人材要件の定義方法・主な項目と役立つフレームワークを解説

人材要件
【無料ダウンロード】採用したい学生のペルソナ設計フレームワークはこちら

人材要件とは、企業が採用する人材に求める要件をまとめたものです。人材要件を決めることを「人材要件定義」と呼ぶこともあります。

人材要件を定義することで、自社が求める人材を採用しやすくなり、採用後のミスマッチも減らすことも可能です。多くのメリットがある人材要件定義ですが、求める人材像を言語化することは容易ではありません。「必要性を感じていても着手できていない」「作成してみたが、上手く活用できていない」という方も多いのではないでしょうか。

本記事では、人材要件の意味と必要性を明らかにしたうえで、人材要件の定義方法や定義する際に役に立つフレームワークなどを解説しています。

人材要件の定義や母集団形成の課題解決のヒントなどをまとめた資料をご用意しましたので、ぜひご活用ください。

採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
母集団形成に課題を感じている採用担当者の方向けの資料です。学生のペルソナ設計フレームワークを用いて、自社の強みや欲しい人材の要件を言語化していきましょう。
資料ダウンロード

人材要件とは

人材要件とは

まずは、人材要件とは何かを明らかにし、似た意味で使われる採用ペルソナの意味と人材要件との違いを解説します。

人材要件の定義

人材要件とは企業が求める人材の要件を言語で定義したものです。

極端な例であれば、「○○工事士」「○○検定○級」を保有していることのみを要件として人材を募集する場合、この資格保有が人材要件になります。

人材要件はこうでなくてはならないという明確な決まりはありませんが、この例では、採用した人材に実務経験や協調性を求めておらず、後のトラブルや早期離職につながるかもしれません。

そこで、自社が本当に求める人材を定義するためには、保有資格に限らず実務経験やパーソナリティ、行動特性などあらゆる面から考えることが必要です。

採用ペルソナとの違い

人材要件と似た意味の用語に採用ペルソナがあります。採用ペルソナとは企業が求める具体的な人物像を指します。スキルや経験に加えて、年齢、居住地、価値観、趣味や休日の過ごし方なども含めて具体的に人物像を描きます。

つまり、人材要件の複数の項目で定義された人材は実際にはどのような人物かを考えたものです。

採用ペルソナを明確にすることは、「自社が求める人材との接点を持つにはどのような手法が最適か」「どのようなアプローチやフォローが有効か」を考える際に有効です。

採用ペルソナについてはこちらの記事にて詳しく解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。

人材要件の主な項目

人材要件の主な項目

ここでは、人材要件として定義される主な項目を紹介します。

項目 具体例

経験

実務経験の有無
経験年数
ポジションなど

スキル

保有資格・免許
習得言語
扱えるツール・ソフトウェア

パーソナリティ・行動特性

積極性
協調性
リーダーシップ
社風やビジョンにおける自社とのマッチ度

企業によって求める人材は異なるため、上記の項目に限らず、自社の求める人材に合わせて追加または細分化し不要な項目を除いて定義しましょう。ここで紹介した項目はどのような(What kind)で表現していますが、重視する項目については、どのくらい(How much)という量も加えると、自社が求める人材をさらに明確に定義できます。

人材要件を定義する際は、上記の項目に対して自社にとっての重要度を考え「必須条件」「尚可条件」などの優先順位をつけます。これにより、応募者の選考を行う際の明確な基準として活用できます。

この人材要件は採用目的や募集するポジションによって異なるため、それらに合わせて個別に定義しましょう。目的別に定義された人材要件を「人材要件フレーム」と呼ぶこともあります。

ところで選考の際、性格や行動特性は経験やスキルとは異なり判断や評価が容易ではありません。これらを判断や評価するためには、面接時に「状況→課題→行動→結果」というステップに沿って質問することで、応募者の特性を見極めるSTAR面接という手法が有効です。

STAR面接についてはこちらの記事にて詳しく解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。

採用において人材要件を定義する必要性

採用において人材要件を定義する必要性

人材要件を定義する必要性は多岐にわたります。言い換えれば、人材要件を定義することで得られる複数のメリットがあります。ここでは主なものを解説します。

選考基準の可視化・共有のため

人材要件を言語で定義することで、面接官や選考担当者が可視化された選考基準を共有することができます。

例えば、面接官ごとに重視する項目が異なる場合、人材要件が定義されていなければ、同じ応募者でも評価に差が出てしまい、結果的に自社が求める人材を不合格にしてしまう可能性があります。人材要件を言語化していれば、こういった評価のばらつきを抑えることが可能です。

また、必須要件を満たしている応募者同士を比較する際には、その他の要件の重要度が明確になっていれば、選考がスムーズになるうえ、客観性を確保することが可能です。

早期離職を防止するため

人材要件を満たす人材を採用できた場合、入社後に活躍できる可能性が高いと考えられ、本人としても充実感を感じてもらいやすいでしょう。

一方、人材要件を曖昧なまま採用した場合、求めていたスキルが不十分であったり、職場になじまなかったりという可能性があり、その結果本人が活躍できず早期離職してしまう恐れがあります。

つまり、人材要件を定義することは、このようなミスマッチや早期離職を予防することにつながります。

採用コスト最適化のため

人材要件が定義され、求める人材が明確になれば、それに合わせた採用活動が行いやすくなります。

例えば、求める人材によって有効な採用媒体は異なりますが、人材要件が定義されていれば、それに合わせた最適な媒体を選択できます。また、定義された人材要件の具体的な人物像である採用ペルソナを意識することで、求める人材に響くメッセージなどを作成できるでしょう。

このように、人材要件を定義することで、採用活動の最適化を図れ、結果的に無駄なコストの削減が期待できます。

経営戦略に貢献する採用活動を行うため

企業は経営戦略を策定し、その実現を目指します。その実現のために実際に活動するのは人材であるため、どのような人材を採用するかは経営戦略にとって重要です。

例えば、新規事業や海外事業への進出、新商品開発のような5年、10年をかけた中長期の拡大戦略では、その拡大の中核となる人材の採用や育成が戦略に含まれることがあります。

一方、実際の採用では、急を要する欠員の補充に限らず、事業の拡大においても現場での需要によって短期的な視点から求める人材を決めてしまうことがあります。これを繰り返すと経営戦略を実現するための人材が揃っていないという事態を招きかねません。

経営戦略をもとに、その実現のためにはどのような人材を採用すればよいかを考えて人材要件を定義することで、経営戦略と採用活動の乖離を防ぎ、戦略実行に貢献する採用活動が可能です。

人材要件を定義する方法

人材要件を定義する方法

人材要件に含めて有益になる項目は無数にあり、これらを漏れなく洗い出すのは容易ではありません。そこで参考になる定義方法を2つ解説します。

演繹的な要件定義の方法

1つ目は、「前提」から順に考えていくという演繹的な定義方法です。

例えば、人材要件定義における「前提」と考えられるものとして、経営戦略や事業目標などがあげられるでしょう。これらの大目標の実現や達成のためには、どのような中目標の実現や達成が必要かを考え、さらにそのためにはといった具合に順を追っていき最終的に必要となる人材を組み立てていきます。

この時、経営戦略や事業目標は重要ですが、理想的になりすぎて現実と乖離しないよう、現場での需要や他部署の意見を取り入れることで人材要件の実用性を高めることにも意識が必要です。

また、経営戦略のような大目標に限らず「離職者を減少させたい」「開発部署の負担を軽減したい」といったすでに顕在化している課題の解決を「前提」として演繹的に人材要件を定義してもよいでしょう。

帰納的な要件定義の方法

もう1つは、「結果」から考えて方針を決めていく帰納的な定義方法です。

例えば、活躍している社員に共通する性格・行動特性がある場合に、その性格・行動特性を有する人材は将来活躍する可能性が高いと期待できます。この考え方をコンピテンシーモデルといい、評価基準の1つとして注目されているので後に詳しく解説します。

活躍している社員に限らず、自社の社員が「自己主張が少ない」「協調性に欠ける」といった具合にある傾向に偏っていることが判明し、それが「商品開発のスピードが足りない」などの望まない結果に関係している可能性があれば、その偏りを解消するための要件を加えることもできます。

帰納的な定義では、間違った相関関係を想定してしまい、関連性のない因子で定義してしまう可能性があるので注意が必要です。

人材要件の定義・設計に役立つフレームワーク

人材要件の定義・設計に役立つフレームワーク

ここでは、人材要件の定義や設計に役立つフレームワークを紹介します。

コンピテンシーモデル

企業で好業績を出す社員が有するスキルや行動特性をコンピテンシーと呼び、活躍している社員に共通なコンピテンシーを見つけ出しモデル化したものをコンピテンシーモデルといいます。

この共通する行動特性などを持っている人材は好業績を出す可能性が高いと考えられ、これを人材要件に組み込むことで、入社後の活躍が期待できます。

しかし、確認が容易な保有資格や職務経歴とは異なり、選考時に行動特性を見極めるのは簡単ではありません。そこで、対象者の過去の行動や、その行動に至った経緯と考えについての質問を通じて行動特性を見抜く「コンピテンシー面接」が役に立ちます。

コンピテンシー面接のメリットや実施方法についてはこちらの記事にて詳しく解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。

SWOT分析

SWOT分析は一般的に自社の現状把握や戦略策定に使われる分析手法です。

自社の現状を内部環境として強み(Strength)と弱み(Weakness)、外部環境として機会(Opportunity)と脅威(Threat)の4つに分類し分析することで、都合のよい点ばかりに着目したり否定的になりすぎたりせずに、客観的に自社の現状を把握できます。

進むべき方向性を決めるのに役立つほか、改善点や潜在的なリスクが明確になるという利点があります。自社全体についてSWOT分析することで、経営戦略や人事戦略に活かせるほか、「演繹的な要件定義の方法」の項でも紹介したように、その戦略に応じた採用すべき人材要件の定義や見直しに有効です。また、部署ごとに分析してもらうことで、配属先である部署の関係者でも気づかなかった求めるべき人物像が明らかになることも期待できます。

MUST・WANT・BETTER・NEGATIVE

ここでは、各人材要件に対する重要度の付け方において役に立つフレームワークについて解説します。

定義した人材要件を以下の4つに分類する方法です。

  • MUST(必須要件)
  • WANT(歓迎、強く望む要件)
  • BETTER(尚可、あれば望ましい要件)
  • NEGATIVE(不要、避けたい要件)

ここでの注意点はMUSTを増やし過ぎないようにすることです。そのために、必須の意味を厳密に捉えるようにしましょう。例えば、法令により該当業務につくためには資格が必要とされている場合、一見これは必須要件のようですが、その資格が短期間の講習で取得できる場合には、必須要件から除外できます。

また、人材要件には望ましい要件ばかりで、採用を避けるべき要件が不足している場合があります。実用性のある人材要件定義のためには、十分なNEGATIVEも必要です。

ここまで、人材要件の定義・設計に役立つフレームワークを紹介しましたが、さらに新卒採用時における人材要件定義に役立つフレームワークや母集団形成の課題解決のヒントなどをまとめた資料をご用意しましたので、ぜひご活用ください。

採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
母集団形成に課題を感じている採用担当者の方向けの資料です。学生のペルソナ設計フレームワークを用いて、自社の強みや欲しい人材の要件を言語化していきましょう。
資料ダウンロード

適切な人材要件を定義して採用活動に役立てるためのポイント

適切な人材要件を定義して採用活動に役立てるためのポイント

ここでは、人材要件を適切に定義し、それを採用活動に役立てるためのポイントを紹介します。

求めるレベルを高くしすぎない

人材要件で求める項目を増やすことで、それを満たす人材はマッチングが期待できますが、それを満たす応募者は減っていきます。十分な母集団を形成するためには、求めるレベルを高くしすぎないことがポイントになります。

そのためには、前述の重要度分類におけるMUSTを減らすことに加えて、均一化の必要性についての検討が有効です。同じポジションについて複数人を採用する際、全員に同じスキルを求める必要性がない場合があります。半数については要件をMUSTではなく、BETTERに変更するなどの柔軟な適用によって求めるレベルを抑えることができます。

このような対処をしても、外せない要件が多く母集団の形成に困難が想定される場合には、応募を待つ手法ではなく、ダイレクトリクルーティングなど企業側から直接アプローチできる手法がおすすめです。

ダイレクトリクルーティングについてはこちらの記事にて詳しく解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。

即戦力・ポテンシャルのバランスを意識する

人材要件の内容は採用するポジション以外に、「即戦力採用」をするか「ポテンシャル採用」をするかでも異なります。

即戦力として入社後早期に活躍することを期待して行われる即戦力採用では、すでに保有している資格や経験などの要件を重視した選考が向いています。一方、新卒生の採用のように現時点の顕在能力よりも将来の成長を期待して行われるポテンシャル採用では、向上心やコミュニケーションスキルなどの要件も重視されます。

採用目的に応じて「即戦力であること」「顕在能力・経験は不十分でもポテンシャルがあること」のどちらに重点を置くかは異なり、人材要件を決める際は両者のバランスを意識しながら検討することが重要です。

選考方法もあわせて検討する

人材要件を定義できても、その要件を満たすかどうかの判断ができなければ採用活動に活かせません。そこで、要件ごとに判断と評価の方法も検討しましょう。

要件によっては、書類で容易に確認できるものもありますが、スキルは書類だけではどの程度のレベルであるか分からないため、その判断を面接での質問によるか、試験を実施するのかの選択が必要です。さらに、性格や行動特性は見極めるのが困難なため質問内容と評価基準の十分な検討が必要です。前述のSTAR面接を取り入れるのもよいでしょう。

また、面接の実施方法においても、均一化された質問をする構造化面接と自由なコミュニケーションのなかで測る非構造化面接のどちらがその要件を判断するのに向いているのか異なります。定義された人材要件によっては、両方を行う面接方法も考えられます。

構造化面接の手法についてはこちらの記事にて詳しく解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。

まとめ

人材要件 まとめ

人材要件を定義するのは容易ではありません。しかし、人材要件を明確にしておくと、選考・採用の精度向上や早期離職・社内トラブルの防止、さらに企業の成長加速にもつながる可能性があります。

また、人材要件は一度定義したら終わりというものではありません。採用結果を分析し、さらに有益な要件へと改善できます。また、人事担当者だけで定義するものではありません。人材要件を決める際は、経営層や他部署の関係者へのヒアリングや説明会などを行い、社内で共通認識をまとめることで、より実用性が高まるでしょう。

人材要件の定義や母集団形成の課題解決のヒントなどをまとめた資料をご用意しましたので、ぜひご活用ください。

採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク
母集団形成に課題を感じている採用担当者の方向けの資料です。学生のペルソナ設計フレームワークを用いて、自社の強みや欲しい人材の要件を言語化していきましょう。
資料ダウンロード
人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部

人事・採用担当者の悩みに寄り添うメディア「人事ZINE」の編集部です。 新卒採用オファー型サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供する株式会社i-plugが運営しています。