内定辞退率とは?計算方法や新卒・中途の平均値・推移と改善のコツ
売り手市場が続くなか、「苦労して内定を出したのに辞退されてしまった」という悩みに直面する採用担当者は少なくありません。内定辞退が多すぎると採用計画の未達を招き、それまでの選考工数も無駄になるため企業にとっては痛手になり得ます。
本記事では、内定辞退率の計算方法や、新卒・中途採用における最新の平均値・推移をデータに基づき解説します。また、辞退が発生する原因と、歩留まりを改善するための具体的なフォロー施策や採用手法についても紹介します。
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目次
内定辞退率とは

内定辞退率の定義は、「内定者」に対する「内定辞退者」の割合です。より厳密にいえば、企業から出た内定を承諾した候補者のなかで、どれだけの人が自己都合で辞退をしたかを表します。そのため、企業による内定取り消しや、内定承諾前の辞退などは数に含まれません。後に詳しく解説しますが、ここ数年の新卒採用の内定辞退率は、およそ60%が平均値となっています。
内定辞退率が高いと、せっかく採用のためのコストをかけても、無駄になってしまう部分が大きくなります。採用単価を抑えるためには、採用にかかるコストの無駄を減らす、つまり内定辞退率を下げるのが重要です。
内定辞退率の計算方法

内定辞退率の計算方法は、以下の通りです。
・内定辞退率(%)=(内定辞退者数/内定者数)×100(%)
例えば内定者数10人のうち、6人が内定を辞退した場合は、以下のように計算します。
内定辞退率(%)=6/10×100(%)=60(%)
内定辞退率は当然低ければ低いほど良いですが、企業が全てをコントロールできるわけではありません。売り手市場のなかでは、内定者側の選択肢が幅広い、つまり自社以外にいくつもの内定先を持っていることが想定できます。買い手市場の場合と比較すれば、当然内定を辞退される確率は高まるでしょう。
企業の対応が原因で内定辞退率が上がるケースもあるため、注意が必要です。内定辞退率が高くなる原因については、後の項目で詳しく解説します。
内定辞退率の平均値・推移

内定辞退率は、景気動向や求人倍率によって変動します。自社の数値が高いのか低いのかを判断するためには、市場全体の平均値やトレンドを把握しておくことが重要です。ここでは新卒・中途それぞれの動向を解説します。
新卒の内定辞退率の平均値・推移
リクルート就職みらい研究所の「就職プロセス調査」によると、2025年卒学生の12月1日時点での内定辞退率は65.1%でした。前年同月の64.3%と比較しても0.8ポイント増加している状況です。
この背景には、慢性的な売り手市場が挙げられるでしょう。学生一人あたりの内定取得社数が増加しやすいなか、内定取得者のうち「2社以上」の内定を持っている割合が高まっています。その結果、複数の選択肢から1社に絞り込む過程で、辞退が発生しやすい状況です。企業側は「内定を出せば入社してくれる」という前提を捨て、選考中から志望度を高める工夫が不可欠です。
出典:リクルート 就職みらい研究所「就職プロセス調査(2026年卒)」
中途採用の内定辞退率の平均値・推移
エン・ジャパン株式会社の2024年の調査によると、中途採用においても辞退の増加傾向が見られます。同社の調査では、約半数の企業が「以前より辞退が増えた」と回答しており、人材獲得競争の激化が浮き彫りになっています。
中途採用の場合、現職に留まるための「カウンターオファー」(引き止め)や、他社からの好条件提示によって、内定承諾直前で辞退されるケースも少なくありません。特に即戦力人材ほど複数社からオファーを受けているため、条件面だけでなく、仕事のやりがいや働き方への共感が得られない場合、他社を選んでしまう傾向が強まっています。
出典:エン・ジャパン株式会社「中途採用の選考辞退 実態調査」
【従業員規模別】新卒採用の内定辞退率の平均値

リクルート就職みらい研究所「就職白書2025」のデータをもとに、従業員規模別の内定辞退率を見ると、規模を問わず全体的に高い水準でした。
特に「300人未満」や「300~999人」の中小・中堅規模においては、あくまで平均値ベースにはなりますが、内定を出しても半数弱が辞退している状況です。また「5,000人以上」の大企業であっても、同じく半数が辞退している計算になります。
どの規模の企業であっても、内定者とのエンゲージメントを高める継続的なフォローが必要です。
出典:リクルート 就職みらい研究所「就職白書2025」
【地域別】新卒採用の内定辞退率の平均値

同調査の地域別データを見ると、各エリアで内定辞退率は約45〜50%でした。以下は、調査データをもとに数値をまとめた表です。
| エリア | 内定数(人) | 辞退数(人) | 内定辞退率 |
|---|---|---|---|
| 北海道・東北 | 12.7 |
6.4 |
50.4% |
| 関東 | 60.2 |
30.2 |
50.2% |
| 中部・東海 | 39.6 |
20.0 |
50.5% |
| 関西 | 44.7 |
20.6 |
46.1% |
| 中国・四国 | 29.6 |
13.9 |
47.0% |
| 九州 | 24.7 |
11.1 |
44.9% |
特に関東(辞退率50.2%)や中部・東海(50.5%)、北海道・東北(50.4%)は辞退率が5割を超えており、学生が複数の企業から内定を獲得しやすい環境であることがうかがえます。都市部では企業数が多く、学生一人あたりの内定保有数が増えやすいことが辞退率上昇の要因と考えられます。
一方で、関西(46.1%)や中国・四国(47.0%)、九州(44.9%)などの地方圏では若干低いものの、依然として4〜5割が辞退に至っており、地元採用が安定しているとは言い切れません。オンライン選考の普及により、地方在住の学生が都市部企業の選考を受けやすくなったことで、地元企業の内定辞退が発生する傾向は今後も続くと見られます。
出典:リクルート 就職みらい研究所「就職白書2025」
内定辞退率が高くなる原因

内定辞退率が高くなる主な原因は、以下の5点です。
- 内定の連絡が遅い
- 内定者フォローが弱い
- 希望条件とマッチしていない
- 面接官・担当者の印象が悪い
- 自社の志望順位が低い
それぞれの原因を詳しく解説します。
内定の連絡が遅い
内定辞退率が高くなる原因としてまず考えられるのは、内定の連絡が遅いことです。選考から内定まで長い期間が開いてしまうと、他社にも関心が向きやすくなり、結果として内定辞退につながりやすくなります。
特に昨今の学生は、物価上昇や新型コロナウイルス感染症拡大などを目の当たりにし、将来の不安からなるべく多くの内定を抱えておこうとする人も珍しくありません。学生への内定連絡はなるべく早めに行い、自社への関心を常に高い状態でキープしてもらうのが重要です。
ただし内定の連絡を早くするだけでよいわけではなく、定期的な内定者とのコミュニケーションなど、内定の連絡をした後のフォローも求められます。詳しくは、次の項目で解説します。
内定者フォローが弱い
内定者フォローが弱いのも、内定辞退率が高くなる原因です。企業によっては、採用活動に割けるリソースが限られており、内定者へのフォローが後回しになるケースがあります。また、そもそも内定者フォローを行うための体制が整っていない企業もあるでしょう。
内定者は、多くの場合、入社に対する漠然とした不安を抱えています。そのため、入社に対する不安を解消したり、関係性を保ったりするための内定者フォローが必要です。
例えばメールやオンラインツールなどを利用した定期的なコミュニケーションは、内定者との信頼関係を築くうえで欠かせません。内定者同士の懇親会など、実際に会って交流できる場を用意するのもよいでしょう。内定者フォローのポイントは、以下の記事も参照してください。
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希望条件とマッチしていない
内定者の希望条件とマッチしていないのも、内定辞退率が高くなる原因です。例えば給与や福利厚生などの雇用条件が、内定辞退の原因になっている場合もあります。
通常、給与や福利厚生などの基本的な情報は、応募時や選考時にも確認できます。しかし労働条件通知書などで雇用条件を詳しく知り、内定者が「希望するものではなかった」と感じるケースも少なくありません。
上記のようなミスマッチは、選考の過程で、雇用条件を適切に説明できていないことなどが原因です。学生が不採用にされてしまうのを恐れ、雇用条件を詳しく聞けないようなケースもあるため、企業側から丁寧に条件を説明する必要があります。
面接官・担当者の印象が悪い
面接官・担当者の印象が悪いのも、内定辞退率が高くなる原因として十分考えられます。面接の場で面接官が横柄な態度を取っていれば、学生が「この人がいるような企業では働きたくない」と考えるのも無理はありません。
面接での印象が良かったとしても、「面接前の連絡で雑に扱われた」「レスポンスが遅かった」など、前後の連絡での印象が悪かった可能性もあります。面接官は会社の代表として、「選考される側」でもあると意識するのが重要です。
「面接官・担当者の印象を良くしたい」「面接官で他社との差をつけたい」と考えている場合は、面接官トレーニングがおすすめです。面接官トレーニングの詳細は、以下の記事も参照してください。
自社の志望順位が低い
複数の企業に応募しているなかで自社の志望順位が低いのも、内定辞退率が高くなる原因です。一般的に就職活動に臨んでいる学生は、なるべく多くの内定を確保しておきたいと考えます。自社が滑り止めのポジションになっている、つまり求職者にとって「競合他社と比較して魅力が低い」という可能性は十分考慮しましょう。
自社の志望順位を上げてもらうには、説明会や選考段階でブランディングを行うなど、自社の魅力を訴求する必要があります。採用ブランディングについては、以下の記事も参照してください。
内定辞退率を下げる方法

辞退率を下げるには、選考中から内定後までのコミュニケーション設計が必要です。応募者の不安を取り除き、志望度を高めるための具体的なアクションを6つのポイントで解説します。
選考から結果通知までの間隔を最適化する
辞退理由として上位に挙がるのが「他社で内定が出た」「連絡が遅かった」という点です。自社が求める人材ほど他社の選考も早く進むため、結果通知が遅れるとその間に他社に気持ちが傾く可能性もあります。
対策として、「選考間のインターバルを短縮する」「面接当日に合否を出す」あるいは「一次面接後に即日で次回の面接日時を設定する」など、意思決定をスピーディーにすることが重要です。「熱が冷めないうちに次のステップへ進んでもらう」ことで、候補者の離脱を抑制し、自社への優先順位を高める効果が期待できます。
内定者ごとにフォローを行う
内定者全員に一律の対応をするのではなく、個々の不安や状況に合わせたフォローが不可欠です。「配属先に不安がある応募者には現場社員との面談」「同期との人間関係を気にする応募者には懇親会」など、個別の懸念を解消する取り組みが求められます。
なお、内定者フォローの実態や効果的な施策については、独自の調査レポートで詳しく解説しています。具体的なデータや事例を知りたい方は、ぜひご覧ください。
面接官の対応品質を改善する
面接官の態度や言動は、企業の印象を決定づける大きな要因です。圧迫的な態度は論外ですが、事務的すぎる対応も「自分に関心がない」と受け取られ、志望度を下げる原因になります。
面接官トレーニングを実施し、応募者の魅力を引き出す傾聴スキルや、自社の魅力を適切に伝えるプレゼン力を磨くことが重要です。面接官を「この人と一緒に働きたい」と感じてもらえると理想です。
職場理解に向けた取り組みをする
「入社後にやっていけるか」という不安は辞退の引き金になります。これを解消するには、リアルな職場を見せる取り組みが有効です。
オフィス見学ツアーを実施して働く環境を見せたり、現場社員との座談会で「1日のスケジュール」や「仕事のやりがい・苦労」を率直に話してもらったりする機会を設けます。良い面だけでなくリアルな現実も伝えることで、納得感のある意思決定を促し、入社後のミスマッチ防止にもつなげます。
内定者の研修・教育プログラムを設ける
内定期間中に学ぶ機会を提供することも、入社意欲の向上に役立ちます。ビジネスマナー研修や、簡単なeラーニング課題を用意すれば「会社から期待されている」「成長できる環境がある」という実感につながる可能性があります。
ただし、過度な課題は負担となり逆効果になるため注意が必要です。あくまで「入社への準備・期待感を高める」ことを目的とし、内定者同士で学び合えるグループワークなどを取り入れるのも効果的です。
マッチングの精度を高める
そもそも自社のカルチャーや求める人物像と合っていない応募者に内定を出しても、辞退される確率は高くなります。母集団形成の段階でターゲットを明確にし、自社にマッチする人材に絞ってアプローチすることが根本的な解決策です。
マッチングの精度を高めるには面接のクオリティを高める取り組みのほか、適切な母集団形成の手法選びも有効です。次のパートでは内定辞退率を下げやすい採用手法を紹介します。
内定辞退率を下げやすい採用手法

内定辞退率を下げるためには、採用手法を今一度考え直してみるのもおすすめです。内定辞退率を下げやすい採用手法としては、以下の4つがあります。
- ダイレクトリクルーティング
- リファラル採用
- オウンドメディアリクルーティング
- インターンシップ
手法の概要や、なぜ内定辞退率を下げやすいのかを解説します。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、自社に合った人材に直接アプローチする採用手法です。候補者の応募を待つナビサイトなどとは異なり、企業側から動く「攻めの手法」として、さまざまな企業に活用されています。
なぜダイレクトリクルーティングが内定辞退率を下げやすいかというと、自社にマッチしやすい人材を企業側から検索し、直接アプローチできるからです。企業は学生を事前に分析し、その人の関心やニーズを深く理解できます。それぞれの学生に合わせたアプローチができ、自社の魅力を訴求しやすいため、志望順位を上げてもらえる可能性があります。
ダイレクトリクルーティングを効果的に行うためには、自社のターゲットを明確にするのが重要です。自社に合った人材を絞り込めれば、母集団形成の質も向上し、結果として内定辞退率も下がりやすくなります。ダイレクトリクルーティングの基礎知識やメリット・デメリット、実施のポイントについては、以下の記事も参照してください。
リファラル採用
リファラル採用とは、企業が自社の社員から友人・知人を紹介してもらう採用手法です。昨今では国内のベンチャー・スタートアップなど、多くの企業でも取り入れられています。
リファラル採用が内定辞退率を下げやすい理由は、自社で活躍する社員の友人・知人であれば、同じような特性・価値観を持っている可能性があるからです。学生の価値観と自社のカルチャーが合っていれば、ミスマッチのリスクも抑えられるでしょう。
紹介者(自社の社員)を通して実際の仕事の様子などをあらかじめ説明するため、明確なイメージを持った状態で選考に臨んでもらえるのも、リファラル採用ならではの利点です。リファラル採用について詳しくは、以下の記事も参照してください。
オウンドメディアリクルーティング
オウンドメディアリクルーティングとは、文字通りオウンドメディアで情報発信をしつつ、採用に役立てる手法です。オウンドメディアとは、企業のWebサイトやSNSなど、情報発信を行うためのメディア全般を指します。
オウンドメディアリクルーティングが内定辞退率を下げやすい理由は、社風などを分かりやすく発信でき、学生に理解を深めてもらえるからです。求人広告とは異なり、情報量の制限などがないため、動画や写真を用いて自社の魅力を訴求できます。
ただし本格的なWebサイトを新しく制作する場合は、初期のコストが大きくなりやすいため注意が必要です。オウンドメディアリクルーティングの詳細は、以下の記事も参照してください。
インターンシップ
インターンシップは、学生が実際の職場環境で一定期間働き、実務経験を積むためのプログラムです。通年採用を行う企業が増加している昨今、早期に学生と接点を持てるインターンシップの重要性はますます高まっています。
インターンシップが内定辞退率を下げやすい理由は、あらかじめ社風や仕事の様子を見学・体験し、学生に自社の理解を深めてもらえるからです。学生が持っている多様な価値観に寄り添い、効果的なコミュニケーションができるかどうかが、インターンシップ成功の鍵となります。
インターンシップはプログラムの種類が多く、学生を募集する方法も多種多様なので、計画的に実施するのが重要です。インターンシップの概要や成功させるためのポイントについては、以下の記事も参照してください。
まとめ

売り手市場において、内定辞退をゼロにすることは困難ですが、ありがちな原因を知り、正しい対策をすれば「防げる辞退」を減らすことにつながります。
まずは自社の辞退率を計算し、平均値と比較して現状を把握しましょう。そのうえで、選考スピードの向上や個別の内定者フォロー、そしてマッチ度の高い人材へアプローチできる採用手法への転換など、多角的な対策を講じることが、採用成功への近道となります。
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