【人事向け】新卒の早期離職は多い?主な理由と防ぐためにできる対策
昨今、働き方に関して多様な価値観が認められるようになり、従来のような「終身雇用」は変化しつつあります。新卒採用で入社した社員が早期離職をするなど、人材の定着に悩んでいる採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、新卒採用の人材が早期離職する主な理由や、それを防ぐためにできる対策などを解説します。Z世代の早期離職を防ぐために意識すべきポイントもあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
新卒の早期離職の割合・目安
新卒の早期離職の割合・目安は、およそ3割です。厚生労働省は、「新規学卒者の離職状況」を示すデータとして、「学歴別就職後3年以内離職率の推移」を公表しています。こちらのデータによれば、大学卒の離職率は、平成19年~令和2年にかけていずれも約30%で推移しているようです。つまり、新卒全体のおよそ3人に1人が、3年以内に離職しています。
出典:「学歴別就職後3年以内離職率の推移」(厚生労働省)
昭和末期のデータを見ても約20%〜30%程度で推移しており、長期にわたって大きな変動はありません。リーマンショックや新型コロナウイルス感染症拡大などの社会情勢の変化も、早期離職の割合にはそれほど大きな影響を与えていないことが分かります。
新卒社員の平均離職率に関して詳しくは、以下の記事も参照してください。
早期離職が増えることの企業側のデメリット
早期離職が増えると、企業側には主に以下のようなデメリットが生じます。
- 採用コストの増加
- 優秀な人材の不足
- 企業イメージの低下
- 社員の生産性・モチベーション低下
それぞれのデメリットを詳しく解説します。
採用コストの増加
早期離職増加による企業側のデメリットは、採用コストが増加することです。早期離職が発生すると、企業は再び採用活動を行わなければなりません。求人広告費や選考プロセス(面接、試験等)の運営費など、新卒採用に関するさまざまなコストが無駄になります。
ある程度研修などを実施してから早期退職をした場合は、新入社員にかけた教育コストも無駄になります。採用コストに比べれば大きい数値ではありませんが、直接的な損失です。
優秀な人材の不足
早期離職が頻発する環境では、自社とマッチしているはずの人材が、競合他社に流出してしまうケースも増えます。人材が他社に奪われるような状況になれば、市場での競争力の低下を招き、組織の中長期的な成長に悪影響を及ぼします。
もちろん再び新卒採用活動をすれば、自社に必要な人材を確保できるかもしれません。しかし早期離職が繰り返されると、自社にマッチしている人材の割合が段々と減ってしまい、組織としての強度が落ちてしまいます。
企業イメージの低下
企業イメージの低下も、早期離職増加によるデメリットです。企業ごとの早期離職率は一般的に公開されない数値ですが、現代では口コミが発展しており、悪い噂があればすぐに広まります。
特に学生の場合は、初めての就職先を選ぶことになるため、「企業選びに失敗したくない」という想いも強いでしょう。早期離職が頻繁に起こっている場合、離職した人材から評判が広まり、企業イメージの低下を招く可能性があります。
社員の生産性・モチベーション低下
社員の生産性・モチベーション低下も、早期離職増加によるデメリットです。早期離職が起こると、新しく入った社員のために、再び研修を実施しなければなりません。教育担当者のリソースが新人教育に割かれるため、結果的に全体の生産性が低下する可能性があります。
早期離職が繰り返されていると、退職せずに残っている社員に対してもネガティブな影響を与えます。社内に会社の将来についての不安が広がり、個々のモチベーション低下につながるかもしれません。
新卒採用の人材が早期離職する主な理由
リクルートマネジメントソリューションズによれば、新卒採用の人材が早期離職する主な理由は、以下の図表の通りです。
出典:リクルートマネジメントソリューションズ「2023年 新人・若手の早期離職に関する実態調査 第1回」
「労働環境・条件」「給与水準」「人間関係」「仕事内容・キャリアパス」「会社の将来・経営状態」に関する回答が多く見られました。上位の理由を以下で解説します。
Z世代の新入社員の転職理由を詳しく知りたい場合は、以下の記事も参照してください。
労働環境・条件
新卒採用の人材が早期離職する主な理由は、労働環境・条件です。前掲の調査資料でも、「労働環境・条件がよくない」が最も高い回答率となっています。関連する理由として、「希望する働き方ができない(場所、時間、副業など)」の回答も見られました。
労働環境・条件でよく問題になるのが、労働時間の長さです。ワークライフバランスが取れていないと、ストレスを引き起こす原因になります。さらに年間休日があまりにも少ないと、プライベートを充実させるのが難しく、職場への不満につながります。
給与水準
給与水準も、新卒採用の人材が早期離職する主な理由です。上記データでは、「給与水準に満足できない」の回答が2番目に多くなっています。給料が絶対的に低い場合や、自分の頑張りに対して不十分な場合は、もう少し待遇の良いところへの転職を決意するかもしれません。
特に新卒で就職する場合、奨学金などの返済もあるため、若いうちからなるべく多く稼ぎたいと考える人も多いでしょう。早期離職が続くようであれば、給与水準を見直すのも1つの方法です。
人間関係
人間関係も、新卒採用の人材が早期離職する理由として挙げられます。上記データでは、「職場の人間関係がよくない、合わない」「上司と合わない」の回答が3番目に多く見られました。
職場でも特に問題になりやすいのは、先輩や上司など、目上の立場の人間との関係です。同僚との人間関係であれば「そりが合わない」で済ませられますが、業務で直接関わることの多い上司・先輩との相性が悪いと、どうしても職場に不満を抱きやすくなります。
人間関係の不満を相談できる機会がないと、社内で孤立してしまい、早期離職につながりやすくなるでしょう。
仕事内容・キャリアパス
新卒採用の人材が早期離職する理由として、仕事内容・キャリアパスに関連する問題もあります。上記データでは、「成長できる見通しが持てない」「仕事にやりがい・意義を感じない」「今後のキャリアが描けない、目指すキャリア形成につながらない」などの回答率も上位でした。
上記のような問題が発生するのは、採用ミスマッチの発生が原因です。実際、「自分のやりたい仕事ができない」といった配属のミスマッチも理由として挙げられています。採用ミスマッチの原因と対策に関して詳しくは、以下の記事も参照してください
会社の将来・経営状態
会社の将来・経営状態も、新卒採用の人材が早期離職する理由です。上記データでは、「会社の将来性に不安がある」との回答もあります。
昨今ではAI(人工知能)の発達もあり、「10年後になくなる仕事」が取り上げられるなど、自分の仕事や会社の将来性について考えさせられる場面も多くなりました。
「古いシステムのまま業務をしている」など、日常のささいなことで、将来性に疑問を感じるケースもあります。採用活動や内定者フォローなど人事採用の領域だけでなく、経営活動全体が早期離職に影響すると考えてよいでしょう。
新卒の早期離職を防ぐためにできる対策
新卒の早期離職を防ぐためにできる対策は、以下の5つです。
- RJP理論を取り入れる
- 入社後のフォローを充実させる
- 給与など雇用条件を定期的に見直す
- 快適な労働環境を提供する
- 採用手法を見直す
それぞれの対策を詳しく解説します。
RJP理論を取り入れる
新卒の早期離職を防ぐためにできる対策は、RJP理論を取り入れることです。RJP理論とは、「Realistic Job Preview」の略で、仕事の内容や職場環境に関して正確な情報を開示することを指します。
企業としては良いところをアピールしがちですが、RJP理論のもとでは悪い部分もありのままに開示します。企業の良し悪しを判断してもらい、納得したうえで応募・入社してもらえるため、理想とのギャップが起こりにくいのがメリットです。
RJP理論の実践としては、例えばインターンシップを導入し、実際に職場のリアルな情報を開示してから採用する方法があります。他にも、「リファラル採用をする」「選考の初期の段階で情報をすべて開示する」など、実践方法は多種多様です。
入社後のフォローを充実させる
入社後のフォローを充実させるのも、新卒の早期離職を防ぐためにできる対策です。具体的には、メンター制度を導入する方法があります。メンターは新入社員の指導者として、仕事の指導だけでなく、職場での人間関係の構築などさまざまなサポートをします。何かあった際の相談役としても機能するため、人間関係を理由とした早期離職を防止しやすくなるでしょう。
1on1ミーティングを実施し、コミュニケーションを促進するのも重要です。1on1ミーティングは、新入社員とその上司によって行われる面談です。一般的な面談とは異なり、業務の進捗を確認するといった実務的な側面ではなく、新入社員の思いや考えを引き出すことを重視しています。
給与など雇用条件を定期的に見直す
新卒の早期離職を防ぐために、給与など雇用条件を定期的に見直すのも重要です。特に給与は、社員のモチベーションを左右しやすい要素です。給与やその他の待遇が適切であれば、高いモチベーションを持って仕事に取り組めるでしょう。
例えば現在の業務負荷に対して、適切な給与になっているかどうかは、定期的に見直したいポイントです。必要に応じて給与アップなどを実施できないか検討し、なるべく待遇面で不満を持たれないよう注意しましょう。
給与を上げるのが難しいとしても、各種手当を充実させるなど、福利厚生の改善によって雇用条件を見直す方法もあります。評価基準を見直し、社員が評価に対して納得できる環境を作るといった取り組みも必要です。
快適な労働環境を提供する
新卒の早期離職を防ぐために、労働環境・職場環境を快適にする施策を行うのも重要です。長時間労働が常態化している場合は、残業時間の削減を図り、社員に大きな負荷がかからないようにします。
ただし残業を一律で禁止すると、積極的にスキルアップしたい社員や、「仕事第一」で考えている社員のモチベーションに影響を与えるため注意が必要です。残業を悪とするのではなく、社員に対して「多様な選択肢を用意すること」を意識しましょう。
休日・休暇制度などを充実させつつ、希望する働き方ができるようにするのも重要です。例えばフレックスタイム制やテレワーク、時短勤務制度などを導入すると、幅広い人材にとって働きやすい職場になります。
採用手法を見直す
新卒の早期離職を防ぐためにできる対策として、採用ミスマッチが発生しないような採用活動ができるよう、採用手法を見直す方法もあります。例えば一般的なナビサイトを中心に採用活動を行っている場合は、ダイレクトリクルーティングなど「攻め」の手法を検討するのがおすすめです。
ダイレクトリクルーティングは、企業が求める人材に対して、直接アプローチして採用する手法です。あらかじめ人材要件を設定すれば、転職潜在層を含めて、要件とマッチする人材に対して幅広くアプローチできます。
他にもマッチングサービスの活用やマッチングイベントの参加など、採用マッチング率を高めるための施策を実施するのもおすすめです。採用マッチング率を高める方法に関しては、以下の記事も参照してください。
Z世代の早期離職を防ぐために意識すべきポイント
Z世代の早期離職を防ぐために意識すべきポイントは、以下の3点です。
- 多様な働き方ができるようにする
- SNSを積極的に活用する
- 決めつけず一人一人に向き合う
それぞれのポイントを詳しく解説します。
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多様な働き方ができるようにする
Z世代の早期離職を防ぐために意識すべきポイントは、多様な働き方ができるような環境を整備することです。Z世代はワークライフバランスを重視する傾向があり、例えば「残業は少ないかどうか」「有給休暇を取得しやすいか」などを重視します。
さらにZ世代は幼少期からリーマンショックなどの不況を経験しており、企業に対してそれほど大きな期待をしていない人が多いようです。従来のように1つの会社で定年まで勤め上げるのではなく、柔軟な働き方をしたいと考える傾向があります。
早期離職を防ぐための施策を考える際は、副業を認めるなど多様な働き方ができる環境を整えるのが重要です。業種にもよりますが、前述のようにフレックスタイム制やテレワークの導入も前向きに検討しましょう。Z世代の特徴について詳しくは、以下の記事も参照してください。
SNSを積極的に活用する
Z世代の早期離職を防ぐポイントとして、企業のリアルな情報を発信するためにSNSを積極的に活用するのもおすすめです。Z世代は基本的にSNSを使って情報収集をしており、企業を選ぶ際の参考にします。
昨今では企業も積極的にSNSを活用しており、ソーシャルリクルーティング(SNS採用)と呼ばれる採用手法も大きく注目されるようになりました。TwitterやInstagramで企業公式アカウントを作成し、情報発信をするのが基本的なやり方です。
画像や動画などのビジュアルコンテンツを活用すれば、具体的な働き方をイメージしてもらえます。ソーシャルリクルーティングについて詳しくは、以下の記事も参照してください。
決めつけず一人一人に向き合う
Z世代の傾向を決めつけず、一人一人に向き合うのも、早期離職を防ぐために意識すべきポイントです。ここまで紹介したZ世代の特徴が、必ずしも当てはまるとは限りません。例えばZ世代のなかにも、「1つの会社に定年まで勤めたい」と考える人もいるでしょう。
昨今では「多様性」が重視されますが、世間の風潮を反映するように、Z世代は多様な価値観を持っています。個々の特性や考え方をよく知るためにも、密接なコミュニケーションが不可欠です。話をする際は、プライベートも含めて、相手の価値観を尊重するのが大切です。
具体的な施策としては、先ほど紹介した1on1ミーティングがよいでしょう。
まとめ
新卒で入社した社員のうち、およそ3割が3年以内に離職すると言われており、企業としては早期離職が必須です。RJP理論を取り入れたり、快適な労働環境を提供したりと、選考から入社後に至るまでさまざまな取り組みが求められます。
Z世代ならではの傾向もありますが、すべて一括りにして考えるのではなく、新入社員を個人として尊重する姿勢が何よりも重要です。各々の特性を理解しつつ、持っている力を遺憾なく発揮できるような環境を整えましょう。
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