は、業界の知名度・認知度が低く、エントリーまで結びつかない「認知の壁」にぶつかってしまうこともあります。都市部でも「条件に合う企業があれば地方で働きたい」と思っている学生や、Uターン就職を考えている地方出身の学生は、意外に多いものです。しかし、企業の認知度が低いと、そのような学生と接点を持つことが困難な上に、学生にも自社の存在を知ってもらえない、という問題が発生します。
「認知の壁」を突破して学生に存在を知ってもらうためには、壁を越えて企業側から学生へ能動的にアプローチをかけることが必要です。
都市部の有名大手企業に代わる選択肢の提示
自社が、都市部の有名大手企業に代わる選択肢の1つだと、学生に理解してもらうことも課題です。
学生は、地方企業や中小企業の選考を進めていくなかで「絶対ここだ!」という決定的なポイントがないと、「やっぱり大手企業の方がよいのではないか」と“なんとなく”の気持ちで大手企業へ流れていく傾向があります。内定をもらった時は「行きたい!」と思っていても、その気持ちを裏付ける確固たる理由が見つからないと、時間が経って冷静に考えた時に「ここで大手を選ばないのはもったいないかな……」と大手企業に気持ちが傾いてしまうようです。
なかには、両親に相談して「大手を強く勧められた」「中小・ベンチャー企業は反対された」という理由で大手企業を選択したという学生もいます。
このような状況は、売り手市場により学生の選択肢が増えているのに対し、学生が得られる情報があまりにも少なすぎることが一因といえます。就労経験がなく、企業や業界の知識が偏っている学生に対して、地方企業ならではの魅力や地方で働くことのメリットを発信し、自社も選択肢の1つとして検討してもらう機会を増やすことが大切です。
地方企業が新卒採用を成功させる6つのポイント
新卒採用を成功させるには、まず自社を知ってもらい、そのうえで学生に「入社したい」と思ってもらわなくてはなりません。そのためには、6つのポイントを押さえておきましょう。
- ターゲットとなる学生像を明確にする
- 自社の魅力や強みを整理する
- 企業側主体の採用手法を取り入れる
- 検索エンジンを有効活用する
- 説明会や面接をオンラインで実施する
- 採用ターゲットを狭くし過ぎない
項目ごとに解説します。
ターゲットとなる学生像を明確にする
候補者の絶対数が少ないなか、自社が求めている学生に的確にアプローチするためには、ターゲット像をできるだけ具体化することが重要です。具体化したターゲット像は、「ペルソナ」として設定し、採用関係者間で共有するようにします。
年齢や性別といった属性だけでなく、住んでいる場所や大学での専攻、情報収集の手段といったライフスタイルまで詳細なイメージを固めることで、「ターゲットはどのような媒体を使い、どのような条件で求人情報を検索するのか」など、より具体的に想像が膨らみます
その結果、効果的な採用手法を選んだり、ターゲットにとって魅力的な訴求を打ち出したりできるようになります。
自社の魅力や強みを整理する
ターゲットにとって魅力的な訴求を打ち出すためには、自社の魅力や強みを整理する必要があります。とはいえ、「自社にそれほど目立った特徴がない」と頭を悩ませている担当者も多いかもしれません。
まずは、「地方企業は、認知度の高い大手企業や都市部の企業と比べられている」というスタート地点に立ち返り、大手や都市部の企業にはない地方企業ならではの特徴を考えてみるとよいでしょう。
例えば、「地場経済と密接に関わっているので業績が安定している」「地方貢献になるのでやりがいを肌で感じられる」「組織規模が小さいからこそ裁量の大きい仕事ができる」など、地方企業・中小企業ならではの魅力があるはずです。大企業や都市部企業とは違った角度からアピールすれば、学生にも比較してもらいやすくなり、興味関心を獲得しやすくなります。
企業側主体の採用手法を取り入れる
従来型の採用手法であるナビサイトをメインに採用活動を行っている企業も多いことでしょう。大手のナビサイトは学生の数も多く、学生との最初の接点として有効であることは間違いありません。
しかし、「認知の壁」がある地方企業や中小企業にとってはデメリットがあることも認識するべきです。ナビサイトを使用する学生は、数多くの掲載企業を横並びにして「比較」することを目的としています。そのため、知名度や認知度で大手企業に劣る地方中小企業は比較負けしやすく、母集団形成が難しい場合があるのです。
地方企業が「認知の壁」を克服するには、ナビサイトのような「待ち」の採用手法ではなく、自社側から学生に直接アプローチする「スカウト型」「逆求人型」の採用手法を取り入れると効果的です。
検索エンジンを有効活用する
学生はナビサイト以外にも、さまざまな方法を使って求人を検索します。検索エンジンを有効活用するためにはまず、求人情報に学生が検索に使用しそうなキーワードを盛り込みましょう。例えば駅名や路線名、近隣の著名なスポット名などが該当します。
また、検索キーワードに応じて表示される「リスティング広告」を活用するのも1つの方法です。「新卒求人 地域名」といったキーワードで検索する学生に対し、効率的に求人情報を届けられます。
このほか、多くの求人情報が集まる「Indeed」や「求人ボックス」といった求人検索エンジンも、新卒採用に役立ちます。求人検索エンジンの詳しい解説は、「地方企業におすすめの採用手法」の項目をご覧ください。
説明会や面接をオンラインで実施する
できるだけ応募者の範囲を広げ、遠方に住む学生が応募しやすくするには、説明会や面接をオンラインで実施することをおすすめします。
地方企業の新卒採用では、「現地へ行くのに時間がかかる」「交通の便がよくない」など、地理的な制約があることは否めません。その点、オンラインでの説明会や面接であれば自宅から参加できるため、学生の負担を減らし、なおかつ応募者を増やす効果が期待できます。
企業側にとっても「面接担当者が会場まで足を運ぶ必要がない」「学生に支給する交通費を減らせる」という利点があります。さらに、学生に「遠方に住む人のことを考えてくれている」「便利な手法を積極的に導入している」というプラスのイメージを持ってもらうきっかけにもなるでしょう。
採用ターゲットを狭くし過ぎない
地方の新卒採用では、採用ターゲットを絞り込みすぎないことも重要です。地方はそもそも、三大都市圏と比較すると労働力人口が少ないため、採用ターゲットを狭めてしまうと応募が集まらない可能性があります。
例えばエンジニアの求人は、理系向けというイメージを持つ学生も少なくありません。仮に理系学生に絞らずに募集したい場合は、「学部・学科不問」のように記載することで、応募数を増やせる可能性があります。
新卒採用では、採用ターゲットを明確にすることが大切ですが、結果として必要以上に門戸を狭めてしまわないように注意が必要です。自社の求人情報を見直して、撤廃あるいは緩和が可能な条件がないかどうかを確認しましょう。
地方企業の新卒採用におすすめの手法4選
自社の認知度を高め、学生に「説明会に参加してみたい」「入社したい」と思ってもらうには、効果的な採用方法を取り入れることも大切です。地方企業での新卒採用におすすめの方法を4つ紹介します。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、自社のターゲット像と合致する学生に対し、企業からアプローチする採用方法のことです。
大手企業と比べて認知度で劣る地方企業や中小企業は、「説明会に参加者が集まらない」「学生が大手に行ってしまい選考辞退や内定辞退が多い」といった課題を抱えています。その解決方法として考えられるのが、企業自らが学生との接点をつくることです。具体的にはまず、学生が登録しているデータベースをもとにスカウトメールなどを送り、自社の選考を受けてもらうようオファーします。その後、オファーを承認した学生に対し、選考を進めるという流れです。
ダイレクトリクルーティングの詳しいメリットについては、「地方企業・中小企業にはダイレクトリクルーティングがおすすめ」の項目で解説します。
求人検索エンジン
求人検索エンジンとは、インターネット上にあるさまざまな求人情報を収集し、まとめて掲載するWebサイトのことです。具体的なサービスには「Indeed」「求人ボックス」「スタンバイ」などがあります。
主要な求人検索エンジンでは、「クリック課金型」の料金体系が採用されています。掲載すること自体に料金がかかる一般的なナビサイトとは異なり、求人情報をクリックされない限り費用が発生しません。さらに検索キーワードに応じた求人情報が表示されるため、自社の募集エリアで就職先を探している学生に対し、ピンポイントで求人を配信できます。
求人検索エンジンは、新卒・既卒を問わず活用できる媒体です。登録だけであれば無料というサービスも多く、認知度アップに役立ちます。
リスティング広告
リスティング広告とは、「Google」や「Yahoo!」といった検索エンジンで検索した際に、検索結果画面に表示されるテキスト形式の広告のことです。検索キーワードに連動して表示される仕組みになっているため、「キーワードについて知りたい」というニーズを持つ相手に情報を届けやすいというメリットがあります。
リスティング広告の料金体系は、クリックされた回数に応じて費用が発生する「クリック課金型」です。実際にクリックする人は基本的に、広告に興味を持った学生であるため、費用面での無駄が少ないといえます。例えば「地域名 新卒」「地域名 正社員 新卒」といったキーワードに対して広告を配信することで、アプローチの幅を広げられます。
ソーシャルリクルーティング
ソーシャルリクルーティングとは、「X(旧Twitter)」や「Instagram」といったSNSを使った採用方法のことです。SNSを通じて情報を発信することで自社に興味を持ってもらい、志望の動機へとつなげることを目的としています。
ソーシャルリクルーティングのメリットは、自由度が高く、自社の魅力をさまざまな表現で発信できる点です。一般的なナビサイトはフォーマットが決まっているため、掲載できる内容や文字数などに制限があります。その点SNSであれば、写真や動画などをリアルタイムで掲載することができます。SNSは無料のサービスが多く、利用コストもかかりません。さらに、ナビサイトや求人検索サイトでは出会えないターゲットに届けられることもメリットの1つです。
地方企業の新卒採用にダイレクトリクルーティングがおすすめの理由
地方企業の新卒採用にダイレクトリクルーティングをおすすめする大きな理由は、企業と学生の双方にメリットがあることです。
企業から学生にアプローチするダイレクトリクルーティングは、学生にとって新しい企業を認知するきっかけになります。学生が1人でできる業界研究や企業分析には限界があるため、本当に自分に合う企業と出会えるとは限りません。企業側からマッチ度の高い学生に声をかけることで、学生も自分の能力や個性を生かせる職場と出会える可能性があります。
また、ダイレクトリクルーティングによって「自分のことを見てくれている」という印象を受けた学生は、企業のことを詳しく知ろうとしてくれます。ベクトルを向け合って1対1でしっかりと対話し、お互いの本音をわかり合うことは、ミスマッチを防ぐためにも重要です。
特に「学生に積極的に会おう」「個々の学生としっかり向き合って理解を深め合おう」という気持ちが強い企業は、ダイレクトリクルーティングの特性にマッチしやすく、導入初年度から高い効果を得ている企業も少なくありません。学生を思う気持ちを伝えることが、地方企業の新卒採用にプラスに働きます。
地方採用におけるダイレクトリクルーティング活用についての詳しい資料は、こちらからダウンロードできます。ぜひご覧ください。
まとめ
知名度や在籍地に関係なく、学生との接点を創出して深い対話を行うダイレクトリクルーティングは、地方企業にこそ取り入れてほしい採用手法です。「不便な立地にあり学生に来てもらうのも就活イベントに参加するのも難しい」「そもそも地方は学生の数が少なくて、母集団形成が困難」と感じている企業こそ、導入する価値があるといえます。
また、ダイレクトリクルーティングは企業側だけでなく、視野を広げてミスマッチを防止するなど、学生側にも多くのメリットをもたらします。
こちらの資料では、ダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」を活用して、採用に成功した地方企業の事例をご紹介しています。スカウト送信のポイントも解説していますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。