新入社員研修プログラムの作り方・例・実施形式の種類を解説
新入社員研修は、新入社員に必要な知識やスキルを身につけてもらうための重要な機会です。特に社会人経験のない新卒社員の場合、単に知識を学ぶだけではなく、研修を通じて社会人としての自覚を持ってもらうという意味合いもあります。その一方で、研修の必要性や重要性を認識しつつも何をどのように教えればよいのか分からず、プログラム作りに悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。
今回は、新入社員研修を実施する目的やプログラムの作り方を解説しつつ、具体的なプログラム例や研修を行ううえで重要なポイントを紹介します。参考にしてください。
また、人材育成にプラスになる新入社員研修の設計方法やすぐに使えるフレームワークなどを分かりやすくまとめた資料もご用意しました。ぜひダウンロードしてご覧ください。
目次
新入社員研修を実施する目的
新入社員研修を実施する大きな目的は、自社で働くために必要な知識やスキルを習得してもらうことです。実務に入る前に基礎的な知識を身につけてもらい、現場に配属されたのちに業務をスムーズに開始できるようにすることだとも言えます。一般的には、新入社員全員に共通の内容をレクチャーします。
特に社会人経験のない新卒の場合、社会人として求められるビジネスマナーやOA機器の使い方などを知らないことが少なくありません。研修なしで実務に入ると、本人が困ったり戸惑ったりするだけでなく、フォローにリソースをとられるなど、業務そのものにも影響が出る可能性があります。
新入社員研修を行う目的や、具体的な目的の設定方法については、こちらの記事も合わせてご覧ください。
新入社員研修の主な目標・狙いの具体例
新入社員研修を行ううえで重要なのが、具体的な目標や狙いを定めることです。「何を身につけてもらうのか」「研修が終了した時点でどのような状態になっていてもらいたいか」を決めることは、研修のカリキュラムを作るために欠かせません。新入社員研修の目的や狙いの具体例について解説します。
社会人としての意識形成
初めて社会に出る新卒社員の場合、まずは社会人としてどうあるべきかを教えることが大切です。社会人になると、背負うべき責任や目標設定、周囲とのコミュニケーションの取り方などが学生時代と大きく変化します。しかし社会人経験がないゆえに、会社勤めをアルバイトの延長のようにとらえている社員も珍しくありません。まずは、社会を構成する一員となる自覚を持てるよう、意識形成に重点を置いた研修が必要になってきます。
ビジネスマナーなど基本スキルの習得
社会人に求められる一般常識やマナー、ビジネスに必須の基本的スキルなどを習得してもらうことも、新入社員研修が果たす重要な役割の1つです。具体的な内容は、身だしなみの整え方や時と場合に応じた服装の選び方、あいさつの仕方、電話応対や名刺交換など多岐にわたります。
またSNSが普及し、個人がさまざまな情報を発信できる昨今、情報の扱い方に関する研修の重要性も高まっています。情報漏えいやコンプライアンス違反などを未然に防ぐためにも、新入社員研修の段階でレクチャーすることが大切です。
社内ルール・企業風土の理解促進
新入社員には、企業風土や経営理念への理解を深め、企業独自のルールを知ってもらう必要があります。組織で働くには、自分の所属部署や担当業務のみについて詳しければよいというものではありません。「企業として何を目指しているのか」「どういった使命を持っているのか」を事業に関わる全員で共有し、チームとなって動くことが求められます。
新入社員研修では、創業の経緯や経営陣の考えなどを伝える機会を設けるとよいでしょう。また、福利厚生の利用方法や有給休暇の申請方法といった社内ルールを周知させることも重要です。
新入社員同士の交流
新入社員が一堂に会する新入社員研修は、新入社員同士が交流を持つきっかけにもなります。新しい環境で働き始めた新入社員は、多かれ少なかれ不安や疑問を抱えているものです。そのような時、近い立場の同期と助け合えることは、大きなプラスとなります。
新入社員同士の交流を促進するには、新入社員に任せるのではなく、研修する側で環境を用意することが大切です。コミュニケーションが必要な形式の研修や簡単なゲームなどを取り入れ、自然に交流が生まれる工夫をしましょう。
新入社員研修プログラムの作り方・手順
新入社員研修を行う側にとって重要な課題となるのが、研修のプログラム作りです。プログラムが適切でなければ、効果にはつながりにくいでしょう。ここでは、研修プログラムをどのように作っていけばよいのかを解説します。
研修の目的・内容を検討する
まずは研修を行う目的を明確にし、その目的を達成するためには何を伝えればよいのかを検討します。「研修が完了した時点で新入社員がどういった状態になっていてほしいのか」を考え、研修で取り扱う内容を考えましょう。
例えば先輩の営業に同行できる状態を目指すのであれば、身だしなみや言葉遣い、名刺交換の仕方、状況に適したコミュニケーションの取り方などをレクチャーする必要があります。具体例について詳しくは、「新入社員研修の内容・プログラム例」の項目で解説します。
研修の実施形式を決める
教える内容が決まったら、「どういったスタイルで実施するのか」を考えましょう。研修というと、複数名に向けて講師がレクチャーする座学の形式をイメージする人が多いかもしれませんが、それだけではありません。数人のグループで課題に取り組むグループワークや、現場で経験しながら学ぶOJTなど、さまざまな方法があります。
レクチャーする内容によって、適切なスタイルも異なります。教えたいことを身につけてもらうには、効果につながる形式を取ることも重要です。研修の形式について詳しくは、「新入社員研修の実施形式の種類」の項目で解説します。
研修後フォローの方法を計画する
新入社員研修は、一度実施すればよいわけではなく、研修を振り返るためのフォローアップ研修を実施し、「研修を通じて学んだことが実際の業務でどの程度役に立っているのか」を確認することが重要です。特に新入社員の場合、出だしでつまずいてしまうと後にまで尾を引いてしまうため、適切なタイミングでフォローを行いましょう。また、新入社員全体に期待した効果がみられないようであれば、研修プログラムの見直しも視野に入れる必要があるかもしれません。
新入社員研修の内容・プログラム例
新入社員研修を実施し、「スキルの定着」「ルールの周知」といった成果へと結びつけるには、研修目的に沿ったプログラムを制作する必要があります。ここでは、新入社員研修プログラム例をご紹介します。
社会人としての心構え
初めて社会に出る新卒社員にとって特に重要なのが、社会人としての心構えを学ぶことです。就職すれば誰もが1人の大人として扱われます。学生のうちは許されていた多少のミスや遅刻も、仕事上では信頼を損なう原因になりかねません。新入社員研修では、周囲の目が厳しくなることや、仕事には責任が伴うことなどを伝え、社会人としての自覚を持ってもらいましょう。
また、社会人経験がない新入社員は、仕事をアルバイトの延長のように考える人も少なくありません。新入社員研修では、アルバイトと社員では立場や責任が大きく異なる点を理解してもらうことも必要です。
コミュニケーションのコツ
企業や組織の一員として働く以上、コミュニケーションスキルは必須です。新入社員研修では、ビジネスにおけるコミュニケーションで大切なことや言葉遣いなどをレクチャーしましょう。
例えば、社会人の基本でもある「報告・連絡・相談」は、一見単純なようでいて、「相手に、何を伝える必要があり、何は省略してよいか」という取捨選択の判断や、「ある事柄・事例について端的に伝えるための言葉の選び方はどうすべきか」といった言語感覚などが必要となります。報告・連絡・相談の作法をあえて掘り下げて伝えるのも、コミュニケーションのコツを掴んでもらううえで有効です。
このほか、ビジネスメールの作成方法、チャットツールの使い方など、現場で新入社員が困らないことを前提としたカリキュラムを取り入れることが重要です。
身だしなみ・一般常識・基本マナー
業種や職種を問わず、社会人であれば誰もが身につけておかなくてはならないのが、身だしなみや一般常識を含む基本的なビジネスマナーです。その内容は服装の整え方や挨拶の仕方、電話応対、敬語の使い方、立ち居振る舞いなど多岐にわたります。
また、ただテクニックを身につけるだけでなく、なぜ一般常識やマナーを学ぶことが重要なのかも理解してもらう必要があります。うわべだけではマナーを習得しているとは言えず、イレギュラーな事態が発生した時に対応できなかったり、ほころびが生じてしまったりします。
OA機器・基本ソフトの使い方
一般的なオフィスには、コピー機やFAX、複合機、シュレッダーといったさまざまなOA機器が設置されています。社会に出て初めてこういったOA機器を使う人も多いため、問題なく使いこなせるよう、研修で基本的な使用方法を伝えておきましょう。
加えて、「Microsoft Office」や「Google Workspace」といった、業務で使用するツールのレクチャーも必須事項の1つです。社内に独自のシステムがある場合は、その使い方に関するカリキュラムも必要になります。仕事に使うツールは企業や職種によって異なることが多いため、プログラム作成の段階で誰に何を教えるかを見定めることが重要です。
コンプライアンス・就業規則
新入社員研修には、就業規則を含む社内ルールの説明やコンプライアンスに関するカリキュラムも取り入れましょう。就業規則や社内ルールの周知は、秩序のある職場作りに不可欠です。ただルールを知ってもらうだけでなく、規則が設けられている理由や、規則を守ることで新入社員自身も守られることを理解してもらうためのカリキュラムを組むようにします。
コンプライアンス研修は、法律に対する意識や倫理観を高め、不正や事故を防止するために実施するものです。カリキュラムの内容は、労働基準法や個人情報保護法といった法律のことから、ハラスメント対策、情報セキュリティまで、多岐にわたります。
新入社員研修のプログラムやコンテンツの例は、こちらの資料でさらに詳しく解説しています。本記事とあわせてご活用ください。
新入社員研修の実施形式の種類
新入社員研修では、レクチャーする内容に合わせて適切な形式を採用するのが一般的です。形式ごとの特徴やメリット・デメリットについて解説します。
講義
講義は座学とも呼び、学校の授業のように講師と複数の研修受講者が対面する形で行われます。講義のメリットは、一度に大人数が研修を受けられることです。そのため、社内規則の周知やコンプライアンス研修など、職種や配属を問わず全員の受講が必要なプログラムに向いています。
デメリットは受講者が聞くだけになりがちなことと、実務的なスキルの習得には不向きなことです。また、内容の充実度や分かりやすさなどは講師の質にも左右されます。加えて、講義を行うだけではどの程度の成果が出たのかが見えにくいため、理解度や定着度に関する振り返りも重要でしょう。
グループワーク
グループワークとは、新入社員をいくつかのグループに分け、さまざまな課題に取り組んでもらう形式です。提示されたテーマについて話し合ったり、トラブル発生などを想定して意見を出し合ったりします。
メリットは、自ら意見を出したり行動したりする大切さを学べることや、コミュニケーションの促進になる点です。グループワークを通じて新入社員の交流が深まると、組織作りで大きなプラスになります。
デメリットには、ある程度の人数が必要で、また他人任せにするいわゆる「フリーライダー」が生じやすいことが挙げられます。
ロールプレイング
ロールプレイングとは、与えられた役割を演じて業務を疑似体験する形式です。例えば「顧客役」と「営業役」に分かれ、会話をしながらものを売る側と買う側の心理や対処方法を学びます。
メリットは、より実践的なスキルや考え方が身につき、成功や失敗を疑似体験してもらえる点です。行動や会話を通して、新入社員が自分自身の特性や傾向に気づくきっかけにもなるでしょう。
デメリットは、ただ役をこなすだけでは「ごっご遊び」の延長になりがちで、見知った同士だと緊張感が出にくい点も挙げられます。
ケーススタディ
ケーススタディとは、よくあるトラブルや過去の事例などを取り上げて議論や分析を行い、適切な対応や問題の解決方法を学ぶ形式です。
基本的に実際に起こったケースから学ぶため、トラブル発生時の正しい対処の仕方など、実務ですぐに役立つ知識をインプットしてもらえるというメリットがあります。なおかつ事例を分析することによって、本質を学べる点も大きいでしょう。
その一方で、アウトプットする機会がないと学びが身につきにくいことがデメリットです。
OJT
OJT(On the Job Training)とは、実務をこなしながら上司や先輩がレクチャーする形式です。現場で必要とされるスキルを学べるうえ、緊張感を肌身で感じて達成感も味わってもらえることなど、さまざまなメリットがあります。ツールの使い方や仕事の進め方を学ぶために適したスタイルだと言えるでしょう。
その一方で、現場スタッフの負担が増えることや、教える側のスキルによって理解度や定着度に差が出やすいことがデメリットとして挙げられます。
ウェビナー研修
ウェビナーとは「Web」と「セミナー」と組み合わせた造語で、セミナーをWeb化したものです。講師がWeb会議システムを用いて講義を行い、研修参加者はパソコンやスマホなどを使って受講します。
メリットは講師と受講者が1ヶ所に集まる必要がなく、スケジュール調整の手間や移動コストが削減できる点です。デメリットは受講者が集中しにくいことや、快適に受講するには個人が環境を整えなければならないこと、配信トラブルがあると中断してしまうことなどです。
e-ラーニング
e-ラーニングとは、インターネットを介してあらかじめ用意された教材にアクセスして学ぶ形式です。一般的には好きなタイミングで動画やテキストの教材を視聴するスタイルを指すことが多いものの、リアルタイムでの講義を含むケースもあります。
メリットは、受講側が受講タイミングを決められる点です。空き時間や移動時間などを生かして学ぶこともできます。デメリットは、受講者が学習意欲を維持するのが難しく、また講師や同期とのコミュニケーションが取れない点も挙げられます。
新入社員研修を効果的に実施するためのポイント・注意点
新入社員研修の目的は、研修を実施することではなく、仕事に必要な知識やスキルを身につけてもらうことです。効果のある新入社員研修を実施するために重要なポイントについて解説します。
インプット・アウトプットを適切に配分する
研修というと、知識やスキルを学ぶインプットに意識が向きがちですが、学びをアウトプットする場を設けることが重要です。
例えば電話応対時の言葉遣いをテキストや講義で学び、頭で理解したとしても、実際の現場で問題なく対応できるとは限りません。学んだことを実務レベルにまで落とし込むには、アウトプットを通じて定着させてもらう必要があります。
そのためには、講義やe-ラーニングなどインプット型の研修だけでなく、グループワークやロールプレイング、OJTなど、アウトプット型の研修を積極的に取り入れましょう。研修の目的が業務をスムーズにこなせるようになることである以上、知識を実務につなげる工夫が必要です。
資料の作り方を工夫する
新入社員研修では、使用する資料やスライドのクオリティにも十分に配慮するのが重要です。資料が読みにくかったり分かりにくかったりすると、それだけで理解度が落ちてしまいかねません。
講義で使用するスライドは、後ろの席からでも視認できるよう、必要な情報を盛り込みつつ、情報量を多くしすぎないように注意しましょう。配布する資料は、あとから見直すこともふまえ、分かりやすくなおかつ必要な情報を探しやすい内容にすることが求められます。
本格的なものを作るにはデザインスキルが必要ですが、テンプレートなどを使うと、クオリティを保ちつつ効率的に作成可能です。
新入社員研修で使用する資料の作り方に関しては、こちらの記事も合わせてご覧ください。
オンボーディング全体を十分に計画する
オンボーディングとは、新しい仲間が組織の一員となるために手助けすることです。企業においては、早期離職を防止し、会社というチームのメンバーとして活躍してもらうための取り組みを指します。
研修を通じて知識やスキルをレクチャーし、育成するのは、企業にとっても新入社員自身にとっても重要です。しかしそれだけでは、組織への定着を促すには十分とは言えません。例えば「研修で分からない内容があるけれど、質問できる人がおらず不安」といった状況では、逆に会社へのコミットメントやモチベーションが薄れるきっかけになってしまう可能性があります。
会社に定着してもらうには、研修だけでなくその後のフォローなども継続的に行い、さまざまな角度からサポートすることが重要です。
オンボーディングの取り組み方については、こちらの記事で解説しています。
まとめ
新入社員研修は、新しく採用した人材に知識やスキルを身につけてもらうためのものです。特に社会人経験のない新卒の場合、現場に出る前に、社会人としての心構えや基本的なビジネスマナー、ツールの使い方などを一からレクチャーしていく必要があります。
新入社員研修向けのプログラムを作成する際はまず、研修の目的を明らかにすることが大切です。そのうえで研修内容を検討し、どういった形式で実施するのかを決め、研修用の資料を準備しましょう。加えて採用した人材を定着へとつなげるには、研修そのものだけでなく、研修後のフォローやオンボーディングを含めて計画を立てることが重要です。
新入社員研修の目標設定やプログラム設定に関する資料は、こちらからダウンロードできます。効果の出る研修のプログラム作りのためにお役立てください。