職種別採用とは?メリット・デメリットや新卒採用に導入する際のポイントを解説

近年、新卒採用市場において「職種別採用」を導入する企業が増えており、注目を集めています。従来の総合職採用では、入社後に配属が決まるため、企業と学生の間でミスマッチが起こる可能性がありました。しかし、職種別採用では特定の職種に特化して人材を募集することで、即戦力となる人材の確保や採用活動の効率化が期待できます。
本記事では、採用側の視点から職種別採用と総合職採用・ジョブ型採用の違い、メリット・デメリット、導入時のポイントまで詳しく解説します。職種別採用を検討している企業の担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。
また、人事ZINEでは新卒におけるジョブ型採用について解説した資料をご用意しています。必要な準備や注意点について紹介しているので、ぜひあわせてご活用ください。

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職種別採用とは?

職種別採用は、特定の職種に特化して人材を募集する採用手法です。部門や部署を細かく指定する方法と、営業やエンジニアなど大まかな職種を設定する方法があります。応募者は、自身の専門性や希望に合った職種を選んで応募できるため、入社後のミスマッチを減らし、早期に活躍できる可能性が高まります。
かつては中途採用で活用されていた職種別採用ですが、近年では新卒採用でも導入する企業が増えてきました。専門性の高い人材を効率的に獲得でき、応募者は自身のキャリアプランに沿った就職活動が可能になるため、注目を集めています。
職種別採用と他の採用方法の違い

職種別採用と他の採用方法の違いをまとめると、下表のとおりです。
職種別採用 | 総合職採用 | ジョブ型採用 | |
---|---|---|---|
業務内容 | 特定の職種に限定 | 入社後に決定 | 特定の職種に限定 |
勤務地・勤務時間 | 限定される | 限定されない | 限定される |
雇用契約 | 特定の職種を前提とした契約 | 企業全体の業務を前提とした契約 | 特定の職務内容や待遇などを限定した契約 |
重視されるスキル | 特定の職種に関するスキル・経験 | ポテンシャル・コミュニケーション能力・人柄・適性 | 特定の職務を遂行するためのスキル・パフォーマンス |
キャリアパス | 専門性を活かしたキャリア | ジョブローテーションによる多様な経験 | 専門性を活かしたキャリア |
それぞれの違いについて、以下でさらに詳しく解説します。
総合職採用(メンバーシップ型採用)と職種別採用の違い
総合職採用と職種別採用は、採用時の職種限定の有無が主な違いです。総合職採用は、メンバーシップ型とも呼ばれ、業務内容・勤務地・勤務時間を限定しない採用方法です。ポテンシャルを重視し、ジョブローテーションを通じて企業全体の理解を深めることを目的としています。しかし、配属先は企業ニーズに左右され、希望部署に配属されるとは限りません。
一方、職種別採用は業務内容や勤務地、配属部署などがあらかじめ明確に決まっており、応募者は希望する職種で働けるのが特徴です。専門性を活かしたい学生にとっては、キャリアプランが描きやすい魅力的な選択肢となるでしょう。
以下の記事では、主に総合職採用の場合に取り入れられる「ジョブローテーション」について解説しています。メリット・デメリットや成功事例・失敗事例について紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。
ジョブ型採用と職種別採用の違い
ジョブ型採用と職種別採用の大きな違いは、雇用契約の形態です。ジョブ型採用は、特定の職務を遂行するために必要な人材を採用し、個々のスキルやパフォーマンスを重視します。雇用契約も、仕事内容・勤務地・労働時間・待遇などを明確に特定して結ばれます。
一方、職種別採用は、特定の分野や職種全体にわたる幅広いスキルや経験を持つ人材を採用するのが特徴です。ジョブ型採用が即戦力の確保に重点を置くのに対し、職種別採用は長期的なキャリアパスと企業内での多様な経験を重視します。
つまり、ジョブ型採用は「仕事」に人を合わせるのに対し、職種別採用は「職種」に人を合わせるという違いがあります。
新卒でジョブ型採用を導入するメリットについては、以下の記事で解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
新卒採用で職種別採用が増えてきた背景

株式会社キャリタスが2024年に行った調査によると、調査対象となった全国の主要企業16,526社のうち、60%が職種別採用を導入していることがわかっています。新卒採用で職種別採用が増えてきた背景には、主に以下3つの要因が考えられます。
- 労働市場の変化
- インターネットの発展
- 人手不足による雇用の見直し
配属先やジョブ型採用に関する弊社調査データもあわせてご確認ください。
労働市場の変化
働き方の多様化により終身雇用制度が変化し、若年層を中心に転職が活発化しています。学生も、早期にスキルや専門性を身につけられる環境を重視する傾向があると言えるでしょう。
また、会社都合による勤務地変更や異動を望まない人も出てきたことから、勤務地や業務内容が限定された職種別採用へのニーズが高まっています。企業は、学生のキャリア志向や働き方の変化を踏まえ、柔軟な採用戦略を検討する必要があるでしょう。
就活生が企業に求めることは他にもいくつかあります。以下の弊社アンケート結果もぜひ参考にしてみてください。
インターネットの発展
インターネットの発展により、学生の情報収集能力は向上しました。企業の雰囲気や業務内容を詳細に把握できるようになったことで、特定の業務に就くことを希望する学生が目立つようになりました。
このような学生のニーズに応えるため、職種別採用を導入する企業が出てきています。職種別採用は、学生が希望する職種に配属されるため、入社後のミスマッチを減らし、早期退職のリスク軽減につながるというメリットもあります。
人手不足による雇用の見直し
労働人口の減少により、従来の総合職採用では企業のニーズに対応しきれない状況が発生しています。企業は、特定のスキルを持つ人材を迅速に確保し、即戦力として迎え入れることを重視するようになりました。
職種別採用は、このようなニーズに応える採用手法です。専門性の高い人材をピンポイントで採用することで、企業と学生双方のミスマッチを防ぎ、長期的な人材確保とパフォーマンス向上も期待できます。
人事ZINEでは新卒におけるジョブ型採用について解説した資料をご用意しています。職種別採用やジョブ型採用を検討している場合は、ぜひご利用ください。

職種別採用を導入している企業一覧(一例)

新卒採用において、職種別採用を導入している企業の一例を紹介します。企業名と職種を表にまとめているので、ご一読ください。
企業名 | 募集職種 |
---|---|
オリオンビール株式会社 | ・営業本部 |
株式会社マリモ | ・営業職 |
中島工業株式会社 | ・施工管理職 |
※2025年3月時点
オリオンビール株式会社は、職種別採用を実施しており、応募時に2つまで職種を選んで併願できる形式を取っている企業です。職種の数も多いため、それぞれに合った学生を効率的に探すためのアプローチを行っています。
沖縄県本社の企業が、UIターン学生を求めてOfferBoxを導入。採用効率を改善し、ターゲット学生の採用に成功
株式会社マリモも職種別採用を行っており、入社時から希望の職種で働けるようにしています。選考フローの中では、若いうちから裁量を持って活躍したいと考える学生を優先的にチェックしているようです。
OfferBoxを活用し求める学生にピンポイントでアプローチする事で、全体のうち7割の学生をOfferBoxにて採用する事に成功。
中島工業株式会社は、認知されにくい施工管理職の採用活動を実施している企業です。地方学生にもターゲットを広げることで、採用に成功しています。
難しい施工管理職で3名の採用成功。老舗中小企業が取り組んだ新たな改革とは。
職種別採用のメリット

職種別採用の主なメリットは、以下の3つです。
- 離職率を減らせる
- 採用力を強化できる
- 即戦力となる人材を確保できる
離職率を減らせる
職種別採用は、従業員の満足度向上と離職率低減に効果を発揮します。新卒社員の離職要因として、入社前後のギャップによるミスマッチが挙げられます。職種別採用では、学生が希望する職種に就けるため、ミスマッチが起こりにくく、早期離職を防ぎやすくなるでしょう。
結果として、職場全体の離職率が低下し、組織の安定性と生産性が向上します。企業は、職種別採用を通じて従業員の定着率を高め、長期的な人材育成につなげられるでしょう。
新卒社員の離職率については、以下の記事で詳しく解説しています。
採用力を強化できる
職種別採用は、企業が特定の職種に対する明確なビジョンとニーズを示すことで、専門性を求める人材を引きつける効果があります。近年、職種で求人を探す学生も出てきているため、企業が専門的な情報を提供することで、応募者数の増加が期待できます。
学生にとって、職種別採用は自身の専門知識を活かし、特定のキャリアを築く絶好の機会です。総合職採用のように配属先が不確定な募集よりも、希望する職種が約束されているほうが魅力的に感じるでしょう。
即戦力となる人材を確保できる
職種別採用は、企業が求める専門的な人材を効率的に獲得する有効な手段です。特定の職種を明確にすることで、企業は求めるスキルを持つ学生からの応募を促し、即戦力となる人材を確保できます。
専門知識を持つ学生の採用は、入社後早期に業務に貢献できるため、企業全体の生産性向上につながります。また、新入社員の早期活躍は、教育や研修にかかる時間とコストの削減にも貢献するでしょう。
以下の記事では即戦力採用について詳しく解説しています。即戦力を求めている企業であれば、ぜひあわせてご確認ください。
職種別採用のデメリット

職種別採用の主なデメリットは、以下の3つです。
- 組織の協力体制が弱体化する
- 他の職種への移行が難しい
- ミスマッチが起こると退職につながりやすい
組織の協力体制が弱体化する
職種別採用は、業務範囲が限定されるため、採用された人材が契約外の業務に携わる機会が少なくなります。これにより「自分の業務範囲はここまで」という意識が強まり、職種間の壁が高くなる可能性があります。
職種間の連携不足は、組織全体の柔軟性やチームワークの低下を招き、パフォーマンスに悪影響を及ぼす恐れもあるでしょう。組織全体の連携を阻害する要因となりかねません。
企業は、職種間の連携を促進する仕組みや、従業員の視野を広げるための研修などを検討する必要があります。
他の職種への移行が難しい
職種別採用は労働契約で職種が指定されるため、従業員の合意なく就労条件を変更できません。スキル不足や適性が見つかった場合でも、本人の同意がなければ職種変更は困難です。とくに人員が限られる中小企業では、この点が大きな負担となる可能性があります。
職種別採用は、従業員が特定の職種に専念し、専門性を高めるうえでは有効ですが、キャリアの柔軟性を制限する側面もあります。企業は、従業員のキャリアパスやスキル開発の機会まで考慮したうえで、職種別採用の導入を検討しましょう。
以下の記事では、キャリアパス制度について詳しく解説しています。メリットや導入手順について紹介しているので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
ミスマッチが起こると退職につながりやすい
職種別採用は、学生が希望する職種に就けるのはメリットですが、学生が必ずしも自身の適性を正確に理解しているとは限りません。入社後に能力を十分に発揮できない可能性もあります。
また、職種別採用では総合職採用のように柔軟な部署異動が難しいため、入社後にミスマッチが発覚した場合、転職を検討せざるを得ない状況に陥りやすいです。学生の適性を慎重に見極めるだけでなく、入社後のキャリアパスや成長機会についても十分に説明し、納得してもらうことが重要です。
採用ミスマッチについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
職種別採用を新卒採用で導入する際のポイント

職種別採用を新卒採用で導入する場合は、以下4つのポイントを押さえておくといいでしょう。
- 採用基準を明確にする
- 雇用形態を明確にする
- 職種別採用の導入をアピールする
- 採用後のキャリアサポート体制を構築する
採用基準を明確にする
企業が職種別採用を成功させるためには、各職種に求められるスキル・経験・資質を明確に定義することが不可欠です。具体的な採用基準を設けることで、応募者は自身の能力とキャリア目標が企業の求める要件に合致するかを判断しやすくなります。
採用基準の策定には、人事や経営陣に加え、現場の意見も取り入れてみましょう。現場の声を反映することで、より現実的・効果的な基準を確立しやすくなります。
新卒の採用基準の決め方について知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
また、採用基準を決める際に重要な現場の意見は、ぜひ以下の資料を活用しながらヒアリングしてみてください。

柔軟性のある雇用形態にする
本来の職種別採用は、労働契約時に部署や業務を具体的に定め、契約を結ぶのが一般的です。しかし、業務範囲を限定してしまうと、状況変化に応じて他の業務への協力を依頼しにくくなるという課題が生じます。
契約書に業務内容を明記しないことで、職種別採用のデメリットである「協力体制の弱体化」や「職種間の異動の難しさ」を軽減できます。ただし、業務範囲の曖昧さから従業員の不満や混乱を招く可能性もあるため、柔軟性を持たせつつ、明確な基準を設けることが重要です。
職種別採用の導入をアピールする
職種別採用は、特定の職種に特化して人材を募集するため、業界に興味がなかった学生にも職種のアピールによって関心を惹きつけられる可能性があります。求人サイトや自社ホームページで職種別採用を積極的にアピールし、企業の魅力を効果的に伝えましょう。
また、企業説明会や面接といった対面でのコミュニケーションを通じて、職種別採用の詳細を丁寧に説明することも重要です。学生に職種別採用への理解を深めてもらうことで、入社後のミスマッチの防止につながるでしょう。
求人広告を掲載する際は、ぜひ以下の記事を参考にしてみてください。
採用後のキャリアサポート体制を構築する
採用はスタート地点であり、人材育成こそが企業の成長を左右する重要な要素です。従業員が長期的に活躍するためには、継続的なキャリアサポートと成長機会の提供が不可欠だと言えます。
職種に応じた研修プログラムやキャリア開発機会を整備することで、従業員は新たなスキルを習得し、専門知識を深められるでしょう。これは、個々の成長を促すだけでなく、組織全体の生産性向上にもつながります。
まとめ

職種別採用は、特定の職種に特化して人材を募集する採用手法です。総合職採用のように入社後に配属先が決まるのではなく、最初から職種を限定して採用するため、学生は自身の専門性や希望に合った職種を選んで応募できます。
職種別採用を新卒採用で導入する際は、採用基準を明確にすることや採用後のキャリアサポート体制を構築することなどが重要です。これらのポイントを押さえることで、自社に合った人材を確保し、学生は自身のキャリアプランに沿った就職活動を行えるようになるでしょう。
人事ZINEでは新卒におけるジョブ型採用について解説した資料をご用意しています。職種別採用やジョブ型採用を検討している場合は、ぜひご利用ください。
