面接官マニュアルとは?採用計画において面接官が持つ役割と面接マニュアル作成時の注意点

新卒採用においては面接経験の少ないポジションの人でも、面接官を任されることは少なくありません。

経験の少ない人が面接をするとなった時、以下のような悩みは尽きないでしょう。

  • 採用基準の作成方法は?
  • 面接官として必要な心構えは?
  • 面接ではどんな質問をすればいい?
  • 事前に何か準備は必要?
  • 当日の面接でするべきことは?

これらのことを理解せずになんとなく面接をしてしまうことは、近年新卒採用において問題視されている「ミスマッチ」を引き起こす一つの要因になっているとも言われています。

そこで今回は、新任人事の方でも面接の品質・精度を一定水準まで向上させることが出来る「面接官マニュアル」について、新卒採用アドバイザーの小野さんに解説していただきます。

【面接官マニュアル】とは自社の採用基準などを統一し、採用を円滑に行うための指標

人事ZINE編集部
――面接官マニュアルとはどういったものなのでしょうか?

小野さん
新卒採用では複数の採用担当者が大勢の求職者に対して面接を行うことがほとんどなので、求職者に対する評価基準がバラバラにならないよう、ある程度面接にあたってのルールを決めておきたいという企業が導入しているものです。

いわば、「採用を円滑に行うための指標」ですね。

企業によって求める人材や採用基準が違うので決まった型は無いのですが、

  • 自社の採用基準
  • 質問項目
  • 採用担当者として、してはいけない行動(主にコンプライアンスに引っ掛かるもの)

などを示しているケースが多いです。「企業ごとの採用のコンセプトを決めるもの」と考えると分かりやすいかもしれません。



――面接官マニュアルにおける採用基準の作成方法とは?

小野さん
採用に失敗する企業で最もよく見られる原因は、「求める人物像」が不明確なことです。

「求める人物像」が不明確であると次のような弊害が起こります。

  1. 採用したいと思う人物に自社のアピールポイントが伝わらない
  2. アピールポイントがずれた内容になる 
  3. 面接で何を聞き、判断して良いのかが分からない
  4. 面接官同士で評価が分かれる

そこで、採用する人物には入社後どのような活躍を期待してほしいのかを考え、どのような経験や知識・スキル或いはマインド(志向)が必要なのかを明文化し、具体的な評価の項目と合否基準を作ることが必要です。

そのためには、社内の複数のメンバーで「自社らしさとは何か」、「自社で求める成果とは何か」、「どんな行動をとれる社員が必要か」等について話し合い、評価の項目を洗い出し、整理することが重要です。



―― 実際のところ新卒採用にあたり、面接官マニュアルを取り入れている企業は多いですか?

小野さん
実は、面接官マニュアルを取り入れている企業は少ない傾向にあります。最近では「マニュアル通り淡々と質問をする面接」は減ってきていて、むしろ「フランクに会話を進める面接」をしている企業の方が増えてきています。

しかし「フランクに会話を進める面接」では、多くの場合、求職者一人ひとりに違う質問をして反応を見る「非構造化面接」になります。非構造化面接では、新卒採用で重要視されがちな「対人スキル」や「リーダーシップ」などを測定できると考えられていますが、一方で「選考の精度が低い」とも言われています。

「求めていた人材と全然違う」というような大きな問題に発展することはありませんが、「長期的に活躍できる人材がなかなか来ない」といった慢性的な悩みが残ってしまう一つの要因とも考えられますね。

ですので、「面接官マニュアルが無いことで問題が生じる」とは一概には言えませんが、上述したとおり面接官マニュアルを作成しておくことで、企業が求めている人材の採用をより円滑に行えるようになることは確かです。

採用における面接官の位置づけと4つの役割

人事ZINE編集部
――そもそも採用における面接官の位置づけや役割はどのようなものなのでしょうか?

小野さん
採用計画全体で見ると、「採用した人材が配属された部署で活躍し、事業の成功に貢献したと言えるようになる」までが面接官の仕事だと考えています。

そこで面接官としての重要な役割としては、大きく分けて4つ挙げられます。

  1. 求職者の経験から特性や性格、人間性を引き出すこと
  2. 引き出した特性などを、自社の採用基準と照らし合わせて正しく評価すること
  3. 自社の事業内容・仕事・人間関係について誤解なく伝えること
  4. 内定辞退や選考の途中離脱を防ぐためのクロージングをすること

ミスマッチを防ぐためには、自社の求める人材の人物像がどのようなものなのかを把握したうえで、求職者の特性や性格を面接の中で引き出し、正しく評価する必要があります。

そして、面接を通して入社意欲を高め、選考の途中離脱や内定辞退のリスクを減らすために、自社の事業内容や仕事、人間関係についても誤解のないように伝えなければなりません。求職者一人ひとりに対して入社意向を高めるまでが面接官としての役割なのではないでしょうか。



――となると、面接官にふさわしい人物はかなり限られてくるのではないですか?

小野さん
最も理想的なのは、採用計画を隅々まで把握している人物が面接を行うことです。しかし新卒採用の場合、企業によっては数百人、数千人規模の学生と面接をする必要があるので、なかなか理想通りにはいかないのが実情ですね。

求職者の数が多くなってくると、普段は現場を担当している社員が面接に駆り出されることもあります。仮に面接をした経験が少ない(もしくは全くない)社員でも、求職者の目には「その企業を代表する人物」として映ります。

面接は、企業と求職者が直接接点を持つ数少ない機会です。そのため面接がきっかけで入社意欲がなくなってしまうことも十分に考えられるので、そうならない為にも「面接官マニュアル」を作成・共有し、面接の品質を一定の水準まで引き上げておく必要があるのです。

理想的な面接官の人物像・必要な心構えとは

人事ZINE編集部
――面接を成功させる面接官とはどのような人なのでしょうか

小野さん
面接を成功させる面接官とは、入社後定着し、活躍する学生を採用に結びつけることです。

逆に、面接の失敗とは、入社後に研修や実務経験を積んだ後でも活躍が出来ずにいたり、早期に離職してしまう、ミスマッチな学生を採用してしまう事です。

よって、面接官は黒字社員を入社させる優秀なスカウトマンである必要があり、ミスマッチを事前に防ぎ、より会社の求める人材を正しく見極め結びつける役割を担う必要があります。そのためには、面接の場において、面接官と求職者が互いに必要な情報のやりとりを行い、「相互理解」を深めることが重要です。

その相互理解を円滑に深めることが出来る人が面接を成功へ導く事が出来るでしょう。



――相互理解を深めるためにも、面接をする際に必要な心構えはありますか?

小野さん
特に新任面接官ですと求職者を判断することや、進行に気を取られがちですが、面接官としては自らの行動にも意識を向けたいところです。

自信をもって面接を行えているか、必要以上に高圧的になっていないかなど、面接官が思っている以上に求職者は面接官の態度を見ています。

面接官の作る空気感は相互理解においてとても重要なファクターです。



――相手を見極めるだけでなく、魅力を伝えるためにはどうしたら良いでしょうか?

小野さん
自社の情報を適切に伝え、応募者の理解を促し動機づけるためには、求める人物像に合わせ、その人達の琴線に響くようなアピールポイントを伝えるよう工夫しましょう。

まずは前もって社員へのアンケートやヒアリングを行い、何がアピールポイントとして訴求できるかを検討します。ただし、アピールポイントを絞らずあれこれと良いところを挙げるだけでは、焦点がぼやけ、求めるターゲット層にメッセージが届かなかったり、逆に本来のターゲットでない応募者が増え、採用活動の生産性が低くなってしまったりすることもあります。

自社の強みを改めて棚卸することが「他社にはない、キラッと光る独自性のある魅力」をアピールすることにつながります。

面接官マニュアルの作り方のポイントは「明確な採用基準から質問項目を導き出す」こと

人事ZINE編集部
―― 面接官マニュアルは、具体的にどのような工程で作成するのが正しいのでしょうか?

小野さん
企業によって異なる部分もあるので、一概に「こうして作成する」ということは言えないのですが、面接官マニュアルを作成するにあたって必ず意識すべきことがあります。

それは、「明確な採用基準をもって、質問項目を導き出すこと」です。

面接官マニュアルの多くは、「自社の採用基準」と「質問項目」を示していると冒頭でも説明しました。つまり、面接の品質を一定の水準に引き上げるために必要なのは、「明確化された採用基準に合った質問項目」であると言えます。

採用基準が明確に決まっていれば、履歴書やエントリーシートの内容をもとに採用基準に沿った質問項目を導き出したり、あるいはコンピテンシー面接のように、より細分化した質問項目を作成して、求職者が採用基準に沿っているかを判断することも可能になります。



――採用基準を決める際に注意するべきことはありますか?

小野さん
採用基準を決める際に注意したいのは、「スキルを求めすぎないこと」と「人事だけで採用基準を決めてしまわないこと」ですね。新卒は中途と違って即戦力にならないケースの方が多いので、あまりスキルを求めすぎてしまうと、採用に至ること自体が難しくなってしまいます。

加えて、人事だけで採用基準を決めてしまうと、現場が考える採用基準と人事が考える採用基準が合致せず「本当に現場で活躍できる人材が見えないこと」も、新卒採用にありがちな問題です。日頃から現場の社員と関わりを持って「採用基準の目線を合わせておくこと」も、採用を円滑に進める上で重要なポイントです。



――では、質問項目を考える際に注意すべき点はありますか?

小野さん
質問項目を考える時に気を付ける点は「意味のない質問にしないこと」です。「求職者の特性や性格を引き出すこと」は面接官の役割においてもかなり重要な部分ですので、採用と関係ない質問項目を作ってしまうのは避けたい所ですね。

例えば、作成した質問項目を一つ一つ確認して、自社の採用基準に沿っている質問なのかを吟味したり、面接の中で思いついた質問があっても、すぐに口には出さず「意味のある質問かどうか」を考えてみるのも良いと思います。

それと、「コンプライアンスに関わる質問にならないこと」も質問項目を考えるうえで気を付けなければいけません。上述したように、面接を通して入社意欲が大きく変わることもあるので、「持病のこと」や「宗教」「政治」に関する質問は、よほどのことがない限り避けるべきだと思います。

さらに、職業安定法では「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施」を禁止しております。とはいえ、持病に関しては業務の遂行に関わってくるケースも考えられます。

そこで、業務遂行の面でどうしても知っておきたいという場合には、以下のような対応を行う必要があります。

  • 職業の特性上上記の個人情報を収集することが必要不可欠だということを本人へ提示
  • あくまで情報収集が目的であり、収集した情報に対しては守秘義務が守られるということを伝える
  • 持病に関しての回答を強要しない
  • 採用になった場合の持病への対応を説明(配置や業務内容など)

「現在、持病はありますか?」など、直接的な質問をするのではなく自社の仕事内容について正しく説明し、しっかりと求職者の理解を得た上で慎重に確認をとることが理想的ですね。

参考:厚生労働省公式HP内「公正な採用選考の基本」



――コンプライアンスに関わる質問というと、上述したもの以外ではどういったものがありますか?

コンプライアンスに関わる質問事項に関しては、各都道府県の労働局が「就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例」として、過去の事例などを公表している場合もあります。

例えば大阪の場合ですと、大阪労働局が公表している資料が分かりやすいですね。

  1. 本籍に関する質問
  2. 住居とその環境に関する質問
  3. 家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問
  4. 資産に関する質問
  5. 思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問
  6. 男女雇用機会均等法に抵触する質問

以上の6カテゴリが、不適切な質問として詳細に記載されています。面接官によっては「何か聞かないと」と考えるあまり、無意識のうちに不適切な質問をしてしまっていることも考えられますので、こういった資料にも目を通しておくことを推奨します。



――では具体的にはどういったことを質問すればよいのでしょうか?

小野さん
目的の人物像によっても質問は変える必要がありますので、ここでは汎用的なものを紹介しますね。

*「あなたにとって人生で重要なことはなんですか?」

価値観を聞き出すことができます。人によって何をモチベーションに生活するのかは違い、それは仕事へ大きく影響します。

その人の信念と会社の考え方が離れていると将来的に簡単に離れてしまうこともあれば、相性がよければ想定以上の生産性を生む場合もあります。

*「10年後の展望を教えて下さい。」

この質問に具体的な回答ができるかどうか、さらに回答を深堀り質問を繰り返すことで、面接用の付け焼き刃なのか、もしくは強い思いがあるのかを知ることができます。

上記のような求職者の本質を捉える質問に加え、各企業ごとに必要な適性を織り交ぜた質問をすると良いでしょう。

面接の事前準備と当日の面接で気をつけたいこと

人事ZINE編集部
――面接官が「面接官として面接前にやっておくべき準備」はありますか?

小野さん
面接官が面接前にやっておくべき準備は、「面接を行う方のエントリーシートや履歴書をよく読んでおくこと」に尽きますね。履歴書やエントリーシートに書いている内容を再度聞かれると、「この面接官、自分のことをしっかり見てくれてないんだろうか」と、求職者が不審がってしまう要因にもなってしまいます。

また、履歴書やエントリーシートに書いてあることは、その人の表面的な一部分にしか過ぎません。「何故そのエピソードを自己PRに入れることにしたんだろう」「このもっと深層の部分ではどんな考えを持っているんだろう」と、求職者の真意や原体験を深く掘り下げていくことを意識した面接にすれば、面接官と求職者がお互いに満足出来る面接になるはずです。

より円滑で精度の高い採用活動を行うことが出来れば、ミスマッチを減らし「長期的に自社で活躍できる人材」を確保出来るようにもなるので、現在採用活動が上手くいかずに悩んでいる採用担当の方は一度、「面接官マニュアル」の導入を検討してみても良いかもしれませんね。



――面接当日はまず何からするべきでしょうか?

小野さん
何よりもまずはアイスブレイクですね。

うまくアイスブレイクをすることで柔らかいムードを構築するだけでなく、お互いに本音で話す場を演出できます。

面接の場では、応募者(特に学生)は概ね緊張しており、また「少しでも自分を良くみせよう」、「ボロが出ないようにしよう」と身構えて臨んでいます。このような状態で面接を進めても、応募者の本来持っている力を発揮することができません。また、企業側にとっても採用のミスマッチの原因となります。

そこで、アイスブレイクの例としてはまずは自己紹介として、自分のことを話してみるというのも手です。

自己開示をすることは相手との壁を取っ払うことに役立ちます。その中で共通点があれば親近感も湧きやすいですし、ちょっとした失敗談なんかを盛り込めば場も和やかになりますよね。



――当日の面接での採用マニュアル運用の注意点などはありますか?

小野さん
面接時は採用マニュアルに無い項目でも、良かった部分・悪かった部分など細かな気づきがあれば都度メモを取っておくと良いでしょう。面接時はつい感情でいい悪いを判断しがちです。

採用マニュアルにある項目と面接中の細かなメモの両方を振り返ることで機械的にも感情的にもなりすぎず採用面接を進めることができます。

面接では前の選考(面接やグループディスカッション等)の評価シートも併せて見ておくことが必要です。評価シートを見ていないために、前回と同じような質問を繰り返してしまうことは非効率的ですし応募者の入社動機の低下に繋がります。

最後に

今回は、新卒採用アドバイザーの小野さんに、面接官マニュアルとは何か、面接官の心構えや役割、面接マニュアルを作成・運用する上での注意点をお話しいただきました。

新卒採用において、多くの企業でミスマッチをなくすことが重要視されている現在、面接官のもつ役割やその位置づけの重要性はより高まってきています。

事前準備はもちろんのこと、面接時に何をするのか、何が出来るのかを、面接官だけでなく人事や現場・経営層も含め、企業が一丸となって整理し採用に向き合うことが求められています。

採用の質を高めるための第一歩として、まずは「面接官マニュアル」を導入し、採用基準の目線合わせを行ってみてはいかがでしょうか?

【サンプル】面接官マニュアル(準備チェックシート付き)
【サンプル】面接官マニュアル(準備チェックシート付き)
『面接官マニュアル』は、面接についての基本的なスタンスや流れ、面接で聞くべきことや聞いてはいけないことについて、わかりやすくまとめております。
人事ZINE 編集部

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