【企業向け】内定式とは?プログラム例と企画・準備のポイント
内定を出した後に、初めて行われる大きな行事として「内定式」があります。内定式を実施することによって、企業側も新入社員を本格的に受け入れる意識が高まり、内定者側も入社への意欲を持つきっかけになります。
- 内定式とはそもそも何か
- 内定式を実施する目的
- 内定式までに企業側が行うべき準備
- 内定式の実施内容、標準的なプログラム
この記事では、上記の人事・採用担当者が知っておくべき知識を解説します。内定式と同時に行われることがある懇親会や人事・採用担当者が気をつけるべきポイントについても見ていきましょう。
また、こちらの資料では内定辞退の原因別にソリューション9つを解説しています。内定者フォローの方法に悩む人事の方には必見の内容となっていますので、自社の内定者フォロー施策にお役立てください。
目次
内定式とは?
内定式の内容を確認する前に、まずは内定式の定義や入社式との違いなど、内定式の位置づけについて確認しましょう。
内定式の定義
内定式とは、内々定を出した内定者に対して、正式に内定を出すための式典のことをいいます。内定者のほか、社員や役員が同席するのが一般的で、内定を正式に通知することで内々定から内定へと切り替わります。多くの企業では10月1日以降の平日に行われます。
内定者懇親会と組み合わせて行われるケースも多く、内定者にとっては初めて同期と顔を合わせる機会となります。近年の傾向としては、オンラインで実施する企業も増えています。
入社式との違い
入社式とは、入社を記念してその年の新入社員が一堂に会して行われる式典のことを指します。一般的には4月1日前後の実施が多く、企業によっては3月中に行う場合もあります。
入社式は企業トップの訓示などを行い、実際に業務を始めるにあたってのモチベーションを高める目的で行われます。内定を通知することを目的とした内定式とは、時期も意味合いも異なるといえるでしょう。
内定式を実施する目的
内定式には、内定者の顔合わせや内定辞退の防止、入社後にスムーズに業務を遂行できるようになど、さまざまな目的があります。ここでは、主な目的を4つ紹介します。
内定者の顔合わせ
入社時にモチベーション高く入社してもらうために、内定式で内定者同士の顔合わせを行い、つながりを作っておくのは有効です。「どのような人が同期になるのか?」という内定者の不安を解消し、具体的に入社後の仕事内容や社内の雰囲気をイメージしてもらえるからです。
入社前にコミュニケーションを取れるだけではなく、社会人という経験のない生活を始めるにあたって、不安や疑問を共有できる仲間の存在は大きな助けとなるでしょう。
内定ブルーへの対策
内定ブルーへの対策も、内定式の重要な目的の1つです。
新卒採用の場合、内定者はまだ学生であり、内定が決まっても「社会人としてやっていけるだろうか」「本当にこの企業で良かったのか」という不安が生じることも少なくありません。なお、このような不安を抱えた状態を「内定ブルー」と呼ぶことがあります。
内定者の不安を放置すると、精神的に落ち込んでしまうのに加え、内定辞退につながってしまうリスクもあり、注意が必要です。内定式でこれらの不安を解消するフォローを行うと、内定者の精神的な負担を減らし、内定辞退の防止にもつなげられます。
入社へのモチベーション向上
内定式には、入社へのモチベーション向上という目的もあります。
内定式は10月頃に開催されることが多く、実際の入社までは約半年間あります。この短くない期間にモチベーションを高く維持できるかどうかは入社後のパフォーマンスにも影響するでしょう。
また、内定辞退の理由は内定ブルーなどの不安要素だけではなく、別の内定先を選ぶという場合もあります。そこで、仕事に対するモチベーションだけではなく、自社の魅力を伝えて「この企業に入社したい」という意識も高めることが重要です。
内定式で内定者が「早くこの現場で活躍したい」と感じてもらえれば、自社へのコミットメントを高め、知識の吸収や資格取得といった時間の過ごし方も期待できるでしょう。
入社準備の円滑化
内定式には、入社準備を円滑化する役割もあります。
内定式で入社までのスケジュールを具体的に内定者に提示すれば、より具体的に入社までの流れをイメージしてもらうことが可能です。内定式から入社までは数ヶ月あるため、職種によっては資格の取得を支援したり、ある程度まとまった量の勉強を促したりといったことも可能でしょう。
また、遠方の内定者で転居を伴う場合は、ある程度のスケジュール感を伝えておくと円滑に入社準備を進められます。
内定式を開催する時期
内定式と、内定者懇親会の日程は揃えた方がよいのでしょうか。ここでは開催時期についてご紹介します。
内定式の一般的な開催時期
内定式の一般的な開催時期は、10月1日です。
もともとは経団連が定めた倫理憲章のルールに基づき、10月1日とする企業が多くありました。また、政府主導の新たな就活ルールでも、内定解禁は「10月1日以降」とされていることから、ほとんどの企業で10月1日に開催されることとなっています。
独自の日程で開催する企業もありますが、夏に内定者が中だるみしないよう、適切なタイミングで実施することが大切です。
内定式は「内定者懇親会」と同じ日程でやるべき?
内定式と内定者懇親会を同じ日程で行う企業は多くあります。企業によって判断は異なりますが、基本的には同じ日にやるほうがメリットが多くあります。理由は以下の通りです。
- 内定式を行う場合に一番かかる「交通費」を節約できる
- 社員や経営陣も含めて予定を空けている日に懇親会も入れることが合理的
以上の2つのメリットが主に挙げられます。同じ日に行うデメリットは、内定式と懇親会を同日で行うとフォローの重複が起こり、入社まで段階的に内定者の入社意思を固めていく効果が期待しにくいという点が挙げられます。
ただし、他に内定者フォローの企画を段階的に計画していればこのデメリットは解消されるでしょう。
内定式までに企業側が行う準備
内定式までに企業側が行う準備として、主なものを以下に紹介します。
- 日時・開催場所の決定
- プログラム内容の決定
- 内定証書を授与する代表者の決定
- 事務手続きやスケジュールの整理
- 内定者への連絡
まずは内定式を開催する日時と開催場所を決定します。次に、内定式のプログラム内容を検討します。この時に、同席してもらう役員や社員の検討や、内定証書を授与する代表者についても決定しておきましょう。
また、内定式で人事から伝えるべき事務手続きやスケジュールについても整理を行います。内定承諾書などの書類手続きも内定式で行えるよう準備しておきましょう。
最後に、内定者への連絡も忘れてはなりません。内定式の連絡はメールや郵送で行い、内定式の日時と集合場所、当日の持ち物などを記載します。式後に懇親会などのイベントを行う際は、その内容についても知らせましょう。
内定式の一般的なプログラム例・実施の流れ
内定式は企業が独自に行うものであり、統一されたルールはありませんが、一般的なプログラム例としては次の通りです。
- 社長・経営陣からの挨拶
- 内定証書の授与
- 人事からの全体説明
- 内定者同士の自己紹介
- 懇親会
ここからは、上記のプログラムについて実施の流れを解説します。
社長・経営陣からの挨拶
まずは社長や経営陣からの挨拶です。企業の経営方針や今後のビジョン、内定者へ求めることを社長・経営陣から直接語るのが一般的です。会社の体質によっては、社長や経営陣の激励の挨拶が非常に熱いなど、さまざまなスタイルの違いが出ます。
内定者にとっては、改めて会社の方針や仕事内容などを把握できる機会となるでしょう。
内定証書の授与
内定式のメインとなる内容の1つに、内定証書の授与があります。対面の場合は社長から内定者一人ひとりに内定証書を手渡す場合もあれば、内定者が多い場合は代表者一名に授与という場合もあります。
内定式をオンラインで行う場合は、事前に内定者の自宅に送付するケースが多いです。
人事からの全体説明
内定式から入社までのスケジュールや連絡事項を人事から説明します。企業によっては内定者に対し、入社までの期間に課題を出すこともあります。
また、入社承諾書などの必要書類の手続きも忘れてはなりません。内定式で企業側から内定証書を渡し、内定者が入社承諾書を提出することで、正式に労働契約が成立します。
内定者同士の自己紹介
内定式では多くの企業が、内定者の自己紹介をプログラムに設けています。
内容は、一人ひとりが短い時間で自分の名前と出身校、入社後の抱負などを伝えるのが一般的です。内定者同士のコミュニケーションを促進するために、簡単なワークショップを行うのもよいでしょう。
内定者同士の自己紹介は同期の間に仲間意識を醸成するのに有効です。また、内定者が協力して課題に向き合うことも同様の効果があり、これについては後段「内定者研修・ワークショップ」で詳しく解説します。
懇親会
内定式後には、内定者同士や先輩社員との親睦を深めるために、懇親会がセッティングされることが多くあります。
懇親会の形式は企業によってさまざまです。先輩社員への質疑応答をしたり、食事会で親睦を図ったりすることもあります。内定者同士の横のつながりや、先輩社員とのつながりを作る大切な機会です。
内定式に盛り込めるその他のおすすめプログラム
ここまで紹介した内定式のプログラムは一般的な例ですが、ここからはその他のおすすめプログラムを紹介します。
社内見学
社内見学とは、オフィスや職場設備など、実際の現場を案内するものです。
内定者が先輩社員の働いている姿や職場の雰囲気を目にすると、自分が入社後に働くイメージがしやすくなります。内定者が不安を抱えていたり意欲が湧かなかったりしている場合でも、社内の様子を見ることで不安の解消・モチベーションアップにつながる可能性もあるでしょう。
内定者研修・ワークショップ
業務の遂行に必要な知識・スキルを習得してもらうための内定者研修やワークショップといった課題を設けるプログラムも有効です。
特に、専門的な職種の場合には、内定者は少なからずスキル面での不安を抱えることもありますが、こういった教育の機会を設けると不安解消や仕事への興味・自信につながる可能性もあるでしょう。
内定者同士で協力して取り組む形式のプログラムであれば、同期間の信頼関係の構築にも効果的です。
内定者面談
内定者面談では、一人ひとりの内定者と個別に話し合います。
この面談を通じて、内定者が抱える期待・不安く掘り下げ、必要に応じて内定者の個々のニーズに合わせたサポートも行いましょう。例えば、「内定者がある仕事に興味を持っている場合、その分野で活躍する先輩社員と交流の機会を設ける」といったものが考えられます。
じっくりと配属先への希望や不安など聞くことは入社後のパフォーマンス向上に役立ちます。内定者面談は内定者のニーズに合わせて複数回実施してもよいでしょう。
適性検査
適性検査を内定式のプログラムに組み込むのも手です。
採用活動における適性検査というと応募者の選考過程で実施するのが一般的ですが、前回の検査から時間が経っている場合も多く、再検査すると別の結果が出ることがあります。
また、適性検査にはさまざまな種類があり、選考時とは異なる検査を行うことで、配属先の検討や入社までのフォローに活用することが可能です。
内定式をオンラインで実施する方法
コロナ禍で注目されたオンライン内定式は、感染症対策以外にも多くのメリットがあるため継続している企業もあります。ここでは、内定式をオンラインで実施する際に検討したいポイントを解説します。
配信形式を決める
オンライン内定式は配信形式により大きく2つに分かれます。双方向のやりとりが可能な「Web会議形式」と一方向に配信する「ウェビナー形式」です。
「ウェビナー形式」では、参加者は相手から見られていないため心理的に構えることなく参加できますが、その分「式典に参加した」という実感は持ちにくいでしょう。
内定式を対面で開催するリアル開催とオンライン開催を組み合わせて、「来場可能な内定者は式場に集まってもらい、遠隔地などで来場が難しい内定者はオンラインで参加してもらう」というハイブリッド開催というパターンもあります。
それぞれメリット・デメリットがあり、企業側・内定者側の負担も異なるため、内定式を行う目的に応じて最適な方を選びましょう。
オンライン用のプログラムを作る
リアル開催の内定式で上手くいくプログラムでもオンライン内定式で効果的とは限りません。例年行っているリアル開催用のプログラムがある場合でも、オンライン用のプログラムを作成しましょう。
一般的に熱意が伝わりやすいのはオンラインよりも対面であると考えられがちですが、プログラムの内容や工夫によっては、オンラインでも効果を高めることが可能です。
例えば「自宅などの場でリラックスして参加してもらうことで素の性格を内定者間で共有できる」「遠隔地の場合は居住エリアならではのイベントや気候など、お互いの紹介しあうことで話題のきっかけになる」などが考えられ、仲間意識の醸成を促せます。
サポート体制を整備する
リアル開催でも天災のために延期や中止になることがありますが、オンライン開催の場合には、通信障害や不慣れによる操作エラーといった問題も起きやすいため、サポート体制を整備しましょう。
まずは、「内定者がオンライン内定式に参加するための通信環境が整っているか」を確認します。通信環境が整っていない内定者がいる場合は対策も検討しておきます。
また、当日は内定者が全員参加できるように操作に関して電話やチャットなどで相談を受付られるように準備しておくとよいかもしれません。
採用・人事担当者が内定式で意識すべきポイント
ここでは、採用・人事担当者が内定式で意識すべきポイントを解説します。
会社の一員になる意識を高める
内定式では、内定者に会社の一員になる意識を持ってもらうことが大切です。
そのための対策として、社長や役職者に「ビジョンや社会人としての心構え」という系統の挨拶をお願いするのもよいでしょう。なぜなら、内定式は「学生モードから社会人モードに切り替えていく」絶好の機会だからです。
内定者を社員と同じように扱い、自社が今取り組んでいることや社員向けの経営課題をしっかり語ってもらうと、内定者が「自分ごと」だと感じてもらい、やる気に火をつける効果が期待できます。
現場社員とのコミュニケーションを深める
内定式で現場社員との懇親会をセッティングし、コミュニケーションを深めるのもおすすめです。
内定者は、選考に参加するだけでは企業のイメージが掴みにくいものです。実際に内定承諾をした後も「社員や同期に馴染めるだろうか」「会社が期待する活躍ができるだろうか」と不安に感じている内定者も多くいるはずです。内定式ではこれから一緒に働く人たちとコミュニケーションを取る機会をつくり、内定者の不安を和らげましょう。
新卒社員がリラックスできる雰囲気を作る
内定式でコミュニケーションを促進し、入社に向けてモチベーションを高めてもらうためには、内定者がリラックスできる雰囲気を作り、ストレスを感じにくいよう配慮するのがベターです。
内定者たちは改めて内定式という式典に集められ、多くの社会人と顔を合わせるため緊張している可能性が高いでしょう。リラックスし、落ち着いた気持ちで話せる状態になってこそ、コミュニケーションが上手くいくことを忘れてはなりません。
まとめ
内定式には以下のように、さまざまな役割があります。
- 人事が内定者への事務連絡や各種事務を滞りなく行い、入社準備を進める
- 内定者が、入社後のイメージを明確にしモチベーションを高められる
- 内定者同士の連帯感を強め、入社後に活躍していただき、内定辞退を防ぐ
「内定者のフォロー」「新卒社員の戦力化」をしていくうえで必要なのは、「学生」が選考を通過し「内定者」になり、内定式を経ることにより「社員」になる心構えを持つ、このステップを人事・採用担当者が意識することです。
それぞれのステップでは、内定者を「社員」扱いし、会社のビジョンや経営課題を共有し、仲間としてコミュニケーションをとることが大切です。内定式の準備では、内定式が果たすべき役割を意識し、まずは基本に忠実な内定式を計画するのはいかがでしょうか。
また、全般的な内定者フォローの方法について知りたい人事の方は、こちらの資料もご活用ください。