「HRテック」とは?役割や導入のメリットをわかりやすく紹介
皆さんは、HRテックという言葉をご存知でしょうか?HRテックを上手く活用することにより、採用業務の効率化を図ることができるため導入するメリットも大きいです。
そこで本記事では以下の内容について紹介します。
- HRテックとは
- HRテック導入のメリット
- HRテックの具体的なサービス
- HRテックを効率的に使用する方法
テクノロジーを活用し効率的に採用業務をすすめるためにも「HRテック」への理解を深めていきましょう。
目次
「HRテック」とは?
「HRテック」とは、「Human(人)」「Resources(資力)」「Technology(技術)」を組み合わせた造語で、読み方は「エイチアールテック」です。
最先端のIT関連技術を利用することにより、人事に関する業務を効率的に行うことができるシステムです。
HR Techがカバーできる業務範囲は、人事業務の他に、給与計算や勤怠管理、社会保険の手続きや管理などがあります。
「HRテック」は「人材の適材適所」を考える上で大きな役割を果たす
採用業務に「HRテック」を導入する目的には、「AIやデータ分析を活用した人材の適材適所化」があります。
現在、少子高齢化が進み、人材不足が嘆かれている中で、これまでの採用活動のスタイルにはなかった、「ミスマッチの可能性を下げること」「自社で長期的に活躍できる人材を採用すること」が重要視されるようになってきました。
これまで、社内の人材配置や人材採用における要件定義などはAIやデータ分析とは無関係と思われていました。しかし、昨今はAIや分析能力の上昇により適性検査から導き出す適切な人材配置や、現社員へのストレスチェックから導き出す退職予測などができるようになっています。
AIやデータ分析を行うことでより効果的な配置・採用などが行えるようになってきているのです。
「HRテック」の導入によりこれまでの採用を大きく変えることが可能
「人材の適材適所を考える上で企業が抱えている課題」としては、これまでの採用スタイルが根強く残ってしまっていることです。
例えば、「一括で応募者を集めてふるい落とす」「立ち居振る舞いや学歴など、表面的な部分だけを評価する」など、これまでは、応募者の本質を見極めることはできず、採用担当者の経験や勘のみに頼った採用スタイルが主流でした。しかし、それではミスマッチが起こるだけでなく、「その応募者にとって、どのような働き方や配置が適しているのか」が明確化できません。
とはいえ、人事業務の幅広さゆえに採用活動のクオリティ向上まで手が回らず、企業によっては採用活動そのものがルーティン化してしまい、これまでの採用スタイルから抜け出せないといった負のスパイラルにはまってしまっているのだと考えられます。
HRテックはそのスパイラルから抜け出すための手段でもあります。
「HRテック」導入のメリット
「HRテック」導入のメリットには以下のようなものがあります。
- 人事業務の削減
- 優秀な人材を確保できる
- 意思決定の迅速化が可能
ここでは具体的に「HRテック」の導入のメリットを解説していきます。
人事業務の削減
HRテックに導入されているシステムを使えば、これまで人が行なってきた操作や業務を自動化することが可能です。給与計算や各種証明書の発行、勤怠管理などこれまでのルーティン業務を自動化できます。
また、労務手続きにおいても総務省のAPIと連携すれば、オンラインで申請することも可能です。これにより人事担当者の業務負担が軽減されることになるので、余裕が生まれ、管理的な業務だけではなく戦略的な人事業務を行うことも可能となります。
HRテックを導入することにより、人事業務の負担を軽減するだけでなく、関連部署全体の負担の軽減や効率化にもつながります。
優秀な人材を確保できる
HRテックを導入すれば、複雑な採用プロセスを管理することが可能です。「優秀な人材をどのようにして確保するのか」「採用した人材を会社に定着させる方法」など採用においての悩みは多いです。
採用の際に、履歴書や面接だけでなく、ビデオ通話などで応募者と細かなコミュニケーションをとる企業も増えています。人材獲得競争においては、優秀な人材を確保するために候補者を良く知り、自社にふさわしいかどうか適切に判断しなければなりません。
HRテックを利用することにより、履歴書ではわからない候補者の志向性や企業文化にマッチする人材か確かめることできます。
意思決定の迅速化が可能
HRテックを利用することにより、結論を出すのに時間がかかっていた業務も迅速な意思決定をすることが可能です。これまで人の判断に委ねられていた業務を、分析データを基に判断することができるため、客観的かつ適切に決定を下せるようになります。
一例を挙げると、人材データと経営データを連結させて、データを分析することができます。そのデータから採用後のパフォーマンスなどを予測し、採用するかどうかの決定をすることが可能となります。
その他にも今の社員のスキルや能力を可視化することができるので、企業戦略に基づき適切な人材を配置して、業務効率を向上することも可能です。
HRテックは中小企業だからこそ取り入れるべき
現状、HRテックを導入していない企業もあります。その理由として、「HRテックは大手企業や技術的に進んでいる企業がやるもの」というイメージを持っている企業が多いためです。実際、成功例の多くは採用人数の多い大手企業なので、「活用のイメージがわかない」と感じている中小企業も多くあります。
しかし、採用人数の少ない中小企業だからこそ、「本当に必要な人材」を見極めなければ、長期的に活躍できる人材の採用は難しいです。
例えば、10人の採用枠に対して11人の応募しかなかった場合、「誰を採用するか」というよりは「誰を落とすか」という考え方にシフトしてしまいます。そうなると、学歴などの表面的な部分を比較するしか判断できる要素がなく、結果としてミスマッチが起こります。
ですので、採用人数が少ない中小企業だからこそ、HRテックを活用した採用が今後必要になるでしょう。HRテック活用のためには、「大手企業や技術的に進んだ企業がやるもの」という先入観をなくした取り組みをしていくことが大切です。
「HRテック」の具体的なサービス
HRテックという言葉が示す範囲が広く、どこから始めればいいのかわからない方も多でしょう。HRテックは注目を集めている分、新規参入業者も多く、サービスの数も年々増えてきています。
HRテックには現在大きく分けて以下のようなシステムがあります。
- 求人(人材紹介、ソーシャルリクルーティング、ダイレクトリクルーティングなど)
- 採用管理システム(ATS)(採用管理、採用広報、スキル測定など)
- エンゲージメント(人材育成・開発、社内コミュニケーションなど)
- 労務管理(勤怠・給与管理など)
- People Analytics(人事可視化・分析ツール)
- アルムナイ(企業の離職者やOB・OG)
- HCM
ここではそれぞれのシステムを解説します。
求人
「求人」とはマッチング重視のサービスです。求職者がプロフィールを通して企業にアピールし、それに対して企業がオファーを出します。
採用管理システム(ATS)
「採用管理システム(ATS)」では、過去の選考データの分析が可能となります。シンプルな操作感で、応募者の情報や選考状況が確認することができます。
「採用管理システム(ATS)」を利用することにより、採用業務をより効率化できます。
エンゲージメント
「エンゲージメント」では、独自の検査項目により、組織状態を分析し、組織改善に利用することが可能です。部署ごとの導入もできるので、部署ごとに組織状態を分析できます。
労務管理
「労務管理」では、入退社や、保険手続きなどをシステム上で管理することができます。「労務管理」を活用すれば、労務の一元化・効率化が可能です。
People Analytics
「People Analytics」の利用により、誰がいつどのような仕事をしているかを可視化することができます。サービス残業による長時間労働や勤務の不透明化を防止することが可能です。
アルムナイ
「アルムナイ」は退職者(OB/OG)専用アプリです。復職意思の確認や、現住所・就職状態を基に、求人の紹介が可能となります。
HCM(ヒューマンキャピタルマネジメント)
「HCM(ヒューマンキャピタルマネジメント)」を活用すれば、人財配置や報酬を管理できます。また、キャリアの向上や従業員のライフサイクルなども管理することが可能です。
「HRテック」を効果的に使用する方法
幅広いシステムを活用することができ、業務の効率化を促すことができる「HRテック」ですが、効果的に使用するにはどのようなポイントがあるのでしょうか?幅広いシステムを利用することができる「HRテック」だからこそ、自社に必要な情報を得るためにポイントを絞って活用することが重要です。
ここでは、主に採用に関わるカテゴリと、導入する際のポイントを解説していきます。
採用に関わるのは「求人」「採用」「エンゲージメント」
HRテックのカテゴリの中でも採用に大きく関わってくるのは、「求人」「採用」「エンゲージメント」の3カテゴリです。しかし、採用のことを考えるあまり、「採用系のHRテック」をいきなり導入するのは得策ではありません。
何故なら、仮に採用が効率化できたとしても、人材の定着ができなければ本当の意味で「採用が成功した」とは言えないからです。そのため、「求人」「採用」「エンゲージメント」の3カテゴリ以外も活用し、採用を可視化することが重要となります。
「適性検査」を活用する
HRテックの導入にあえて優先順位を付けるのであれば、1位は「エンゲージメント」となります。
エンゲージメントとは、適性検査やストレスチェックを通して、各社員に適した人材配置などを導き出すものです。社内の状態や課題を把握できれば、対策も練りやすく「現場にとって必要な人材」を把握することができるようになります。
新しい人材を採用する前に、まずは社内での「人材の適材適所」を実現する必要があるからです。
また、HRテックの導入の予算感が合わないといった場合には、「適性検査」を活用してみることをオススメします。
適性検査の具体例として、各部署で活躍している社員に適性検査を行い、その結果に近い応募者を採用する方法が挙げられます。採用では「スキルや経験」を見て採用を判断するのは難しいので、応募者の内面にフォーカスして採用を考えていく必要があるのです。
適性検査を行えば、社内で「人材の適材適所」を考える際の参考にもなるため、やっておいて損はないと言えます。
「HRテック」を使用する上での注意点
HRテックを導入する上で様々な注意点があります。導入後に「うまく業務を効率化することができなかった」「利用目的が曖昧であまり活用できていない」とならないためにも、注意すべき点は以下の2つとなります。
- 目的を明確にすることが重要
- 「HRテック」の導入はあくまでも手段の一つ
ここでは、上記の項目について詳しく解説していきます。
目的を明確にすることが重要
HRテックを導入する上で、「HRテックを導入すること」が目的となってはいけません。このシステムを使い「何を実現したいか」ということを明確にしておく必要があります。
「業務を効率化できそうだから」など曖昧な理由で導入しても、HRテックの導入が自社に合わないことがあります。そのため、「HRテックには何ができるのか」ということをリサーチした上で、「そのシステムをどう利用するのか」「何を実現したいのか」ということを考えましょう。
HRテックを利用して自社のシステムを構築するのではなく、自社に対してどのようにHRテックを活用し、どのような組織作りを行っていくのかという点が重要となります。
「HRテック」の導入はあくまでも手段の一つ
ITやAIの向上により、人が行う業務はどんどん簡易化、もしくはシステム化されるのではないかという風潮にあります。しかし、現実には、ITやAIによって行うことができる部分と、そうではない部分に分かれてきます。
このようなテクノロジーを活用するためには、自身の手でどのようにテクノロジーを使いこなし、業務において価値を見いだしていくかということが重要です。将来的には人手不足が深刻化する予測となっています。より優秀な人材を確保するために、人事業務はさらなる高度化が求められています。
優秀な人材を確保することはもちろん、社員一人一人の生産性を高めるなどの戦略的な人事業務も求められてくるでしょう。このようなことを実現するためにも、「HRテック」の導入はあくまでも手段の一つとして考え、どのようにして部署としての価値を高めていけるのかということが重要です。
「HRテック」を上手く活用するためには目的を明確にしよう
今回はHRテックの役割やメリット、サービスなどについて紹介しました。
「HRテック」を導入することにより、「AIやデータ分析を活用した人材の適材適所化」が可能となります。
また、「人材管理システム」や「適性検査の活用」を通して、採用業務の効率化や社内環境を見直し、長期的に活躍できる人材を改めてブラッシュアップするなど行うことができます。
自社の課題を効率的に解決するためにもHRテックの活用を視野に入れた採用活動を行いましょう。