新入社員研修とは?目的や効果的な設計方法・カリキュラム例・成功ポイントを解説

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採用担当者の中には、毎年の新入社員教育に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。現場で必要なスキルや知識、心構えを身につけ、少しでも早く戦力となってもらうためには、新入社員研修の内容や実施方法を工夫する必要があります。

とはいえ、新入社員研修の重要性はわかっていても、毎年同じプログラムの繰り返しになっている企業も少なくないでしょう。新入社員研修では、各社員のスキルレベルや特性を把握し、身につけてもらいたいスキルや経験に合わせて適切なプログラムや形式を取り入れることが大切です。

今回は、新入社員研修の目的やメリット・デメリット、プログラム設計の流れや注意点、おすすめのカリキュラムなどを紹介します。

人事ZINEでは、新入社員研修を企画する際に知っておきたいポイントや目標の設定方法、そのまま使えるワークフレームなどをまとめた資料「活躍する若手が育つ!新入社員研修のつくり方」をご用意しました。ぜひこちらからダウンロードして、新入社員育成のためにご活用ください。

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目次

新入社員研修とは

新入社員研修とは

新入社員研修とは、新しく入社する社員に対し、企業のカルチャーや働くうえでの心構えを伝え、仕事で必要なスキルなどを身につけてもらうためのものです。社会人経験のない新卒者だけでなく、ある程度の社会経験がある中途採用者に対しても行われます。

新入社員に実務の現場で戦力として活躍してもらうには、まず最低限の知識・スキルを身につけることが前提となります。新入社員研修を実施するタイミングは特に決まっておらず、入社後すぐに行う企業もあれば、入社前に教材を提供する企業もあります。

新入社員研修を実施する目的

新入社員研修を実施する目的

新入社員研修を設計する際はまず、研修を行う目的を把握し、そのために必要なことを見定めることが重要です。ここでは新入社員研修の目的について具体的に解説します。

学生から社会人への意識改革

新卒者の場合、最も重要となる目的は「学生から社会人へのマインドチェンジ」です。企業の一員となり、社会に関わっていく以上、他者への配慮やビジネスパーソンとしての考え方、仕事に対する姿勢などを学ぶ必要があります。加えて、周囲と信頼関係を構築し、業務を円滑に進めるためのビジネスマナーなども身につけなくてはなりません。

しかし、「アルバイトやインターンの経験があるから大丈夫」など、本人が意識改革の必要性を感じていないケースもあります。チームの一員であることを自覚してもらうためにも、まずは意識の変化につなげることが重要です。

企業理念や事業内容への理解

新入社員研修には、企業の理念やビジョン、価値観などを理解し、企業文化に適応してもらうためのプログラムも取り入れましょう。企業が誕生した経緯や製品・サービスを開発する際に根幹となる考え方、経営陣の思いなどを知ることは、企業の一員として働くにあたって必要不可欠です。

また、会社が展開している事業分野や取り扱っている製品・サービスについて紹介し、全体像を把握してもらうことも大切です。新入社員が自社の製品・サービスへの理解を深め、愛着を持つことは、経営に必ずプラスに働きます。

基礎的知識と業務遂行能力の獲得

新入社員がスムーズに業務に取りかかれるよう、仕事をするにあたって必要な基礎知識やスキルを身につけてもらうことも大切です。具体的には、身だしなみの整え方や電話の取り方といったビジネスマナー、PCやソフトウェアを扱うスキル、仕事で使う機材の使用方法などが該当します。

特にデジタルが当たり前の世代は、郵便物の出し方など、昔ながらの事務作業に関する知識がないケースも珍しくありません。そのため、研修を行う側には、時代に合わせて内容を変化させていくことも求められます。

新入社員研修を内製で行うメリット

新入社員研修を内製で行うメリット

新入社員研修は、専門の研修会社に外注する企業もあれば、内製でまかなう企業も存在します。ここでは、新入社員研修を内製で行うメリットを3項目に分けて解説します。

自社に適した研修にカスタマイズできる

新入社員研修を内製化する最大のメリットは、自社にフィットした内容にできることです。外部の会社に一括で依頼すれば手間がかからず便利ですが、自社の社風や業務内容、新入社員のレベルに合ったカリキュラムにならない場合もあります。

例えばビジネスマナーは、社会に出て働く全ての人にとって重要なものですが、求められるレベルや最適解は企業や職場によって少しずつ異なります。研修で学んだ内容と実際の現場でズレがあれば、新入社員に戸惑いを感じさせてしまいかねません。内製であれば研修内容と自社の現状とのミスマッチが起こりにくくなります。

費用を抑えられる

内製化することで、研修の外部委託費用を抑えられます。30名程度の新入社員に対して1~2週間かけて研修を実施すると、200万を超える費用がかかることもあります。

研修内容を削れば費用を抑えることも可能ですが、スキルが十分に身につかないまま研修が終わってしまっては、元も子もありません。もちろん、内製での研修も無料というわけではなく、人件費などのコストが発生します。しかし外注時と違い、まとまった出費にはなりません。

人材育成に活用できる

新入社員研修で社内の人間が講師を担当する場合は、講師役を務める社員のスキルアップにもつながります。

例えばワークショップを行う際は、ファシリテーターと呼ばれる進行役が必要です。ファシリテーターには対話スキルや論点を整理するスキルが要求されるため、研修を内製化することで、社内の人間にファシリテーターとしての経験を積んでもらえます。さらにレクチャーするために日々の業務を見返したり、資料を作成したりすることも、仕事に対する理解を深めるきっかけになるでしょう。

新入社員研修を内製で行うデメリット・注意点

新入社員研修を内製で行うデメリット・注意点

新入社員研修の内製化は、決してよいことばかりではありません。ここでは、新入社員研修を内製化するデメリットや注意点を解説します。

社員の負担が増大する

新入社員研修を内製化すると、研修を担当する社員の負担が増え、業務に支障をきたすおそれがあります。講師を社員に依頼すれば、資料を用意したり登壇したりする間は本来の業務が滞ることになり、それがストレスにつながる可能性もあるでしょう。

新入社員研修を社員が行うのであれば、業務的な負担だけでなく、心理的な負担についても配慮する必要があります。また、特定の社員にのみ負担がかからないよう、研修業務の分担についても検討しましょう。

研修の質が安定しにくい

新入社員研修を外注する場合、その道に精通したプロの講師に担当してもらえるため、ある程度の質は担保されます。

一方で内製化する場合は、自社にあるノウハウをベースに研修を実施するため、クオリティの面でどうしても不安が出てきます。そもそも講師を務める社員も、研修のプロではありません。伝え方や要点のまとめ方など、どうしても専門の講師に劣る部分も出てくるでしょう。さらに「教え方が上手な社員に任せていたら退職してしまった」など、属人化による問題も発生します。

機会損失が起こる

機会損失とは、本来であれば得られるはずだった利益を失うことです。内製化すると社内のリソースを使うことになるため、本来の業務に使えるリソースが減り、多かれ少なかれ機会損失が発生します。

例えば営業部の社員が研修の講師を務めるとなれば、準備や振り返りに使う時間や研修当日には営業活動ができません。本来の業務への影響を最小限にとどめるには、別のスタッフがカバーするなどの工夫が必要になるでしょう。

新入社員研修のプログラム設計の流れ

新入社員研修のプログラム設計の流れ

自社で新入社員研修を実施する場合、どのような流れで導入を進めればよいのでしょうか。研修プログラムを設計する際の基本的な流れを解説します。

新入社員のレベルを把握する

同じ新入社員でも、スキルレベルや予備知識には個人差があります。研修を効果的なものにするためにも、まずは新入社員のレベル感や特性を把握しましょう。そのうえで、できる限り、近年の新入社員やその年の新入社員に合ったカリキュラムを用意します。

新入社員の能力値や得意・不得意領域を明確にすることは、今後の目標設定や研修後のフィードバックでも重要です。指導する上司や先輩社員だけでなく、新入社員自身が自分の立ち位置を正確に把握できれば、目標達成のために必要なスキルや経験が明確になり、さらなる成長促進につながります。

現場へのヒアリングを行う

研修内容は、人事部や経営層のみで決定するのではなく、新入社員が配属される部署やチームの社員へヒアリングしたうえで決定しましょう。経営方針や事業目標をもとに人事戦略を考える経営層と、実際に業務を遂行する現場との間で、求める人材像によく食い違いが発生するためです。

現場のニーズに合わない研修を行っても、新入社員が実業務に必要なスキルや知識を身につけられない可能性があります。現場社員との目線を合わせを確実に行っておくと、ニーズと供給のミスマッチが減り、現場でのパフォーマンス向上につながります。

研修のゴールを設定する

「研修を通じて新入社員にどのようなスキルや知識を獲得してほしいのか」「どのような人材に成長してほしいのか」など、研修後に目指すべきゴールや目標を設定します。ゴールを設定すると、「ゴールに向けてどのような教育を実施するべきか」という過程が明確になり、効果的な研修プログラムの設計につながります。

また、新入社員にとっても何を目的に研修に取り組めばよいのかが明確になるため、研修に対する目的意識やモチベーションの向上も期待できるでしょう。

具体的なプログラムを策定する

ゴールを設定したら、その達成に向けて具体的なプログラムを策定します。

研修のテーマや内容だけでなく、OJT・Off-JTといった研修方法の選定、実施期間やスケジュール、講義などの集団学習と個別指導の時間配分など、細かな実施方法についても各部署とすり合わせが必要です。

プログラムの詳細が決定したら、会場確保や研修を担当する講師への依頼といったオペレーションの具体的な計画に移ります。

研修の評価・フォローの仕組みを構築する

新入社員研修は、実施して終わりではなく、「新入社員が設定したゴールに到達できたか」「現場が求めるスキルレベルに達したか」など、効果の振り返りまでを一連のプロセスとして実施することが大切です。研修の効果を振り返ると、次年度からの研修内容をブラッシュアップできるだけでなく、これから現場で実務に移る新入社員のフォローや成長サポートにも役立ちます。

研修を評価する際は、最終的な目標だけでなく、各プロセスで目標を設定して効果検証を行うと、ボトルネックを把握しやすく、より改善点が明確になります。

新入社員研修におすすめのカリキュラム

新入社員研修におすすめのカリキュラム

新入社員研修を自社で再設計する場合、どのような内容にすればよいか悩んでしまう担当者も多いでしょう。ここでは、新入社員研修におすすめのカリキュラムについて、内容の例や効果などを紹介します。

ビジネス基礎研修

社会人としての基礎的なビジネススキルを教えるカリキュラムは、新入社員研修の代表的な内容です。ビジネスメールや書類の作成方法、プレゼンテーションスキル、PC操作など、ビジネスのあらゆる場面で必要になる基礎的なスキルや知識を身につけてもらいます。

社会経験のない新卒社員は、社会人として最低限のスキルも身についていないケースがほとんどです。研修において汎用的なスキルを伝えておくと、業務の遂行がスムーズになるだけでなく、本人が安心して業務を進められます。

ビジネスマナー研修

ビジネススキルと同様に、社会人として基本的なマナーや行動規範を学ぶビジネスマナー研修も人気があります。名刺交換や電話対応、来客対応、正しい敬語や立ち振る舞い、身だしなみなど、マナーの基本を座学で学んだ後に、ロールプレイングを取り入れると効果的です。

ビジネスマナーを理解し、社会人として適切な行動をとることは、良好な人間関係作りの基本です。社外だけでなく、社内メンバーとも信頼関係を築き、円滑なコミュニケーションをとれるようになります。

モチベーション・マインドセット研修

新卒の社員に対しては、これから社会人として働くためのマインドセットを行い、仕事に対する向き合い方を考えてもらう研修も効果的です。新入社員が自己分析を行って自分自身への理解を深め、業務に対する意欲や主体性を高めてもらいます。

就労経験のない新卒入社の社員は、これから始まる社会人としての生活に順応し、社会人としての自覚を持つ必要があります。研修によって仕事との向き合い方や、自分自身のモチベーションを高める方法を知っておくと、仕事の質や生産性向上につながるでしょう。

IT・DX研修

現代社会で必須となっているIT全般の知識を身につける研修です。表計算ツールや文章作成ツールの操作方法、社内システムの利用方法といった基本的なパソコンスキルだけでなく、データ分析やAIの活用、情報セキュリティといったIT全般の知識レベルを高めてもらいます。

デジタル化が進む現代社会において、ITやDXの知識とスキルはどのような業界でも必要不可欠です。研修によって社内の知識レベルが向上すると、業務効率化や新たなビジネスの創出が期待できます。

業界・専門知識研修

自社の業界や事業分野、各業務に必要な専門知識を身につけることも大切です。具体的には、業界に関する基本的な知識にはじまり、市場トレンドや競合他社などの業界動向、業務で使用する知識や技術などをセミナー形式で講義します。

業界に関する知識や専門的な技術は、新入社員が現場で戦力となるために必要なものです。自社や業界全体のビジネス構造を深く理解していれば、取引先に自社の強みを正確にアピールできます。

会計・財務研修

直接会計や財務に関わるポジションでなくても、基本的な会計知識が身についていると、自社や競合の財務状況を正確に理解し、将来的には的確なビジネス判断を下せるようになります。研修では、財務諸表の読み方やコスト管理の手法、予算策定の基礎などを解説するとよいでしょう。

特に、新卒社員の多くは、企業会計や財務に関する知識がほとんどありません。早い段階から会計・財務が理解できると、収益やコストに対する感覚が身につき、利益向上や財務健全性の維持に貢献できるようになります。

ダイバーシティ・CSR研修

多様性を尊重する重要性や、企業の社会的責任について理解を深める研修です。ダイバーシティやCSRの意味など基礎的な内容にはじまり、その重要性や社会的意義、背景にある社会情勢などを学んでもらいます。

企業がダイバーシティやCSRを推進するには、これらの価値観を尊重する企業文化が必要です。新入社員が企業の社会的責任を理解し、責任を果たそうとする企業文化が形成されると、企業の社会的評価や社員エンゲージメントの向上などが期待できます。

法務・コンプライアンス研修

ビジネスにおける法的な知識の基礎を学び、法律遵守の重要性を教える研修です。社会人が知っておくべき法令や社会規範、具体的な違反事例とその対処法、ハラスメント、SNSの使い方などについて理解を深めます。

新入社員の中には、「コンプライアンス」という言葉の意味をあいまいに理解しており、具体的にどのような行為が違反になるのかイメージできていない人もいるでしょう。研修を通して法律の基礎を学ぶと、違反行為の防止や企業の信頼性維持につながります。

メンタルヘルス研修

メンタルヘルスの重要性や、自らの精神状態をすこやかに保つためのセルフケアやストレス管理について学ぶ研修です。

組織に所属して長く働き続けるには、体調管理と同様に精神面の安定を図ることも重要です。加えて職場の人間関係を良好に保つには、他者にストレスを与えないコミュニケーション方法も学ばなくてはなりません。メンタルヘルスへの意識を高め、ストレスへの対処法を身につけることは、新入社員本人にとっても会社にとってもプラスとなります。

こちらのページからは、新入社員が育つ研修の組み立て方や研修設計のポイント、すぐに使えるフレームワークなどをまとめた資料をダウンロードしていただけます。ぜひご活用ください。

活躍する若手が育つ!新入社員研修のつくり方
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新入社員研修で効果的な研修形式

新入社員研修で効果的な研修形式

研修形式によっても、新入社員に与える効果は異なります。ここでは、新入社員研修で用いられる代表的な手法を紹介します。

グループワーク

グループワークでは、3〜6人程度の少人数グループに分かれて課題に取り組みます。共通のテーマについて議論するディスカッション形式や、最後に先輩社員や上司を相手に結論を発表するプレゼン形式などがあり、学んでほしいスキルによって適した形式を選択することが重要です。

新入社員同士の交流が深まる効果もあり、同期との関係構築やコミュニケーションスキルの向上、チームで協業するスキルの習得、プレゼンテーションスキルの向上などに適しています。

ロールプレイング

ロールプレイングは、実際の業務を想定して受講者が役割を演じ、実務での対応や課題解決を学ぶ方法です。「店員」と「来店客」に分かれて接客を実演したり、「営業社員」と「取引先」に分かれて自社製品の提案を行ったりなど、接客や営業におけるスキルを身につけるのに適しています。

座学で学んだ知識を実際の業務で実践に移せるため、場面に応じた対応力や問題解決力を伸ばせます。また、当事者意識を養う効果も期待できるでしょう。

レクリエーション

レクリエーションでは、新入社員同士でゲームや謎解き、チーム対抗戦、自己紹介・他己紹介(ある人物の紹介を本人以外がすること)などを行います。レクリエーションは、本来「気晴らし」や「休養」という意味であり、参加者の休息を目的に取り入れる形式です。

プログラムを楽しみながらチームワークや団結力を高められるだけでなく、参加者の緊張をほぐして集中力を維持する効果が期待できます。そのため、長時間の研修の合間に取り入れるとより効果的です。

ケーススタディ

ケーススタディは、実際の業務で起こりがちな出来事を模擬的に再現し、その時にとるべき対応や解決策を考える研修形式です。ロールプレイングでは役割に分かれて演技しながら実務を学びますが、ケーススタディでは座学で対応や解決策を検討します。

ビジネスシーンでよく経験する事例を模擬体験することで、実業務に対する理解が深まり、問題解決能力や判断力を養える手法です。他にも、参加者同士のディスカッションを通じて、コミュニケーションスキルやチームワークが向上する効果も期待できます。

OJT

OJT(On-the-Job Training)では、上司や先輩社員の指導を受けながら実業務に着手し、実践的なスキルや知識を身につけます。単に業務を実践するだけでなく、指導を担当するトレーナーや上司が新入社員と一緒に目標を立て、そこに向けて計画的に指導を進行し、定期的な振り返りやフォローアップの機会を設けることが重要です。

業務に必要な技術や経験が身につくだけでなく、現場の雰囲気や社内ルールを理解でき、早期に戦力人材を育成するのに適しています。

新入社員研修における注意点

新入社員研修における注意点

さまざまな形式がある新入社員研修ですが、どの形式を選ぶにしても実施する際にはいくつか注意しなくてはならない点があります。注意するポイントを理解し、予期せぬトラブルの発生を防ぎましょう。

労働時間を適切に管理する

研修といえども、新入社員に参加を義務付けている場合には「労働時間」とみなされます。給与に反映させる必要があるため、研修に参加した時間を正確に管理するだけでなく、長時間労働にならないよう注意しなくてはなりません。

プログラムが数日にわたり、自主学習や課題への取り組みが発生するような場合には、どこまでを業務時間とするか事前に取り決めておくとよいでしょう。

炎上や訴訟に気を付ける

社会人としての自覚や意識を芽生えさせる過程では、ある程度の厳しさが必要なケースもあるでしょう。しかし、一定のレベルを超えると、炎上や訴訟につながる可能性があります。過度な激励や身体的・精神的に過酷な内容など、社会通念と照らし合わせて問題があるようなカリキュラムや指導は避けてください。

よくあるトラブルが、研修中のセクハラやパワハラといったハラスメントです。新入社員は基本的に弱い立場にあるため、研修する側からの誘いを断れなかったり、苦痛を感じても抵抗できなかったりします。一例として、研修中に新入社員の連絡先を聞いたり、プライベートについて深掘りしたりすることは避けるべきです。

宿泊場所の選び方にも配慮する

研修が数日にわたり、宿泊を伴う場合には、宿泊先についてもよく検討してください。研修での宿泊場所としては、ホテルや研修室のあるセミナーハウス、自社の研修施設などが一般的ですが、現代の新入社員は個室に慣れており、できれば相部屋を避けたいところです。一日の研修の疲れをゆっくり癒せるよう、リラックスできる環境を選びましょう。

加えて、公共交通機関でアクセスできることも重要です。人里離れた施設は研修に集中できるというメリットがありますが、新入社員にマイナスイメージを持たれることもあります。利便性を考えれば、徒歩圏内にコンビニなどがある施設が望ましいでしょう。

さらにPC関連の研修を行う場合、Wi-Fiは必須です。電気ポットや電子レンジが自由に使えれば、研修の合間の自由時間を快適に過ごすのに役立ちます。

柔軟な評価軸を設定する

新入社員研修で細かく教えてもらってから仕事をしたいというのは、受け身の姿勢であるとも言えます。企業によってはそのような受け身タイプの学生を望まないと考える場合もあるでしょう。

とはいえ、受け身タイプだからといって必ずしも「やる気がない」「スキルが不足している」というわけではありません。受け身タイプの人は、「失敗したくない」「与えられた職務をちゃんと遂行したい」と考えている可能性があります。つまり、慎重で責任感があるタイプだと理解することもできるのです。

受け身の要素はあるものの、企業に合った資質、高いスキル・技術、その他何らかの強みを持っていることは十分にありえます。そのような場合、研修などのフォロー次第でしっかりと力を発揮してくれるという点も考慮しておきたいところです。

新入社員研修で高い効果を得るための成功ポイント

新入社員研修で高い効果を得るための成功ポイント

近年では、就職活動での企業選びにおいて「新人に対する研修や教育の充実度」を判断基準の1つにしている学生が増加している傾向にあります。また、「まずは現場で働き、先輩たちの姿を見て仕事を覚えていく」という昔ながらのスタイルには抵抗がある学生も多いようです。

そのため、採用活動において「新入社員研修や教育を重視している」という企業姿勢は強いアピールポイントになります。学生に対して研修の目的や独り立ちするまでのカリキュラムを明確に説明できるよう、ポイントを押さえてカリキュラムや研修形式を検討しましょう。

適切な難易度・内容の課題を設定する

研修の効果を高めたいのであれば、目標や新入社員の能力に見合った難易度設定が非常に重要です。難易度が高すぎても目標に到達できず本人のやる気を削いでしまいますし、低すぎてもやりがいを感じられずモチベーション低下につながります。

最初から完璧な難易度や課題を設定しようとせず、定期的に振り返りやフィードバックの機会を設けて、柔軟に難易度を調整しましょう。

個性に合わせた新入社員研修を設計する

受け身タイプでも本来の能力を発揮できるような人材に育てるためにはやはり新入社員研修を工夫することが大切です。もちろん「いろいろなことに挑戦させてくれる環境で仕事がしたい」「早い段階で、どんどん活躍したい」という意欲的で能動的な学生も多くいるため、企業側としてはその両方の人材をいかに育てるかが重要です。

「今の若手が考えていること」「企業に求めているもの」を汲み取りながら、仕事で活躍できる人材に育てていくためには、個性に合わせた柔軟な取り組みも大切です。最初は試行錯誤かもしれませんが、彼ら彼女らを戦力化する方法を研究し、研修内容や新人の教育カリキュラムを改善していくことが必要になります。

採用計画から新入社員研修までを一本軸に考える

人事部の中でも採用や研修などに役割が分担されるため、それぞれが独立して動いてしまうことがあります。しかし、採用計画の段階から人材育成を一本軸に考えていくと採用と新入社員研修を成功に導きやすくなります。

内定者研修や新入社員研修が充実していれば、求人を出す際のアピール材料になり、安心して入社してもらうことができます。一方、採用担当者が「自社の研修や育成ではどのような人材が成長しやすいか」という傾向を踏まえた上で新人を採用すれば、新入社員研修の担当者は人材育成を効果的かつスムーズに実施できるようになります。

そこで採用担当者と研修担当者がお互いにフィードバックすることを常に行うようにしてください。

企業としては将来的に活躍できる人材になってくれればその採用は成功です。求人、採用、研修を一本軸と考えて分析を繰り返すことで、どのような人材をどのように育成すれば、自社で活躍できるように成長させることができるのかが見えてきます。

常にアンテナを張って学生が考えていることと自社が求めていることの共通点を見出すとともに、採用計画と新入社員を1つのパッケージとして考えるのが新卒採用人事にとって重要だと言えます。

ふり返り・効果検証を行う

新入社員研修が終了したら、ふり返りを行うことが大切です。新入社員の成長度合いを測定し、期待した結果が得られているかを確認することで、研修方法の改善につながります

そのためには、配属先でのOJTの状況や教育担当社員の意見も確認しましょう。現場でどの程度活躍できているのかを、新入社員研修の評価基準とします。

加えて新入社員にも研修後の記録を付けてもらい、報告書やアンケートといった形で提出してもらいましょう。効果的な研修とそうでない研修を判断するのに役立ちます。最後に、成長した新入社員とそうではない新入社員の結果と、適性検査の結果などと照らし合わせた分析も行いましょう。そうすることで、自社の求める人物像を見直せます。

新入社員研修について企業側が検討しておきたいその他ポイント

新入社員研修について企業側が検討しておきたいその他ポイント

これまで説明したもの以外に、研修を実施する前に企業が検討すべきポイントを紹介します。

助成金制度の活用

新入社員研修では国や自治体の助成・補助金が利用できる場合があります。例えば厚生労働省の「人材開発支援助成金」では、雇用する正社員について、条件を満たした訓練を行う場合に助成金を活用できるのです。

また東京都では「社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)」を実施しています。対象は都内の中小企業で、短時間の職業訓練を行う際に助成金が受給可能です。

助成金については受けられる要件が細かく決まっているので、事前によく確認して、活用を検討してみてください。

外部の研修講師への依頼

内製だけでは十分な新入社員研修が行えない場合や、より高いレベルの研修を行いたい場合には、研修のプロに外注する方法もあります。

メリットは専門的な教育を行える点です。教え方も優れているため、新入社員の成長度が早まる可能性があります。また、新入社員一人ひとりへの評価や分析までがパッケージになっていることも多く、人事担当者の業務負担を軽減する効果も期待できるでしょう。

一方、コストや柔軟性といった点でデメリットもあります。コストについては研修対象者一人につき数十万円かかることもあります。また、カリキュラムは途中で変更したくてもできない場合がある点にも注意が必要です。外注する場合にはメリットだけでなくデメリットも含めよく検討する必要があります。

まとめ

まとめ

新入社員研修のうち、特に重視される目的は、学生から社会人へのマインドチェンジに始まり、配属後に実務をこなすための土台作りです。学生の傾向を読み、内定者をフォローし、入社後の成長や活躍にも立ち会い、新入社員に向き合い続けるプロセスが大切と言えます。

新入社員は、これから様々な知識・経験を得て自社で活躍していく企業の大切な財産です。新入社員研修を通じて、採用と育成両方の観点で人事戦略を最適化していきましょう。

人事ZINEでは、「活躍する若手が育つ!新入社員研修のつくり方」という資料をご用意しております。新入社員研修を内製で行う際に知っておきたいポイントや目標の設定方法、研修コンテンツの例などをまとめております。ぜひこちらからダウンロードして、新入社員育成のためにご活用ください。

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人事ZINE 編集部

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