人事評価シートの書き方と6職種のテンプレート・例文を紹介

人事評価シートを策定するにあたっては、「評価項目の設定方法がわからない」「自社の業種や対象者の職種に合う人事評価シートを作成するノウハウが知りたい」といった疑問・悩みがあるものです。
人事評価シートを作成・運用する際は、活用の目的や評価基準を整理したうえで、いくつかのポイントを押さえると効果的です。本記事では、人事評価シートを作る目的から、重要な3つの評価基準、職種ごとのテンプレート・記入例を紹介します。
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目次 [表示]
人事評価シートを活用する目的

人事評価シートとは、社員の目標の達成度・実績や勤務態度、スキルといった項目を評価するシートのことです。ここではまず、人事評価シートを作成する3つの目的を整理しましょう。
人事評価の正確性・公平性を確保する
1つ目の目的は、社員一人ひとりを公平に評価するためです。例えば賃金アップやダウン、昇進を正確に判断しないと、社員の中で不公平感が出る可能性があります。そうしたことを避けるため、賃金アップ・ダウンや昇進・降格は正当な理由で判断されていると人事評価シートで証拠づけます。
人事評価は勤続年数や年齢といったわかりやすい要素というよりは、個人の業績や能力、勤務態度などさまざまな要素を加味して実施するものです。なかには営業成績のように定量化しやすい基準もある一方で、定性的な判断が必要な基準もあります。そこで評価担当者の主観・経験だけでなく、人事評価シートのような共通の仕組みを用いることで、人事評価の正確性や公平性を担保するのです。
会社のビジョン・文化を浸透させるため
2つ目の目的は、会社・ビジョンや文化を組織全体に浸透させるためです。
会社のビジョン・文化を組織に行き渡らせるには、トップが理想を発信するだけでなく、マネジメント層にもその考えを理解してもらい、またマネジメント層が受け持っている各部門・チームでさらに浸透させていくという上位下達の仕組みが必要です。また、ビジョン・文化は抽象的な概念になりがちですが、それを誤解なく伝えるにはわかりやすく明文化する必要もあります。
人事評価シートを用いて、ビジョン・文化に関する項目を盛り込み、「会社はどのような考え方・行動を評価しており、どのような基準で評価するのか」を示すと、社員にわかりやすい形で周知ができます。さらに、これは人事評価とも連動しているため、社員に行動を促すことも可能です。
社員の育成・キャリア形成のため
3つ目の目的は、社員の育成やキャリア形成につなげるためです。
人事評価の基準は、上司や人事担当者が社員を評価する時に使用するだけでなく、評価される側にとっての意識付けにもなり、行動を促せます。例えば、人事評価において「協調性を重視する」と明示していれば、評価される側の社員は競争よりも協調を重んじるようになるでしょう。
人材開発や社員のキャリア形成といった観点から推奨したい項目を定め、その要素を人事評価シートという明文化された形で管理すれば、評価する側・評価される側ともに、成長やキャリア形成に向けた努力を促せます。
人事評価シートで設定する主な3つの評価基準

人事評価シートは、主に以下の3つの基準があります。

- 業績基準
- 能力基準
- 情意基準
これら3つの基準を細分化した「評価項目」の例と併せて紹介します。
業績基準
業績基準は社員が仕事で達成した業績について精査します。
業績目標達成度
業績目標達成度は期首に設定した社員の等級に適した「数値目標」の達成度です。営業成績や目標達成率のように、実際に達成した業績をもとに決定します。
課題目標達成度
課題目標達成度は、社員のレベルに応じて設定した「課題」の達成度です。期首やプロジェクト開始前に、あらかじめ課題を決めておきます。
日常業務成果
日常業務成果は、「日常の業務でどれだけ成果を出したか」「組織に貢献しているか」について評価します。部下のいる係長や課長以上は、人材育成で成果が出たかどうかも確認します。
能力基準
能力基準は、チームに貢献できるようなスキルを評価するための基準です。
企画力
企画力は、チーム内で負荷の発生しがちな業務を見つけて、効率よく仕事を進めるための企画・計画ができたかどうかを評価する項目です。
実行力
実行力は、自分の担当業務を自分の力で成しえたかについて確認します。後輩がいる場合、後輩に仕事の進め方やトラブル対応などについて教えられたかもこの評価項目でチェックします。
リスク管理能力
リスクを察知し、対策を練って対応する能力を評価する項目です。同僚や顧客などと相談して処理できたかどうかも評価します。
改善力
改善力は、チームがよりよい結果を出すための業務改善に貢献できたかをジャッジします。改善にまで至らなくても改善につながる問題提案ができていたらこちらで評価を与えることができます。
情意基準
情意基準は、数値化しにくい社員の仕事に対する態度や、やる気などについて振り返る基準です。
責任性
責任性は、担当している職務に責任をもって取り組んだかどうかを評価します。困難なアクシデントが起こったときに、粘り強く取り組んだかどうかもこの項目で判断します。
協調性
協調性は、同僚や上司と協力して業務を進行できたかどうかを評価する項目です。係長以上の役職者は、部下を放置せず親身に後援していたかどうかもチェックします。
積極性
積極性は、熱意をもって職務に取り組んだかどうかを評価します。未経験であっても、チームにとって効果が期待できるやり方を取り入れようとしていれば評価対象となります。
評価基準の策定には、現場社員からのヒアリングが有効です。こちらのシートもご活用ください。

【職種別】人事評価シートのテンプレート・記入例

人事評価においては対象の職種ごとに評価すべき項目や評価方法が異なるものです。人事評価シートを作成する際は、全て共通にするのではなく必要に応じてその職種や部門の状況に合わせた内容にする必要があります。ここでは参考として職種ごとのテンプレートや記入例を紹介します。
事務職のテンプレート・記入例
事務職は、成果を数値で示しにくい職種で、業務効率や改善提案など、日常業務のパフォーマンスが公平に評価されるような項目を設けることが大切です。
評価基準 | 評価項目 | 評価内容 |
---|---|---|
業績基準 | 日常業務成果 | インシデント発生件数が月平均2件以下か |
処理効率 | 所定時間内に業務が完了した割合が全体の95%以上か | |
能力基準 | 情報管理能力 | 社内の重要な情報や資料を適切に整理・管理し、適宜活用できるか |
問題解決力 | 業務中に発生するトラブルに対して、自ら解決策を見つけ対応できるか | |
情意基準 | 協調性 | メンバーと円滑にコミュニケーションを取り、他部門との協力を大切にしているか |
信頼性 | 期限やルールを守って行動できているか |
技術職のテンプレート・記入例
技術職は、専門知識・スキルを活かして、一般的にプロジェクトでチームを組んで仕事を進めます。そのため、個人の業務遂行能力や自己研鑽への意欲に加え、プロジェクト内での役割や貢献度、さらにチーム内での協調性も重要な評価項目となります。
評価基準 | 評価項目 | 評価内容 |
---|---|---|
業績基準 | 業務目標達成度 | プロジェクトで自身に求められる性能基準・コストを達成できたか |
作業効率 | 提示された納期を守りつつ、品質を維持できた割合が80%以上か | |
能力基準 | リスク管理能力 | リスク対策を実行でき、問題発生時にマニュアルに沿って適切に対処できるか |
技術知識の応用力 | 業務に必要な専門知識が備わっており、現場で応用できるか | |
情意基準 | 協調性 | チームや他部署のメンバーと連携し、協力して開発する意欲があるか |
主体性 | 自発的に改善提案を行い開発効率化に貢献しようとしているかか |
営業職のテンプレート・記入例
営業職は、売上や契約数といった定量的な業績が評価の基準として用いられやすく、客観的に評価しやすい職種です。業績基準として売上金額の達成度や契約獲得数などを主な指標とし、さらに定性的な要素としてリスク管理や協調性も評価に含めることで、総合的なパフォーマンスが測れます。
評価基準 | 評価項目 | 評価内容 |
---|---|---|
業績基準 | 売上目標達成度 | 四半期目標に対し、売上金額の達成率は何%か |
契約獲得数 | 契約獲得目標をクリアしたか | |
能力基準 | リスク管理能力 | リスク対策を講じ、クレーム発生時でもスムーズに対処できるか |
プレゼンテーション力 | 商品について、顧客にわかりやすく正確に説明ができるか | |
情意基準 | 協調性 | 他のメンバーや他部署と適宜連携して業務を進めようとしているか |
主体性 | 自ら積極的に新規顧客のリサーチやアプローチ方法の改善に取り組んでいるか |
製造職のテンプレート・記入例
製造職は製造工程が分業化されていることが多く、各工程における個人のスキルや作業の確実さが評価の基準となります。個人差が現れやすい職種であり、慣れている作業の改善提案や、他の同僚へのサポート意識も評価に含めると効果的です。単純な作業の正確さだけでなく「改善意識や安全意識があるかどうか」も評価ポイントです。
評価基準 | 評価項目 | 評価内容 |
---|---|---|
業績基準 | 作業効率 | 所定の作業工程を定められた時間内で完了し、生産計画通りに進行できたか |
作業正確性 | マニュアルに従っており、不良率が1%未満であるか | |
能力基準 | プロセス理解 | 製造工程の全体像を理解し、各プロセスの役割を把握しているか |
知識・技術応用力 | 作業に必要な技術や知識を応用し、円滑に作業を進められるか | |
情意基準 | 積極性 | 自ら同僚の作業を補佐し、チームの生産性向上に貢献しているか |
安全意識 | 作業中の安全ルールや手順を遵守し、怪我や事故の防止に努めているか |
販売職のテンプレート・記入例
販売職は小売業において顧客対応がメインの業務となるため、接客態度やコミュニケーションスキルを重視した評価項目を設定するのが一般的です。また、売上目標の達成度だけでなく、売り場の環境改善や顧客対応力など、店舗運営への貢献度も評価のポイントになります。接客時の対応やクレーム処理など、柔軟性も評価しましょう。
評価基準 | 評価項目 | 評価内容 |
---|---|---|
業績基準 | 売上達成度 | 店舗の売上目標をどの程度達成したか |
顧客満足度向上 | 顧客アンケートによる満足度90%を達成したか | |
能力基準 | 商品知識 | 取り扱う商品について深い理解があるか |
クレーム対応力 | クレームが発生した際に冷静に対応し、顧客の不満を適切に解消できるか | |
情意基準 | 店舗貢献度 | 店舗の売り場作りや商品陳列に積極的に関わり、魅力的な売り場作りに貢献しているか |
向上心 | 接客スキルや商品について積極的に学んでいるか |
介護職のテンプレート・記入例
介護職では、利用者との信頼関係の構築や、安全かつ質の高いケアの提供が求められるため、業務を確実に遂行し、利用者の満足度向上につながる評価項目を設けることが重要です。また、離職率が高い職種であるため、経験が浅いスタッフの技術向上を支援するような評価や、過剰な介護にならないバランス感覚も求められます。
評価基準 | 評価項目 | 評価内容 |
---|---|---|
業績基準 | 業務の正確性 | 日常的なケアや支援業務を正確に行い、ミス発生率は基準内だったか |
衛生管理 | 衛生マニュアルに従い、施設や居室の清掃や消毒、利用者の衛生管理を適切に行ったか | |
能力基準 | コミュニケーションスキル | 利用者やその家族、またチームメンバーと円滑にコミュニケーションを取れるか |
介助技術 | 食事や排泄、入浴などの介助技術が習熟しており、後輩に指導できるレベルか | |
情意基準 | 協調性 | 職場内での円滑なコミュニケーションに努め、他のスタッフと連携できているか |
感情コントロール | 困難な場面やストレスの多い場面でも感情を適切にコントロールし、周囲に安心感を与えているか |
ここまで職種別の人事評価シートの記入例を紹介してきましたが、これはあくまで参考例であり、社内で人事評価シートを作成する際は社内状況を踏まえて最適化する必要があります。
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人事評価シートを設計する際のポイント

ここまで人事評価シートで重要な評価基準や記入例を紹介してきましたが、人事評価シートを設計する際は、どのような点に気をつければよいのでしょうか。ここでは主なポイントを3つ紹介します。
業績達成に重要な項目を優先する
人事評価シートでは、組織の目標やミッションに直結する項目を優先的に盛り込みましょう。
「なんとなく重要そうだから」「他の会社では、このような項目を盛り込んでいるから」という理由ではなく、自社の業績目標を整理して、それを達成するために必要な項目を逆算することが重要です。これは「KGI(最終目標)に対するKPI(中間目標)」に近い考え方とも言えます。
例えば営業部門であれば、組織目標が「受注金額○○億円」であり、その受注額を達成するためには各メンバーの「成約件数」「受注単価」の向上が必要で、さらに掘り下げると「商談件数」「新規顧客とのコンタクト回数」といった日々の具体的なアクションが重要であると分解できます。このような観点から、人事評価シートでは「コミュニケーションスキル」「アクションへの意欲・積極性」といった項目を取り入れるという方法です。
ただし、会社によっては「既存顧客へのメール回数」が重要ファクターというケースも考えられ、その場合はメールの頻度やその質を高めるような要因が重要な評価項目になるでしょう。
評価項目・基準・方法に整合性を持たせる
人事評価シートでは、重要な評価項目を設定したうえで、評価する際の基準や評価方法まで矛盾なく整理することが大切です。
よくあるケースとしては、「シートの評価項目欄では重要な要素を捉えている一方で、評価方法欄がその意図を正しく反映していない」ということがあり、これでは人事評価シートとして機能しにくくなります。例えばカスタマーサポート部門で「顧客満足度を高める」という意図で人事評価項目欄に「コミュニケーションの質」という項目を設定しているにもかかわらず、評価方法欄では質よりも「メール返信のスピード」が重視されている場合は、「レスポンスは早いが丁寧さに欠ける」という結果につながりかねません。
こういった矛盾を避けるためには、人事評価シートの評価項目部分から、現場のマネージャーが行う評価方法の部分までの整合性を保つ必要があります。
テンプレートを活用しつつカスタマイズする
人事評価シートを設計・作成する際は、インターネット上に公開されているテンプレートをサンプルとして、自社に合う形に整えていくというやり方もあります。
テンプレートを活用するメリットとしては、「自社だけでは気がつかなかった評価項目や評価方法を知ることができる」「洗練された人事評価シートのフォーマットが手早く手に入る」といった点が挙げられます。
ただし注意点として、人事評価の方法や最適なシートの形は会社の状況によって全く異なるものです。テンプレートを活用すること自体は問題ありませんが、それはあくまで参考として、自社の状況を踏まえて最適な形に整えることが大切です。
まとめ

人事評価シートは書き方のポイントを押さえて作成することで、社員の昇給や昇進にかかわる評価の基準を明確化でき、正確かつ公平な人事評価が行えます。また会社側のビジョンや理想の人材像を伝えることで、企業文化の浸透や社員育成・キャリア形成につなげやすくなります。
人事評価において評価基準を策定する際は、「業績」「能力」「情意」という3つの評価基準をもとに掘り下げるとスムーズです。人事評価シートに落とし込む際は既存のテンプレートを活用して自社の状況に合わせてカスタマイズすると効率的に作成できます。
人事ZINEでは、人事・採用担当者の方に向けて「【サンプル】採用基準策定のための現場ヒアリングシート(記入例付き)」をご用意しております。Excel形式のテンプレートに記入例もついているので、すぐにご活用いただけます。またハイパフォーマー人材の特徴の抽出にも便利です。人事評価基準を策定する際はぜひご活用ください。
