【企業向け】オープンカンパニーとは?インターンシップとの違いや目的・事例
新卒採用において、学生との早期接点として重要視されているのが「オープンカンパニー」です。2025年卒採用よりインターンシップの定義が改正され、就業体験を伴わない短期プログラムは「オープンカンパニー」として明確に区分されるようになりました。
しかし、「従来のインターンシップや会社説明会と具体的に何が異なるのか」「どのようなプログラムを実施すべきか」と、企画・設計に課題を抱える担当者も少なくありません。
本記事では、オープンカンパニーの定義やインターンシップとの違い、企業と学生双方のメリットを解説します。また、具体的なプログラム事例や実施時の注意点も紹介しますので、今後の採用戦略やキャリア形成支援にお役立てください。
人事ZINEでは、オープンカンパニーを含め、3省合意の改正や2025年卒から適用されているインターンシップについてさらに詳しく知りたい方のために、資料をご用意しました。採用活動における他社の動向や学生のニーズも分かる調査結果も含まれています。ぜひご活用ください。

目次
オープンカンパニーとは?

「オープンカンパニーとは何か」を理解するには、2022年の3省合意におけるキャリア形成支援の概要とインターンシップや会社説明会との違いを知ることが近道です。これらについて、順に解説します。
オープンカンパニーの定義
3省合意におけるオープンカンパニーとは、学生に対して「企業や業界についての情報提供やPRを行う」キャリア形成支援です。具体的には、企業が学生向けに行う講演会・座談会・交流会・説明会などはオープンカンパニーに該当します。
学生のキャリア形成支援とは、学業と社会での経験を結びつけることで学習意欲の向上や仕事意識の醸成を支援するもので、企業にとっての採用活動そのものではありません。したがって、採用を考えている企業に限らず、就職情報会社や大学のキャリアセンターが実施することがあります。
しかし、企業側は学生の意見を聞くことができ、学生に自社の情報を提供できるため、人材採用という点で有益なのも事実です。
インターンシップとの違い

3省合意改正で示された活動には4類型があり、そのうちタイプ3「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」「高度専門型インターンシップ」は文字通りインターンシップです。
これらは就業体験を伴うことが必須であり、汎用的能力・専門活用型は5日以上、専門活用型は2週間以上、高度専門型はさらに長期の必要があり、学業との両立のため長期休暇期間内での実施が求められる場合があります。
それに対し、オープンカンパニーはタイプ1の「就業体験を伴わない」類型であり、参加期間は1日で完結する超短期です。また、実施時期に条件はありません。
上記の表の詳しい解説や3省合意の改正、2025年卒から適用されるインターンシップについて分かりやすく解説した資料をご用意しましたので、ぜひご活用ください。

会社説明会との違い
一般的な会社説明会は、就職活動をしている学生を対象に採用活動として行います。自社単体で開催するだけではなく他社との合同で行う場合や、自社オフィス以外の場所を借りて行う場合などさまざまです。
企業の自主的な活動として、3省合意と関係なく行われるため、原則的に内容や期間に制約はありません。
一方、オープンカンパニーとして説明会を実施する場合、目的や内容は「企業や業界の情報提供・PR」であることが必要であり、期間は1日です。対象は就職活動中の学生に限られず、学士・修士・博士課程の全年次である点も異なります。
オープンカンパニーの特徴

オープンカンパニーは一般的なインターンシップと異なり、短期間かつ体験要素が少なく、企業理解を深めることに重点が置かれているのが特徴です。ここからは、オープンカンパニーの目的や実施時期・期間、募集について掘り下げていきます。
オープンカンパニーの目的
オープンカンパニーの主な目的は、学生に企業文化や仕事内容をリアルに伝え、就職活動におけるミスマッチを防ぐこと。企業側にとっては自社の魅力を伝える機会となり、将来の採用活動にもつながります。
学生にとっては、業界や企業の理解を深める貴重な機会であり、応募前に企業との相性を確認できるのがメリット。イベントを通じてより多くの企業と接点を持ち、視野を広げられるのも魅力です。
オープンカンパニーの実施時期・実施期間
オープンカンパニーは、主に就活の早期段階である大学3年生の夏~冬に開催されることが多いですが、企業によっては通年実施している場合もあります。期間は1日~数日間が一般的で、業界研究や企業理解を目的として短時間で構成されるのが特徴。
夏季や冬季の長期休暇を利用して開催されることが多く、対面形式だけでなく、オンライン形式で実施する企業も増えています。
オープンカンパニーの募集方法
オープンカンパニーの募集は、自社の採用サイトや就職情報サイト(ナビサイト)を通じて行うのが一般的です。また、自社の要件に合致する特定の学生層へピンポイントでアプローチしたい場合は、「ダイレクトリクルーティングサービス」を活用し、スカウトを送る手法も有効です。
参加者の決定方法について、エントリーシートによる選考を行うケースもありますが、オープンカンパニーは「母集団形成」や「認知拡大」を主目的とする性質上、間口を広げるために「先着順」や「抽選」とするケースも多く見られます。先着順の場合、募集開始直後に枠が埋まることも想定されるため、告知のタイミングや事前周知を工夫し、関心の高い学生との接点を逃さない設計が求められます。
オープンカンパニー・インターンシップにまつわる企業の動向

採用競争の激化に伴い、企業と学生の接点作りは年々早期化しています。株式会社i-plugが実施した「夏期インターンシップに関する調査」によると、2027年卒学生においても早期からキャリア形成への関心が高く、夏期インターンシップといったイベントへの参加意欲が依然として高いことが伺えます。
出典:株式会社i-plug【27卒学生/企業対象】夏期インターンシップに関する調査(2025年6月)
また就職みらい研究所「就職白書2025」によると、2025年卒採用においてインターンシップなどのプログラムを実施した企業の割合は高く、なかでも「オープン・カンパニー」を実施した企業は82.8%でした。従来の就業体験を伴う「インターンシップ(タイプ3)」だけでなく、より手軽に参加でき、業界・企業理解を深められる「オープン・カンパニー(タイプ1)」を組み合わせることで、幅広い層の学生と早期に接点を持とうとする動きが主流となっています。
出典元:リクルート 就職みらい研究所調べ「就職白書2025」
オープンカンパニーを実施する企業側のメリット

オープンカンパニーを実施する企業側のメリットには、一般的な会社説明会を実施するメリットに加えてオープンカンパニーならではのものもあります。これらを合わせて解説します。
学生との早期接触ができる
オープンカンパニーを実施することで、一般的な会社説明会よりも学生との早期接触ができます。オープンカンパニーは採用活動ではないため、いわゆる採用活動解禁日を待つ必要がないからです。極端にいえば、学士1年次を対象に実施できます。
現在、少子高齢化などの理由から学生の売り手市場の傾向が続いており、企業は採用人数を確保するために、採用活動の時期を前倒しすることが常態化しています。採用活動解禁日前に学生と接触できるオープンカンパニーは、早期に学生と接点を持つ手段として有効です。
自社について多くの情報を提供できる
オープンカンパニーは、ホームページや求人広告と比較して、より多くの情報提供が可能です。
実施期間が超短期とはいえ、半日から1日を通して行うため、提供できる情報量が多いことは当然ですが、社内見学や現役社員との座談会などを通して、文章だけでは伝わりにくい社内の雰囲気や社員の様子などを学生に体感してもらうなど、多種多様な情報を伝えられます。
また、一般的な会社説明会にもいえることですが、プログラムの内容次第では双方向のコミュニケーションを図れるため、情報提供によって学生の不安や疑問を解決することも可能です。
学生の反応を確認できる
オープンカンパニーは採用選考活動そのものではないため、原則として取得した学生情報を採用選考に直接利用することはできません。しかし、学生の反応を定量・定性の両面から分析することは、その後の採用戦略において重要です。
実務的な運用としては、参加者の「出席率」や「アンケートの満足度」を測定するだけでなく、オープンカンパニー参加者がその後の「インターンシップ」や「本選考」にどの程度エントリーしたか(移行率)を検証することが推奨されます。
これにより、「プログラムの内容が学生の志望度向上に影響したか」を確認し、改善につなげることが可能です。また、アンケートで「どの点に魅力を感じたか」をヒアリングすることで、自社の強みが学生に正しく伝わっているかを検証する手掛かりとなります。
既存社員を教育する機会になる
オープンカンパニーの実施は既存社員の教育機会としても役立ちます。
普段分かっているつもりの内容でも、他人に説明するのは案外難しいものです。ましてや、社会人経験が少ない学生に対して説明する際には、自分の常識や前提が通じないことがあります。
そのため、実施担当者として選任された社員は「この仕事は社会でどのような役に立っているのか」「どのようなことに注意すればよいのか」などを考えるきっかけになります。社員自身がそれまで気づかなかった点などに改めて気づくことで、業務の効率化や意欲の向上につながる効果も期待できるでしょう。
オープンカンパニーに参加する学生側のメリット

ここまでオープンカンパニーを実施することで得られる企業側のメリットを解説してきましたが、参加者を集めるには学生側のメリットを考える必要があります。
比較的気軽に情報を得られる
一般的に就職に関する情報は学生にとって仕事人生を左右する可能性がある重要なものですが、だからといって期間が長期におよぶインターンシップに参加して情報を得るのは負担が大きいと感じる学生もいるでしょう。
インターンシップのなかでも短期である「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」でさえ5日以上の期間を要するのに比べ、オープンカンパニーは1日で行われるため、比較的気軽に参加できます。
また、一般的な会社説明会は就職活動期間の学生のみを対象にしているのに対して、オープンカンパニーは課程や年次を問わずに参加できるため、興味を持ったタイミングで参加できることもメリットです。
働くイメージを具体化できる
学生が将来について考える時、明るい想像と不安の両方が想定されますが、特に入社後のイメージが湧かなければ不安は強くなるでしょう。
オープンカンパニーが目的とする「企業や業界についての情報提供やPR」によって、企業や業界についての理解が深まれば、自分が働くイメージを具体化しやすくなり、不安の解消につながります。
また、業界や仕事についての一般論や抽象論であれば学生は自ら調べられますが、オープンカンパニーだからこそ知ることができたと思われる内容を盛り込んだプログラムを企業が用意できれば学生にとって大きなメリットになるでしょう。
オープンカンパニーの内容・プログラム例

オープンカンパニーはあくまで類型であるため、3省合意内では内容について細かく決められていません。ここでは、オープンカンパニーの内容・プログラム例を紹介します。
座学・講演会
オープンカンパニーとして座学や講演会という形で、企業や業界の解説をすることができます。一般的な会社説明会に近いプログラムになります。
座学・講演会は基本的な形式のため、職場見学やグループワークといった他のプログラムと組み合わせることが可能です。
また、オンラインで開催することもできます。対面型と比べて学生の反応を確認しにくくなりますが、「企業側が運営の負担を軽減できる」「学生が参加しやすい」というメリットもあり、検討する価値があります。
座談会
座談会という形で、双方向のコミュニケーションをとることもできます。
大人数では双方向のコミュニケーションが難しいため、テーブルごとにグループに分かれ、現役社員と会話するといった座談会もよいでしょう。
その場合、座学・講演会と比較して運営や管理においては企業側の負担が増えますが、実施後に各グループで知り得た情報を共有することで、より多くの学生の意見や反応を取得できることがメリットです。
職場見学
オープンカンパニーとして、職場見学を取り入れてもよいでしょう。
実際の職場を見ることで、学生は働くイメージが具体化しやすくなります。企業側としては、採用活動以外の効果として、学生の反応や意見を取り入れることで職場環境の改善のヒントを得る機会にもなります。
また、オープンカンパニーは実施期間が5日未満のためインターンシップと称することはできませんが、実際の業務を体験してもらい、より業務に対する理解を深めてもらうことは可能です。
グループワーク
グループワークをオープンカンパニーとして実施することも可能です。グループワーク終了後の総括的要素が必要なため、一般的には他のプログラムと組み合わせて行われます。
他のプログラムと比較した場合、課題を設定することで、学生の興味関心を集めやすい点が特徴です。ワークは楽しく挑めるものから、達成感の大きい難解なものまでさまざまですが、自社の業務と関わる内容をテーマにすることで、ワークに取り組むこと自体が企業への理解を深めることにつながります。
オープンカンパニー実施企業の事例

オープンカンパニーは、短期間で自社の魅力を伝える必要があるため、各社とも工夫を凝らしたプログラムを展開しています。ここでは、独自の切り口で学生の関心を高めている3つの事例を紹介します。
アパレル企業の事例
株式会社TSIホールディングスでは、単なる店舗見学や販売体験にとどまらず、「経営企画」の視点を取り入れたオープンカンパニーを実施しています。このプログラムは、同社のパーパス(存在意義)を題材に、学生自身がブランド発信や新規事業の企画を設計するワークショップ形式です。「服が好き」という消費者目線の興味から一歩踏み込み、ブランドが社会にどのような価値を提供するかを「物語化」して考えるプロセスを体験してもらう点が特徴です。
職種ごとの役割や戦略の背景に触れることで、学生の企業理解が深まります。また、志望動機が「ファン心理」のみに留まらず、ビジネス視点を持った内容へと発展する効果も期待されています。
出典:株式会社TSI【26卒向け】オープンカンパニー│経営目線で企業の魅力をプレゼン!
銀行の事例
栃木銀行は、1日で銀行員の仕事を理解できるオープンカンパニーを展開しています。短時間の合同説明会とは異なり、あえて6~7時間のプログラムを設定し、少人数制で実施している点が特徴です。業務疑似体験ワークなど、現場の実務に近いコンテンツが用意されています。
銀行の仕事は「地域貢献」という言葉で語られることが多い一方、学生にとっては具体的な職務内容が見えにくいという課題があるのも事実です。そこで同行は、実務体験や行員との対話を丁寧に設計し、「地域に深く関わりながら地道に価値を生み出す仕事」である点を伝えています。職種の解像度を高めることで仕事内容の魅力が伝わりやすくなり、ミスマッチのない採用につなげる狙いがあります。
出典:栃木銀行 新卒採用サイト 1DAYオープン・カンパニー
ゼネコンの事例
鹿島建設株式会社では、建設現場における「意思決定の瞬間」に焦点を当てたオープンカンパニーを展開しています。ゼネコンの仕事はスケールの大きさが魅力ですが、学生には具体的な業務イメージが湧きにくい側面もあるのが事実です。そこで同社のプログラムでは、施工現場で日々行われる判断や、所長クラスが下す重大な意思決定プロセスを追体験できるワークを用意しています。
単に建物を見学するだけでなく、「ものづくりの現場でどのようなこだわりや判断が交錯しているか」という臨場感を体験してもらうことで、建設業ならではのダイナミズムと責任の重さを伝えています。
出典:鹿島建設 オープンカンパニー情報
オープンカンパニーを実施する際のポイント・注意点

オープンカンパニーを実施する際のポイントを紹介します。また、採用活動としての会社説明会との違いから必要な注意点も解説します。
就業体験型インターンシップなどとの組み合わせも効果的
オープンカンパニーに限らず、採用活動全般に当てはまることですが、学生の売り手市場とそれに伴う競合他社との採用競争の激化から、採用活動の1つひとつを個別に考えるのは効果的ではありません。全体として一貫した戦略を立てて実践する必要があります。
例えば、オープンカンパニーの実施により自社に興味を持ってもらい、そのクロージングでインターンシップの日程を案内することは採用活動にあたらないため可能です。インターンシップに参加してもらえれば、自社への興味や理解はさらに高まります。
また、オープンカンパニーの特徴である課程や年次を限定しないことや、友人と一緒に参加するなどの気軽さがあることを利用し、定期的に開催して自社ブランディングにつなげたり、ソーシャルリクルーティングの一環として、実施したオープンカンパニーを紹介したりなど組み合わせることが可能です。
情報量を増やす工夫が必要
オープンカンパニーでは、「限られた時間のなかでいかに学生に自社への興味を持ってもらうか」が重要です。そのためには、学生にとって有益な情報を豊富に伝える工夫が必要です。
前述の座談会やグループワークなどは、学生と企業側との双方向コミュニケーションであるため、一方的な説明会よりも、多くの情報を効果的に伝えられます。動画による説明や職場体験をプログラムに組み込んでもよいでしょう。
また、質疑応答の時間を設けるならば、さまざまな角度から学生の疑問や不安に対応するために、人事採用以外の部署の社員に参加してもらうことも効果的です。
取得した学生情報は選考・採用活動に使えない
冒頭で説明した通り、オープンカンパニーを含めたキャリア育成支援の4類型は採用活動ではないため、これらの実施により取得した学生の個人情報は採用活動に使用できません。ただし、インターンシップだけは例外で、広報と選考解禁日以後はそれぞれの目的で使用可能です。
言い換えれば、オープンカンパニーを採用活動の面からみた場合、「どれほど自社に興味を持ってもらえるか、好印象を残せるか」が重要になります。
まとめ

オープンカンパニーは、インターンシップとは異なり「就業体験」を必須としませんが、その分、自社の魅力や業界の実態を短期間で効率的に伝える工夫が求められます。
学生情報を採用選考に直接利用できないという制約はありますが、早期に学生と接点を持ち、志望度を高めるための「動機づけ」の場として、その重要性は年々増しています。他社の事例も参考にしながら、ターゲットとなる学生に響く独自のプログラムを設計し、戦略的な母集団形成に役立てていきましょう。
人事ZINEでは、オープンカンパニーを含め、3省合意の改正や2025年卒から適用されているインターンシップについてさらに詳しく知りたい方のために、資料をご用意しました。採用活動における他社の動向や学生のニーズも分かる調査結果も含まれています。ぜひご活用ください。

