「リソースに限りがある中で、どうやったら採用目標を達成できるか考え直す必要がある」
「既存の戦略では、歩留まりというよりも採用の全体像を見直す方がいいかもしれない」
人事担当者の方の中で、既存の自社の新卒採用の仕組みに違和感や危機感を持ちつつも、見直す点が多くなかなか改善しにくい方もいらっしゃると思います。
採用活動をより効果的にするためには、戦略が必要です。
戦略とは、文字通り『戦いを略(はぶ)く』ことであり、採用活動においては、いかに戦わずに求める人物像と出会い、入社してもらうかといった視点が重要になってきます。
そこで今回は、歩留まりの改善というよりも、採用全体像から戦略を立てていくために、現在の採用環境をもう一度整理しつつ、戦略を立てる上で欠かせない見直しポイントを紹介します。
また、採用全体像を紹介するために割愛した、本記事では紹介しきれない詳細な情報がある関連記事も紹介しますので、より詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。
目次
第一に、社外の採用環境を知ることが重要

まず第一に、全体像を把握するためには、社外の採用環境を知ることが重要です。今回は、社外の採用環境を以下2つに大きく分類して紹介します。
- 就活ルール
- 採用市場
では順に紹介していきます。
【就活ルール】当面は現行ルールのまま継続
社外の採用環境の1つ目として、就活ルールが挙げられます。
就活ルールは、過去、経団連主導で策定してきましたが、今後は政府主導で就活ルールを策定します。就活ルール自体は、とりわけ直近で大きな変化が考え辛く、2022卒までは3月広報解禁、6月選考解禁、10月内定解禁が継続するとされています。
就活ルールについてもっと詳しく知る
▶︎ オススメ記事:
活ルールは2022年卒までは現状維持】企業が今やるべきことを新卒採用の歴史から考察する
▶︎ 記事で紹介していること:
経団連による就活ルールの廃止から政府主導の新ルールついて、歴史を振り返るとともに、今後の展望を含めて各企業が今取り組むべきことについて考察しています。
具体的には、新卒採用における就活ルールの変遷を一気に歴史をおさらいしています。歴史的に早くから学生と接点を持ちたい企業がある一方で、早期に就職活動することに対する学業への影響が問題視されきました。
採用活動におけるルールを振り返ることで、早くから採用活動を行うだけではクリアできない採用活動の課題も見えてくるでしょう。
【採用市場】採用市場は売り手市場で学生優位
社外の採用環境の2つ目として、採用市場が挙げられます。
現在の採用市場は売り手市場であり、学生優位とされています。学生優位の採用市場では、企業優位の採用市場と比較して、企業は学生に『選ばれる』工夫がより必要になってきます。
そのため、学生のことを理解し、より相互理解ができるコミュニケーションが必要です。
採用市場についてもっと詳しく知る
▶︎ オススメ記事:
新卒採用の市場動向を採用戦略に活かす方法
▶︎記事で紹介していること
毎年ニュースにもなる新卒採用の市場動向レポートを、採用戦略に落とし込む具体的な方法について紹介しています。
有効求人倍率が高いときの戦略は、費用対効果の低い求人広告への投資を減らし、成功報酬型のダイレクト・リクルーティングや人材紹介を活用するほうが望ましいです。
また、自社に必要な人材は「誰もが欲しがる優秀人材(高学歴や好成績)」なのか、改めて、学歴や職歴に囚われずに求める人材の要件定義を見直すなど、市場データの観点から、採用戦略を紹介しています。
以上のように、社外の採用環境(就活ルール、採用市場)から分かることは、求める人物像と出会い、自社で働いてもらうためには、学生の意識や行動を理解する必要があります。関わり方も、企業都合の一方通行のコミュニケーションではなく、より相互理解のコミュニケーションが必要でしょう。
そのためにも、まずは自社がどんな人物を採用したいか、いわゆる『求める人物像の設定(人材要件定義)』が必要です。
求める人物像を設定し、その人物を採用するために効果的とは言いにくい施策を省いくことで、自社の採用戦略を見直していくことができます。
社外の採用環境を紹介した上で、以降、より具体的な社内の採用環境の見直しについて紹介します。
第二に、社内の採用環境を見直し、戦略を立てていく

まず第一に、社外の採用環境を確認すると、現在の採用環境は売り手市場で学生優位であり、企業都合の一方通行なコミュニケーションではなく、相互理解のコミュニケーションが必要とされました。
第二に、具体的な社内の採用環境を見直していきます。採用活動において不必要な戦いを省く(戦略)ために、社外環境を加味した結果、実際の採用環境で何を省けばいいか、以下大きく4つに分けて見直すポイントを紹介していきます。
- 新卒を採用する目的を明確化できているか?
- 求める人物像が定まっているか?
- 求める人物像に届くメッセージを作っているか?
- 求める人物像と実際に出会える適切な採用手法を選択しているか?
それでは順に紹介します。
【見直しポイント】新卒を採用する目的を明確化できているか?
戦いを省く(採用戦略)ポイントの1つ目に、『新卒を採用する目的を明確化できているか?』を見直すことが重要です。
理由は、そもそも自社にとって新卒採用が必要な目的を振返り、理解することで、『自社の今後ありたい姿、成し遂げたいことに必要な人材や、現場に欠損が出てすぐに補完しないといけない人材』など、新卒採用に限らず、中途採用や配置なども含めて『会社として目的を達成するためにどんな人材が必要か』を経営戦略で考える視点ができるからです。
自社の経営戦略の視点を持つことで、なぜ自社が新卒採用をするのかの解像度が上がり、より本来の目的に添った考え方ができるので、採用戦略を立てる(戦いを省く)ことに必要になってきます。
まずは自社をよく理解し、なぜ自社にとって『新卒の採用が必要か』を問い直し、『新卒を採用する目的を明確化できているか?』を見直していきましょう。
新卒を採用する目的の明確化をもっと詳しく知る
▶︎ オススメ記事:
新卒採用を初めて実施する企業にお伝えしたいこと「目的の明確化・言語化はできていますか?」
▶︎ 記事で紹介していること:
こちらの記事では、新卒採用について一歩踏み込んだ理解をするため、新卒採用の目的の明確化とその方法について新卒採用アドバイザーの小野悠さんのインタビューを紹介しています。
自社の事業戦略や方向性を把握するところから「新卒採用の目的」を明確にして『言語化』し、採用チームや社内で共有していき、「今やっている新卒採用は、自社の事業戦略のこの部分を実現するためにやっている」といったことを意識しましょう。
【見直しポイント】求める人物像が定まっているか?
戦いを省く(採用戦略)ポイントの2つ目に、『求める人物像が定まっているか?』を見直すことが重要です。
理由は、今後会社として事業で、拡大したいこと、新しく始めたいことなどに必要な人材を設定し、採用したい人材のゴールを明確しないことには、そもそもの目的達成が困難です。
また、求める人物像を設定しないでいると、入社後にミスマッチを起こすリスクが高くなり(曖昧な人物像で採用基準を設定した場合、そもそもの学生のやりたいことと企業のしてほしいことが結びつかなかった、企業文化が合わなかったなど、様々なミスマッチが考えられます)、企業と学生双方にとって望ましくない結果になる可能性があります。
ですので、採用活動の根幹となる、自社にとっての『求める人物像が定まっているか? 』を見直していきましょう。
求める人物像についてもっと詳しく知る
▶︎ オススメ記事:
「求める人物像」を獲得できない3つの原因と企業がおこすべき現実的なアクション
▶︎ 記事で紹介していること:
この記事では求める人物像を獲得できない原因を挙げた上で、求める人物像を導き出すための分析方法の紹介をしています。
求める人物像を導き出す方法としては、大きく2つに分けており、企業のビジョンや目標から分析して『理想の姿』を設定する方法と、自社で活躍している人材を分析して『現実のモデル』から設定する方法があります。
どちらか片一方のみの分析方法を用いるというよりも、実際のところは両サイドからのアプローチをうまく組み合わせるのが望ましいです。
【見直しポイント】求める人物像に届くメッセージを作っているか?
戦いを省く(採用戦略)ポイントの3つ目に、『求める人物像に届くメッセージを作っているか』を見直すことが重要です
理由は、求める人物像を設定したとしても、その人物に伝える表現方法などが適切でなければ、自社求人に応募してもらうだけでなく、そもそも企業認知すらされないかもしれません。
求める人物像が『これは自分に向けられているメッセージだ』と思うぐらい、自社の魅力を伝えることができ、求める人物像にとって魅力的な表現方法か見直す必要があるでしょう。
例えば、自社の魅力を伝えて採用したい人材を獲得するにあたって、採用ブランディングの考え方が有効でしょう。
『ブランディング』というと、高度なクリエイティブが求められたり、ユニークな採用サイトが求められたりと一般的には思われがちかもしれません。
しかし、実際のところブランディングとは、『自社の魅力を伝える一貫したメッセージを通じてコミュニケーションを行うこと』を指します。
ですので、予算の有無や企業規模などに関係なく行うことができ(採用動画などコンテンツをリッチにすると当然予算がかかることもあります)、企業の魅力付けやのマッチング精度を上げることができます(一方で、メッセージを厳密にしすぎたりすることには注意が必要です)。
ですので、『求める人物像に届くメッセージを作っているか』を見直していきましょう。
採用ブランディングについてもっと詳しく知る
▶︎ オススメ記事:
【初めての採用ブランディング】基本的な考え方〜実施方法まで紹介!
▶︎ 記事で紹介していること:
採用ブランディングが今の採用環境で必要な理由やメリットなどを紹介しています。
採用ブランディングを実践するプロセスとして、社内外でリサーチして既存の社内ブランドがどのように認識されているかを明らかにし、求める人物像を『ペルソナ』として、より解像度を上げていきます。
その次に、『ペルソナへの魅力として伝えることを抽出』→『メッセージを一文に集約』することで、そのメッセージを軸に、採用手法、採用媒体、コンテンツの設計(手段としてどのような表現、アウトプットを行えばいいか)など具体かつ一貫性が取れた施策が可能になります。
【見直しポイント】採用した人物と出会える適切な採用手法を選択しているか?
戦いを省く(採用戦略)ポイントの4つ目に、、『採用した人物と出会える適切な採用手法を選択しているか?』を見直すことが重要です。
理由は、採用手法はナビサイトへやダイレクトリクルーティングなど、多くの採用手法、採用媒体などがあり、同時に求める人物像と出会い方が数多くあります。ですので、考えなしに採用手法を決定するにはリスクが伴います。
例えば、ナビサイトなどに求人広告の掲載することは、確かに企業認知→母集団形成を行える1つの手段ではありますが、そもそも自社認知が低い場合など、『待ち』の傾向が強いナビサイトでは学生が正確に企業認知できていなければ効果が出にくい場合があります(この場合、採用担当者から学生に会いにいくダイレクトリクルーティングのような『攻め』の手法の方が効果的である可能性が高いです)。
ですので、『採用したい人物と出会える適切な採用手法を選択しているか?』を見直していきましょう。
採用手法についてもっと詳しく知る
▶︎ オススメ記事:
採用した人物と出会える適切な採用手法を選択しているか?
▶︎ 記事で紹介していること:
最新版の採用手法について、採用担当者の方のお悩み別にどのような手法がおすすめか紹介しています。
各採用手法のメリット・デメリットをまとめ、1人あたりの採用単価のおおよその目安を記載しています。網羅的に採用手法について理解することで、自社がどんな手法を選択するか、組み合わせるかを見直すきっかけになれれば幸いです。
最後に
今回は、採用の歩留まり改善というよりも、採用全体像から戦略を立てていくために、現在の採用環境をもう一度整理しつつ、戦略を立てる上で欠かせない見直しポイントを紹介しました。
まず第一に、社外の採用環境を確認すると、現在の採用環境は売り手市場で学生優位であり、企業都合の一方的なコミュニケーションではなく、相互理解のコミュニケーションが必要とされました。
第二に、具体的な社内の採用環境を見直し、採用活動において不必要な戦いを省く(戦略)ために、以下4つに分けて見直すポイントを紹介しました。
- 新卒を採用する目的を明確化できているか?
- 求める人物像が定まっているか?
- 求める人物像に届くメッセージを作っているか?
- 求める人物像と実際に出会える適切な採用手法を選択しているか?
今回は全体像理解のため採用戦略の概要について紹介しましたが、自社にとっての戦略を立てるためにも、より戦略に必要な詳細情報を取得、精査してみてください!
