【人事必見】新卒採用の6つのプロセス|課題と改善方法も悩み別に解説
新卒採用を成功に導くには、しっかりした戦略に基づいたプロセス設計が欠かせません。しかし、具体的にどのようなプロセスがあるのか、組み立てたプロセスをスムーズに実行するにはどうすればよいのか、よく分からないという採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、効果的な採用プロセスを組み立てて、自社に合う人材を獲得したいと考えている採用担当者の方に向けて、新卒採用のプロセスと意識すべきポイント、悩み別の改善方法まで、詳しく紹介します。

目次
企業側の新卒採用の6つのプロセス

新卒採用のプロセスを組み立てるにあたっては、各プロセスの概要と役割を知ることが非常に重要です。それぞれのプロセスについて、詳しく説明します。
課題の整理
はじめに、これまでの採用活動の経験や、既存社員の状況、事業計画などから、自社の新卒採用における課題を整理します。採用プロセスを自社にとって最適なものにするには、課題に応じた設計が必要不可欠だからです。
例えば、採用目標人数に対してエントリー数が少なく、母集団を確保できないことが課題の場合、課題を解決するには、自社の学生に対する認知度を向上させる必要があると判断できます。すると、認知度向上のため「合同説明会やSNSなど、さまざまなチャネルを活用する」という、採用プロセスの具体的な設計方針がおのずと定まります。
新卒採用のプロセスにおいて、自社の課題を整理し明確化することは、採用を成功に導く第一歩です。
採用計画・プロセスの設計
次のステップは、課題に沿った採用・選考の計画策定とプロセス設計です。先に触れた通り、課題を解決するための具体的な方策を講じることが、採用・選考の計画策定とプロセス設計の方針を決定することにつながります。
例えば、新卒採用した人材が入社後のミスマッチで早期に退職してしまうことが課題の場合、選考プロセスを厚くしたり、複数の適性検査を実施して結果を比較検討するなどの方針を立てることができます。
あるいは、人的・予算的リソースが限られていることが課題の場合、無闇に母集団を増やすのではなく、候補者の質を優先する方針とし、ダイレクトリクルーティングの比率を増やすなどの採用計画を策定します。
採用計画・プロセスの設計は、求める人材を採用するための方向性を定める重要なステップです。
人員・予算
次に、設計した採用計画・プロセスに沿って必要な人員をアサインし、新卒採用チームを立ち上げます。同時に、予算取りも行います。人員・予算の確保は、スムーズに選考を行ううえで欠かせないステップです。
新卒採用では、母集団形成、セミナー・説明会、選考、問い合わせ対応、選考スケジュール調整など、さまざまな段階で人員が必要です。それぞれの役割に応じて人員を選びましょう。万が一、予定通りの人員を確保できない場合、選考を滞りなく行うことが難しくなり、採用の機会を損失することにもつながりかねません。他部署に協力を要請する場合、早めに依頼することが必要です。
予算は、広告費、出張費、ツールや設備の利用費・購入費、イベント参加費などを想定して立てます。概算の算出には、前年度の1人あたりにかかった採用コストを参考にするのが一般的です。
母集団形成
母集団形成は、候補者を集めるための重要なプロセスです。母集団形成の方法は、合同説明会・単独説明会、オンライン説明会、SNS、各種ナビサイトへの登録、ダイレクトリクルーティング、自社採用サイト立ち上げなど多岐にわたり、それぞれに強みがあります。
例えば、数多くの学生に自社を認知してもらうことを重視するなら、多くの学生が活用する各種ナビサイトへの登録が有効です。採用計画やプロセス設計に沿って、自社に合う方法を選びましょう。
母集団形成においては、第一印象を重視すること、自社ならではの魅力を伝えることが大切です。好印象なら学生の興味を引くことができ、魅力が伝わればエントリーにつなげることができます。一緒に働くメンバーの想いや入社後のミッションを具体的に伝えることが、他の会社との差別化につながります。
チャネルごとの訴求戦略(SNS・スカウト・ナビ)
母集団形成では「数を集める」ことに意識が向きがちですが、チャネルごとに学生の属性や情報接触行動は異なるため、同じ訴求では効果が出ません。
ナビ媒体では「安定・福利厚生」を、スカウトでは「成長・裁量・役員直下」など能動的志向への訴求が有効です。SNSではビジュアルやリアルな社員の声を重視し、共感や空気感の伝達にフォーカスすべきです。
チャネルごとに刺さる言葉を使い分けることで、ターゲットの心理に沿った母集団形成が可能になります。
| チャネル | 訴求軸 | 成果を高めるコツ |
|---|---|---|
| ナビ媒体 | 安定感・社会性 |
福利厚生・研修制度の充実を見せる |
| スカウト | 成長・挑戦 |
経営層との距離やミッション訴求が有効 |
| SNS | 共感・空気感 |
写真・動画+社員のストーリーで臨場感 |
選考
選考は、書類選考、一次面接、二次面接などを通して行います。企業にとっては内定者を選ぶためのステップですが、同時に、学生と企業が一緒に働くことについてのすり合わせを行う場でもあります。
入社後のミスマッチを避け、自社で活躍してくれる人材を採用するためには、選考基準を明確にし、面接での質問内容を洗い出しておくなど、フローを確立しておきましょう。実務経験のない新卒採用では、書類や面接での受け答えから、学生の資質や適性を見極めることが重要です。
複数の面接官が選考を行う場合には、事前に評価基準を共有、統一させておきましょう。また、採用コンプライアンスに抵触する質問をしないよう、面接官に対して教育を徹底することも必要です。
面接官トレーニングと評価基準のすり合わせ
選考において面接官の役割は「人物評価」にとどまらず、候補者に対する“企業の顔”としての影響が大きくなっています。しかし、面接官によって評価基準や質問内容にばらつきがあると、採用の質が安定せず、ミスマッチや辞退を招くリスクが高まります。
そのため、評価シートの明文化やロールプレイ研修などによって、「誰が担当してもブレない基準」をつくることが重要です。面接を通じて評価の一貫性と候補者体験の質を担保することが、採用力の底上げにつながります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な課題 | 面接官ごとに評価がブレる/候補者に与える印象が不安定 |
| 推奨施策 | 評価基準の可視化/ロールプレイ型面接官研修の実施 |
| 成果への影響 | 選考通過率と辞退率の改善、評価の透明性向上 |
| 差別化ポイント | 候補者体験まで意識した「攻めの面接設計」 |
内定・フォロー
最後のステップは、内定通知とその後のフォローです。内定後も定期的な連絡・面談などを行うことは、内定辞退率を減らすために役立ちます。また、学習教材を共有して、入社までのモチベーションアップを図る目的や、入社後スムーズに業務に移行できるように準備してもらうという狙いもあります。
内定辞退理由の収集とナレッジ化の仕組み
内定辞退が発生したとき、ただ「残念でした」で終わらせていませんか。企業の多くが辞退理由の収集を形式的に済ませており、真の改善に活かせていないのが現状です。
効果的なのは、辞退者に「心理的安全性の高い匿名アンケート」を実施することです。そしてその結果をNotionやスプレッドシートなどで全社的にナレッジ共有・タグ付け管理する仕組みを作ることをおすすめします。
属人的なヒアリングではなく、辞退理由を資産化する視点を持つことで、採用プロセス全体の改善スピードが上がります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な課題 | 理由収集が属人化/再現性がない |
| 有効施策 | 匿名アンケート+タグ管理で可視化・蓄積 |
| 活用ツール | Googleフォーム/Notion/スプレッドシート など |
| 差別化ポイント | データを定量化し、チームで改善PDCAを回せる状態を作る |

新卒採用プロセスをスムーズに進めるために意識すべきポイント

新卒採用プロセスで理想の学生を獲得するには、闇雲にプロセスの詳細にこだわるのではなく、まず方向性を固めることが重要です。新卒採用プロセスをスムーズに進めるために意識すべき、3つのポイントを紹介します。
学生の興味関心を理解する
1つ目のポイントは、学生の興味関心を理解することです。新卒採用に成功するためには、最終的に学生から就職先として選ばれなければなりません。そのためには、マーケティングと同じように、まずは相手である学生を知ることが大切だからです。
自社の採用プロセスにおいてターゲットとなる学生像を定めたら、その学生がどのようなことに対して興味や関心を持つのか、ニーズを把握することが重要です。
就職みらい研究所の「就職白書2021」によれば、「就職先を確定する際、決め手になった項目」について、最も多くの学生が選んだのは「自らの成長が期待できる」で49.8%、次いで「会社や業界の安定性がある」が、前年から3.4ポイント増の34.9%でした。
参考:就職みらい研究所「就職白書2021」
方向性を固めてから行動する
2つ目のポイントは、方向性を固めてから行動することです。新卒採用のプロセスでは、どのようなアクションを起こすかという「枝葉」にこだわるよりも、そもそもどのような人材を求めてアクションを起こすのかという「根幹」を明確にすることを、より重視すべきだからです。
例えば、求人広告・パンフレットの文言や採用サイトのデザインに注力することも大切ですが、それ以前に「自社が人材面で抱えている問題、課題は何か?」「それを解決するのはどのような人材なのか?」などの課題を明らかにしたうえで、「自社にとって理想的な人材の要件」を説明できる状態にしておくことが欠かせません。
「自社にとって理想的な人材の要件」が明確になっていれば、文言やデザインといった「手法」の改善が容易になるだけでなく、理想的な人材に響く「内容」で戦えるようになります。
ファンを増やす発想を持つ
3つ目のポイントは、ファンを増やす発想を持つことです。特に、採用プロセスのうち、認知・興味獲得に関わる「母集団形成」のフェーズでは、ターゲットとなる学生にファンになってもらうという発想が重要といえます。
なぜなら、ファンの獲得は、自社を志望する本気度の高い学生の獲得につながるため、採用に有利に働くからです。さらに長い目で見れば、ファンである社員が集まることで生まれる仕事への誇りが好循環となり、人が集まりやすい組織になることが期待されます。
ファンを増やすには、前述した意識すべきポイントの1つである、学生の興味関心を理解することが役立ちます。学生の興味関心を把握したうえで、採用活動における企業ブランディングを行ったり、学生が本当に知りたいと思っている情報を提供したりすることで、学生に対して効果的に訴求できます。
採用プロセスの設計を成功させる3つの視点

採用活動の成果は、単に「応募数」や「内定数」で測るものではありません。重要なのは、どんな人材が、どのようなプロセスで、なぜ採用されたのかが組織戦略と一致しているかどうかです。
そのためには、採用プロセスを一担当者視点ではなく、組織全体の視座から設計する必要があります。ここでは、経営・人事・現場という3つの視点から、採用プロセスを見直すための観点と実践策を紹介します。
経営視点|事業戦略と連動した採用要件定義
採用は「人を補充する作業」ではなく、「未来をつくる投資行動」です。経営戦略と採用要件が分離していると、結果的に“今の課題”にしか対応できない人材ばかりが集まり、数年後の成長を支えられなくなります。
特に新卒採用では「現在のスキル」よりも、「将来性・思考スタイル・価値観」など、育成前提での評価軸が重要です。
経営層が人事任せにせず、どのような人材が自社の競争優位を強化するのかを具体化し、明文化することが肝要です。未来から逆算することで、採るべき人材像が明確になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 意識すべきポイント | 売上計画や新規事業と人材像の整合性 |
| 主な落とし穴 | 採用ターゲットが直近課題に偏ってしまう |
| 推奨アクション | 経営・現場・人事の三者で採用要件ワークショップを実施 |
人事視点|属人化を防ぐプロセス設計と標準化
採用活動が個人の経験や勘に依存していると、属人化によってプロセスの再現性が損なわれます。これでは、担当者が異動や退職をした際にノウハウが途切れてしまい、長期的な採用力が低下します。
そこで必要なのが、評価基準や面接プロセスの言語化・可視化・テンプレート化です。
例えば、評価基準をスプレッドシートで管理するだけでなく、ATSに組み込んで全選考フローに一貫性を持たせることも効果的です。個人の感覚に依らない公平な選考体制を構築することで、候補者にも社内にも安心感を与えられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 意識すべきポイント | 採用評価基準・面接フロー・候補者対応のルール化 |
| 主な落とし穴 | 「勘と経験」に頼った選考で人材の質にブレが出る |
| 推奨アクション | 評価シート・進捗管理シートをテンプレート化しATSに統合 |
現場視点|定着・戦力化を見据えた協働設計
「人事が勝手に決めた採用」では、入社後の受け入れ体制が整わず、せっかくの人材が短期間で離職してしまうケースもあります。採用の目的は「採ること」ではなく「活躍してもらうこと」です。
そのためには、現場と協力しながら、現場にとって本当に必要な人物像や、入社後のフォロー体制まで含めた設計が必要です。
具体的には、現場社員が面接官として参加する体制や、配属予定部署と内定者を早期に接点を持たせる仕組みなどが有効です。採用活動を“全社的な取り組み”にすることが、定着率とパフォーマンス向上の鍵になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 意識すべきポイント | 現場の評価基準を活かした選考参加、オンボーディングの連携 |
| 主な落とし穴 | 「配属されたけど全く歓迎されていない」と感じさせてしまう |
| 推奨アクション | 現場参加型の面接設計+配属先メンター制度の事前設計 |
【悩み別】採用プロセスの問題と改善方法

新卒採用プロセスの過程で、悩みを抱える採用担当者の方は少なくありません。そこで、採用プロセスにおけるよくある3つの悩みについて、問題点とともに改善方法を説明します。
悩み1.母集団の不足・ミスマッチ
母集団の不足やミスマッチによって求める人材が集まらない場合、まずは母集団が不足していることそのものを問題と捉える必要があります。しかし、悩みを解決するには、さらに踏み込んだ分析が必要です。
「そもそも学生にアプローチしている絶対数が少ないのか」「アプローチはできているものの興味を獲得できていないのか」「興味関心は保たれているがエントリーのハードルが高いのか」「母集団は形成できているが要件を満たす学生が少ないのか」など、母集団形成のどこに問題があるのか、見極めることが必要です。
そのうえで、単に母集団が不足しているなら「就活サイトや求人広告を活用した露出アップを図る」「ミスマッチが発生しているなら訴求方法を変えるか人材を絞り込みやすいダイレクトリクルーティングを活用する」など、問題に合わせた改善策を立てると効果的です。
悩み2.選考基準の属人化
選考基準の属人化は、自社にとって本当に必要な人材を逃してしまうリスクにもつながります。採用責任者・リーダーが選考基準を定めていても、書類選考や面接を行う担当者が、個人的な好き嫌いや意見を優先してしまい、判断基準がブレてしまうことが問題です。結果、選考基準が属人化してしまいます。
問題を改善するには、まず採用リーダーが既存の選考基準について改めてチェックすることが必要です。採用基準の齟齬や曖昧な項目、足りない項目を洗い出し、選考にあたる担当者が判断に迷うことのないように是正しましょう。
是正後、選考にあたる担当者に、選考基準の周知・徹底を図ります。明確な選考基準に沿って選考を進めることで、属人化は事前に防ぐことができます。
悩み3.内定辞退率の高止まり
内定辞退は、採用担当者にとって大きな悩みです。自社に合う人材を絞り込んで内定承諾までもらっても、入社前に辞退されてしまう割合が高いという問題がある場合、まずは学生が内定辞退にいたった原因を分析することが重要です。
学生が内定辞退するのは、選考時に企業に対して不信感を抱いた場合、内定後に強い不安を抱いた場合の主に2つです。選考時には、些細なことでも丁寧に説明し、採用担当者や面接官の印象と態度にも気を配りましょう。
また、競合企業の方法も参考にしながら、内定者フォローを徹底することも大切です。会社のトップと会う機会を設けて内定者個人への期待を示したり、社員向けのイベントへ招待したりするなど、接触頻度を増やします。SNSやメールでのアプローチも、十分効果的です。
内定承諾率を高めるための動機づけ施策
内定承諾率を左右する最大の要素は、「企業に対する納得感」と「自分が働くイメージの具体性」です。単なる懇親会やメール連絡では、候補者の意思決定にはつながりません。
効果的なのは、配属予定部署の社員との少人数座談会や、入社後のキャリアパスを伝える1on1セッションなど、候補者個人に寄り添う施策です。また、内定通知後1週間以内に動機づけ施策を打つことが、承諾率向上に直結します。量より質のフォロー体制が内定辞退を防ぎます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な課題 | フォローが画一的・内定者が自分ごと化できていない |
| 有効施策 | 配属予定者との1on1/個別キャリア提示/社長メッセージ動画 |
| 推奨タイミング | 内定通知〜1週間以内が効果的 |
| 差別化ポイント | 質重視のフォロー+候補者の人生設計に寄り添う姿勢 |
まとめ

新卒採用プロセスにおける、それぞれの段階の概要や役割と、プロセスを進める際に意識すべきポイント、悩み別の改善方法などについて解説しました。
求める人材を獲得するためには、自社にとって最適な新卒採用のプロセスを設計し、着実に進めていくことが欠かせません。まずは自社の採用における課題を整理し、課題に沿ったプロセス設計を行いましょう。
今回紹介したポイントを参考に、ぜひ採用活動を成功に導く、理想的な新卒採用プロセスを組み立ててみてください。

