面接官マニュアルとは?面接の基本や作成・運用時のポイントとNGルールも紹介

面接官マニュアルとは?面接の基本や心構え、質問例、面接におけるNG行動も紹介
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新卒採用においては面接経験の少ないポジションの人でも、面接官を任されることは少なくありません。

経験の少ない人が面接をするとなった時、以下のような悩みは尽きないでしょう。

  • 採用基準の作成方法は?
  • 面接官として必要な心構えは?
  • 面接ではどんな質問をすればいい?
  • 事前に何か準備は必要?
  • 当日の面接でするべきことは?

これらのことを理解せずになんとなく面接をしてしまうことは、近年新卒採用において問題視されている「ミスマッチ」を引き起こす一つの要因になっているとも言われています。

そこで今回は、新任人事の方でも面接の品質・精度を一定水準まで向上させることが出来る「面接官マニュアル」について、くわしく解説します。

また、人事ZINEでは、面接前の事前準備のチェックシートつきの資料もご用意しています。こちらもダウンロードしてぜひご活用ください。

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「面接官マニュアル」は、面接についての基本的なスタンスや流れ、面接で聞くべきことやNGな質問について、わかりやすくまとめております。
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目次

面接官マニュアルとは?

面接官マニュアルとは?

そもそも、面接官マニュアルとはどのような目的で用意するものなのでしょうか。面接官マニュアルの基礎知識を解説します。

面接官マニュアルとは

面接官マニュアルとは、求職者に対する評価基準に一貫性を持たせるため、面接にあたってのルールを記載した資料であり、「採用を公正かつ円滑に行うための指針」と位置付けられます。企業によって求める人材や採用基準は異なるため、決まったフォーマットはありませんが、一般的には次のような内容を記載します。

  • 自社の採用基準
  • 質問項目
  • 採用担当者のNG行動(主にコンプライアンスに引っ掛かるもの)

採用活動においては、大勢の求職者に対して複数の社員が面接を担当するケースがほとんどです。そのため、担当者の経験値や手腕によってプロセスが異なり、結果にバラつきが出てしまう事態は珍しくありません。

そこで、面接官マニュアルによって募集ポジションごとにどのような経験や知識、スキル、マインドが必要なのかを明文化し、具体的な評価項目と合否基準を定めて面接の平準化を図ります。社内の複数のメンバーで「自社らしさとは何か」「自社で求める成果とは何か」「どのような行動をとれる社員が必要か」などを話し合い、評価項目を洗い出して整理することが重要です。

面接官マニュアルの必要性

本来であれば、面接は採用方針や面接プロセスを深く理解している人物が担当するのが理想です。しかし、特に数百人、数千人の学生と一斉に面接を実施する新卒採用においては、そうもいきません。採用活動の規模が大きい企業ほど、普段は採用活動に関わらない現場社員が面接を担当するケースも珍しくないでしょう。

しかし、企業側にそのような事情があったとしても、面接官は求職者にとって「その企業を代表する人物」です。面接官の対応によっては、求職者の入社意欲を損なってしまう可能性も考えられます。そのためにも「面接官マニュアル」を作成・共有し、面接の品質を一定の水準まで引き上げておく必要があるのです。

面接官マニュアルの導入状況

実際には、面接官マニュアルを取り入れている企業はそれほど多くないとされています。カジュアル面談が普及して「マニュアル通り淡々と質問をする面接」が減りつつあり、「フランクに会話を進める面接」が好まれる傾向にあるためです。

しかし、「フランクに会話を進める面接」は、多くの場合、求職者一人ひとりに違う質問をして反応を見る「非構造化面接」です。非構造化面接では、新卒採用で重要視されがちな「対人スキル」や「リーダーシップ」などを測定できると考えられる一方、「選考の精度が低い」ともいわれています。

「求めていた人材と全然違う」というような大きな問題が発生しなくても「長期的に活躍できる人材がなかなか来ない」といった慢性的な困りごとにつながる要因にもつながりかねません。一概に「面接官マニュアルがないことで問題が生じる」とはいえませんが、面接官マニュアルによって企業が求めている人材の採用をより円滑に行えることは間違いないでしょう。

注目すべき点として、コロナ禍以降はオンライン面接が増えていることもあり、面接官マニュアルの導入が注目されるようになっています。オンライン面接とは、企業のオフィスなどで対面するものとは異なり、Web会議ツールなどを用いてインターネット上で完結する面接です。

オンライン面接は、細かい表情など「視覚的な情報が少なくなる」といった欠点があるため、マニュアルによる「構造化面接」によってそれを補えるとされています。

採用における面接官の役割や心構え

採用における面接官の役割や心構え

面接官の役割

面接官の重要な役割は、「自社で活躍する人材を見極める」「自社のPR・魅力付けをする」の2点です。ここでは、それぞれの項目を詳しく解説します。

自社で活躍する人材を見極める

面接官の重要な役割としてまず挙げられるのが、「自社で活躍する人材を見極め、採用した人材が配属された部署で活躍し、事業の成功に貢献すること」です。具体的には、大きく次の4つに分けられます。

  • 求職者の特性・性格・人間性を引き出す
  • 引き出した特性・性格・人間性を自社の採用基準と照らし合わせて正しく評価する
  • 自社の事業内容・仕事・人間関係について誤解なく伝える
  • 内定辞退や選考の途中離脱を防ぐためのクロージングをする

上記の4つのポイントは、面接官マニュアルでも強調しておきたい部分です。

自社のPR・魅力付けをする

「自社のPR・魅力付けをする」のも、面接官の重要な役割です。面接とは、面接官が応募者を見極めるとともに、応募者が面接官、ひいては企業を見極める場でもあります。面接官の印象が、入社するかどうかの1つの判断材料になることもあるでしょう。

数ある企業のなかから選んでもらうためには、応募者に対して、自社の魅力を効果的に発信する必要があります。「企業の顔としての自覚を十分に持つべき」といった点は、面接官マニュアルでアナウンスしておきましょう。

面接官に必要な心構えと姿勢

求職者の本音を引き出し、書類からは見えない特性を見極めるには、面接官の作り出す空気感が重要です。真剣に面接に臨んでいるか、高圧的な態度をとっていないかなど、求職者は想像以上に面接官の態度を見ています。経験の浅い新任面接官は基準に沿った評価や全体の進行に気を取られがちですが、自らの態度や行動にも意識を向けましょう。

また、応募者の企業理解を促し、応募への動機づけを行うには、ターゲットの価値観に合わせてアピールポイントを変える工夫も必要です。事前に社員へのアンケートやヒアリングを実施し、自社の魅力や強みを整理しておくとよいでしょう。自社の特徴を改めて棚卸すると「他社にはない、自社ならではの独自性」をアピールできます。

ただし、単に自社の良いところを羅列しただけでは、焦点がぼやけてしまいます。ターゲット層に伝えたいメッセージが届かなかったり、ターゲットではない層からの応募が増えたりする可能性がありますので、目的に応じてアピールポイントを絞ることが重要です。

面接官マニュアル(準備チェックシート付き)
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面接官マニュアルに記載する項目

面接官マニュアルに記載する項目

面接官マニュアルに記載する代表的な項目は、以下の通りです。

  • 面接官の心構えや姿勢
  • 面接の基本的な流れ
  • 評価項目ごとの質問例
  • 面接における禁止事項

それぞれ、詳しく解説します。

面接官の心構えや姿勢

面接をスムーズに進行できるよう、全体の流れを記載しておきます。質問に入る前の説明事項や導入、クロージングに入るタイミングなどを箇条書きなどの形で簡潔に洗い出しましょう。加えて、各工程にかける目安時間を記載しておくと、限られた時間を有効に活用できます。

マニュアルの最初には、面接官がどのような態度で面接に臨むべきか、面接官が持つべき心構えや姿勢を記載します。面接官の態度や言動は、求職者の応募に対するモチベーションに大きく影響を与える要素です。求職者を上から目線で判定するのではなく、会社の顔として自社の魅力をアピールする存在であることを共有しましょう。具体的な記載内容としては、次のような例があります。

  • 高圧的な言動や横柄な態度をとらず、柔らかい口調を心がける
  • 企業が一方的に求職者を選定するのではなく、企業も求職者に選ばれているという意識を持って接する
  • 偏見を持たず、求職者の言動を客観的に判断する

面接の基本的な流れ

面接をスムーズに進行できるよう、全体の流れを記載しておきます。質問に入る前の説明事項や導入、クロージングに入るタイミングなどを箇条書きなどの形で簡潔に洗い出しましょう。加えて、各工程にかける目安時間を記載しておくと、限られた時間を有効に活用できます。

評価項目ごとの質問例

評価したい項目について、求職者の特性を的確に引き出せるよう質問例を盛り込んでおくと、より面接がスムーズになります。面接の場では、求職者だけでなく面接官も緊張するものです。特に、経験の浅い面接官だと、効果的な質問ができないまま時間が過ぎてしまうケースも珍しくありませんので、参考になる質問例を用意しておくと安心です。

質問例は、評価項目ごとに設定すると、合否判定に必要な内容を聞き出しやすくなります。さまざまなケースに対応できるよう、できるだけ多くの質問例を用意し、面接官が状況に応じて使い分けられるようにするとよいでしょう。

面接における禁止事項

面接において避けるべき質問や言動、面接官としてとるべきでない態度など、禁止事項を記載します。

前述の通り、面接官は求職者にとって最初に接する企業の人間であり、会社を代表する立場です。面接において不適切な発言や態度があると、求職者の志望度を下げるだけでなく、SNSなどで悪評が広まる可能性も考えられます。企業イメージを大きく損なうリスクがありますので、マニュアルにおいても面接官がとるべきでない行動を明確に規定しておきましょう。

また、厚生労働省が掲げる「採用選考時に配慮すべき事項」では、面接時に質問すべきでない内容が記載されています。詳しくは後述します。

面接官マニュアルに書いておきたい面接の進め方

面接官マニュアルに書いておきたい面接の進め方

面接官マニュアルに面接の進め方を記載する際は、以下の項目、もしくはそれに近い内容をまとめておきましょう。

  • 簡単な挨拶・アイスブレイク
  • 面接官の自己紹介・企業紹介
  • 面接官から応募者への質疑応答
  • 応募者からの質疑応答
  • 事務連絡・クロージング

上記の手順について詳しく解説します。

簡単な挨拶・アイスブレイク

まずは簡単な挨拶・アイスブレイクです。応募者が入室したら、すぐに面接をするのではなく、簡単に雑談をします。応募者の緊張をやわらげることで、本来の話し方ができるようになり、特性・性格・人間性をより引き出しやすくなります。

アイスブレイクについては、天気の話や駅の混雑具合など、応募者にそれほど負担がかからない簡易な話題から入るとスムーズです。面接官マニュアルにアイスブレイクに関する質問集をまとめておくとよいでしょう。

面接官の自己紹介・企業紹介

次に、面接官が簡単な自己紹介・企業の紹介をします。具体的には、「どのような事業を行っているのか」「今回どのような背景があって募集をしたのか」といった項目です。求人募集や説明会では紹介しきれなかった情報を盛り込むとよいでしょう。

企業紹介については、マニュアル化しても特に問題ありませんが、機械的・事務的な説明にならないように注意が必要です。面接官の自己紹介・企業紹介が終わったら、候補者に自己紹介をしてもらいます。

面接官から応募者への質疑応答

簡単な自己紹介が終わったら、面接官から応募者への質疑応答を行います。面接官マニュアルの内容を前提として、応募者の志望動機、仕事の価値観、パーソナリティなどさまざまな点を見極めることを心がけましょう。

面接時は一問一答形式にするのではなく、関連したトピックにつなげていくようにして進めていくと、より応募者の話を引き出しやすくなります。一般的な質問に加えて、ミスマッチを防ぐための質問もいくつか用意するとよいでしょう。

応募者からの質疑応答

面接官から応募者への質疑応答がひと通り終わったら、いわゆる「逆質問」の時間を設けて、応募者が持っている疑問を解消しましょう。応募者が調べられる情報量には限度があり、さらに面接を通して新しい疑問が生まれることもあります。

面接官マニュアルを参考にしつつも、柔軟なコミュニケーションを意識しましょう。特に相手の質問への回答と合わせて、自社のPR・魅力付けをさりげなく行えると、良い印象を抱いてもらいやすくなります。

事務連絡・クロージング

最後は、事務連絡・クロージングです。面接官から伝えておきたい事務的な連絡としては、以下のようなものがあります。

  • 合否が出るまでの日数
  • 合否の通知方法(メール、電話など)
  • 今後の選考スケジュール

事務連絡が全て終わったら、応募者が部屋から出ていくまで、もしくは近くのエレベーターに乗るまでのお見送りをします。応募者が部屋から出ていく、もしくはエレベーターに乗るまで態度を崩さない点は、面接官マニュアルで訴求しておきたいポイントです。

面接官マニュアルに盛り込む質問例

面接マニュアルに盛り込む質問例

面接官がさまざまな状況に対応できるよう、面接マニュアルにはできるだけ多くの質問例を記載しておくのが理想です。ここでは、評価項目や状況ごとの質問例を紹介します。

アイスブレイクになる質問

求職者の緊張をほぐし、話しやすい雰囲気を作るために、面接の導入ではアイスブレイクを用いるのが一般的です。直接仕事に関係する話題ではなく、季節や交通手段の話などを中心に、求職者が答えやすい簡単な質問を用意しましょう。

<質問例>

  • 今日はどうやって当社まで来ましたか?
  • ○○駅は混んでいませんでしたか?
  • 寒い日が続いていますが、体調を崩していませんか?
  • 筆記試験は緊張しませんでしたか?
  • 就職活動は大変じゃないですか?

仕事の価値観や志望動機を見極める質問

仕事に対する考え方や志向性、志望動機や募集ポジションに対する意欲などを探っていきます。エントリーシートや履歴書に書かれている内容からさらに踏み込み、具体的な経験や理由を深掘りして聞き出すのがポイントです。自社とのマッチ度を確認する重要な項目ですので、さまざまな角度から質問を投げかけましょう。

<質問例>

  • 当社に応募した一番の決め手はなんですか?
  • 就職活動で企業を見る際は、どのような点を重視していますか?
  • 入社が決まったら、どのように活躍したいと考えていますか?
  • 今回のポジションにおいて、自身の適性や能力をどのように活かしたいと考えていますか?
  • 入社後にやってみたいことはありますか?
  • 同業他社と比べて、当社のどのような部分に違いを感じましたか?

職業適性を探る質問

スキルや経験値などが募集要件を満たしているかどうか見極めるには、具体的なエピソードを深掘りする質問が有効です。エントリーシートや履歴書で抽象的な表現になっている部分について「具体的には?」「その理由は?」と投げかけ、求職者の隠れた特性を探りましょう。

<質問例>

  • 前職では○○の業務を担当していたとのことですが、具体的な業務内容を教えていただけますか?
  • 前職で失敗した経験はありますか?また、それをどのように乗り越えたかも教えてください。
  • ○○というスキルを使用しての業務経験はありますか?また、その規模やプロジェクト内での役割についても教えてください。
  • 今回のポジションではお客様から直接クレームを受けることもありますが、どのように対処しようと考えていますか?

パーソナリティを見極める質問

自社の社風や部署の雰囲気に馴染めるかどうかを判断するため、面接を通して求職者の性格や人柄を把握することも重要です。応募書類からは読み取れない情報ですので、対話を深めて求職者の率直な人間性を引き出しましょう。

<質問例>

  • 家族や周りの友人からは、あなたはどのような性格だといわれますか?
  • これまで大きな挫折を経験したことはありますか?また、それを乗り越えましたか?
  • これまでに最も努力したことはなんですか?具体的にどのような努力をしましたか?
  • ストレスを感じた時、どのように解消していますか?
  • 自分の一番の強みはどこだと思いますか?

ミスマッチを防ぐ質問

ミスマッチを防ぐ質問も重要といえます。転職におけるミスマッチは、企業情報が不足したまま入社してしまうのが主な原因です。多少事務的な話にはなりますが、ミスマッチを防ぐための質問も面接官マニュアルに盛り込んでおきます。

厚生労働省の資料でも、「従事する職務の内容、残業の有無、勤務形態、転勤、賃金等労働条件を説明し、本人に労働条件の確認をしてもらう」として、情報交換の質問を推奨しています。

<質問例>

  • 全国の営業所に転勤する可能性もありますが、問題ありませんか?
  • 今回ご応募いただいたポジションは〇〇であり、業務内容は〇〇ですが、お間違いないでしょうか?
  • 1ヶ月に〇時間程度の残業が想定されますがよろしいですか?

面接官マニュアルを作成・運用する際のポイント

面接官マニュアルを作成する際のポイント

面接官マニュアルを作成・運用する際のポイントは、以下の4点です。

  • 採用基準を明確にする
  • 意味のない質問を入れない
  • マニュアルにこだわりすぎない
  • 定期的にマニュアルを更新する

上記4つのポイントを、それぞれ詳しく解説します。

採用基準を明確にする

マニュアルの作成に着手する前に、採用基準を明確にすることが重要です。面接官マニュアルは「自社の採用基準」と「質問項目」を示すものですので、面接の品質を一定の水準に引き上げるためには「明確化された採用基準に合った質問項目」が必要になります。求職者の適性を見抜く細分化した質問項目を作成するためにも、まずは採用基準の明確化を目指すべきです。

ただし、あまりにも高度なスキルを求めすぎないよう注意してください。優秀な人材を求めるあまり採用基準を高く設定しすぎると、採用自体が難しくなってしまいます。経営陣や人事のみで採用基準を決定するのではなく、現場社員とも目線を合わせながら、的確な採用基準を検討しましょう。

意味のない質問を入れない

マニュアルに盛り込む質問項目を考える際は「意味のない質問」を入れないよう注意しましょう。限られた面接時間を有効に活用するためにも、採用と関係のない質問項目を作るのは避けるべきです。「一般的に面接で聞かれそう」な質問ではなく「自社の採用基準に沿っているかどうか」を考慮して検討を進めましょう。

作成した質問項目を一つひとつ確認して「この質問によって求職者のどのような面を引き出したいのか」を吟味したり、面接中に思いついた質問があってもすぐに口には出さず「意味のある質問かどうか」を考えたりするのも有効です。

マニュアルにこだわりすぎない

意外に見落としがちなポイントですが、マニュアルにこだわりすぎないのも重要です。面接官マニュアルは、あくまでも面接を構造化するもので、「どの人が担当したとしても一定の品質を保てる」ところにその本質があります。

面接時は、必ずしもマニュアル通りに進める必要はなく、臨機応変なコミュニケーションを意識しましょう。あまりにもマニュアル的な面接の進行だと、面接本のテンプレート通りに回答する人と同じように、あまり良い印象ではありません。

定期的にマニュアルを更新する

面接官マニュアルを運用する際は、定期的に振り返りの時間を設けて、内容を更新しましょう。特に重要なのが、実際にそのマニュアルを使って面接をしている担当者の意見です。「グループで議論する」もしくは「マニュアルを評価するためのシートを記入してもらう」などの方法で意見を集められます。

さらにマニュアルの更新に関しては、人事担当者だけで完結させないことも重要です。新しく入社した人や別部署の人など、さまざまな角度からの意見を取り入れます。

面接官マニュアルに書くべき面接のコツ

面接官が意識すべき面接のコツ

面接をスムーズに進め、面接官としての役割を果たすためのコツや事前準備を紹介します。

ESや履歴書に目を通しておく

面接前には、面接を行う方のエントリーシートや履歴書をよく読んでおきましょう。履歴書やエントリーシートに書いている内容を再度聞かれると「この面接官、自分のことをしっかり見てくれてないんだろうか」と、求職者が不満を抱く要因になってしまいます。

また、履歴書やエントリーシートに書いてあることは、その人の表面的な一部分に過ぎません。「なぜそのエピソードを自己PRに入れることにしたんだろう」「このもっと深層の部分ではどのような考えを持っているんだろう」と、求職者の真意や原体験を深く掘り下げることを意識すれば、面接官と求職者がお互いに満足できる面接になるはずです。

アイスブレイクを取り入れる

面接の導入では、いきなり本題に入るのではなく、アイスブレイクを取り入れるのがおすすめです。

面接の場において、多くの求職者は緊張しており「少しでも自分を良く見せよう」「ボロが出ないようにしよう」と身構えて臨んでいます。このような状態で面接を進めても、求職者は本来持っている特性や人柄を発揮できません。求職者にとって不利なだけでなく、企業側にとってもミスマッチの原因となってしまいます。

アイスブレイクによって共通の話題が見つかれば、その場の空気が柔らかくなるだけでなく、面接官に対して親近感も湧きやすいでしょう。求職者がリラックスでき、「本音を話して大丈夫そうだな」と感じてもらえます。

気付いた点をメモに残す

面接マニュアルにない項目でも、面接時に気が付いた良かった部分や悪かった部分があれば、都度メモを取っておくのもポイントです。

求職者と対話を深めていくと、評価項目にはない視点でさまざまな気付きが得られるでしょう。その気付きをメモに残し、面接後にマニュアルに沿った評価項目とあわせて振り返ると、求職者の全体像を客観的に判断できます。

オープンクエスチョンの質問を増やす

オープンクエスチョンの質問を増やすのも重要です。オープンクエスチョンとは、応募者が回答する範囲に制約を設けず、自由に答えてもらうような質問を指します。ちなみに、オープンクエスチョンの対義語として、クローズドクエスチョンがあります。

質問の種類質問の手法質問例
オープンクエスチョン自由に答えてもらう質問の仕方◯◯についてどう思いますか?
クローズドクエスチョン二者択一や三者択一などで答えてもらう質問の仕方◯◯は△△だと思いますか?

面接官がオープンクエスチョンを効果的に挿入することによって、応募者本来の言葉・表現を引き出しやすくなります。面接官マニュアルを作成する、もしくは更新する際は、オープンクエスチョンの例を記載しておくとよいでしょう。

応募者のタイプに合わせてアピールポイントを変える

記事の序盤でも触れたように、ターゲットの価値観に合わせてアピールポイントを変えるのはとても重要です。人事戦略研究所の資料によれば、応募者のタイプは、以下の5つに分かれるとされています。

分類価値観
社会公共性社会的に意義のある仕事をしたいタイプ
自己価値向上性自分自身の能力を開発していきたいタイプ
金権優位性高い報酬を得たいタイプ
享楽性とにかく仕事を楽しみたいタイプ
保守安定性安定した仕事に取り組みたいタイプ

例えば社会的な意義を重視するタイプであれば、会社のビジョンやCSRなどの観点で訴求すると、応募者に好印象を持ってもらいやすくなります。応募者の分類や訴求ポイントを、面接官マニュアルにまとめておくと便利です。

面接官マニュアルにまとめておくべき注意事項

面接官が知っておくべき注意事項

面接では、いくつか質問すべきでない内容や配慮が必要な事項があります。面接官は、禁止事項をしっかり把握しておくことが重要です。

注意事項を作成する際は、厚生労働省のガイドライン「公正な採用選考の基本」を参考にするのがおすすめです。採用選考の基本的な考え方や、公正な採用選考を行うためのポイント、選考時に配慮すべき事項がコンパクトにまとまっています。ガイドラインは、厚生労働省の公式サイトから閲覧可能です。

ここでは、面接官マニュアルにまとめておくべき注意事項を解説します。厚生労働省のガイドラインからも一部引用しますので、あわせてチェックしてください。

NG質問例を把握する

各都道府県の労働局では「就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例」として、過去の事例などを公表している場合があります。例えば、大阪労働局では以下6つのカテゴリに分けて具体的な質問例を紹介しています。

  1. 本籍に関する質問
  2. 住居とその環境に関する質問
  3. 家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問
  4. 資産に関する質問
  5. 思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問
  6. 男女雇用機会均等法に抵触する質問

面接官によっては「何か聞かないと」と考えるあまり、無意識のうちに不適切な質問をしてしまう可能性がありますので、これらのNG質問例を把握しておきましょう。

厚生労働省のガイドラインである「公正な採用選考の基本」では、「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力に基づいて行うこと」の2点を基本的な考え方にするべきとされています。NG質問例として以下のようなものがあります。

  • 国籍はどこですか?
  • 家族構成はどのようになっていますか?
  • 信仰している宗教はありますか?
  • どの政党を支持していますか?
  • 愛読書はありますか?
  • 歴史上の人物で誰を尊敬していますか?

健康面に関して執拗に追及しない

職業安定法では「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施」を禁止しています。とはいえ、持病に関しては業務の遂行に関わってくるケースも考えられますので、どうしても確認をとりたい場合もあるでしょう。そのような場合には、以下の対応が必要です。

  • 職業の特性上、上記の個人情報を収集することが必要不可欠だということを本人へ提示
  • あくまで情報収集が目的であり、収集した情報に対しては守秘義務が守られるということを伝える
  • 持病に関しての回答を強要しない
  • 採用になった場合の持病への対応を説明(配置や業務内容など)

つまり「現在、持病はありますか?」といった直接的な質問ではなく、自社の仕事内容について正しく説明し、求職者の理解を得たうえで慎重に確認をとらなくてはなりません。

厚生労働省のガイドラインでも、以下のように言及されています。

そのため、応募者の適性・能力に関係のない事柄について、応募用紙に記入させたり、面接で質問することなどによって把握しないようにすることが重要です。これらの事項は採用基準としないつもりでも、把握すれば結果としてどうしても採否決定に影響を与えることになってしまい、就職差別につながる恐れがあります。

引用元:厚生労働省「公正な採用選考の基本」

雇い入れ時の健康診断実施義務があるように、健康状態を確認することが即座に問題なわけではありませんが、従事する業務に関係がなく必要性がない内容にまで踏み込むのは避ける必要があります。こういった点についても面接官マニュアルに記載しておきましょう。

不快な言動や高圧的な態度をとらない

求職者が不快に感じる言動や委縮してしまうような高圧的な態度は当然許されません。

面接官に悪気がなくても、言動の内容によってはハラスメントにあたる可能性があります。例えば、恋人の有無や結婚願望に関する質問は差別につながる恐れがあり、雑談のつもりであってもNGです。他にも、家庭環境について言及したり、経歴や学歴についてネガティブに解釈できるような発言をしたりすることは避けましょう。

また、企業と求職者は対等な立場であることを念頭に置き、高圧的・威圧的な態度はとらないよう心がけるのも重要です。強い言葉を使っていなくとも、大きな物音を立てたり、友達のような口調で話しかけたりしても求職者が不快に感じる可能性がありますので、注意してください。

厚生労働省のガイドラインでも、「本人に責任のない事項の把握」「本来自由であるべき事項」に留意し、不快感・不信感を抱かせないように注意するのが重要とされています。

本人に責任のない事項とは、先ほども触れたように「国籍」や「出生地」「家族」「住宅」「その他生活環境」などを指します。また、本来自由であるべき事項とは、「宗教」や「政治」などのトピックです。上記も、面接官マニュアルにまとめておきましょう。

まとめ

面接官マニュアルまとめ

経験の深さに関わらず面接官の評価スキルを高め、面接結果の質を平準化させるための施策として「面接マニュアル」の導入が有効です。マニュアルによって、面接官と採用基準に対する目線を合わせ、採用基準に即した公平な評価ができるようになります。

マニュアル作成においては、面接によって求職者の何を見極めたいのかを改めて整理し、経営層や人事、現場社員を含めて採用基準や求める人物像を明確化するところから始めましょう。

面接官マニュアルを一から導入する企業には、こちらの資料がおすすめです。面接官として押さえておくべきポイントを体系的にまとめてありますので、ぜひお役立てください。

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人事ZINE 編集部

人事ZINE 編集部

人事・採用担当者の悩みに寄り添うメディア「人事ZINE」の編集部です。 人事・採用に関する役に立つ情報や手法を発信します。 就活生の3人に1人が利用する新卒採用オファー型サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供する株式会社i-plugが運営しています。