インターンシップ受け入れの準備は?流れや企業側のメリット・注意点、利用できる助成金を解説
インターンシップは学生たちが実際の職場を体験し、企業がその能力を探る機会です。しかし、インターンシップを成功させるためには、その受け入れ体制や運営方法を整理しておく必要があります。
プログラムの内容だけでなく、「どのような法律が適用されるのか」「どのように安全を確保するのか」「個人情報をどのように取り扱うべきなのか」といった要素も重要です。
本記事では、これらのポイントを詳しく説明し、インターンシップを最大限に活用するための方法を紹介します。
また、新卒採用における効果的なインターンシップの設計・実施にお役立ていただける資料をご用意しました。設計における考え方から、具体的な実施方法まで、情報をたっぷり詰め込んでいます。ぜひダウンロードして、自社のインターンシップ設計にご活用ください。

目次
インターンシップ受け入れにあたって押さえるべきポイント

インターンシップは、学生との関係を構築し、自社が求める人材を採用するうえで有効な手段の1つです。
インターンシップを成功させるには、事前の準備や運営に注意が必要です。ここでは、まずインターンシップ受け入れにあたって押さえるべき基本的なポイントを3つご紹介します。
インターンシップの概要
インターンシップとは、学生が企業で実際の業務に携わることで、職業や業界に関する知識や経験を得ることを目的とした取り組みです。
インターンシップの期間や内容は、企業によってさまざまです。例えば、給料も支払って数週間から数ヶ月にわたって実際の業務にあたる本格的なインターンシップや、1日だけ企業の雰囲気を体験する1dayインターンシップなどがあります。
また、内容も、現役社員と一緒に実際の仕事を担当してもらうケースや、仮想的な課題を解決するケースなどがあります。
なお、インターンシップをめぐる近年の動きとして、「採用と大学教育の未来に関する産学協議会 2021年度報告書」によると、2024年度(2025年)以降の卒業・修了予定者について、以下のタイプのインターンシップで得た学生情報は、採用活動開始後に活用してもよいということになりました。
- 「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」(タイプ3)
- 「高度専門型インターンシップ」(タイプ4)
インターンシップ募集・受け入れにかかる費用
インターンシップの募集・受け入れにかかる費用は、主に以下の3つに分けられます。
- 募集費用
- 給与
- その他の運営費や交通費・雑費
募集費用とは、インターン生を集めるためにかかる広告費や代行サービス料などです。これらの費用はインターン生の数や期間、募集方法などによって変わりますが、1dayタイプの場合は1名当たり5万円〜、長期タイプの場合は1名当たり30万円程度が相場とされています。
給与とは、インターン生に支払う報酬です。これは全てのインターンシップに当てはまるわけではありませんが、実態として労働に該当する場合は給与を支払う必要があります。インターンシップとはいえ、給与の額は最低賃金や労働基準法に沿って設定します。
そのほか、運営費やインターン生への交通費・宿泊費、雑費なども発生します。
企業がインターンシップを開催するメリット|学生を受け入れる効果

インターンシップは、企業にとっても多くのプラスの効果をもたらします。ここではインターン生を受け入れることで企業が得られる具体的なメリットについて詳しく解説します。

採用ブランディングの強化
インターンシップは、自社の魅力をアピールする良い機会です。
インターン生は、実際に働く現場の雰囲気や仕事の内容を直接体験できるため、実際の業務内容や企業風土、魅力について知ることができます。これは、自社の採用サイトや求人広告だけでは伝えきれない情報です。
インターンシップに参加した学生は、自社に興味を持ち、エントリーや内定へとつなげる可能性が高まります。また、インターンシップの体験や感想をSNSや友人に口コミとして広めることで、自社の知名度や評判を高める効果も期待できます。
こうした効果によって採用ブランディングの強化につながります。
自社が求める人材の獲得
インターンシップを受け入れることで、自社が求める人材を発掘・獲得できる可能性があります。また、企業側は、一般的な面接や筆記試験では分からない学生の能力や適性を見極められます。学生側も、実際の業務や文化に触れることで、自分に合った職場かどうかを判断できます。
インターンシップを通じて、相互理解を深めることで、今後エントリーや入社へとつながる可能性が高まります。
さらに、インターンシップは、学生に早期にアプローチできる手段です。早いうちから自社の魅力を知ってもらい、他社との競争に差をつけられます。
採用におけるミスマッチの削減
インターンシップを通じて、学生と企業との相性を確認でき、採用におけるミスマッチの削減につながります。
ミスマッチは、採用コストや離職率の増加などにもつながりかねない問題です。インターンシップでは、インターン生が自分の適性や志向性を見直すことができますし、企業側も学生の能力や適性を見極められます。
この結果、お互いの誤解を解消でき、マッチングの精度アップにつながります。
【期間別】企業がインターンシップを受け入れるメリット
インターンは新卒採用の戦略ツールとして有効ですが、期間によって企業側のメリットもリスクも異なります。
インターンの期間別のメリットと注意点は、以下の表のとおりです。
| 期間 | 目安期間 | 企業側のメリット | 企業側の注意点 |
| 短期 | 1~5日 | ・自社認知の拡大と母集団形成に有効 ・学生との初期接点づくりがしやすい | ・教育効果が限定的で、労力に対して採用直結しづらい ・内容によっては「インターン」と認められないこともある |
| 中期 | 1〜3ヶ月 | 実務を通じて学生の能力や社風適性を見極め業がインターンシップを受け入れる前の準備やすく、内定直結型としても機能 | 受け入れ体制や業務切り出しが不十分だと、現場負担や学生側の不満を招く可能性がある |
| 長期 | 3ヶ月〜 | 即戦力人材の育成が可能で、将来的な定着率向上・採用コスト削減にも寄与 | 報酬・労働条件の整備、契約内容や業務範囲の明確化など、法的配慮が必須 |
インターンは効果的に活用すれば採用成功の近道となりますが、運営設計がの甘いとさは逆効果です。メリットだけでなくリスクも把握した上で、目的と期間に応じた適切な設計が求められます。
企業がインターンシップを受け入れる前の準備

インターンシップは、企業が自社が求める人材を発掘し、育成する機会となります。しかし、この機会を最大限に活かすためには、インターンシップの受け入れ前に適切な準備が必要です。
目的・目標の明確化
インターンシップを開始する前には、その目的と目標を明確にすることが大切です。
例えば、「新製品開発チームへの理解を深めてもらう」「インターン生には企業文化を体感してもらう」といった具体的な目的を設定します。
これらが明確でないままでは、予想外の問題が生じ、望む効果を得られない可能性があります。
プログラムの作成
次に重要なのが、インターンシップのプログラム作成です。
プログラムは、企業の業種や規模、インターンシップ期間、インターン生の学年や専攻等によって異なります。例えば、IT/Web系企業ならばコーディングのワークショップ、広告代理店ならばクリエイティブな広告企画の作成といった業務が考えられます。また、専門家によるセミナーや社内の各部門を巡るツアーなどの研修や勉強会もあり得るでしょう。
これらのプログラムは明確な「目的」「目標」に沿ったものであり、インターン生や受け入れ担当者が満足できるものを目指すことが大切です。
受け入れ体制の確保
インターンシップは、学生が一定期間、企業の一員として活動します。そのため、適切な受け入れ体制を確保することが必須です。
受け入れ体制が整っていないままインターンシップを開始してしまうと、インターン生の学習効果が低下し、受け入れ側の業務遂行にも支障が生じる可能性があります。
受け入れにあたっては、インターン生が業務をスムーズに行えるような環境や設備の整備として、適切なオフィススペースや必要なIT環境を提供します。また、インターン生の進捗管理や疑問解決のための担当者(メンター)を指定し、適切な指導・サポート体制を用意することも欠かせません。
連絡手段の決定
インターン実施にあたり、学生との連絡手段を事前に決めておくことも大切です。メールやSlack、Chatworkなど、企業が使いやすく、かつ学生もアクセスしやすいツールを選びましょう。
連絡の頻度や対応時間のルールも共有しておくことで、認識のズレを防ぎ、信頼関係の構築につながります。トラブル対応にも備えて、記録が残るツールの使用が望ましいです。
各種条件の確認
インターンシップ契約書に記載する条件を確認します。具体的には、インターンの業務内容や期間、賃金・手当の支払い有無・方法、労働時間、労働条件などが対象です。賃金を支払う場合は、インターンシップ期間中の社会保険の加入についても確認する必要があります。
なおこういった条件については後章「インターンシップの受け入れにあたって企業が注意すべき点」で詳しく紹介します。
企業がインターンシップを受け入れる際の流れ

ここでは、インターンシップの受け入れに至るまでの主要な流れを説明し、各ステップで考慮すべき点を紹介します。
インターン生の募集・選考
最初のステップは、インターン生の募集と選考です。この段階では、まず、自社が求める人材のスキルや属性を明確にし、それを反映した募集要項を作成します。
その後、自社の採用サイトや各種募集媒体に掲載します。面接、筆記試験、適性検査などによる選考を実施し、選考結果を応募者に連絡します。また、開始日、期間、配属希望などを調整することも重要です。
インターン生の配属・業務開始
次に、インターン生の配属と業務開始の準備を行います。まず、配属先、業務内容、および指導担当者を決定します。業務内容は、インターン生が自身のスキルを発揮でき、かつ自社のビジョンや業務について深く理解できる内容にすることが望ましいでしょう。
また、マニュアルや教育資料を基にしたオリエンテーションや研修を実施します。これにより、インターン生が業務を始めるための基本的な知識と理解を得られます。
インターン生への評価・フィードバック
最後に、インターン生への評価とフィードバックのプロセスを整備します。このプロセスでは、業務成果や働き方、態度などを評価し、それをインターン生にフィードバックします。
これにより、インターン生は自己成長に必要な具体的な情報を得られます。また、企業側もインターン生からのフィードバックを受け取ることで、自社の業務や環境を改善し、より魅力的な職場を作り上げることが可能となります。
企業がインターンシップを受け入れた後の対応
インターンシップを終えた後も、その成果を最大限に活用し、自社が求める人材の確保につなげるための重要なステップがあります。ここでは、インターンシップ終了後の社内対応とインターン生へのアフターフォローについて詳しく説明します。
社内での振り返り
まず、社内でインターンシップの振り返りを行います。この振り返りでは、インターン生からのフィードバック、成果、そして改善点などを共有し、これからのなかから採用活動に活かすべきポイントを見つけ出します。インターンシップで得られた実際の反応や印象を参考にし、採用活動を本格化させる前に採用戦略の精緻化を図ることが重要です。
インターン生へのアフターフォロー
インターンシップ終了後は、継続的にインターン生へのアフターフォローを行います。良好な関係を構築・維持するには、インターンシップが終了した後も、インターン生との定期的なコミュニケーションは必須です。
感謝の意を示すメッセージを送るだけでなく、自社の最新の就職情報を提供し、必要であれば就職活動に関するアドバイスやサポートも行います。また、インターンシップで得た知識や経験が彼らのキャリアにどのように活かされているかをヒアリングすることも有用です。
インターンシップの受け入れにあたって企業が注意すべき点

インターンシップは企業の人材獲得戦略において重要な役割を果たします。しかし、その運営には注意点が数多くあります。以下では、企業がインターンシップの受け入れにあたって留意すべきポイントを紹介します。
サポート体制の充実
インターン生には職場で一定の期間働いてもらう以上、サポート体制の充実は欠かせません。現場に指導担当者を配置するのはもちろん、業務以外のことについてもインターン生を包括的にサポートする専任の担当者を配置することで、インターン生との円滑なコミュニケーションが可能となります。
各担当者がインターン生の指導、業務の調整、相談対応などを行うことで、インターン生は安心して業務に取り組みやすくなり、企業の実地研修としての価値を最大化できます。
労働関連法の遵守
インターンシップに参加する学生に対しても、それが実質的な労働に該当するのであれば正規の従業員と同様に労働法が適用されます。このため、労働時間の規定、休憩時間の確保、最低賃金の支払い、労働災害に対する適切な対応等、全ての法的な義務を果たすことが求められます。
労働環境・条件に問題があれば、インターン生からの不信感や企業のブランド毀損につながるだけでなく、行政からの指導・処分が下されるケースも考えられます。
安全管理の徹底
インターン生は、正規の従業員と同様に、安全な環境で働く権利を持っています。企業は、稼働時間の適切な管理、仕事環境の快適性・安全性の確保、事故や災害の予防措置の実施、またそれらの事態が発生した場合の適切な対応などについて、確実に取り組む必要があります。
個人情報の取り扱い
インターン生の個人情報の取り扱いには細心の注意が必要です。インターン生の個人情報を保護するためには、適切な管理体制の構築と、情報の取得、利用、提供に関するルールを厳守することが不可欠です。
個人情報の不適切な取り扱いがあり、さらにそれが発覚した場合、企業の信頼低下や罰則などのリスクがあります。
インターンシップを受け入れる際に活用できる補助金・助成金の例
インターンシップで学生を受け入れる際に、活用できる補助金や助成金の一例を以下の表にまとめました。
| 区分 | 制度名 / 支援主体 | 支援内容 | 対象・備考 | 参考リンク |
| 中小企業支援(東京都) | 中小企業魅力体験(インターンシップ)受入奨励金 | ・インターン1日あたり8,000円 ・上限20日分支給(対面のみ、オンライン不可) | 都内ものづくり中小企業、工業系高校・高専対象 | 東京都中小企業振興公社公式ページ (東京工業会) |
| 中小企業支援(電設業界) | インターンシップ推進助成金(JECA) | ・学生1日3,000円 ・10日・10名まで、年間上限10万円 | JECA会員中小企業対象 | JECA公式ページ (一般社団法人日本電設工業協会) |
| 地方自治体支援(交通・宿泊) | 自治体別インターン等交通・宿泊支援制度(例多数) | ・交通費や宿泊費の1/2補助 ・上限数万円 など ※自治体によって異なる | 各自治体で制度あり。 例:花巻市は1人上限2万円(花巻市インターンシップ促進助成金のご紹介) | LO活 地方就活支援ページ (LO活-Local+就活) |
(※2025年8月時点)
インターンの実施内容や、実施場所に合わせて、補助金や助成金の活用を検討してみてください。
まとめ

インターンシップは、企業とインターン生双方にとって多くの利点があります。ただし、企業がスムーズに受け入れるにあたっては労働法の遵守、安全管理の徹底、個人情報の適切な取り扱いなど、万全な準備をしておく必要があります。こういった取り組みによって、インターン生の安心・満足につながり、企業側は自社ブランドの強化や自社が求める人材を獲得する機会創出につなげられます。
最後に、本記事では紹介しきれなかったインターンシップ設計・実施のポイントはこちらの資料で詳しく解説しています。ダウンロードして自社のインターンシップの開催にお役立ていただければ幸いです。

