ポリコレの意味・具体例と企業が押さえるべきポイントを解説

ポリコレとは
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「ポリコレ」とはポリティカル・コレクトネスの略です。人種、宗教、性別などによる差別や偏見をなくそうという考え方を指し、世界中で注目されています。日本においても、企業広告や商品名などに対して差別的であるという非難が集まることがあり、企業としてポリコレを理解し対応する必要性が高まっています。また、ポリコレは多様な社員への理解・配慮にもつながる概念のため、職場環境の改善や採用活動においても有効です。

本記事ではポリコレの定義や種類、対応する必要性などを具体的な事例を交えて解説しています。また、ポリコレの浸透・徹底に向けて人事・採用担当者ができる施策についても紹介しています。

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ポリコレ(ポリティカルコレクトネス)とは?

ポリコレ(ポリティカルコレクトネス)とは?

ポリコレとは、ポリティカル・コレクトネス(Political Correctness)の略称で、「政治的正しさ」「政治的妥当性」と訳されます。

ポリコレという言葉は、1900年代のアメリカで「政治的正しさの厳守」を指す言葉として広まりました。現在では人種・国籍・宗教・性別・障がいなどを理由にした「差別的な表現や規制を正す」という考え方を指す言葉として使われています。

企業にとっては、コンプライアンスの徹底や企業ブランドの向上などの観点から対応すべき概念とされ、特に人事・採用担当者にとっては、人材募集や採用試験を行う際に「差別的な募集内容や採用基準にならないようにする」という点でポリコレが注目されています。

ポリコレのテーマの種類と具体例

ポリコレのテーマの種類と具体例

ポリコレが指す「差別」にはさまざまな種類があり、それらに対応するためにすでにされた変更もあります。ここでは、代表的なテーマとそれに関連する具体的な変更例について紹介します。

人種にまつわるポリコレ

人種にまつわるポリコレでは、差別的・侮蔑的な意味合いを持つ名称や表現に対し、それらの意味を含まない言葉に変更するという対応が進んでいます。

例えば、黒人を指す名称を「Black」から「African American」へ、アメリカ先住民を指す名称を「インディアン」から「ネイティブアメリカン」へ変更するなどです。どちらの言葉もかつては差別的・侮蔑的な意味を含んで使用されていたため、そのような意味を連想させない言葉に変更されています。

また、日本では「肌色」「はだいろ」と表記されていた色を「ベージュ」または「薄だいだい」や「ペールオレンジ」に変更したという例があります。これは、色々な肌の色をしている人たちに配慮した変更です。

性別・性的思考にまつわるポリコレ

性別に関するポリコレでは、性別を限定しない・連想させない表現に変更するという対応が進んでいます。

例えば、男性を指す「マン」が入った「カメラマン」「チェアマン」という名称が「フォトグラファー」「チェアパーソン」へ、また名称から女性を連想させる「看護婦」「保母」は「看護師」「保育士」へと移ってきました。また「くん」「ちゃん」は長く男女で使い分けられてきましたが、近年では「さん」に統一されてきています。

また、性的指向にまつわるポリコレでは、生物学的分類と異なる性自認を持つ人に対しての配慮が進んでいます。例えば、アンケートの選択肢にある性別の記載欄の「男・女」に追加して「どちらでもない」「回答しない」といった選択肢を用意することで、自身の性自認に合った回答を可能にするといった変更です。

服装にまつわるポリコレ

服装にまつわるポリコレでは、性別で服装を分けることを廃止するという対応が進んでいます。

例えば、学校や会社の制服において男性はズボン、女性はスカートという指定がありますが、現在では「女性がズボンを選択できるようにする」「男女共通デザイン(ユニセックス)の制服を用意する」などの対応が進んでいます。女性にスカートやハイヒールを履くことや、事務社員にのみ制服を着用することを求めるルールの廃止もこの一環です。

募集や採用の場面においては、「面接時の服装について指定しない」「化粧やアクセサリーの有無を指定しない」など、求職者が自身の性別や性自認、宗教的な主義主張などを自由に表現できるような配慮が求められています。

宗教にまつわるポリコレ

宗教にまつわるポリコレでは、他者の信仰へ配慮するための対応が進んでいます。

例えば、「企業が社員の信仰している宗教の教義上必要な祈祷の時間や場所を確保する」「食堂において使用されている食材を明記することで、それらの食材を避けることができるようにする」といった取り組みや、「特定の宗教を信仰する人向けのメニューを提供する」という事例があります。

また、海外に拠点を持つ企業や外国人採用の多い企業では、文化や宗教に関する研修や、異なる文化圏で生活する社員同士の交流会を行うなど、相互理解を深める機会を作る取り組みが進められています。

募集や採用の場面においては、自社が「各人の信仰に対してどのような配慮が可能なのか」を明確にすることで応募者からの安心感につながるでしょう。

以下は面接官マニュアルの資料です。ポリコレの観点で、面接では聞いてはいけないNG質問が存在します。本資料ではNG質問の例もまとめていますので、面接前の確認に、ダウンロードのうえご活用ください。

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企業がポリコレを考慮すべき理由

企業がポリコレを考慮すべき理由

ポリコレを理解し実践することは、さまざまな差別を排除できるだけではありません。ここでは「コンプライアンス」「ダイバーシティ」「企業イメージ」の3点から、企業にとって期待できるメリットについて解説します。

コンプライアンス徹底のため

コンプライアンスとは「法令順守」という意味ですが、近年では本来の意味から派生して「法令のみならず倫理や社会規範に従うこと」という意味で使用されています。つまり、企業の倫理観や社会的責任も遵守の対象です。

そのため、すでに法令化されている男女雇用機会均等法や労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)を遵守するだけでは、コンプライアンスを徹底しているとはいえません。しかし、「倫理」や「社会規範」については、法令によって規制されるものではないため、企業としては具体的な基準を持ちにくいといえます。

そこで、差別の排除を推進するポリコレを1つの基準とし、企業全体として理解・実践を進めることがコンプライアンス徹底につながります。

ダイバーシティを促進するため

ダイバーシティとは「多様性」を意味する言葉であり、人種や宗教、年齢などさまざまな違いのある人々が1つの集団に存在している状態を指します。

ダイバーシティの促進により期待できるメリットの1つは、今までよりも人材の募集対象の幅を広げることによる労働力不足の解消です。しかし、さまざまな人材が共に働くためには、それを円滑にする環境が必要です。ポリコレを理解し実践することにより、その環境作りの一助になります。

また、多様性のある人材によってアイデアの創出、競争力の向上につながることが注目されており、そのアプローチは「ダイバーシティ経営」とも呼ばれています。この戦略を採用するためにもポリコレは欠かせません。

企業イメージ向上のため

ポリコレを理解し実践することは、先に触れたコンプライアンスの徹底にもつながるため、社外からの企業イメージの向上が期待できます。

「社会規範や企業倫理を遵守している」「差別がなく、個人が尊重されている」ということは、ポジティブでクリーンな印象をもたらします。一方、ポリコレに対し無関心な企業だと思われてしまうことは、ネガティブなイメージを与えることになりかねません。

また、ポリコレを重視することは、社外のみならず社内にも社員のエンゲージメントの向上というポジティブな影響を及ぼします。それによって、生産性の向上も期待できるでしょう。

さらに、すでに自社で実践しているポリコレへの取り組みがあれば、人材募集の際にアピールポイントとして活用することも可能です。

ポリコレにまつわる炎上・企業対応の事例

ポリコレにまつわる炎上・企業対応の事例

過去には企業がポリコレに反しているとされ、炎上してしまった事例が多数ありました。ここではどのような点がポリコレに反していたのか、企業はどのように対応したのかについての事例を紹介します。

事例1.ブランド名が「ジェンダー分業を想起させる」との批判

大手コンビニチェーンが惣菜商品名に「母親」を意味する言葉を使用したため、ジェンダーによる差別であるとの批判が起こり、改名を求める署名活動に発展しました。「食事は女性が作るもの」という性別による役割の固定化、無意識の偏見が助長されるというのが主な批判理由です。

企業側は「一連の騒動と関係はない」としながらも、商品名を変更するという対応をしました。

商品名に限らずキャンペーンや広告を行う際には、性別を限定する表現の使用に注意する必要があるといえます。

事例2.企業広告の演出が「人種差別的」との声

大手食品メーカーが、有名テニスプレイヤーをアニメーション動画広告に起用した際に、肌の色を本人のものよりも白く表現したため、人種差別的であるとの批判が起こりました。日本国内のみならず海外からも批判の声があがり、最終的に企業は広告を削除し、配慮不足であったことに対して謝罪を行うという結果になっています。

情報を発信する際には、その表現が「偏見を助長しないか」「人種差別的ではないか」という点に注意が必要です。

事例3.地域活性化プロジェクトが「ジェンダー差別的」との批難

民間企業による温泉を通じた地域活性化プロジェクトにおいて、使用された少女キャラクターのデザインや設定が、「女性に対する性的搾取である」「性差別的な表現である」との批判が起こりました。

企業はプロジェクト支援者への批判を防ぐため、企業および個人サポーターを掲載していたリストからサポーター名の大部分を削除し、さらにキャラクター設定を修正するという対応をしています。

性差別による非難の対象は、実在の人物に限りません。イラストやデザインの使用であっても、ポリコレを意識した配慮が必要です。

企業がポリコレに対応する際の注意点

企業がポリコレに対応する際の注意点

ポリコレはあらゆる差別をなくそうとする考え方ですが、ポリコレへの行き過ぎた対応は新たな差別を生む可能性があります。

現在ある差別を是正するために、差別されている側に優遇措置を取ることを「アファーマティブアクション」といいます。例えば、不利な立場にある特定の人種にのみ奨学金や補助金を出すなどの措置を指します。その結果、優遇措置の対象外である人々からは「逆差別である」といった批判が起こるなど、新たな不平等・差別を生み出してしまうこともあり得ます。

また、個人の尊重は人権的には重要ですが、そのためには誰かの許容・我慢を求めることになります。全ての主張を取り入れることは現実的には不可能であるため、適切な尊重の度合いを模索することが重要です。

ポリコレについて人事・採用担当者が押さえておきたいこと

ポリコレについて人事・採用担当者が押さえておきたいこと

これまでポリコレの内容や、ポリコレにまつわる炎上事例などについて解説してきました。ここからは、ポリコレについて人事・採用担当者が押さえておきたいことについて解説します。

各種制度・規程を整備する

現在の福利厚生や社内規程、就業規則などについてポリコレの観点から問題がないか見直すことは有益です。例えば、「服装や休暇、昇給に関するルールや、受けられる福利厚生について男女や人種で差がある内容になっていないか」という点に注意が必要です。

本人の能力や実績に関係のないことで、評価や待遇を区別することはポリコレに反し、ひいては職場環境の悪化や社員の不満へつながります。また、人事・採用のために収集した情報の中には差別の原因となるものもあるため、その取り扱いには厳格なルールが必要です。

差別を排除するためのルールの整備・修正や、差別に配慮した表現に関する研修の実施などによりポリコレを徹底できます。

求人広告の記載内容に注意する

求人広告の募集要項に記載する表現・条件については注意が必要です。

「女性歓迎」「男性募集」などの男女の差別に関わる表現だけでなく、容姿や年齢について限定した募集を行うことも、ポリコレに反しています。先に挙げた「カメラマン」や「看護婦」のように特定のジェンダーを連想させるような表現も同様です。

また、性別のみならず本人がどうしようもない事柄(出身地や人種など)で応募を拒否することも、差別にあたります。

求人募集を行う際には、使用する名称や表現、募集内容が差別的でないかについて注意が必要です。

面接での対応・質問方法の指針を作る

採用面接における質問内容には、ポリコレを意識した注意が必要です。

例えば、家族構成・居住地・性的指向・信仰についての質問は、基本的にタブーとされています。また、厚生労働省のガイドライン「公正な採用選考の基本」によると、採用担当者は本人の能力や適性に関係のない事柄を採否の判断基準にしてはならないとされています。

採用担当者は、従来の質問事項が「個人の能力や適性についての内容になっているか」「無意識に差別を助長するような情報を聞き出していないか」という点について注意が必要です。

とはいえ、無自覚に差別的な表現や判断になってしまうケースも考えられます。そのため、面接時の対応や質問事項、質問方法について明確な指針を定めることがポリコレの徹底につながります。

ハラスメント対策を徹底する

ポリコレに関する問題はハラスメントという形で表面化することがあります。

ポリコレへの対応を怠った場合、意識的なハラスメントだけでなく、差別的表現に無自覚なハラスメントが社内で蔓延する可能性があります。

さらに、セクハラやマタハラ、LGBTQ+に対する偏見は、ハラスメントによる被害者の精神的苦痛のみではなく職場環境の悪化や、離職者の増加による人員不足などさまざまな問題を引き起こします。

「何がハラスメントとなるか」という理解を深め、ハラスメントを予防する対策を講じることはポリコレの考え方の実践にもつながります。研修の実施や規程の策定によりハラスメント対策を徹底していきましょう。

まとめ

ポリコレ まとめ

本記事ではポリコレの意味や考慮すべき理由、押さえておきたいことなどについて解説してきました。ポリコレは内容を理解し実践することで、企業にさまざまなメリットをもたらします。一方でポリコレを意識し過ぎれば、別の問題を引き起こすこともあります。ポリコレの内容を正しく理解し、自社にとって適切な形で実践していくことが重要です。

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人事ZINE 編集部

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