「求める人物像」の決め方と人材獲得に有効な5つの施策例を紹介
新卒採用計画の中で、いつ・どの媒体で広報活動を行うか、どんな方法で母集団形成するか、選考はどう進めるか、などの戦略を具体的に決定していくために、最初に必要となるのが「求める人物像(ターゲット像)」の設計です。
「求める人物像」「ペルソナ」は、あらゆる採用計画の核となる要素となり、新卒採用の計画を立てる上で最も重要視するべきです。
本記事では、「求める人物像」を設計する時に知っておくべきことや具体的な設計方法、学生への有効なアプローチ手法について解説していきます。
また、人事ZINEでは、無料ペルソナ設計のフレームワークをご用意しています。記事を読み終わった後によろしければダウンロードしていただき、今後の採用活動にご活用ください。
目次
「求める人物像」を採用する際に知るべき基本的なポイント
まずは、自社が求める人物像を設定する際に知っておくべき基本的なポイントや知識を解説します。
「求める人物像」の構成要素
本記事では、求める人物像の構成要素について、「ハード面」と「ソフト面」を以下のように定義し、それぞれの特性や課題となる点を洗い出します。
- ハード面:その人の「現時点での外面的なスペック」を表すもの。応募資格として記載されることが多い。
- ソフト面:その人の「潜在的能力を含めた内面的なスペック」を表すもの。明確な水準を設定しにくい。
具体的には、「ハード面」と「ソフト面」でそれぞれ次のような指標が当てはまります。
ハード面 | ソフト面 |
---|---|
・学部、専攻 |
・価値観・性格(社風適合性)
・コミュニケーション能力 |
企業が「求める人物像」を設定する重要性
求める人物像を明確にすると、採用におけるミスマッチの解消が期待できます。
採用活動において、求める人物像は選考基準の基礎となるものです。求める人物像が定まっていないと、「自社で活躍できるのはどのような人材か」「現場でどのようなスキルや経験が求められているのか」が言語化できず、マッチ度の低い人材を採用してしまう可能性が高まります。採用ミスマッチは従業員エンゲージメントの低下や早期退職にもつながり、企業と従業員双方にとってマイナスの結果を招きかねません。
特に、昨今は少子高齢化の影響から採用売り手市場が続いており、自社のターゲット層を採用する難易度が高まっています。求める人物像が明確になっていれば、母集団の中から自社のターゲットとなる学生とマッチし、的確にアプローチすることが可能です。
「求める人物像」と採用ペルソナとの違い
「ペルソナ」とは、主にマーケティング活動で使われる概念で、典型的な顧客モデルのプロフィールやライフスタイルを具体的に設定した人物像を指します。これを採用活動に応用し、ターゲット層の人物像を明確化したものが採用ペルソナです。
求める人物像も採用ターゲットを言語化したものですが、保有スキルや経験、ポテンシャル、パーソナリティなど、主に職場において発揮してほしい能力や素質について定義します。
一方、採用ペルソナは求める人物像からさらに踏み込み、ターゲットの詳細なプロフィールを仮定するものです。例えば、年齢や性別、居住地、学歴、家族構成、趣味、ライフスタイル、今後の目標などの情報を具体的に設計します。
企業が「求める人物像」にマッチする人材を獲得できない3つの原因
求める人物像にマッチする学生を獲得できないのには、下記の3つの原因があります。
- 応募が来ない・十分な母集団を確保できないぎている
- 自社が求める人物像と実際に応募してくる人材にズレがある
- 応募してくるターゲット層に偏りがある
以下、それぞれの原因に対する課題について解説していきます。
原因①応募が来ない・十分な母集団を確保できない
まず新卒学生からの応募数自体が少ない、あるいは全く応募が来ないというケースにおいては、主な要因として下記2点が挙げられます。
- 求める人物像の条件を絞り込み過ぎている
- 求める人物像に該当する学生の絶対数が少ない
(1) 「求める人物像」の条件を絞り込み過ぎている
「求める人物像」を欲しい人材のど真ん中に設定してしまうと、当然のことながら該当する学生が少なくなり、応募が集まりません。
特に応募資格にも当たるハード面を細かく設定すると、要件を満たす母集団が一気に減ってしまいます。
極端な例かもしれませんが、経理部にグローバル人材が欲しいからと言って「簿記3級以上 × TOEICスコア600以上」、機械メーカーの研究・開発職に女性目線を取り入れたいからと言って「機械工学専攻 × 女性」などと設定してしまうと、企業自らが母集団を減らしてしまうことになります。
そもそも新卒が応募してこない、あるいは応募数があまりにも少ない、という場合は、まず求める人物像の条件を絞り過ぎていないか見直してみましょう。
「複数の人材で補強しあえるような要素は、どれか1つ当てはまればクリアとする」「入社後に育成可能な要素は外す」というように、求める人物像の構成要素として、それが絶対に必要なのかをもう一度検討してみてください。
(2) 「求める人物像」に該当する絶対数が少ない
絶対数が少ない理系学生や希少性の高い職種は、そもそも母集団形成が難しく、新卒採用市場で見つけ出すのも大変です。
例えば、希少性の高い職種の1つに「データサイエンティスト」があります。この「データサイエンス」という分野や言葉自体が比較的まだ新しく、専攻科目としてデータサイエンスを直接的に学べる大学自体が少ないため、学部や専攻のみでターゲットを絞ることが困難です。
かと言って、「学部不問」と表明してしまうと、データサイエンティストとして必要なスキルである「数理統計学、プログラミング、情報処理」を有していない学生からも応募が来てしまいます。
専門性が高く、求める人物像の「ハード面」を細かく設定せざるを得ないがゆえに、応募数が極端に減ってしまうというのが現状です。
絶対数が少ないターゲットの採用については、就職ナビなど、学生からのエントリーを待つだけの採用手法では母集団形成が非常に難しく、求める人物像へのアプローチ方法を変える必要があります。
原因②自社が「求める人物像」と実際に応募してくる人材にズレがある
応募数自体はそこそこ確保できているのに、設定した人材像から外れた学生が来てしまうというパターンです。
この要因としては、下記4点が考えられます。
- 求める人物像のハードルを高く設定しすぎている
- 求める人物像のソフト面を言語化できていない
- 求める人物像を社内で共有できていない
- 学生は求める人物像を甘めに認識しがち
(1) 「求める人物像」のハードルを高く設定しすぎている
企業が設定している求める人物像のレベルと実際に応募してくる学生のレベルに乖離が生まれてしまう原因として、そもそも企業がハードルを高く設定しすぎているという場合があります。
先ほど、求める人物像の構成要素が多すぎると応募が集まらないと説明しましたが、構成要素が少なくても、1つ1つの要素のハードルを高く設定しすぎては、そのレベルに見合う学生はどんどん減ってきてしまいます。
本当に入社時点でそのレベルの能力が必要なのか、入社後のトレーニングで成長の見込みがあるのかなど、今一度、求める人物像の構成要素を1つずつ見なおしてみましょう。
(2) 「求める人物像」のソフト面を言語化できていない
どの企業においても、「新入社員に求めるもの」「社風にフィットする人物像」というものは必ずあるはずですが、それを明確に言語化できていないというケースが散見されます。
特に人物像のソフト面は、端的に表現しやすいハード面と違って、いつ・どの担当者が説明しても同じ言葉で表現されるとは限りません。
実際に会う機会があれば、対話を繰り返すことで「自社が求めるのはこんな人!」というものが、学生と企業の間で共有化されていくでしょう。また話し方や身振り素振りから、その人が発する熱量や言葉で表現しづらい想いまでも伝わるかもしれません。
しかし、顔を見合わせて直接話をすることができない場合は、いくら社内で確固たる人物像が定まっていても、「言葉で置き換える」「文書という目に見える形とする」ことをしなければ、学生たちに伝わりません。
求める人物像はハード面だけでなく、ソフト面についても設計をしっかりと行うこと、さらに漠然としたイメージではなく、的確に言語化するところまで綿密に進めることが重要です。
(3) 「求める人物像」を社内で共有できていない
求める人物像が決定していても、社内の採用担当の中で共有がしっかりできておらず、各人のイメージするものにバラつきがあると、学生への伝わり方も当然バラバラになります。
特にソフト面の言語化の際に、抽象的な表現や一義的でない言葉を使用していると、求める人物像がぼんやりとしてしまい、採用担当それぞれが異なる人物像を描いている可能性が高いです。
一義的でない言葉というと、例えば「リーダーシップ」という言葉は、その言葉を聞いてどんなリーダー像を思い浮かべるかにバラつきが生じます。
自身がハードワークをこなしてチームのペースメーカーとなるリーダーなのか、メンバーの能力や特性が活かせる配置を組んでチームバランスをとるサポート型のリーダーなのか、メンバー一人ひとりの個性やスキルを伸ばすのが得意なコーチタイプのリーダーなのか、といった具合です。
また採用担当の一部では共有できているけれども、上層部には伝わっておらず選考が難航したというケースもあります。
このように求める人物像を社内共有をしっかり行っていないと、下記のような、非効率的で無駄なコストのかかる選考が起こり得ます。
- 応募してくる学生層にバラつきが出る
- 1次面接では意気投合できたのに、2次面接ではお互い違和感を感じた
- 最終面接で大量に落とす(不採用とする、不合格とする)結果となった
- 実際に働き始めてからミスマッチが発覚した
入社後にミスマッチが発覚するというのは、企業にとっても学生にとっても悲しい事態です。
こういったことにならないように、求める人物像は、抽象的な表現を極力使用しないように一義的に規定し、社内の採用や選考に関わる全員で共有するようにしましょう。
(4) 学生は「求める人物像」のソフト面を甘く認識しがち
企業が公表している「求める人物像」を正しく認識できないまま応募してくる、下記のような学生が少なからず存在するということを知っておきましょう。
- 企業PRの良いところしか目に入っていない
- 職務に対する適性を断定的に判断し、大丈夫だろうという楽観的な気持ちで応募してくる
- 企業の「求める人物像」に可能な限り寄せて自分をアピールする
ただ、上記のような学生の行動に納得できる部分もあります。
例えば、実際の新商品の開発エピソードを添えて「挑戦を楽しめる人!」と書かれていると、学生はどういった印象を受けるでしょうか。
- 楽しそう(成功エピソードの良い部分だけしか見えてない)
- やってみたい・自分にもできそう(職務に対する適性を断定的に判断している)
- 自分はこういう人間だとアピールしよう(自分を求める人物像に寄せる)
特に人物像のソフト面は、企業側も「抽象的になりやすい」「言語化がうまくできていない」という課題が、学生側の自己PRや志望動機においても表れやすく、書面ではお互い理解しにくいのです。
これらは実際に会って話をしてみないとわからない部分でもあるため、事前に目星の学生へ接触をはかるといった戦略を立てておかないと、解消が難しいです。
原因③応募してくるターゲット層に偏りがある
求める人物像から大きく外れてはいないものの、応募してくる層に偏りがあることを問題に感じている企業も多いでしょう。例えば、以下のような場合です。
- 幅広い分野で活躍の場があることをアピールしても、応募してくる学生の専門分野が偏ってしまう。
- 特定の層からは有り余るほどの応募がある一方、採用を急いでいる部署やチームにフィットする学生が一向に現れない。
この問題の主な原因は、「学生は表面的な企業イメージを持ちやすい」という傾向にあります。
就業経験を持たない学生は、その企業の社員や業界経験者からの情報を「自分で集める」ことが難しく、それ以外から得られる断片的な情報を組み合わせて企業イメージを形成していきます。
以下、具体的な事例を2つ紹介しましょう。
事例1.化学系(企業イメージで応募してくる層)× 機電系・情報系(応募が足りていない層)
主力製品のイメージによって応募してくる学生の専攻に偏りが見られたBtoB企業様の例です。
主要事業の1つが高性能ゴム・樹脂製造であったことから、素材系のイメージが強く、化学系専攻の方からの応募が多い状況でした。
しかしながら実際には材料だけではなく製品づくりまで一貫してやっていますので、機械・電気・情報・物理などのスキルも役立ちます。
応募数はあるものの、業種イメージからターゲット学生に出会えず、応募してくれる方と弊社が採りたいと思う人物像にミスマッチが生まれていました。
事例2.受動的・安定志向(業界イメージで応募してくる層)× 意欲的・主体性(企業が求める人物像)
監査法人という業界特有の「お堅いイメージ」から、求める人材からの応募が来なかったという例です。
ビジネスをサポートするバックオフィスの仕組み作りに力を入れていたため、能動的に動ける学生からの応募を求めていたのですが、すでに整っている仕組みを丁寧にこなすことに長けた、受動的な学生からの応募が多数ありました。
おそらく弊社が監査法人ということから、学生にとってお堅いイメージがあったのではないかなと思います。
選考に進んで時間をかけて説明しても、働き方のビジョンが合わないねとなってしまい、お互いにとって不幸だったと思います。
以上の例から読み取れるように、学生が抱く企業イメージは、企業の主要事業(商品・サービス)のイメージや世間一般の業界イメージに影響を受けやすいものとなっています。
この学生が持つ企業イメージは簡単に変えられるものではない上に、企業側からしても「求める人物像」の中に、内部事情や現場のリアルを含めることは難しいです。
固定的なイメージを形成されやすい業界・企業では、「求める人物像」からの応募があっても偏りが出やすく(もしくは応募自体が来ない)、就活ナビのような一括でエントリーを集める方法以外の採用手法を検討する必要があります。
「求める人物像」の決め方:3つの手順で設定
ここまでのポイントを改めて整理しておきます。
- 求める人物像の構成要素を細かく設定しすぎると絶対数が極端に少なくなってしまう
- 求める人物像は、一義的に言語化されたもので、社内で共有ができていないと、選考中や入社後にミスマッチが起こりやすい
- 求める人物像にマッチする人材かどうかは、実際に会ってみないと判断できない部分がある
- 求める人物像は、学生が持つ企業イメージや業界特有のイメージによって塗り替えられることがある
上記のポイントを押さえた上で、自社の求める人物像を設計していきましょう。
自社が「求める人物像」を導き出すには、下記のステップで考えることが大切です。
- 求める人物像の情報収集
- 求める人物像のプランニング
- 採用活動における活用計画
ステップ1.「求める人物像」に関する情報収集
まずは求める人物像の情報収集を行います。その際は「経営理念(自社の経営哲学)」「経営戦略(自社が目指す目標)」「ハイパフォーマー(成果達成に必要な要素)」といった経営資源を活用するのが一般的です。
経営理念、経営戦略、ハイパフォーマーを見つめ直すことで、「どのような人材像が自社にふさわしいか」をイメージしやすくなるでしょう。
なお、ハイパフォーマーを分析するには、業績の良い社員と悪い社員を比較したり、業績が良い社員の共通項を探る手法などが用いられます。
分析手法①企業・組織の目標・ビジョンを整理する
まず自社全体や配属予定先の組織の目標やビジョンを達成するために、どういった企画・業務を進めていかなければならないかを分析します。
そして、その業務遂行のために必要となる能力や性格・考え方を導き出し、「求める人物像」を設計するという方法です。
企業や組織の理想像を描くことができる反面、現実と離れた推定的な要素が含まれやすく、実際の労働環境や制約も十分加味しておかないと「非現実的な “ただの” 理想像」になってしまいます。
これから事業変革が予想される、異動が多い可能性がある、ジェネラリストを求めているといった、長期的な視点が求められる場合に有効となる人物像設計方法です。
分析手法②自社で活躍している人材の特徴を洗い出す
こちらは、自社で実際に活躍している人をモデルに、その人の能力や性格、成果を生み出している要素を分析して、「求める人物像」を導き出します。
具体的には、新卒入社3年目で活躍している人とそうでない人に適性検査や面談などを行い、傾向を比較して活躍要因を抽出していくといった方法があります。
実際に自社で活躍している人材がモデルなので、現実的な人物像を描きやすく、能力だけでなく社風にフィットするかどうかという点も可視化しやすいです。
ただし、個人的・限定的な人物像になってしまう可能性もあるため、特定の職種のみで有効な活躍要因となっていないか、モデルとなる活躍人材の能力が突出しすぎていないかに注意しましょう。
採用予定人数が多い場合は、「求める人物像」を何パターンかに分けるといった工夫も必要です。
企業や組織の目標・ビジョンと個別の活躍人材のどちらを選択するのがより良いかというわけではなく、実際のところは両サイドからのアプローチをうまく組み合わせるのが望ましいです。
メインとする分析対象を決定して、足りないところは他方で補うというように「求める人物像」をブラッシュアップしていきましょう。
ステップ2.「求める人物像」の要件の整理
求める人物像を情報収集した後、要素分解を行います。主な要素に前述したハード面とソフト面がありますが、さらに細かく区分けするとよいでしょう。以下はその例です。
- 性別
- 年齢
- 地域
- 価値観
- 性格
- 専門性
- 技術知識
- 保有資格
- 学力
- 思考力
- コミュニケーション力
- 対人折衝力
- 企画力
- 研究力
- 給与
- 勤務時間
- 勤務場所
どこまで細かく要素分解するのかは企業によって異なりますし、理想どおりの学生を採用できるとは限りません。しかし「どのような人物像が最もふさわしいのか」をプランニングし、主な要素を言語化して社内で共有することで、採用活動がスムーズに進みやすくなります。
言語化の例として「野心にあふれ、向上心が高い人物」「社交性が高く、対人折衝力に優れた人物」などがあります。
ステップ3.「求める人物像」のブラッシュアップ
おおまかな要件が抽出できたら、実際の採用活動に即して人物像をブラッシュアップしていきます。
まずは、経営陣や配属予定の部署などに要件をチェックしてもらいましょう。経営層や採用・人事部門の考える人物像と現場が本当に求めている人材には差異があることも珍しくありませんので、綿密なすり合わせが必要です。
あわせて、現状の就職市場や業界動向を考慮して、「ターゲットとする人材が本当に採用可能なのかどうか」も確認しなくてはなりません。例えば、希少な資格や専門的な知見を持った人材をターゲットにしても、そもそも就職市場にそのような人材がほぼ存在しない可能性も考えられます。単に自社の希望を盛り込むのではなく、実現可能性を考えて人物像を仕上げていきましょう。
資料【採用したい学生のペルソナ設計フレームワーク】をダウンロードする
人事ZINEでは、採用したい学生のペルソナ設計フレームワークを解説した資料を準備しております。本記事と併せて、こちらの資料も合わせて実務でご活用ください。
【企業事例】「求める人物像」を明確化し採用ページで発信しているケース
求める人物像を明確化して採用活動に応用している3社の事例を紹介します。それぞれ「求める人物像」「特徴」などを紹介するので参考にしてください。
事例1:ソフトバンク
ソフトバンクの求める人物像は「ソフトバンクの変化を楽しみ、何事もチャンスと捉え挑戦する人」です。
ソフトバンク自体が変化し続けているため、変化を楽しみながら、どのような仕事もチャンスと捉えてやり遂げ、意欲的にさまざまな機会に手を上げる人物像をイメージしています。
また、ソフトバンクでは社員に対して以下の5つのバリューを提示しています。
- いちばんって、楽しい。
- 挑戦って、楽しい。
- 逆算って、楽しい。
- 大至急って、楽しい。
- あきらめないって、楽しい。
求める人物像でも「挑戦」というキーワードを使っていることから、常識や慣習に流されず、常に最大級の結果を求めて試行錯誤できる、積極的な人材を求めているといえるでしょう。
事例2:竹中工務店
「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という経営理念を大切にしている竹中工務店が求める人物像は「新しい時代の社会づくりに挑戦する人材」です。具体的には以下5点の項目が公式ホームページに記載されています。
- 強い覚悟と粘り強さ
- 誠実に人と向き合うこと
- 先まで考える主体性
- ルールの中での創意工夫
- チームワークと情熱
ただし最初から全てのキーワードを満たす必要はなく、建築の仕事が好きで挑戦する気持ちがある人材を期待している、という特徴があります。
事例3:AGC
「易きになじまず難きにつく」という創業精神を持ち続けているAGCが求める人物像は「自ら考え、意見・行動し、挑戦できる人」です。
AGCはさまざまな困難を乗り越えてきたため、「巻き込む力」を中心に「情熱」「革新」「チャレンジ」「インテグリティ」の5つがキーワードとなっています。
若い頃から大きな仕事を任される機会が多い会社なので、「チャンスに対して熱い思いを持って挑む人物像を期待している」という特徴があります。
「求める人物像」にマッチする人材に出会うために企業がすべき施策
自社の「求める人物像」の設計と社内での共有ができれば、残りのステップは学生にそれをしっかりと理解してもらい、応募へ進んでもらうことです。
ここでは、どういった課題をクリアすればいいか、選択肢としてどういう手法があるか、それぞれの課題解消法を紹介します。
①認知度アップに向け企業側からアプローチする
知名度が低い中小企業・ベンチャー企業や、学生から認知されていないBtoB企業に多いのが「自社の存在に気付いてもらえない」という悩みです。
企業の存在を知らなければ、いくら求める人物像を提示しても、学生に知ってもらう機会がありません。そこで、学生に自社を見つけてもらおうとするだけでなく、企業から学生にアプローチする採用活動を取り入れることが重要です。
就職活動中の学生は、有名企業や大企業など、もともと知っている企業にエントリーしようとする傾向があります。就活ナビサイトや合同説明会のような、学生が企業を探して応募する仕組みの採用手法のみに頼っていては、知名度の高い人気企業に埋もれてしまう可能性が高いです。具体的には下記のような方法を検討しましょう。
- 合同説明会などでターゲットに近い学生への声かけ
- 職種や学部・専攻などを絞った特化型イベントへの参加
- 就活ツイッターなどSNSの活用
- 人材紹介サービスの利用
- ダイレクトリクルーティングサービスの利用
このように、企業からターゲットとなる学生へ個別アプローチする施策を採用活動に取り入れると、学生との接触機会を増やせます。
②学生に体験・コミュニケーションの機会を提供する
先ほどの事例でも紹介した通り、学生が企業や業界に抱く表面的なイメージは簡単に変えられるものではありません。
外面的な企業イメージだけでなく、企業内部のリアルな部分を知ってもらわないことには、せっかく綿密に設計した「求める人物像」も固定的なイメージで塗り替えられてしまいます。
これを解消するには、「企業が学生に直接話をしにいく、あるいはそういった体験やコミュニケーションの場・機会を提供する」といったことが必要です。
学生と接触できる機会を作る具体的な方法には、下記が挙げられます。
- インターンシップの提供
- 研究室訪問や大学OBの派遣(理系学生対象)
- リファラル採用
- 人材紹介サービスの利用
- ダイレクトリクルーティングサービスの利用
学生と早期に接触できる「インターンシップ」は、実際の業務を通じて、学生に企業風土や現場のリアルを知ってもらう体験の場です。企業イメージを経験で塗り替えることが期待できますが、そもそも学生は参加するインターンも企業イメージで決定している可能性があることも知っておきましょう。
また、新卒採用では活用している企業はまだ少ないですが、社員が知人(新卒の場合は後輩)を紹介する「リファラル採用」という手法もあります。
「人材紹介サービス」は、求める人材のみを紹介してくれるサービスですが、採用活動の一部を委託することになるため、エージェントの質に左右されるところもあります。利用する場合は「求める人物像」を十分に理解してもらうようにしましょう。
「ダイレクトリクルーティング」は、企業が学生の人材データベースを見て、直接学生にオファーをかける採用手法です。コミュニケーションを密に取ることで、イメージにとらわれない企業の現場・現実をしっかりと伝えることができます。
就労経験がない新卒学生は、情報収集の経路が限られているため、偏ったイメージ形成をしてしまうのはある意味仕方のないことです。
ここを意識下に置いて、まずは企業について深く知ってもらった上で、「学生の企業イメージ」と「求める人物像」の軸を揃えていきましょう。
③採用活動において自社情報を積極的に発信する
設定した求める人物像を、採用活動において積極的に発信する姿勢も重要です。
求める人物像は社内の選考基準や選考プロセスの設計に活用するものと考えている人が多いかもしれませんが、明確に言語化された人物像を学生に提示すれば、採用ミスマッチの防止につながります。学生としても「自分はこの企業に向いているのか、向いていないのか」「自分の持っている能力やスキルをこの企業で活かせるか」という判断がしやすくなり、マッチする人材からの応募増加が期待できます。
採用ホームページやパンフレット、求人情報、説明会などの場において、積極的に求める人物像を発信しましょう。
④学生に自社の魅力を分かりやすく伝える
インターンシップやOB派遣、リファラル採用、ダイレクトリクルーティングなどで学生と接点を持つことは大切ですが、その際は自社で働いてもらうメリットを深く訴求しましょう。
「自社にどのような魅力があるのか」を客観的に分析して言語化することで、学生が「ぜひこの企業で働いてみたい」という欲求に結び付く可能性があります。
例えば一般消費者は、商品に関心を持ったあとで「買ってみたい」「使ってみたい」と思うのが通常ですが、求める人材像である学生も感情の流れは共通しています。
企業について知り、関心を持った後、働いてみたいと考えるのです。そのための魅力的なメッセージを学生に伝えましょう。
⑤学生と定期的な接点を持つ
「この企業で働きたい」という欲求を抱いても、学生全員が応募するわけではありません。時間とともに欲求が薄れることもあれば、他の企業の説明を聞き、心変わりすることもあるでしょう。大切なのは、定期的に接点を持つことです。
現在はSNSが普及しているので、ファーストコンタクトの際、自社のTwitterやInstagramなどを積極的にアピールしてフォローを促す、YouTubeの公式チャンネルがあれば登録を促す、といった手法が考えられます。
学生が日常的に自社のツイートを目にしたり、InstagramやYouTubeで社内の雰囲気が分かる画像や動画を目にしていれば、自然と親近感を覚えるでしょう。
そのような定期的なコンタクトを取ることにより、自社の記憶が残りやすくなります。
最後に
求める人物像は、選考基準や選考プロセス設計の基礎となるだけでなく、採用ミスマッチを防止する上でも重要な要素です。まずは、企業目標や自社で活躍している人材の特性などを整理し、ブラッシュアップしながら自社にとって最適な人物像を作り上げていきましょう。
また「学生からの知名度が低い」「業界・企業イメージから学生の先入観が強い」など、採用課題によっても求める人物像へのアプローチ方法は異なります。求める人物像とマッチする人材からの応募が得られていない場合には、自社の採用課題を明確にし、それに応じた対策をとりましょう。
より詳細なペルソナを設計したい場合には、こちらのフレームワークが役立ちます。以下よりダウンロードできますので、求める人物像の言語化にぜひお役立てください。