面接官が避けるべきNG質問集!関係する法律やポイントも解説
昨今、コンプライアンスへの意識が高まっているなか、企業の「炎上騒動」もよく見られるようになりました。候補者に不快な思いをさせないための配慮やコンプライアンス徹底の一環として、面接のやり方を見直している人事・採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
面接にはタブーとされるNG質問やNG話題があり、個々の面接官が注意を払う必要があります。本記事では、面接官が避けるべきNG質問をトピック別にまとめました。関係する法律やポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
面接官が避けるべきNG質問集
面接官が避けるべきNG質問として、主に以下の5つのトピックがあります。
- 家族についての質問
- 出身地などに関する質問
- 資産・経済能力についての質問
- 思想・宗教などに関係する質問
- 男女差別につながる質問
以下、それぞれのNG質問集を紹介します。
家族についての質問
面接官が避けるべきNG質問として、「家族についての質問」があります。具体的な質問は以下の通りです。
- 「ご家族は何人いらっしゃいますか?」
- 「ご兄弟姉妹はいますか?」
- 「お父様のご職業は何ですか?」
- 「お母様はお仕事をされていますか?」
- 「ご両親と一緒にお住まいですか?」
- 「ご家族のなかで働いている方はいますか?」
- 「お父様(お母様)がいないようですが、どうしたのですか?」
- 「家庭はどのような雰囲気ですか」
応募者の家族構成や親の職業は、個人の能力や適性とは無関係であり、しつこく聞き出そうとすると差別に該当する可能性があります。家族構成や親の職業は、応募者の個人情報であり、面接の範囲を超えた「プライバシーの侵害」という観点でも好ましくありません。
詳しくは後述しますが、採用過程での差別を防ぐために、家族構成や親の職業に関する質問を禁止している法律もあります。法的な意味でも、家族についての質問は避けるべきです。
出身地などに関する質問
「出身地・本籍に関する質問」も、面接官が避けるべきNG質問です。具体的には以下のようなものがあります。
- 「あなたの本籍地はどこですか?」
- 「あなたのお父様(お母様)の出身地はどこですか?」
- 「あなたはどこで生まれましたか?」
- 「あなたのご出身はどちらですか?」
- 「地方から来た人はこの仕事に向いていないと思いますが、どう思いますか?」
- 「都会出身の人と地方出身の人の違いをどう感じますか?」
- 「転居歴を教えてください」
応募者の出身地は、個人の能力や職務適性に関係がなく、差別と捉えられる可能性があります。例えば同和関係者や在日韓国人・在日朝鮮人など、特定の人々を排除してしまうきっかけになるかもしれません。出身地に関する質問は、家族についての質問と同様、プライバシーの侵害となる可能性があるという点でも避けるべきです。
資産・経済能力についての質問
資産・経済能力についての質問も、面接官が避けるべきNG質問です。具体的には以下のようなものがあります。
- 「住んでいる家は持ち家ですか、それとも賃貸ですか?」
- 「月々の家賃はいくらですか?」
- 「一人暮らしですか、それともご家族とお住まいですか?」
- 「実家はどのくらいの貯金がありますか?」
- 「不動産はどれくらいありますか?田畑や山林などを所有していますか?」
- 「あなたのお父様(お母様)の収入はどれくらいですか?」
資産や住宅状況も、応募者の職務能力や適性とは無関係で、なおかつ応募者の努力ではどうにもならない面もあります。例えば古くから続いてきた差別の影響を受け、結果として教育の権利や就業の権利などが阻害され、現在の経済的状況になった人もいるかもしれません。資産・経済能力に限らず、本人の責任でない部分で判断しようとするのはNGです。
思想・宗教などに関係する質問
思想・宗教などに関係する質問も、面接官が避けるべきNG質問です。具体的には以下のようなものがあります。
- 「政治的な信条は何ですか?」
- 「どの政党を支持していますか?」
- 「どの宗教を信仰していますか?」
- 「学校外で加入している団体・組織はありますか?」
- 「宗教行事に参加していますか?」
- 「誰を最も尊敬していますか?」
- 「歴史上の人物で最も尊敬するのは誰ですか?」
- 「あなたの家では新聞を取っていますか。取っているとすれば、何新聞ですか?」
思想や宗教、尊敬する人物に関する質問は個人の信条に関わるもので、憲法の個人の自由権として保障されています。応募者のプライバシーを侵害する可能性があるだけでなく、基本的人権を侵害することになる点で、上記のような質問は避けるべきです。
宗教や思想に基づいて応募者を評価すると、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が採用されにくくなり、職場の多様性を損なうリスクもあります。特にデリケートな項目なので、直接質問するのはもちろん、形を変えて間接的に聞くのも避けましょう。
男女差別につながる質問
男女差別につながる質問も、面接官が避けるべきNG質問です。具体的には以下のようなものがあります。
- 「結婚の予定はありますか?」
- 「子供を持つ予定はありますか?」
- 「女性にとってこの仕事は大変だと思いますが、どう思いますか?」
- 「男性として、この役職でリーダーシップを発揮できると思いますか?」
- 「育児や家事との両立はどうしますか?」
- 「配偶者の仕事に影響されることはありますか?」
性別に基づく質問は応募者に対する偏見を助長し、男女雇用機会均等法の趣旨である、男女の公平な評価を妨げる可能性があります。
一方の性だけに特定の質問をするのはもちろん、男女で同じ質問をしていても、返答に対する評価が異なる場合は基本的にNGです。例えば「結婚の予定はありますか?」と男女に質問し、いずれも「予定がある」と回答した場合、女性の応募者にのみマイナス評価を与えるようなケースです。
面接官が気を付けるべき質問テーマ
必ずしもNGではありませんが、面接官が注意するべき質問テーマもあります。具体的には以下のトピックです。
- 犯罪・違反歴についての質問
- 生活・家庭環境が関係する質問
- 健康状態についての質問
以下、それぞれの質問テーマを紹介します。
犯罪・違反歴についての質問
犯罪・違反歴についての質問は、職務遂行能力と直接関係がない場合が多く、基本的には避けるのが無難とされています。例えば「過去に犯罪を犯したことがありますか?」「刑務所に入ったことはありますか?」などの質問です。「交通違反をしたことがありますか?」「過去に逮捕されたことはありますか?」など、違反歴について聞くのもあまりよくないとされています。
一方で、職務内容に直接関連する場合は、犯罪歴や違反歴に関する質問が必要となるケースもあります。例えば運転手の募集では、「過去5年間に重大な交通違反歴はありますか?」「運転免許が停止されたことはありますか?」のような、交通違反についての質問が許容されるでしょう。
生活・家庭環境が関係する質問
面接官が意識しないうちに、生活・家庭環境関連の質問になってしまうケースもあります。生活・家庭環境関連の情報を聞き出すと、前述の「家族についての質問」「資産・経済能力についての質問」に該当する可能性があるため、基本的にはNGです。
例えば「在宅ワークの可否」「残業・休日出勤の可否」といった質問は、生活・家庭環境の話題と関係することも多いため、不必要に詳しく聞き出さないよう注意する必要があります。「在宅ワークの可否」の例で考えれば、「在宅ワークの対応は難しい」と応募者が回答した際に、「それはなぜですか?」と詳しく聞くとプライバシーを侵害するリスクが高まります。
健康状態についての質問
健康状態を理由に応募者を不適切に評価すると、障害や病歴に基づく差別につながるリスクがあるものの、業務に関係する範囲であれば問題ありません。例えば車を運転する業務であれば、ドライバーに何かしらの健康リスクがあるかどうかは重要です。
業務遂行に必要な情報を得るために質問する場合は、質問の理由を明確にし、任意で答えられる形式にするなど応募者のプライバシーを尊重する方法を取ります。
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NG質問を避けるために知っておきたい法律
NG質問を避けるために知っておきたい法律は、主に以下の3つです。
- 職業安定法
- 男女雇用機会均等法
- 労働施策総合推進法
それぞれの法律を詳しく解説します。
職業安定法
職業安定法は、労働者の雇用機会の拡充と安定を図るための法律で、主に「労働者募集」「職業紹介」「労働力の供給」の3つについて定められたものです。労働者の権利保護や公正な労働条件の実現など、健全な労働市場を維持するための法律として機能しています。
職業安定法第3条では「人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由」にした、職業に関する差別的な取り扱いが禁止されています。「家族についての質問」「出身地などに関する質問」などの質問をしてはいけない、直接的な根拠です。
労働者を雇用するうえでの基本となる法律なので、ぜひ把握しておきましょう。
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法は、労働市場での男女間の平等を促進し、性別に基づく差別を防止するための法律です。特に女性の社会進出を支援しつつ、性別にかかわらず全ての労働者が平等に働ける環境を整えることを目的としています。
男女雇用機会均等法第5条では、「募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定められています。面接で「男女差別につながる質問」をしてはならない根拠となる法律です。
昨今では、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどがデリケートな問題として扱われています。コンプライアンスの観点でも、男女雇用機会均等法を深く理解するのは重要です。
労働施策総合推進法
労働施策総合推進法は、労働条件・労働環の改善などを目的とした法律です。法律のなかでは特にパワーハラスメントの防止が重視されていることもあり、「パワハラ防止法」と呼ばれることもあります。
2007年10月1日に施行された改正雇用対策法により、募集において年齢制限を設けることが原則禁止されました。ただし、「労働基準法その他の法令の規定により年齢制限が設けられている場合」など、特定の条件下であれば年齢制限が認められています。
前述のように、労働施策総合推進法は、パワーハラスメントについて規定する法律でもあります。「圧迫面接」などの言葉に代表されるような、面接でのハラスメント行為にも注意しましょう。
面接官がNG質問をしてしまった場合に考えられる影響
面接官がNG質問をしてしまった場合に考えられる影響としては、以下の3つが考えられます。
- 違法となり罰金などが適用される
- 企業イメージの低下につながる
- 自社が求める人材を逃す
それぞれの影響を詳しく解説します。
違法となり罰金などが適用される
面接官がNG質問をしてしまった場合、違法となり罰金などが適用される可能性があります。
職業安定法には、「厚生労働大臣は、職業紹介事業者や労働者の募集事業者などが法律や命令に違反した場合、業務改善のための必要な措置を命じられる」という旨の、改善命令に関する条文があります(第48条の3・第1項)。
もし厚生労働大臣による改善命令に背いた際の罰則は、「6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」です(第65条)。場合によっては情報の公表や、書類送検になるリスクもあるため、十分に注意しましょう。
企業イメージの低下につながる
面接官がNG質問をしてしまった場合、企業イメージの低下につながる可能性もあります。例えば不適切な質問を受けた応募者が、一連の経験を口コミサイトやレビューサイトに投稿すると、多くの人々がその事実を目にすることになります。現代ではSNSでの情報拡散力が高く、1人のネガティブな投稿が瞬く間に広まり、企業のイメージがダウンする事例も珍しくありません。
企業イメージの低下につながると、顧客やビジネスパートナーからの信頼を失い、企業のビジネスに重大な影響を及ぼします。コンプライアンスの観点でも、NG質問を避けるのは重要です。
自社が求める人材を逃す
面接官がNG質問をしてしまった場合、自社が求める人材を逃すリスクもあります。面接で不適切な質問を受けた応募者は、印象の悪さから企業への関心を失い、選考のプロセスから辞退するかもしれません。本来採用できたはずの人材を失うなど、採用計画に悪影響を及ぼします。
ネガティブな印象を持った応募者は、自社の選考を辞退するだけでなく、競合他社に流れる可能性もあります。自社にマッチしているはずの人材が競合他社に流れ続けると、採用や育成が上手くいかず、組織全体のパフォーマンスが低下するリスクも十分に考えられるでしょう。
面接官がNG質問をしないためのポイント
面接官がNG質問をしないためのポイントは、以下の3点です。
- 質問リストを作る
- 候補者がNG話題に触れてくる場合に備える
- アイスブレイクなどの雑談にも気を付ける
それぞれのポイントを詳しく解説します。
質問リストを作る
面接官がNG質問をしないためのポイントは、あらかじめ質問項目のリストを作っておくことです。例えば「経歴に関する質問」「職務適性に関する質問」「応募動機・キャリア目標に関する質問」などカテゴリ別に質問を作ります。
質問項目のリストを作成することで、面接のやり方が均質化され、面接官による違いなどが出にくくなります。さらにはNG質問のリストも作成し、面接官に共有しておくと、不適切な質問を避ける意識をより高められるでしょう。
候補者がNG話題に触れてくる場合に備える
候補者がNG話題に触れてくる場合に備えるのも、面接官がNG質問をしないためのポイントです。面接中、応募者自身がプライバシーに関わる話題や、差別につながる話題を持ち出すケースがあります。たとえ面接官がNG質問をしていなくても、応募者がその話題に触れてきた場合、対応によっては問題となるため注意が必要です。
応募者からの逆質問で、NG話題に触れられた際に、適切に対応するための答え方を事前に用意しておくのもおすすめです。例えば応募者が「私の家族についてですが…」と話し始めた場合、「家族に関することは面接でお答えいただく必要はありません」とすぐに話題を変えるなど、いくつかのパターンを想定しましょう。
アイスブレイクなどの雑談にも気を付ける
アイスブレイクや雑談に注意を払うのも、面接官がNG質問をしないためのポイントです。選考に関係ない雑談時に、ついNG話題に触れてしまい、問題になるケースもあります。
面接の初めに緊張を和らげるためのアイスブレイクでは、天気やオフィスまでの道のりなど、なるべく当たり障りのないトピックを選ぶのが重要です。面接の終わりや途中での雑談では、職務に関連する話題を選びます。質問リストの作成に関連して、アイスブレイクや雑談時の話題も考えておくとよいでしょう。
NG質問を避けて効果的な面接をするコツ
NG質問を避けることも含め、効果的な面接をするコツとしては、「面接官トレーニングを実施する」「適切なガイドライン・採用基準を作成する」の2点が重要です。それぞれのコツを詳しく解説します。
面接官トレーニングを実施する
効果的な面接をするには、面接官トレーニングを実施するのが重要です。面接官トレーニングの主な目的は、以下の4つが挙げられます。
- 惹きつけ力の向上:面接官が応募者を魅了し、自社を選んでもらうための能力を高める
- 見極め力の向上:応募者が企業の求める人物像に合っているかを短時間で見抜く力を養う
- 評価基準の統一:全ての面接官が同じ基準で評価することで、公平な選考を行う
- NG行動の防止:面接でタブーとされるNG質問を避け、企業イメージを守る
面接官トレーニングの実施方法は、面接のシミュレーションを通じて実践力を高めるロールプレイングや、ワークショップ、専門家研修、メンターシップなど多種多様です。面接官トレーニングについて詳しくは、以下の記事も参照してください。
適切なガイドライン・採用基準を作成する
適切なガイドライン・採用基準を作成するのも、効果的な面接をするコツです。ガイドライン・採用基準が明確であれば、全ての面接官が統一された基準で応募者を評価できるため、公平な選考ができます。どのような質問が適切であるかを理解しやすくなるため、NG質問を避けるのにも役立つでしょう。面接官へのトレーニングや、情報共有も容易になります。
ガイドライン・採用基準を作成する際は、業務遂行に必要となる実務的な能力・適性を軸にして考えるとよいでしょう。NG質問につながるような採用基準を作れば、そもそもNG質問をする必要がなくなるため、さまざまなリスクを回避しやすくなります。採用基準の決め方に関して詳しくは、以下の記事も参照してください。
まとめ
面接でのNG質問は、単にその応募者の印象を悪くするだけでなく、世間からの企業イメージに傷がつくきっかけにもなり得ます。家族についての質問や出身地などに関する質問など、面接官が避けるべきNG質問をよく理解し、面接時にそうした話題にならないよう注意しましょう。
面接官によるばらつきを防ぐためには、面接官トレーニングを実施したり、適切なガイドライン・採用基準を作成したりするのがおすすめです。質問例文のマニュアルがあれば、それを参照するのもよいでしょう。
人事ZINEでは、人事・採用担当者の方に向けて、「面接官マニュアル」をご用意しております。面接で聞くべき質問やNG言動に加え、面接官としてふさわしいスタンスや必要な事前準備も解説しています。本記事とあわせてぜひご活用ください。