採用面接の「面接評価シート」とは?メリット・デメリットや作り方を解説
多くの候補者のなかから、自社にマッチする人材を選び抜くための採用面接では、事前に評価項目と評価基準を策定しておくことが重要です。
そして、そこで役に立つのが「面接評価シート」です。
採用面接を初めて担当する方や、これまでの面接を改善したいと考えておられる方のなかには、
- 採用したい人材の定義はあるけれど、面接の評価基準に落とし込めていない。
- 面接官によって評価の観点がバラバラで、基準が主観的になっている。
などといったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
では、どのように面接評価シートを作り、改良すればよいのでしょうか。面接評価シートには、正しい作成手順や、外してはいけないポイントがあります。
本記事では、すぐに活用できる面接評価シートの実践的な作り方をご紹介します。
また、求める人物像を記入してそのままお使いいただける「面接評価シート」のテンプレート(Excel)をご用意しました。御社にマッチする人材の採用につながれば幸いです。
目次
採用面接における「面接評価シート」とは?
「面接評価シート」はあらかじめ決めた評価項目と評価基準に沿って、面接官が面接者を評価するために用います。
面接官は面接評価シートの項目に従いながら質問を行い、点数を項目別に記載します。しかし、どの会社でも利用できる面接評価シートはないため、各会社で作成しなければなりません。
採用面接で「面接評価シート」を活用するメリット
採用面接で「面接評価シート」を活用する主なメリットは、以下の5点です。
- 評価の基準が明確・客観的になる
- 評価基準を次回につなげられる
- 面接にかかる時間の目安がわかる
- チェック項目の抜けを防止できる
- 関係者間で効率的に情報を共有できる
それぞれのメリットを詳しく解説します。
評価の基準が明確・客観的になる
まずは、評価の基準が明確・客観的になることです。面接評価シートによって、全ての面接官が同じ基準で応募者を評価できるため、面接の結果に一貫性が持たせられます。これによって異なる担当者間での評価のばらつきや、主観的な偏りを最小限に抑えられるでしょう。
評価基準の統一に加えて、公平性が担保されるのも重要なポイントです。採用・選考における公平性とは、全ての応募者が平等に評価され、差別や偏見なく選考プロセスが行われることを指します。プロセスの透明性を高められるとともに、企業の信頼性・ブランドを守ることにもつながります。
評価基準を次回につなげられる
評価基準を次回につなげられるのも大きなメリットです。面接評価シートを使って収集したデータは、採用活動の効果分析や改善のための資料として活用できます。
例えば特定の評価項目において、面接時のスコアと、入社後の実際のパフォーマンスが一致しない現象が継続的に見られる場合があれば、項目に関する面接のアプローチや質問を見直すヒントとして面接評価シートを活用できるでしょう。
評価基準を長期にわたって維持しやすいのも重要なポイントです。例えば次回新しく面接官として参加するメンバーがいた場合、面接評価シートによって、迅速に組織の採用基準に沿った評価を行えるようになります。
面接にかかる時間の目安がわかる
面接にかかる時間の目安がわかるのも、面接評価シートを活用するメリットです。面接評価シートに基づいた面接を行うことで、面接官はあらかじめ設定された質問や評価項目に集中できるため、無駄な質問を避けつつ面接の所要時間を想定できます。
面接の所要時間が予測できれば、応募者にも面接の流れや所要時間を事前に伝えられます。業務効率だけでなく、応募者の面接体験が向上し、組織の印象を良くするきっかけにもなるでしょう。なお、面接にかかる時間の目安は、30分から1時間程度とされています。
チェック項目の抜けを防止できる
面接評価シートは、チェック項目の抜けを防止する効果もあります。面接評価シートには、組織が求める素質やスキル、パーソナリティなどの評価項目がリストアップされているのが一般的です。シートに従って面接を行うことで、重要な評価ポイントを見逃すリスクを大幅に減少させられます。
特に「新卒採用で1回の面接で質問にかけられる時間がそれほど多くない(多くの学生に対応しなければならない)」「求められるスキルが多岐にわたっており、多くの質問をしなければならない」といったシチュエーションで役に立つでしょう。
関係者間で効率的に情報を共有できる
関係者間で効率的に情報を共有できるといったメリットもあります。企業の採用には「書類選考を担当する人」「適性検査を担当する人」「面接を担当する人」など、さまざまな担当者が関わっています。自社に合った人を採用するためには、採用者間の認識を迅速にすり合わせ、組織全体で適切な意思決定をするのが重要です。
面接後の評価結果やコメントが面接評価シートに整理されていれば、他の面接官や採用チームにすぐに情報を提供できます。特に複数の面接官が関与する際や、連続的な面接スケジュールが組まれている場合、簡単に情報共有しやすい面接評価シートが大きく役立つでしょう。
採用面接で「面接評価シート」を活用するデメリット
「面接評価シート」を活用するメリットがある一方で、いくつかのデメリットがあります。面接評価シートに固執してしまうと、本来の採用業務に影響を及ぼしてしまう可能性があるため、注意が必要です。ここでは、主なデメリットを3つ紹介します。
面接に慣れている応募者を高く評価してしまう
面接評価シートのデメリットとしてよく挙げられるのは、面接に慣れている応募者を高く評価してしまうことです。もし面接が面接評価シートに基づいて厳密に行われる場合、応募者はそのフォーマットや質問への正解を探すようになってしまいます。この結果、自社に合う人材よりも、面接テクニックに習熟している応募者が高く評価される可能性があります。
点数をつけること自体が目的になり、形式的に点数をつけてしまったり、チェック項目を全て確認することに気を取られたりしてしまわないように注意しましょう。
作成や運用に手間やコストがかかってしまう
作成や運用に手間やコストがかかってしまうのも、面接評価シートのデメリットです。面接評価シートを効果的に作成するためには、経営陣などの協力も欠かせません。社内全体のリソースを活用しながら作成・運用するため、大きな手間がかかってしまいます。
面接評価シートを作成した後も、組織のニーズや市場の状況が変わるにつれて、評価基準を更新する必要があります。定期的な見直しや修正をするための追加の手間やコストがかかる点にも注意が必要です。
【記入例あり】面接評価シートのダウンロードはこちら
人事ZINEでは、「面接評価シート」のテンプレートを準備しております。質問内容や記入の具体例も紹介していますので、ぜひ自社の面接評価シートを作成する際にダウンロードして採用実務でお役立てください。
資料ダウンロード求職者のポテンシャルを見極めにくい
面接評価シートには、求職者のポテンシャルを見極めにくいといったデメリットもあります。
面接評価シートの項目は、一般的なものや定型的なものが多く、特定の職種・業界固有のスキルやポテンシャルを正確に評価するのが難しい場合があります。例えばITエンジニアの採用では、一般的な項目に加えて、技術的スキルやITトレンドの理解といった業界知識などさまざまな知識・素養が求められます。こうしたポテンシャルを総合的に判断するのは、面接評価シートだけでは難しいでしょう。
シートの存在によって項目による評価が優先されてしまい、面接官「長年のキャリアで培ってきた勘」のような、直感に基づく評価が後回しにされる懸念もあります。
採用面接で役立つ「面接評価シート」を作る方法
採用面接で役立つ「面接評価シート」を作る方法は、以下の5ステップです。
- 「求める人物像」を設定
- 評価項目を設定
- 評価項目の点数のつけ方を決定
- 評価項目の比重を決定
- 合格ライン・NGラインを設定
それぞれのステップを細かく解説します。
1.「求める人物像」を設定
面接評価シートの作成に取りかかる前に、自社がどのような人物を求めているのかを明確にします。
具体的な作業は次の通りです。
- 経営陣の意向調査
- 各部署の意向調査
- 人事担当者が過去に新卒採用した際の実績と各方面の意向との調整
これらの作業を軸にしながら、求める人物像を設定していきます。
経営陣からは会社全体の意見として、社風や経営理念に適した人物像を聞き出し、各部署からは職務との関連性で求められる人物像をヒアリング・アンケートで調査しましょう。調査した人物像は1つにまとめるのではなく、「具体的な応募者のタイプ」まで絞り込みができれば、ある程度の「求める人物像」は設定できます。
このように、さまざまな視点を基に人物像を設定すると、より具体的に求める人物像が把握できます。また、大きなミスマッチを防ぐために「こういう人はどうしてもあわない」というNGの人物像を調査しておくことも有益です。
「求める人物像」を獲得するためのアクションについては以下の記事で解説しています。
2.評価項目を設定
次に調査した人物像を基にして、面接評価シートの評価項目を設定してみましょう。忍耐力・適応性・協調性など、このようなまとめ方で構いません。とにかく「あぶり出し」と考えて、調査結果を忠実に反映させます。書き出した後に見直すと、おそらく経営陣や現場からの生の声が反映されているはずです。
設定した項目は全社で共通にするのか、各部署で一部を選択制にするのかは、どちらでも構いません。一次面接は全社共通にし、二次面接は配属先までを視野に入れて一部の項目を各部署で選別するのもよいでしょう。
設定する項目・チェックポイントの例として、以下が挙げられます。自社の求める人物像に合わせて設定する際の参考にしてください。
項目 | チェックポイント |
---|---|
応募者情報 |
履歴書、エントリーシートの内容と相違がないか |
マナー、身だしなみ |
スーツの着方、頭髪などに清潔感があるか |
志望動機 |
自社を志望する理由を明確に答えられているか |
話し方や声の大きさ |
面接官の目を見て、はっきりとした声で話せているか |
自己PR |
自分のアピールポイントをわかりやすく答えられているか |
成功体験 |
成功体験の過程や結論をまとめられているか。その成功体験に応じた行動を自社でもできそうか |
失敗体験 |
体験談だけでなく失敗した原因に対する対策を考えているか、行動しているか |
人材要件 |
自社が求める経験やスキルに適しているか |
面接官コメント欄 |
補足や気になったことを記入する |
合否欄 |
すべての項目、チェックポイントを考慮したうえで合否を記入する |
3.評価項目の点数のつけ方を決定
次に、面接評価シートの点数のつけ方を決定します。点数のつけ方は、大きく分けて「加点方式・減点方式」「段階方式」の2つです。加点方式では0点から始めて、候補者が基準を満たしている部分について加点していきます。
減点方式では100点から始めて、基準を満たしていない部分について減点していくシステムです。「加点方式・減点方式」のうち、減点方式はあら探しになってしまう傾向にあるため、どちらか迷った場合は加点方式がおすすめです。
段階方式は、3段階や5段階などで評価します。同じ3段階での評価でも、「良い・普通・悪い」や「1点〜3点」など点数のつけ方はさまざまです。全ての項目をグラデーションで評価するため、総合的なスキルやポテンシャルを確認する場合に適しています。
4.評価項目の比重を決定
評価項目の点数のつけ方を決定したら、項目ごとの比重を設定しましょう。評価項目の比重の決定は、求めるポジションの特性や組織のニーズ、ビジョンに基づいて行います。例えばコミュニケーションスキルを重視したい場合、「話し方や表情」「言葉遣い」「質問の理解力」などの項目を多く含めることで、比重を大きくできます。
「コンピテンシーカタログ」や各種適性検査の評価項目を参考にすると、一般的に求められる項目と自社で作成している面接評価シートとのギャップやバランスがわかり、評価項目の比重を設定するのに役立つでしょう。
5.合格ライン・NGラインを設定
最後に合格ライン・NGラインを設定すれば、面接評価シートの作成は完了です。合格ライン・NGラインの設定時、1〜5のスケールなどのスコアリングシステムを導入し、評価項目ごとのスコアを合計して考えます。総得点に基づいて、合格ラインやNGラインを決めましょう。特に一次面接の場合は、足切りの側面もあるため、NGラインの設定が重要です。
合格ラインが高すぎると自社に合った応募者を見逃すリスクがあり、低すぎると通過者が多すぎてしまう可能性があるため、バランスを意識する必要があります。合格ラインは固定的なものではなく、組織の状況や求める人材像に応じて変わるものと考え、定期的な見直しを行いましょう。
「面接評価シート」を効果的に運用するポイント
面接評価シートを効果的に運用するポイントとしては、以下の6つがあります。
- 評価項目は最低限に
- 面接評価シートの管理をしやすく
- 定期的に面接評価シートの項目を見直す
- 評価項目に優先順位をつける
- 面接官のトレーニングを実施する
- 中途採用の場合は人物要項に応じて適宜調整する
それぞれのポイントを詳しく解説します。
評価項目は最低限に
面接評価シートを入力する際に評価項目が多すぎると、面接に時間がかかりすぎてしまいます。面接の時間を30分〜1時間に定めて、その範囲で実施できる面接評価シートの項目を絞ることを意識するとよいでしょう。
さらに、面接ごとに違う面接評価シートを用意したり、記入方法が異なったりすると、管理が難しくなるため避けるようにしましょう。
面接評価シートの管理をしやすく
面接評価シートを紙媒体で管理するのか、それともデータで収集するのかなど、管理方法を定めなければなりません。面接評価シートの管理を整えていないと、候補者を検索する際に余計な手間がかかる原因につながります。
紙で管理する場合は時期ごとにファイリングする、データ形式であればフォルダーにまとめてタイトルを決めるなど、管理しやすい方法を決めてください。
定期的に面接評価シートの項目を見直す
自社が求める人物像は常に一定とは限りません。会社の体制や社会情勢の変化にともない、適した人材要件も変わるはずです。そのため、定期的に面接評価シートの項目を見直し、追加・削除することを検討しましょう。また、管理方法をさらによくできないかなど、改善点を出し合うことも大切です。
評価項目に優先順位をつける
面接評価シートを運用する際、評価項目に優先順位をつけておくことは、自社に合った人材を採用するうえで重要です。
各役職や職種には、それぞれ固有のスキルや資質が求められます。技術職であれば、特定の技術スキルや問題解決スキルを優先するなど、役職の特性を反映した優先順位の設定が必要です。比重の決定にも役立つので、評価項目を洗い出している段階で優先順位を決めておきましょう。
優先順位が設定されていると、面接時間内に最も重要な項目にフォーカスし、効率的に評価を行えるようになります。人材を正しく評価しやすくなるため、結果として自社に合った人材の採用確率が高まるでしょう。
面接官のトレーニングを実施する
面接評価シートの使い方、評価の仕方、評価基準の解釈など面接官への継続的なトレーニングを実施するのも重要なポイントです。昨今の新卒採用は、売り手市場の傾向が強く、面接官のトレーニングに力を入れる企業も出てきています。
「面接評価シート上の各項目が何を意味しているのか」「どのような基準で評価するのか」を理解していれば、公平で一貫した評価を行いつつ、適切な採用判断を下しやすくなります。面接評価シートをただ活用するだけでなく、学生のポテンシャルを見極める力が必要といった意味でも、面接官トレーニングは重要です。
ロールプレイングやワークショップ、専門家研修などさまざまな方法があるため、比較検討しつつトレーニングを実施しましょう。面接官トレーニングの具体的な手法に関しては、以下の記事も参照してください。
中途採用の場合は人物要項に応じて適宜調整する
面接評価シートは新卒採用向けで活用するのはもちろんのこと、中途採用の面接でも活用できます。しかし、中途採用は部署で欠員が出た場合や、戦力を強化したい場合に行うため、中途採用専用の面接評価シートがないことが多いでしょう。
そのため、新卒で採用した人材の面接評価シートを参考にしながら作成するとよいはずです。また、中途採用を検討している部署で必要な人材像を洗い出して、項目を追加・削除することも重要になります。
よって、面接評価シートは新卒、中途採用でわけるのではなく、人物要項に応じてそのまま利用したり、追加や修正したりすることが大切です。
また、中途採用で用いた面接評価シートのデータを利用すれば、過去に求人要項に対してどのような人物が応募してきて、その場合に採用した応募者、不採用にした応募者などを比較して次の求人に活用もできます。
まとめ 採用を成功させるためのカギ「面接評価シート」で自社ならではの採用を
面接評価シートは、面接官が面接者を公平かつ客観的に評価するためのツールです。面接評価シートを効果的に活用できれば、評価基準が明確になり、組織全体での情報共有や効率的な選考が可能になります。評価基準の統一やデータの収集により、採用活動の改善も期待できるでしょう。
しかし面接評価シートの活用には注意も必要で、例えば形式にこだわりすぎると、面接に慣れた応募者を過剰に評価してしまうリスクがあります。特定の職種や業界固有のスキルの評価が難しくなることや、作成・運用に手間やコストがかかる点も重要なポイントです。
効果的な運用のためには、評価項目の最低限化や定期的な見直し、面接官のトレーニングなどが求められます。面接評価シートを効果的に用いて、新卒採用に臨みましょう。