Web面接を採用に活用するメリット・デメリットとスムーズに実施するコツ
採用担当者の方の中で、Web面接(オンライン面接)を導入したいものの、実施の際に気をつけておくべきポイントがよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
昨今働き方改革の影響もあり、リモートワーク推進などもありますが、普段のコミュニケーションを主に「対面」で行っている方にとっては、Webによるコミュニケーションは不慣れなこともあるかと思います。
とりわけ、これから採用でWeb面接の導入を検討されている方にとっては、Web面接のコミュニケーションにおいては何を気をつけておくべきかわからないこともあるでしょう。
今回は、Web面接を導入される方に向けて、気をつけておくべき基本的なポイントを紹介します。さらに、もしもの時、緊急でWeb面接を実施しないといけない場合などを想定して、無料でWeb面接できるツールを紹介します。
また、人事ZINEでは面接を行ううえで面接官が押さえておくべきポイントを解説した資料「【サンプル】面接官マニュアル(準備チェックシート付き)」をご用意しています。こちらも併せてご活用ください。
目次
Web面接の形式や実施動向
Web面接とは、パソコンやスマートフォンなどのデバイスを使用し、インターネットを利用して行われる面接の形式です。テクノロジーの発展やリモートワークの浸透など、さまざまな背景でWeb面接を導入する企業も出てきています。
株式会社学情の調査によれば、面接の対面とオンラインの実施比率は「対面のみ」が27.4%で最多で、次いで「対面:オンライン=5:5」が24.0%という結果になりました(2024年卒採用)。特に昨今では、1次面接や2次面接でWeb面接を導入し、最終面接を対面で実施するなど、対面とオンラインを組み合わせるパターンが見られます。
広く浸透しつつあるWeb面接ですが、実施するうえで念頭に置いておきたいポイントとして、「学生の不安や懸念を考慮すること」があります。
多くの学生はWeb面接に不慣れで、その不安から本来の実力を発揮できないケースがほとんどです。加えて、直近数年間は学生優位の売り手市場であるため、学生に選ばれるための配慮が求められます。学生の不安を軽減する取り組みは、Web面接の成功に大きな影響を与えるでしょう。
採用でWeb面接を行うメリット
採用でWeb面接を行う主なメリットは、以下の4点です。
- 場所の制約がない
- コスト削減につながりやすい
- 面接の回数を増やせる
- 面接の記録・分析がしやすい
それぞれのメリットを詳しく解説します。
場所の制約がない
採用でWeb面接を行う主なメリットは、場所の制約がない点です。面接会場をレンタルしたり、学生に実際に来てもらったりする必要がないため、学生と企業双方が移動にかかる手間や時間を節約できます。節約した分、他のタスクや準備にもっと時間を割けるようになるでしょう。
アプローチできる人材の幅が広がるのも、Web面接の大きな魅力です。例えば地方在住の学生や、海外在住の留学生もしくは現地学生など、グローバルな採用にも役立てられます。特に、多様なバックグラウンドを持つ人材と関係を築きたい、採用したいと考えている企業におすすめです。
コスト削減につながりやすい
コスト削減につながりやすいのも、採用でWeb面接を行うメリットです。例えば企業が複数の場所にオフィスを持っている場合、採用担当者が面接のために移動するコストを削減できます。
対面面接で面接会場をレンタルする場合、レンタル費用や採用担当者の交通費、遠方から来る人の宿泊費が発生することが普通です。しかしWeb面接であれば、企業のオフィスと学生の自宅がオンラインプラットフォームでつながるため、そういったコストは発生しません。
場所のセットアップや管理、後片付けなどの運営コスト軽減にもつながります。
面接の回数を増やせる
面接の回数を増やせるのも重要なメリットです。Web面接には物理的な移動がないため、面接官と学生双方の時間を節約し、それを他の面接やタスクに充てられます。結果として、多くの学生と面接ができ、初期の母集団スクリーニングのプロセスの質を高めやすくなるでしょう。
多くの学生と面接をするだけでなく、「1人当たりの面接回数」を増やすのも可能です。これによって、学生の見極めがより正確になったり、ポジティブな関係を維持しやすくなったりします。例えばこれまで1次面接と最終面接だけでフローを組んでいた場合、2次面接や3次面接を挟めば、学生の特性やポテンシャルをより見極めやすくなるでしょう。
面接の記録・分析がしやすい
Web面接を通じて行われる採用プロセスでは、面接の記録・分析が効率的に行えます。面接の様子を映像で記録することが可能なため、面接後のレビューが容易です。面接官は面接中に細かいメモを取る必要がなく、より学生との対話に集中できます。
面接の映像や音声記録は、チーム内で簡単に共有できます。複数の面接官や関連部署からのフィードバックをスムーズに収集し、評価の一貫性や質を向上させやすくなるでしょう。学生の個人情報に十分配慮する形とはなりますが、面接の記録をデータベース化すれば、過去の面接内容や学生の傾向を分析することも可能です。
上記のように、Web面接は採用プロセスの質を向上させるだけでなく、企業の長期的な人材戦略にもよい影響を与えるでしょう。
採用でWeb面接を行うデメリット
Web面接は、いくつかのメリットがある一方、デメリットもあります。採用でWeb面接を行う主なデメリットは、以下の4点です。
- 深いコミュニケーションが難しい
- 機器トラブルが発生する可能性がある
- 機材などの導入コストが発生する
- オフィスの雰囲気を伝えにくい
それぞれのデメリットを詳しく解説します。
深いコミュニケーションが難しい
採用でWeb面接を行う主なデメリットは、対面での面接に比べて、深いコミュニケーションが難しい点です。Web面接では、非言語的なコミュニケーションの制約があります。例えば学生の全身のボディランゲージを把握するのが難しく、細かい表情やしぐさを見逃す可能性があります。
Web面接では画面に映る部分のみの評価となるため、服装全体の清潔感や靴など、細かい部分での評価が難しくなります。カメラと画面が異なる位置にあるため、直接のアイコンタクトが取りにくいのも難しいポイントです。
機器トラブルが発生する可能性がある
Web面談ならではのデメリットが「機材トラブル」です。インターネット接続の不安定さや技術的なトラブルが発生してしまうと、面接を中断させ、学生の緊張感やリズムを損なってしまう可能性があります。
音声が途切れたり、映像がぼやけたりするなど、さまざまなトラブルを想定して環境を構築するのが重要です。例えば安定したインターネット環境の確保や、使用する機材のチェックなどが必要になります。事前準備の方法や、Web面接をスムーズに実施するためのポイントは、後の項目で詳しく解説します。
機材などの導入コストが発生する
初めてWeb面接を導入する企業や、大規模なリクルーティングを行う企業においては、機材などの導入コストが大きくなりやすい点に注意しましょう。クリアな映像と音声でコミュニケーションをとるためには、高品質のカメラ・マイクが必要です。新しくPC(それに付随するセキュリティソフトウェア)を導入しなければならない可能性もあります。
ただし導入コストが大きくなったとしても、長期的に見れば移動コストや場所のレンタルコストなどの削減により、投資分を回収できる可能性もあります。十分に価値のある投資かどうか、事前に検討するのが重要です。
オフィスの雰囲気を伝えにくい
Web面接は、学生がオフィスに訪れることなく実施されるため、空間の雰囲気や働く環境を直接伝えにくいのもデメリットになります。
オフィスの雰囲気や企業文化を伝えることは、学生が企業を理解し、自分がフィットするかどうかを判断するうえで重要です。対面でのインターンシップの実施や、Web面接の比率の見直しなど、オンラインに偏ってしまわないように注意する必要があります。
例えば、初回の面接はWebで行い、最終面接はオフィスで行うなどの方法が考えられます。オフィスの写真や動画をWebサイトや採用ページに掲載するなど、なるべく学生にオフィスの雰囲気を伝える工夫も必要です。
Web面接の事前準備の方法
Web面接の実施前には事前準備が重要です。事前に確認しておくポイントは以下4つあります。
- Web面接に必要な物品・情報を揃える
- Web面接の環境を整える
- カメラの距離や角度を確認する
- 学生側の環境を整えるフォローをする
順に紹介します。
Web面接に必要な物品・情報を揃える
まずは、Web面接に必要な物品・情報を揃えましょう。
Web面接は通常の対面の面接と同様に準備しておくものがあります。例えば、以下のものが挙げられます。
- PC(Web面接場所を移動する場合はノートPCなど)
- イヤホン(必要であれば)
- 学生の事前情報(エントリーシートなど)
- Web面談のツールのアカウント
これらの他にも、必要なものがあれば準備しておきます。
Web面接の環境を整える
Web面接の環境(場所)は適切か確認しておくことも重要です。以下2つの視点で確認しましょう。
- 画面環境(PCカメラ)
- 音声環境(PCマイク)
以降、順に紹介します。
画面環境(PCカメラ)
Web面接の環境が適切かどうか判断する際に重要なのは、画面環境(PCカメラ)が整っているかどうかです。
画面環境として適切でない環境は、以下が挙げられます。
- 人通りが多い(学生が面接に集中できない)
- すぐ後ろの席など、画面可視範囲に面接と関係のない社員が座っている(面接の場がオープンな場で筒抜けの印象を抱き集中できない)
- ホワイトボードなどに社内情報が書かれている(本来学生が知るべきでない情報)
これらのポイントに注意しながら、画面環境を事前に確認することが重要です。
音声環境(PCマイク)
画面環境だけでなく、音声環境(PCマイク)も重要です。
例えば、社内会議室を利用しなかった場合は社内の雑音に気をつけましょう。特に、社内にいる社員の何気ない会話など断片的に入るとネガティブイメージが想起されてしまったり、さらに顧客情報や個人情報なども意図せず環境音としてWeb面接中にマイクが音声を拾ってしまうリスクもあります。何より、Web面接を受けている学生が集中できないことが予測されます。
また、PCでオンライン面接をしている時のタイプ音にも注意が必要です。
面接メモをとる時など、タイピングをしている本人には気がつきにくいですが、意外とマイクにタイプ音が入っていることもあります。
学生にとっては、自分が話している時にタイプ音が気になって上手く話せなかったり、何か調書を取られるように身構えてしまうかもしれません。そうなることで、学生の本来の姿を見ていく場でもある面接が機能しにくくなるリスクがあります。
以上のことから、音声環境を確認することが重要です。
カメラの距離や角度を確認する
カメラの距離や角度を確認するのも重要です。
例えば、PCでオンライン面接する時、PC画面を見下ろすのが一般的な姿勢です。しかし、見下ろしたままでいると、対面で話す時と比べて違和感があります。視線とカメラの位置がまっすぐになるように、PCを少し高めの位置に設置するとよいでしょう。
また、実際に話す時には、「画面」を見続けるのは可能な限り避けた方がよいかもしれません。
本来PC画面を見る行為は、面接中の学生と目を合わせる意図があるでしょう。しかし、PCカメラと画面の位置関係上、PC画面を見てしまうと学生には目線が合わず、採用担当者が違うところを見ているように映ってしまいます。
そのため、「画面」ではなく、自分のPCにある「カメラ」をなるべく見て話す必要があります。Web面接では、目線の不一致が発生しがちです。慣れるまでは難しいかもしれませんが、可能な限り面接時はPCカメラを見ながら話しましょう。
学生側の環境を整えるフォローをする
学生側の環境を整えるフォローをするのも重要です。
面接には、緊張や不安がつきものです。加えて不慣れなWeb面接になってしまうと、より不安感が増してしまいます。
一例として、以下のような学生の懸念が想定されます。
- 自宅にPCがない場合スマホでも構わないか?
- Wi-Fiの通信速度は大丈夫か?
- スマホの場合、通信速度制限がかかっているが大丈夫か?
- オンライン面接をできる空間がないがどうすればよいか?(実家住まいで自室がなく、家族が同空間にいる)
- Web面談ツール(アプリ)のダウンロードはあるか?(必要があれば)
- 服装はどうすればよいか?通常の面接通りスーツか?
以上のような学生の懸念や不安を払拭するために、採用担当者は事前質問を受け付けたり、環境を整えるのが厳しいなら相談に乗ったりと、学生をフォローする必要があるでしょう。
採用でWeb面接をスムーズに実施するためのポイント
採用でWeb面接をスムーズに実施するためのポイントは、以下の3点です。
- 環境整備を徹底する
- 簡潔なコミュニケーションを心がける
- 面接の終え方も考えておく
それぞれのポイントを詳しく解説します。
環境整備を徹底する
Web面接では、対面での面接とは異なり、技術的な環境整備が重要です。特に安定したインターネット回線は、途中での切断や映像・音声の遅延を防ぐために欠かせません。インターネット接続の安定性を確認し、可能なら有線接続を利用しましょう。
使用するデバイス(PC、タブレットなど)や使用ソフトウェアの動作チェックも必要です。最新のOSやソフトウェアのアップデートを行いつつ、カメラとマイクのテストもして、クリアな音声と映像が伝わるか確認します。十分な環境整備を行うことで、Web面接の質を高め、双方にとって有意義なコミュニケーションを実現できるでしょう。
簡潔なコミュニケーションを心がける
簡潔なコミュニケーションを心がけるのも重要です。度々触れているように、Web面接でのコミュニケーションは、対面に比べて制約があります。言葉をはっきりと発音し、簡潔かつ明確な言葉選びを心がけましょう。
どうしても複雑な情報を説明しなければならない場合は、スライドやグラフなどを用意して視覚的に伝えます。タイミングを見て、聞きにくい部分はないかなど、こちらの意図が伝わっているかどうかを確認するのも重要です。
面接の終え方も考えておく
面接の内容だけでなく、終え方も考えておきましょう。Web面接の終え方としては、「学生に退出してもらう」「企業側から退出する」の2つです。どちらの方法を選択するかは、面接の進行やその後のスケジュールによって異なります。
学生に退出してもらう、つまり複数人の面接を行うようなケースでは、「どうぞご退出ください」と企業側が声掛けをします。企業側から退出する場合は、Web面接を終了する旨とあいさつをし、すみやかに退出しましょう。いずれの方法を選択する場合も、面接の終了を明確に伝え、礼儀正しくあいさつをすることが重要です。
Web面接ですぐに導入できるツール3選
普段Web面接ツールなどを利用されていない採用担当者の方にとっては、どのようなツールに決定すればよいか迷いどころだと思います。今回は、「無料」「使いやすい」「知名度がある」、この3つの観点から面接ツールを検討しましたので、以下でご紹介します。
Zoom
▶︎ 良いところ
高画質・高音質が特徴。URL発行型なので、学生のアクセスも簡単。プランによって制限されている機能もありますが、送信先を絞った「チャット機能」「会議の録画機能」「バーチャル挙手機能」などがあります。
▶︎ 使い方
Zoom 入門 – Zoom サポート
Google Meet
▶︎ 良いところ
Google Meetはブラウザ上で全機能が利用可能で、特別なアプリのインストールが不要です。GoogleカレンダーやGoogleドライブなど、他のGoogle製品との連携もスムーズ。電話を使用して会議に参加できるため、インターネット接続が不安定な場所からでもインできます。
▶︎ 使い方
Google Meet でビデオ会議を行う方法
Microsoft Teams
▶︎ 良いところ
Microsoft 365製品と連携しており、WordやExcel、PowerPointなどのドキュメントを直接Teams内で共有・編集できます。インターフェースが直感的で使いやすいため、研修などのコストがほとんど発生しないのも魅力的です。
▶︎ 使い方
初心者でも分かる「Microsoft Teams」の基本〜超便利なビジネスコミュニケーションツールの機能と使い方
最後に
今回は、初めてWeb面接(オンライン面接)を導入される方に向けて、気をつけておくべき基本的なポイントを紹介しました。さらに、もしもの時、緊急でオンライン面接を実施しないといけない場合を想定して、留意点を含めて無料でオンライン面接できるツールを紹介しました。
初めてのオンライン面接の導入で不慣れでもあり、不安な採用担当者の方も多いと思いますが、学生も同様に不安を抱えている可能性が大いにあります。ですので、採用担当者が学生の不安を払拭するためにも、オンライン面接ツールの選定や導入も含めてリードしていきましょう。
最後に、面接時にとるべき対応や事前準備について解説したマニュアルをご用意しています。面接実施前のチェックポイントの確認にも使っていただけます。こちらもぜひご活用ください。