人員増員の提案書の作成手順と書き方をテンプレート付きで紹介
人員増員を行うにあたっては人材要件の整理や施策計画に加えて、コスト予測や組織の受け入れ体制の整備といったさまざまな視点も必要です。そこで、効果的な人員増員を実現するためには、綿密な計画作りと説得力のある提案書が不可欠となります。
本記事では、人員増員の提案書を作成するにあたって、人員増員の目的や効果を明確化する重要性に触れつつ、提案書の具体的な作成手順をテンプレート・書き方も示しながら紹介します。また、データをもとに論理的な根拠を示すことや、関係者との議論を深めることなど、提案書作成におけるポイントについても詳しく解説します。
人事ZINEでは、人事・採用担当の方に向けて「要員計画表テンプレート」をご用意しております。Excel形式で現状の社員数や今後の要員数などを入力できるようになっており、人員増員の提案をする際にも役立ちます。人員計画にあたってフォーマットを使って効果的に検討したいという方はぜひご活用ください。
目次
人員増員にあたって整理しておくべき基本的なポイント
人員増員を行うにあたっては、綿密な計画と準備が不可欠です。ここでは、人員増員を提案する際に最初に整理しておくべき基本的なポイントについて、具体例を交えながら解説します。
人員増員の施策内容・目的
人員増員は、事業に必要な人員を確保し、社員の負担軽減や業務の質向上、さらには事業拡大や新規プロジェクトへの人材投入などを目的とします。しかし、単に頭数を増やすのではなく、現状の課題をもとに、追加的に必要な人数やスキルセット、採用時期などを明確にする必要があります。
例えば、売上目標達成のために営業人員を増員する場合は、既存の営業チームでは顧客対応や新規開拓に限界が生じているという状況を分析し、「新規顧客開拓に特化した営業人員を何名増員する必要があるのか」「既存顧客へのフォロー体制は何名ほどで、どのように強化するのか」などを具体的に示す必要があります。
人員増員施策の特徴
人員増員の施策は、組織体制や人事管理体制の調整が必要になるケースが多い点が特徴です。
欠員補充や定期的な新卒採用では、既存の組織体制を変更しなくても済むケースも多くあります。しかし、人員増員は組織の規模自体が拡大するため、採用・選考体制や入社後の受け入れ体制の整備、人事管理制度の見直しなど、より広範囲な調整が必要となる可能性があるのです。
また、人員増員では新規事業立ち上げといった既存の枠組みとは異なる取り組みをするケースもあります。この場合は既存の採用方法・人事制度をそのまま適用できないことも多く、新規事業にふさわしい人事評価制度や報酬制度を検討する必要もあるでしょう。
人員増員の提案書に盛り込むべき項目
人員増員の提案書に記載すべき項目は多岐にわたりますが、特に以下のような項目を押さえる必要があります。
- 人員増員の目的と背景
- 増員するポジションと役割の明確化
- 採用プロセスとスケジュール
- 費用対効果の分析
- リスク分析
まずは「なぜ増員する必要があるのか」「増員によってどのような効果を狙っているのか」を明らかにしておく必要があります。次に、各ポジションの具体的な役割、求められるスキルや経験、配置場所も必要です。そして、選考基準、面接プロセス、内定から入社までのスケジュールも示します。
また、施策の狙い・内容だけでなく、費用対効果やリスクについても記述しましょう。人員増員によるコストと期待される収益増加などの効果を比較しつつ、人件費の過度な増加や社員教育の負担といった潜在的なリスクとその対策にも言及します。
具体的な提案書の書き方は、企業の規模や業種、社内の課題によって異なります。上記のような基本的な項目は網羅しつつ、社内の状況に合わせて必要項目を調整しましょう。
人員増員の提案書を作成する手順
説得力のある人員増員提案書を作成するための手順を、具体例も紹介しながら解説します。
現状の人材面の課題を把握する
人員増員を提案する際には、まずは現状の人材面の課題を正確に把握することが重要です。定性的・定量的なデータに基づき、各部署の社員の増減を分析し、現場の人員の不足状況を改めて検証します。部署・チーム単位で、社員の退職・異動状況、業務拡大の状況、専門性の高い人材のニーズなどを調査し、具体的な課題を洗い出しましょう。
例えば、営業部門では、「新規顧客開拓の強化が求められているにもかかわらず、営業担当者の数が不足している」という問題が明らかになるかもしれません。また、開発部門では、新しい技術の登場や、プロジェクトの複雑化に伴い、高度なスキルを持つエンジニアの確保が課題となっている可能性があります。
これらの課題を明確にすることで、人員増員の必要性を裏付ける根拠を集めていきます。
人員増員の目的・効果を整理する
人員増員によって、どのような効果を期待できるのかを具体的に示す必要があります。業務効率の向上、新規プロジェクトのスムーズな開始、既存社員の負担軽減など、具体的な目的を明確にすることで、経営陣や部門長といった決裁者が増員の必要性を認識しやすくなります。
例えば、「営業部門で増員すると、新規顧客獲得数が増加し、売上目標達成に貢献できる」と予測できる場合は、具体的な見込み売上を提示することで、より説得力のある提案になるでしょう。また、「開発部門の増員によって、新製品開発のスピードアップや、製品の品質向上につながる」と示すことで、長期的な効果をアピールできます。
過去のデータがあれば、増員によって売上が向上した事例や、プロジェクトが成功した事例などを提示することで、より説得力が増します。また、あえて過去の失敗事例についても分析し、その対策にも言及しておくと、提案の信頼性を高めやすいでしょう。
増員人数・職種などを検討する
経営計画や予算を確認し、年度内の人員増減数、今後の要望人員数をもとに、増員したい人数を割り出します。また、増員したい対象職種やポジション、それぞれの人数なども具体的に検討しましょう。将来の事業展開や組織体制の変化を見据え、必要なスキルセットや経験を持つ人材を確保できるよう、計画的に人材の配置を検討する必要があります。
例えば、新規事業立ち上げをする場合は、マーケティング担当者、プロジェクトマネージャー、新規事業の専門知識を持つ人材など、必要な人材像を明確化し、合理的な人数を算出することが欠かせません。また、既存の組織体制との整合性も考慮し、社員が相乗効果を発揮できるような配置計画を立てます。
採用の施策・計画案を検討する
採用したい人数、職種、スケジュール、予算などを踏まえ、採用市場の動向や時期的要因を考慮した具体的な採用計画を立案します。主な採用手法は以下の通りです。
求人サイト |
ターゲットとする人材層にリーチできる媒体を選定し、魅力的な求人広告を作成。 |
---|---|
ダイレクトリクルーティング |
サービスの登録者のなかから、プロフィールや保有スキルなどをもとに採用したい人材を絞り込んで、採用者側から直接アプローチする。自社が採用したい人材に絞ってオファーするためマッチングの精度が高まる。 |
転職エージェント |
人材紹介会社から採用要件に合う人材の紹介を受けることで、効率的に採用活動を進める。特に専門性の高い人材の確保には、転職エージェントが有効。 |
社内推薦制度 |
社員からの推薦を通じて、優秀な人材を発掘する。社員が推薦することで、企業文化にマッチする人材に出会える可能性がある。 |
採用イベント |
企業説明会や面接会などを開催し、応募者と直接コミュニケーションをとる。企業の魅力を伝えるだけでなく、応募者の質問に丁寧に回答することで、企業への理解を深めてもらいやすい。 |
これらの採用手法を組み合わせつつ、また「いつまでにどれくらいの施策を実行するか」という計画を立てます。
【ケース別】人員増員の提案書のテンプレートと書き方例
人員増員を提案する際に決まったフォーマットがない場合は、テンプレートを活用するのが効率的です。事業拡大、業務量増加、業務体制変更など、目的別にテンプレートを使い分けることで、効率的に提案書を仕上げられます。
ここでは人員増員の代表的なケースとして、事業拡大、業務量増加、業務体制変更のケースごとに書き方を紹介します。
人員増員提案書の書き方例1.事業拡大
ここでは、事業拡大のなかでも特に新規事業の拡大のケースについて考えます。
項目 | 内容 |
---|---|
提案の目的 |
新規事業「Eコマース物流サービス」の立ち上げに伴い、必要な人材を確保する |
背景と現状分析 |
・オンラインショッピングの急速な普及と、それに伴う物流サービスの需要増加 |
人員増員による効果 |
・年間500社の新規顧客獲得 |
必要な人材像 |
以下のスキルセットを持つ人材を5名確保 |
採用計画 |
採用方法 |
費用対効果分析 |
・人員コスト:年間4,000万円(5名 × 人件費800万円) |
リスク分析 |
・リスク:人件費・人材獲得費用の高騰 |
人員増員提案書の書き方例2.業務量増加
次に、既存業務が増加して追加人員が必要なケースの書き方例を紹介します。
項目 | 内容 |
---|---|
提案の目的 |
業務量増加に伴う社員の負担軽減と業務効率化 |
背景と現状分析 |
・前年の注文数は前年比20%増加し、スタッフ一人あたりの月間処理件数が平均50件から70件に、残業時間は月平均20時間から40時間に増加 |
人員増員による効果 |
・新規人員の配置により、業務を分担することで、処理スピードが向上し、月間処理件数を平均60件に抑えられる |
必要な人材像 |
以下の要件を満たす人材を10名確保。 |
採用計画 |
採用方法 |
費用対効果分析 |
・人員コスト:年間約5,000万円(10名×人件費500万円 |
リスク分析 |
・リスク:新規採用人員の育成コスト、チームワークの構築に時間が必要となる |
人員増員提案書の書き方例3.業務体制変更
最後に、DXによる業務体制変更に伴い専門人材の増員が必要なケースを考えます。
項目 | 内容 |
---|---|
提案の目的 |
業務プロセスを効率化・自動化するにあたってデジタル人材を増員し、IT業務に配分を増やす体制にシフトする |
背景と現状分析 |
・業界全体のデジタル化が加速し、競争優位性を確保するためには、DXの推進が不可欠となっている。 |
人員増員による効果 |
・デジタル人員増員によりDXが進むことで業務効率化とコスト削減 |
必要な人材像 |
以下の人材を確保 |
採用計画 |
採用方法 |
費用対効果分析 |
・人員コスト:年間3,400万円(マネージャー1名 × 1,000万円 + その他4名 × 人件費600万円) |
リスク分析 |
・リスク:新規採用人員の育成コスト、システム導入に伴うトラブル発生 |
人事ZINEでは、「要員計画表テンプレート」をご用意しております。Excel形式で現状の社員数や今後の要員数などを入力できるようになっており、上記のような人員増員の提案書作成にも活用いただけます。人員・増員計画を検討する際のフォーマットをお探しの方はぜひご活用ください。
人員増員の提案書を作成する際に意識すると効果的なポイント
最後に、効果的な人員増員の提案書を作成する際に意識すべきポイントを紹介します。
具体的なデータ・数字を示す
人員増員を提案する際には、数字も示しながら論理的な根拠を示すことが重要です。市場調査や業界動向、社内状況に基づいたデータを提示することで、増員の必要性を客観的に示します。
また、企業の成長予測や業績向上のシミュレーションを行い、増員による具体的な効果を数値化すると、決裁者の理解を得やすくなります。例えば、新規事業立ち上げに伴う人員増員であれば、売上目標や顧客獲得数などの具体的な見込み数値を提示し、その達成可能性も示すことが重要です。その際、過去に増員した際のデータがあれば、そのデータを用いるとより説得力ある内容にすることができます。
関係者と議論を深めて完成度を高める
人員増員提案書は、単に作成するだけでなく、関係者と議論を深めて完成度を高める必要があります。
特に提案の企画段階では、関係者と綿密にコミュニケーションをとり、人材へのニーズを正確に把握することが重要です。また提案書の作成途中でも、提案内容に関するフィードバックを積極的に受けて修正・改善を行うことで、より実態に即した提案書に仕上げていきます。もちろん、現場や人事部門、関連部署といった幅広い意見も取り入れると効果的です。
時には専門家の意見を取り入れることが有効なケースもあります。例えば、人材市場の動向に精通したコンサルタントや、特に業務体制変更の場合には人事制度に詳しい社会保険労務士などの意見が役に立つことがあるでしょう。
まとめ
企業の成長には、適切な人材確保が不可欠です。本記事では、人員増員を成功させるための基本的なポイントと、効果的な提案書を作成する方法をご紹介しました。
まず、人員増員の目的や施策の特徴を明確化し、提案書に盛り込むべき項目を整理しましょう。現状の人材面の課題を分析し、増員によって期待できる効果を具体的に示すことが重要です。増員人数、職種、採用計画などを検討し、データに基づいた根拠を提示することで、経営層の理解と承認を得やすくなります。
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