理系学生の新卒採用動向を徹底解説!成功戦略と具体的な採用手法も
1990年代をピークに、理系の学生数は減少傾向にあり、採用を狙っている多くの企業が苦戦しています。専門性の高い人材を求めているものの、採用要件が厳しいため、「自社にマッチする学生を採用できない」と悩んでいる担当者も多いでしょう。
今回の記事では、理系学生の採用を担当している方に向けて、理系学生の新卒採用動向を解説します。政府統計や民間調査など、さまざまなデータを参照しますので、ぜひ参考にしてください。
また人事ZINEでは、理系学生の採用を成功させる上で重要なポイントをまとめた資料をご用意しました。現状分析を踏まえ、採用フェーズ別に解説しています。ダウンロードしてご活用ください。

目次
理系新卒採用の動向や特徴

まずは、現在の理系新卒採用の動向や特徴について確認しましょう。昨今話題になっているDX(デジタルトランスフォーメーション)にも触れています。
理系学生は減少しており多くの企業が苦戦
理系学生数は減少傾向にあり、多くの企業が苦戦している状態です。
少し古いデータにはなりますが、文部科学省は、理学・工学・農学分野の学生数を公表しています。文部科学省のデータによれば、理系学生数(理学・工学・農学)は、1999年度の63.6万人がピークであり、そこから徐々に減少している状況です。
2013年度には、理系学生数が55.4万人と、1999年度のピーク時に比べて8万人も少なくなっています。大学生全体の数はそこまで変わっていないため、「進路を決める際に理系を選ぶ人が減っている」ことになります。
理系学生が減少している原因はさまざまですが、「今すぐに解決しそうな問題」ではないため、理系学生が少ないことを前提に採用活動をしなければなりません。
理系学生を求める職種が多様化
最近では、DX化やデータ分析などの需要が拡大しており、理系学生を求める職種が多様化しています。DXは、デジタルトランスフォーメーションの略称であり、デジタル技術を使ってビジネスを変えていく手法です。
例えばスーパーマーケットのような非製造業は、理系とそこまで関わりの深い業種ではありませんでした。しかしセルフレジやアプリ、ECサイトの導入など、DXによるシステム化が進んでいます。スーパーマーケットに限らず、多くの業界・業種でDX化が進み、理系学生の需要が高まっています。
このように、昨今ではさまざまな業種が、理系学生の採用市場に参入してきます。昨今の理系学生の減少傾向と相まって、ますます採用が困難になっている状態です。

理系学生の就職活動の特徴

適切な人材を採用するためには、「理系学生がどのように就活活動をしているのか」を理解するのが重要です。ここでは、理系学生によく見られる就職活動の特徴を、民間調査などのデータを用いながら解説します。
短期的に集中して活動する
理系学生は、短期的に集中して就職活動をする人が多いようです。理系学生は、文系学生に比べて卒論や研究が忙しく、就職活動をする時間を確保するのが難しいといわれています。
理系学生が研究室に配属されるのは、学部4年の初めか、学部3年の終わり頃です。一旦研究室に配属されると、卒業するまで活動するため、長期にわたる就職活動が現実的に不可能となります。
そのため、理系学生は就職活動をする期間を事前に決めておき、そこで短期集中するという特徴があります。特に就活に積極的な学生は、早期に動き出し、短期で就職活動を終わらせるケースがほとんどです。
推薦を利用する学生は減少している
推薦を利用する学生は、減少傾向にあります。理系学生は、「多くの会社にエントリーし説明会や面接を通して内定を得る」のが難しいため、大学からの推薦を活用する人もいます。理系学生の王道ルートとして知られる推薦ですが、近年は推薦を利用する学生が減っているようです。
1990年代頃までは理系学生が就職先を決める際は推薦が主流だったという指摘もありますが、「2026卒 理系学生の就職活動」によると推薦を利用予定の理系学生は全体の2割強にすぎないという結果でした。
大手企業に応募が集中する
また大手企業に応募が集中するといった現実もあります。マイナビが発表した、2026卒大学生就職意識調査では、大手志向が顕著に現れました。
「絶対に大手企業がよい」と回答したのが9.7%、「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業がよい」と回答したのが42.1%でした。
専門性を活かせる職を希望する
大手志向だけでなく、自分の専門性を活かせる職を希望する理系学生が多いようです。「HR総研×就活会議:2026年新卒学生の就職活動動向調査(3月) 結果報告 第2報」によれば、「専門性を活かしたい」と回答した学生は約7割でした。
具体的には、「学部や大学院での専攻で培った知識を活かしたい」の回答率が38%、「研究活動で培った知識や経験を概ねそのまま活かしたい」が30%でした。
先ほども触れたように、理系学生は研究室に配属され、より専門的な内容を学びます。日々研究を重ねて培ったスキルを、仕事にも活かしたいと考える学生が多いようです。
理系学生を新卒採用する際のポイント

理系学生を新卒採用する際は、いくつかのポイントに気をつける必要があります。ここでは理系学生の特徴を踏まえながら、採用時にどのようなことを意識すべきか、5つのトピックに分けて解説します。
理系学生のスケジュールを把握して早期接触を図る
まずは理系学生のスケジュールを把握し、早期接触を図りましょう。「HR総研×就活会議:2026年新卒学生の就職活動動向調査(12月) 結果報告」によると2026年卒の理系学生の就職活動を開始した時期は「2024年5月以前」が53%(文系は2024年6月が38%)となっており、理系学生の方が文系学生より早期に就職活動を開始しています。
そのため理系学生を待つのではなく、こちらからアプローチをするのが重要です。従来は、オフラインでの接触が当たり前でした。しかし昨今では、オンライン説明会など、学生への接触方法は自由度を増してきています。
企業が学生に対してスカウトメールを送るなど、さまざまなサービスが増えていますので、外部サービスの利用も検討してみましょう。
研究内容との親和性をアピールする
研究内容との親和性をアピールするのも重要です。先ほども少し触れたように、理系学生は「専門分野や研究分野と親和性のある企業」に進みたがる傾向があります。できれば、学生が研究内容をアピールする場を設けましょう。方法はさまざまですが、インターンシップが一般的です。
学生が研究内容を発表するだけでなく、企業側から「研究内容がどのように自社の業務に活かせるか」の魅力づけをするのも大切です。「2026年卒 理系学⽣の就職活動(専攻分野別)」によると、「第1志望業界になったきっかけ」として「ゼミや研究室で専門的な勉強をしたことで」と回答する割合は理系全体のうち27.4%と約3割で、専攻・研究テーマとの関連性を重視する学生は決して少なくありません。
短期インターンシップを取り入れる
インターンシップについては先ほども少し触れましたが、取り入れる際はなるべく短期で考えましょう。理系学生の就職活動は、学業との両立が難しく、長期インターンシップだと参加できない可能性があります。
第168回 【26卒就活動向】によれば、「半日・1日がよい」と回答したのは65%、「2〜3日がよい」は53%でした。理系学生の約4割が、短期でのインターンシップを希望しているようです。
大学や研究室とのつながりを作る
大学や研究室とのつながりを作るのも重要です。学生は、文系・理系ともに大手志向が強く、自分が知っている企業に入社したがる特徴があります。社員の出身大学や研究室との関係を維持できれば、理系学生のなかでの知名度を上げられるでしょう。
もしつながりが構築できていないようであれば、現役社員の力を借りて、出身大学や研究室とのコネクションを強めましょう。ただ関係を構築するだけでなく、それをなるべく長く維持し続けるのが大切になります。社員の異動や退職などで、きっかけをつかめなくなる可能性もあるため、なるべく早めに行動するのが重要です。
自社の魅力が伝わる採用手法を選択する
理系学生を採用する際は、なるべく自社の魅力が伝わる採用方法を選択しましょう。昨今では、企業による採用方法が多様化しており、従来のような「説明会→面接→採用」の王道パターンが揺らぎつつあります。
特に理系学生のような、母数の少ない層にアプローチをする場合は、ダイレクトリクルーティングのような積極的手法を検討するとよいでしょう。ダイレクトリクルーティングについては、続く項目で詳しく解説します。
理系学生と距離を縮めるには?研究室訪問・説明会のアプローチ術をご紹介

理系学生が活発に活動する研究室や学内での企業説明会において、企業がどのようにアプローチし、学生の心を掴むかについて、具体的なノウハウを解説します。
研究室訪問のアポ取りから当日までの具体的なステップ
理系学生の採用において、研究室訪問は非常に有効な手段です。まず、教授や責任者へ丁寧にアポを取りましょう。 先方の都合を最優先し、訪問目的は「研究室の活動理解と意見交換」と伝えると、学術的な関心も示せます。
事前に研究テーマを調べ、具体的な質問を用意しましょう。訪問当日は清潔感のある服装で、一般的な企業資料に加え、自社の研究開発事例や理系社員のキャリアパス資料を持参すると、学生や教授の興味を引きつけられます。
理系学生が「行きたい」と思う企業説明会の企画・運営術
従来の企業説明会では、多忙な理系学生の関心は引きにくいです。学生の学業や研究スケジュールを考慮し、開催場所や時期を選びましょう。 学内やオンライン開催も効果的です。コンテンツは一方的な説明だけでなく、学生が能動的に参加できる企画を盛り込んでください。
例えば、企業と大学の共同研究事例紹介、若手理系社員による座談会、技術体験ワークショップなどが有効です。質疑応答時間を確保し、学生の専門的な質問にも丁寧に対応することで、企業への信頼感を高められます。
理系採用における「R&D部門連携」の極意と成功事例

採用部門だけでなく、企業の技術的な中核を担うR&D(研究開発)部門が理系採用にどのように関わるべきか、その重要性と具体的な連携方法、そして成功事例を提示します。
専門性の高い理系学生に響く採用活動を行うには、彼らが将来働く可能性のあるR&D部門との連携が不可欠です。
R&D部門が主導する採用活動の具体例
R&D部門が主体的に採用に関わることで、学生の企業への興味と入社意欲を高められます。研究発表会や学会でのブース出展・講演は、専門家から直接技術を聞く貴重な機会です。現場エンジニア・研究者による面接や座談会は、学生が具体的な業務内容や企業文化を理解し、深い専門的な質問をする場となります。
さらに、共同研究や技術指導を通じた青田買いは、学生時代から関係を築き、入社後のミスマッチを大幅に減らす有効な手段です。
採用担当者とR&D部門の効果的な役割分担と連携体制
R&D部門との連携を成功させるには、明確な役割分担とスムーズな連携が不可欠です。採用部門は採用計画の立案や全体マネジメント、広報などを担当し、R&D部門は求める人材像の明確化、技術的な説明や評価を行います。
定期的な合同ミーティングで状況を共有し、学生のフィードバックや今後の戦略をすり合わせましょう。履歴書や研究概要は事前に共有し、面接前には質問事項や評価ポイントを調整することで、効率的かつ質の高い選考が実現できます。
【タイプ別】理系学生に刺さる!キャリアパスと「未来」の描き方

理系学生が企業を選ぶ上で重視する「入社後のキャリア」に焦点を当て、企業がどのように具体的なキャリアパスを提示すれば、学生の心を掴めるかを解説します。
単に「理系歓迎」と謳うだけでは不十分であり、学生一人ひとりの専門性や将来の志向に合わせた「未来」を描くことが重要です。
理系学生の主なキャリア志向タイプ
学生のタイプに応じて、企業が提供できるキャリアパスを具体的に示すことで、入社後のミスマッチを防ぎ、学生の入社意欲を高められます。研究職志向には学会発表支援や社内留学、開発・設計職志向には新製品開発プロジェクトへの早期参加などを提示しましょう。
技術コンサル・技術営業志向には顧客課題解決の具体例、マネジメント・事業企画志向にはマネジメント研修や事業企画への参画機会を示すことで、学生は自身の「未来」を具体的にイメージしやすくなります。
各タイプに合わせたキャリアパスの提示方法
学生のタイプに応じて、企業が提供できるキャリアパスを具体的に示すことで、入社後のミスマッチを防ぎ、学生の入社意欲を高められます。研究職志向には学会発表支援や社内留学、開発・設計職志向には新製品開発プロジェクトへの早期参加などを提示しましょう。
技術コンサル・技術営業志向には顧客課題解決の具体例、マネジメント・事業企画志向にはマネジメント研修や事業企画への参画機会を示すことで、学生は自身の「未来」を具体的にイメージしやすくなります。
ロールモデルとなる社員の紹介とキャリア相談体制
具体的なキャリアパスを示すだけでなく、実際にその道を歩む先輩社員の姿を見せることで、学生はよりリアルなイメージを抱くことができます。各キャリアタイプに合致する先輩社員のインタビュー記事や動画コンテンツを作成し、企業ウェブサイトや採用ブログで公開しましょう。
彼らのキャリア変遷、仕事のやりがい、今後の目標などを語ってもらうことで、学生は「自分もこうなりたい」という目標を見つけやすくなります。入社後も学生が自身のキャリアについて相談できる機会を設けることで、長期的な定着に繋がります。
理系学生に適した採用手法
ここでは、理系学生に適した採用手法として、「ダイレクトリクルーティング」について解説します。また他の採用方法として、人材紹介サービスと理系専門ナビサイトにも触れますので、採用手法を選ぶ際の参考にしてください。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、企業が求める人材に直接アプローチをする採用方法です。従来のような、学生からの応募を待つ方法とは異なり、「攻めの採用」といわれることもあります。
具体的には、学生が登録しているデータベースから求める人材を探し、スカウトメールなどを送信します。学生がスカウトに承諾すれば、そのまま選考段階に入るという流れです。
自社の採用とマッチする学生をピンポイントで探せるため、求める人材を獲得しやすいのが大きなメリットです。また企業側からアクションを起こすので、知名度の低い企業でも、自社の魅力をアピールしやすい採用方法となっています。
ダイレクトリクルーティングについて詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてください。
人材紹介サービス
人材紹介サービスは、企業と学生の間に入って、企業からの求人内容に合った人材を紹介するサービスです。求人に必要なさまざまな業務を代行してくれるため、効率的に採用活動を行えるのが代表的なメリットになります。
ただし採用が成功した際に、紹介手数料が発生するなど、コストが大きくなってしまう点に注意が必要です。
理系専門ナビサイト
理系専門ナビサイトは、従来から親しまれているナビサイトのなかでも、理系学生の採用に特化したサービスです。代表的なサイトとしては、「理系ナビ」があります。
こうした理系専門ナビサイトは、不特定多数の学生が応募してくれるため、母集団を確保しやすいといったメリットがあります。一方で、「知名度が低い企業は応募数を増やしにくい」点に注意が必要です。
まとめ

市場動向を見ても分かるように、理系学生の採用は年々難しさを増しています。狙った人材を採用するためには、理系学生の就活状況について整理し、適切なアプローチを図るのが重要です。
理系学生を上手く採用するためには、採用手法を見直す必要もあります。「これまでナビサイトを使っていたけど、応募が全然ない」といった場合であれば、ダイレクトリクルーティングを検討してみましょう。
ダイレクトリクルーティングは、企業側からアプローチする採用手法なので、知名度が低い企業であっても取り入れられます。
「OfferBox」(オファーボックス)は、新卒採用に特化したダイレクトリクルーティングサービスです。登録の母数が多いため理系・DX人材といった専門的な学生を絞り込んで直接アプローチすることもできます。自社が求める人材と直接接点を持つ方法を模索している採用担当者様はぜひご利用をご検討ください。
また、こちらの記事では、OfferBoxを活用して理系学生の採用に成功した事例を紹介しています。ぜひご覧ください。
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